俺の親友がプロキシ!?…えっパエトーン?   作:コロッヶ

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親友との初共闘

「初めまして修理屋さん、僕らはプロキシ、伝説のパエトーンだ」

 

「丁寧にどうも。俺はしがないジャンク品や機械の修理屋をやらせてもらっている者だ」

 

これからよろしく、とアキラと改めて自己紹介をしているが正直実感がない。

 

インターノットで密かに語られていた、伝説のプロキシ。それを親友が自称するのだから無理もない。

 

「ちなみに〜、私とお兄ちゃん2人でパエトーンだからね!」

 

「補足説明ありがとさん」

 

「ジャンク品を修理してそれをネット販売しているのは聞いていたけど、まさかその調達先がホロウだとは思わなかったな」

 

「私達もプロキシとして依頼を受けてたけど、わざわざホロウまで来て物漁りしてる人がいるって話は聞いた事なかったな〜」

 

それはそうだろう、そんな事がインターノットで囁かれた時には必ず治安局が突撃しに来るはずだ。

 

「それにしても、まさか3人仲良く世間の日陰者とはな」

 

「はは、僕らとカイは何か運命的な物があるのかも知れないね」

 

「やめろ気持ち悪い」

 

女の子ならともかく、男に言うセリフでは無いだろう。

 

そこからは、3人でこれまでどう仕事してきたかを和気あいあいと語っていていたが、先程まで借りられてきた猫の様に大人しかったニコが大声をあげる。

「と!に!か!く!自己紹介は済んだでしょう?事は一刻を争うわ。ほら、最後に2人から受信した信号の位置は渡すから、それでーーっ!」

 

大声をあげたと思うと急に蹲るニコ。忙しないヤツだ。

 

しかしニコが言っていた事は正しい。それに何処か怪我をしているのだろうか、動けそうにも無さそうだ。

 

こちらとしても、邪兎屋の従業員を無くすのは惜しい。大事な常連様なのだ。

 

ニコから依頼料も貰え、さらに取引先も助けれる。美味し過ぎる依頼だ、断る理由もない。

 

「ニコの言う通りだな。俺は何時でも行けるぞ」

 

「それはもちろんだが、まさかカイはそんな格好で行くのかい?正直、正気とは思えないな」

 

どこに不満がある?ホロウで動き回るのだから、運動に適した黒ベースの薄い生地を着ているだけなのだが。

 

強いて言うなら紙装甲という事だろうか。銃弾1発で重症、当たり所が悪ければそのまま死ぬ事もあるだろう。

 

自分からすればいつも通りだ。周囲を警戒し、身を隠し、こっそり目的の物を引っ掴んで帰ってくる。

 

「そんな心配しなさんなって。自慢じゃないが、俺は目が良いんだ。遠くの物も良く見えるぞ」

 

「…君の目はともかく、信じていいんだね?」

 

おうよ、とアキラに拳を突き出す。普段はやらないのだが、心配してるなら気休めでも安心させるべきだろうと思いやった事だ。

 

頼りにしてるよ、とアキラも拳を合わせてくる。多少いざこざはあったが、ようやく出発できると言うものだ。

 

して、パエトーンはどのように案内してくれるのだろうか?野良プロキシは見てきたが大半がキャロットの提供か、共にホロウに入って案内する輩しかいなかったが…

 

「アンビーとビリーがさ迷ってるのは十四分街のホロウで間違いないね?カイ、イアスをよろしく頼んだよ」

 

…え、イアス?ボンプが案内してくれるのか?もしかしてパエトーンというのは、超高性能ボンプを持ってるだけの一般プロキシなのか?

 

頭に?を浮かびあげているとリンから「行けば分かるよ!」と背中をグイグイ押されながら外に出る。当のボンプであるイアスは「ンナナ!(よろしく!)」と向こうもいつも通りの様子。

 

まぁこれで不安なのはお互い様か、とアキラに言われたポイントまで車を走らせるのであった。

 

━━━━

 

人気の無い裏路地、目の前にはホロウの入口が周囲に極彩色のモヤを吐き出しながら佇んでいた。無論、ホロウ本体は何処までも底の見えない闇ではある。

 

何度入ろうとも、ホロウに入る瞬間の若干の息苦しさは慣れないものである。

 

少し萎えているとノックノックに通知が入る。アキラからだ。

 

『到着したかい?到着したらイアスを離してあげてほしいな』

 

『到着したし、既に離しているぞ』

 

『了解、それなら始めるよ』

 

何が始まるんですかねぇ、とイアスを眺めているとイアスの目の輪郭が一際大きくなると同時に身震いする。

それが終わり、こちらを見つめたと思うと途端にアキラの声が聞こえてくる。

 

『やぁ、カイ。無事到着したようで安心したよ』

 

「ボンプが言葉を!?いや、アキラがボンプを通して喋っているのか?」

 

『近からずも遠からず。僕は今イアスの身体と同期しているんだ。リアルタイムで通信できるうえに、五感全てが僕本体に伝わっているよ』

 

…恐らくこれが例の「先生」が彼等に残したシステムの一部なのだろう。正直プログラム関係には疎いので、便利だけどいざという時に恐ろしいな、ぐらいにしか思わないのだが。

 

「よし、じゃあ行くか」

 

『もう少し良いリアクションを期待したんだが…』

 

すまんな、あまり興味なくて。

 

━━━━

 

ザッ、ザッ、とホロウ内を駆けるアンビー。彼女の顔色は決して良いものとは言えなかった。

 

どこを巡っても必ず同じ場所に帰ってくるのだから、心身ともに疲弊しているのは目に見えていた。

 

それを追従するようにビリーが飛び出してくる。機械人である彼に顔色という物は無いが、動きが少しぎこちない。

 

部品がエーテルに蝕まれたのか、それとも過負荷による弊害なのかは不明だが、どちらにしろこのままだと両者とも無事では済みそうにない。

 

「は!?また戻ってきちまったぞ!?」

堪らず叫ぶビリー。狼狽える彼とは対照的にアンビーは静かに辺りを見回し対策を考える。

 

そんな彼らにお構いなく襲いかかろうとするエーテリアスが数匹。普段なら然程驚異ではないヤツらだが、状況が悪い。

 

「これじゃあ弾代だけで、大赤字だ!」

 

疲労しているアンビーを庇うためか、ビリーは残弾を確認した後に2丁の銃を構える。

 

エーテリアスが彼らに近づいてくる瞬間、アンビーは足元にコロコロと玉のような物がある事に気づく。

 

「っ、ビリー!伏せて!」

 

それは2人を巻き込んで爆発…する訳ではなく煙幕を撒き散らすだけだった。

 

敵意が無い事を察すると、アンビーはビリーの首元を掴んで近くの物陰に隠れようとしたが

 

「そっちじゃない」

 

と何者かにぐんと後方にあるバスの物陰へ引っ張られる。咄嗟にその手を引き外そうとするが、既に離されていたようで振りほどこうとした手は空を切る。

 

前を見ると、ラフな格好をした男が立っている。オマケに武装も無いようだ。傍から見れば、ホロウへ自殺しに来た男が最後に善行をしようと動いたのでは、と思われても仕方の無い程だ。

 

こんな男に不覚を取ったのかと、少し悔しく思うアンビーだったが、彼の足元にいるスカーフを巻いたボンプに目がいく。

もしやとは思うが…

 

「…スカーフを巻いたボンプ?もしかして貴方が伝説のプロキシ、パエトーン?」

 

『ご明察。ニコの依頼で助けに来たよ』

 

「うおぉ!?武器屋のダンナじゃねぇか!」

 

「本業は修理屋だ、お得意様方は大事にしないとな?」

 

…この男とビリーは知り合いらしい。パエトーンと行動しているという事は、パエトーン専属のエージェントかニコが依頼した者の1人か。

 

いいや、それよりも引っかかった言葉がある。

「…助けてくれてありがとう。でも私は貴方のお得意様になった気は無いのだけど、何処かで会った?」

 

「いや、ニコとビリーに聞いたんだが、最近ウチのネット販売サイトから色々買ってくれてるみたいだからな」

 

あぁ、思い出した。以前使っていたテレビをもう少しでも大きくしようと思ってインターノットを流し見してたら、家電や様々な機器、誰が欲しがるか分からないような物まで格安で販売されているサイトがあったのだった。

 

もし不良品を掴まされたら、住所を特定の後に痛い目にあわせてやろうと思ったのも杞憂に終わり、新品同様と言ってもいい程の品が届いたのだ。

 

それからはそのサイトで必要な物をしょっちゅう買っていたのは記憶に新しい。

 

「なるほど、ある程度は把握したわ」

 

━━━━

 

初めて他人と共にホロウを動いたからか、妙な疲れ方をしているのが分かる。

 

他人ならともかく親友と、パエトーンと行動したのだ。アキラにもつつかれたが他人行儀な態度を取ってしまい申し訳なく思う。

 

さらに気づいたのはパエトーンと俺のやり方は全く別物だということだ。

 

パエトーンは「H.D.Dシステム」を通じてイアスと完全同期を可能としている。さらにホロウ内部を観測する事で確実なルートを選定する事ができる。

 

対して自分は一言で言うと行き当たりばったりなやり方だった。

 

プロキシと俺ではそもそもの目的が違うからやり方が違うのは致し方の無いことではある。

 

プロキシは基本、ホロウ内の探索や依頼主の案内を主にしている為、正確かつ道中の安全性が高い情報が必要となってくる。

 

かく言う自分はホロウ内に置き去りにされた物を集めるのが主なので、正確な情報は不要である。

いや、不要では無いのだが性に合わないのが本音だ。

 

目的の物がそこにあるから行って持ち帰るだけ、というのは掘り出し物を見逃してしまいがちになってしまう。

 

それにわざわざ危険なホロウにまで来て宝探しをしてるのだから、どうせなら楽しみながらやるのが良いだろう。

 

まぁ、今回はパエトーン様のお導きの元やって来たのだが…やっぱり性に合わないなぁ。

 

━━━━

 

初めてカイとホロウ探索をやってみたが、カイの事で気になる所がある。

 

様々な依頼を受けているから、中には気難しい依頼者もいるのだがそういう事では無い。

 

確かに、これまでの道中は主に僕が案内してきたが、不気味なくらいエーテリアスと遭遇しなかった。

 

エーテリアスは基本的にホロウ内をフラフラと徘徊しているからか、偶然的にエーテリアスと遭遇するのは珍しくない。

 

では遭遇しなかったのは運が良かったからなのかと思われるが、そこに恐らくカイが関わっている。

 

道中でも、何度か「こっちの方が良いな」と勝手に行先を変えたり、「ちょっと休憩だ」と言いつつ物陰に隠れたと思うとエーテリアスの群れをやり過ごしたりと、まるで分かってるかのような立ち振る舞いだった。

 

ホロウは常に変化し続けている為、突発的に「裂け目」と呼ばれるホロウ内同士で繋がっている抜け道が出現する事がある。

 

そしてそれは基本的に接近してようやく知覚できる物だ。

 

僕はH.D.Dシステムを利用しているから、ある程度裂け目の位置は特定はできる為、裂け目がどこにあるか伝える事ができる。

 

しかし、カイは僕が言う前に裂け目へ石を放り投げたと思うと「やっぱりか」と呟いたのである。

 

それについて少しカイに聞いてみた

 

『カイ、君は裂け目を感知出来るのかい?それにエーテリアスが来る事もまるで知っていたかの様な行動をしていたね?どうやってるか説明してくれるかい?』

 

「あぁ、出発前に言っただろ?俺は()()()()んだ」

 

『とても視力どうこうで観測できる物では無いと思うんだが…』

 

「あー、なんだ、他人に言わないってんならネタばらしするがどうだ?」

 

『ふむ、良いだろう。他人には言わない、君と僕との約束だ』

 

妙に歯切れが悪いと思ったら彼も何か隠していたのか。

 

まぁ自分もパエトーンという身分を隠していたのだからお互い様ではある。

 

カイは周囲に人がいない事を確認すると、思い出すかのように語り出した。

 

「旧都陥落の日、俺に何が起こったのかほとんど覚えていないんだよな。

ただ1つ変わった事があるとすれば、俺の目は周囲のエーテルの波を視覚的に捉える事ができるようになっていたって事よ」

 

『そんな事象は聞いたことがないな…』

 

「俺も驚いたぞ?

可能性としてはエーテリアス化してしまった両親が倒された後、元両親から発生したエーテルの粒子が息子である俺とたまたま親和性の高い物だったってとこだな」

 

そんな事が有り得るのだろうか…?確かにエーテルは未だ謎が多い物質であるのに変わりは無い。

 

しかしカイの様な事象が、仮に軍事施設等に漏洩してしまった場合を考えると公にできないのも無理は無いだろう。

 

『さっき裂け目を僕より早く気づいたのはそういう事か。今も見えているのかい?』

 

「そういうこと。さらにONOFF切り替えができるし、今はOFFにしてるから見えてない」

 

『興味本位で申し訳ないが、一体どの様に見えているんだい?』

ちょっと待ってろ、と言うとカイの瞳孔の輪郭がだんだん赤みがかってきた。

 

「うーん、見え方的には、帯状のエーテルが周囲を漂っているって感じだ。

裂け目を感知できたのは、エーテルの帯が何も無い空間に吸い寄せられるように流れて行ったからだ」

 

『話を聞く限り随分と随分と便利そうだ』

 

「まぁぶっちゃけ便利だな」

 

なんとも羨ましい…いや、僕らにはH.D.Dシステムがあるから無い物ねだりはやめておこう。

 

━━━━

 

合流したビリーとアンビーから事の顛末を聞いた。

 

どうやらニコのターゲットの金庫は同じホロウ内にはあるが、赤牙組のリーダーがエーテリアス化してしまった所にあるらしい。

とりあえず、今の2人を連れて探しに行くのは危険なので大人しく帰るとする。

 

道中ではエーテリアスと遭遇しないようにしたのだが、アキラが示したホロウの出口となる裂け目の前にエーテリアスの群れがたむろしていた。

 

『あの向こうに出口があるんだが…どうも戦闘は避けられそうにない』

 

「了解。私とビリーで殲滅する…けど気になる事があるの」

 

『なんだい?アンビー』

 

「大した事じゃないわ、ただ修理屋さんがどう戦うか気になっただけ」

 

「…俺にあの群れに突撃しろと申すかアンビー殿」

 

「援護はするわ、安心して」

 

…アンビーは元々鬼教官だったりするのだろうか?

 

『アンビー、カイは見ての通り丸腰だ。あまり酷な事を言うのは関心しないな』

 

「あー、出来んこともない。心配してくれてありがとうな、パエトーン。

だが、こいつの言う通り俺は丸腰だ。だから俺が先行して隙を作る。それをビリーとアンビーで撃破するというのはどうだ?」

 

邪兎屋の2人にはそれで納得してもらえたが、アキラは依然として不安な様子だったが、『カイがそう言うなら何も言わないよ』との事なので良しとする。

 

さて、突撃前に目に力をグッと込める。

 

誰にも伝えていないが、どうやら目に見えない微弱なエーテルは人間の脳波やエーテリアスのコアといったものに反応するらしい。

 

要するにエーテルの流れを見てちょっとした未来予知ができるのだ。例えばエーテルが右に流れると、攻撃は右側からくるのでそれに対処する、といった感じだ。

 

ホロウ内を移動するだけなら、エーテルの波が見えるだけで十分なのだが、戦闘となら話は別だ。目に力を込めることで、より早くエーテルの流れを見ることができる。

 

「…ふぅ、それじゃ援護頼んだぞ!」

 

エーテリアスがこちらを認識する前に距離を詰める。相手は人型エーテリアスが5匹、各個撃破前提に動くべきだろう。

 

とりあえず1体目を死角から膝裏に向けて蹴りを放つ。

体勢を崩したエーテリアスのコアにアンビーが電磁ナタを振り下ろす。

 

2体目が気づいたのか、力任せに腕を横薙ぎしてくる。

しかし、視えている。咄嗟に身を屈め回避し、振り切った腕をさらに同じ方向に押してやると、エーテリアスはバランスを崩し仰向けに倒れた。

そこをすかさずビリーが撃ち抜く。

 

残りの3体が一斉に襲いかかってきたが、バックステップで距離を取ることで視野を確保。

 

相手は連携とは無縁なので、適当に攻撃を別個体に誘導し同士討ちを狙う。

当てられた側は自分と同程度の攻撃が当たり、体勢を崩す。

それと同時に残り2体を同じ要領で転がす事で、ビリーの弾丸とアンビーの一閃が3つのコアを破壊する。

 

「何とかなるもんだな」

 

スッと目の力を緩め、脱力する。久しぶりに力を出したためか、軽い頭痛がする。

 

『お疲れ様、カイ。まさか君がここまで動けるとは』

 

「私も正直貴方を見くびっていた。謝罪する」

 

「普段エーテリアスはめちゃくちゃに動くから中々コアに攻撃があたらないんだが、流石ダンナだぜ!」

 

「はいはい、すぐ目の前に出口の裂け目があるからさっさと出ようぜ?」

 

それもそうだ、と全員が同意したところで裂け目を潜り抜ける。

 

抜けた先は奇跡的に俺たちが入ってきた所と同じだったようで、足早に帰ることができた。

 

ニコには2人の無事をアキラから説明しているようなので、後はニコのターゲットの回収のみであるが、果たしてどうなる事やら。




まるで生やしたかのように主人公が覚醒しておりましたが、これも全てエーテルが悪いのです。おのれTOPS

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