片田舎の剣聖 錬鉄の英霊   作:ナチュル志保

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初めて投稿させていただきました。
エミヤのSSを読むのが好きな私ですが、剣聖おっさんに感化されてクロスオーバーとして書かせていただいてます。
拙い箇所は多々あるかと思いますが、もし見ていただくことがありましたら
何卒、温かく見守ってください。


【零章・第1話】『剣は、ただ静かに鳴る』

木製の床板が、わずかに軋んだ。

既に整えられた道場には、朝の静寂と共に、凛とした緊張が張り詰めていた。

澄み切った空気の中、誰の息遣いも、誰の気配も、無駄なくそこに存在していた。

 

向き合う二つの影――

一方は、銀白の髪に深紅の外套を羽織る男。

無手ながら剣の気配があり、あくまで沈黙を保ちながら、その立ち姿には、隙も慢心もなかった。

 

そしてもう一方は――

年齢は中年に差し掛かる頃だが、しなやかに構えた両腕に、老いの翳りはない。

手にした木剣はその道場に備え付けられたごくありふれたものにすぎない。

しかしそれを握る男の姿には、刃よりも鋭い気配があった。

 

互いに、一言も発さない。

ただ、視線を交わす。

互いの呼吸、重心、気配、気質――そのすべてを、静かに観測する。

剣を交えるということ、それは技術でも意志でもなく、信念と理の応酬である。

 

――方や、生涯を剣に捧げ、片田舎の道場で弟子たちに剣を教え続ける男。

後の世では、その剣は“片田舎の剣聖”と呼ばれ、知られざるままに数多の英雄を育てる根となる。

 

――対するは、幾万の戦場を駆け抜け、救えぬ者の叫びと共に彷徨い続けた正義の味方。

才なき少年が死地をくぐり抜け積み重ねた剣の技は、神すらも穿つ“錬鉄の英霊”へと昇華された。

 

二つの剣が、ここで交差する。

運命すら知る由もない、静かな朝の道場で。

 

ただ静かに、剣が鳴る。

 

 

◇ ◇ ◇

 

時は遡り、およそ1年前。

 

――世界が変わったその朝、銀白の男はただ静かに目を開けた。

 

空は青く、風は穏やかだった。生き物の気配。草の匂い。木々のざわめき。

どこまでも“生”の気配に満ちたこの場所は、彼の知る「座」とは、まるで異質だった。

 

倒壊しかけた石造りの廃屋の中で、彼は起き上がる。服に付着した砂塵を軽く払うように身を起こし、空を見上げる。

 

「……英霊の座ではない、か」

 

ぽつりと呟く。

 

この感覚は、何度も味わった“現界”ではない。

誰かに召喚された気配もない。抑止力によって呼び出されたわけでもない。

霊体化もできない。魔力の流れが、生々しい。

 

「……受肉……いや、それとも……?」

 

思わず右手を見下ろす。指先に残る火傷の痕が、うっすらと疼く。

 

生きている。

ただそれだけのことが、今の彼には不思議だった。

 

抑止の守護者である彼が呼ばれる際は、既に"救えない"場面の後始末を行う時か、

あるいは、物好きな召喚者が彼の英霊としての戦力を目当てに呼び出す時しかないのだ。

だからこそ、目前に広がる景色に、困惑をしていた。

 

 

そのとき、遠くから――微かな声が聞こえた。

助けを求める、小さな声。子どものものだ。

 

 

彼は迷わなかった。

 

マントを翻し、半壊した建物の隙間を抜ける。

助けを求める声があるなら、応えるしかない。

それが、たとえ誰にも望まれていない存在であっても。

 

 

◇ ◇ ◇

 

あれから数か月の時が過ぎた。

彼――エミヤ――もまた、この世界に少しずつ慣れるように生きていた。

といっても、彼にとって特別なことはしておらず、生前と同じように

転々と様々な場所を移動しながら、助けを求める者を救い、心ばかりの感謝によって生きいく。

 

急ぎの目的がない彼は、少しずつこの世界を知るために動いていた。

 

まず、時代はおそらく中世あたり

村があり、営みがあり、そこに住む人たちは馬や徒歩で移動をしている。

簡単な交流をする中で貨幣を確認したが、彼の記憶に該当しなかった。

 

そして、断片的な情報しか得られていないが、魔獣、都市、騎士、ギルド、魔法…

何より、この地に降りてから今まで、抑止からの指示や意思を感じないことから

元の世界とは異なるものと感じたエミヤは、この世界を特異点、もしくは別の理の世界に飛ばされたものだと考えていた。

まれに魔力の痕跡を見つけることもあるが、彼の知る魔術には当てはまらなかった。

 

とはいえ、ここにも魔術に関する組織があるのであれば、極力目立つことは避けて生きる。

そのような方針を持ったエミヤは、都市には行かずに、訪れた村人たちの困りごとを助けて過ごしていた。

 

◇ ◇ ◇

 

この日、子供たちを助け出し、簡易的な手当てを済ませた頃。焚き火を囲む彼の目は、ふと山の向こうへと向けられていた。

 

強化の魔術を加えた彼の瞳に、誰かが複数の獣と対峙している姿が映る。

それも逃げているわけではなく、“覚悟を持った剣士”の気配。

 

「……なるほど。そういうことか」

 

 

彼は、迷わず向かうことを選ぶ。

 

その先に待つのが、後に“剣聖”と呼ばれる男であるとは、

まだ、彼自身も知らないまま――

 




とても緊張します。
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