引き続き執筆していきますので何卒。
せっせと拾ってきたジャンク品を修理しているとノックノックから通知が入る。
『よう旦那!今空いてるか?良かったら新しくパーツを取り替えようと思うんだが』
『空いてるぞ。ところでパーツというのは娘さんか?それともお前本体の話か?』
『今日は娘たちのだな!あったらでいいが弾も欲しい!』
『あいよ。お得意様には特別に割引もしておいてやろう。』
『さっすが旦那!話が早くて助かるぜ!』
『それじゃいつもの所にいる』
それだけ送り終わると作業を中断して準備にかかる。
送り主はビリーからだったので、恐らく邪兎屋としての仕事が近々あるのだろう。
彼は自分の銃を「娘たち」と言うのはそれほど愛着があるからであろうか。
まぁどんな物も長く使い続ければ、そうなるのも不思議ではない。むしろ好印象だ。
先程のビリーが所属している邪兎屋というのは、所謂「なんでも屋」だ。
ただ、従業員全員が高いエーテル適応体質を持っているので基本的にホロウ内部で行動している。
ホロウ内は常に危険と隣り合わせの場所だ。従業員は3名と少ないが、全員高い戦闘技術を持っている。
ここまで聞くと少数精鋭の硬派組織と勘違いしそうなものだが、現実を見るとそうでもない。
いや、事実そうではあるのだが、如何せん金運が無い。あまりにも無さすぎる。
いつも依頼がどうのこうのと奔走しているが、蓋を開けてみれば犯罪組織の肩代わりだとか、噂に踊らされただけだったりとかはざらである。
おかげで従業員のビリーも弾の節約を強いられている。
何とも世知辛い世の中なものだ。
そんなビリーの事を少し憐れみつつ、必要としているであろうパーツ、オイル、弾、あとは…適当でいいか、とりあえず目につく場所に放っておいたら興味を示すだろう。
現在この作業場は郊外の何処にでもあるような工場の1室を勝手にリフォームした物だ。
どうせ人は住んでいないし、場所が場所なので人も寄り付かない。来たとしても外見はよくある古びた建物なので見向きもしない。
オマケに部屋がそこかしこにある為、この作業場をピンポイントで引き当てるのは難しい…と思う。
こちらとしては、戦闘センスは皆無なのでありがたい限りである。
そろそろボンプでも雇うか?とか考えていると扉をノックする音が聞こえる。
「おーい!来たぜ!開けてくれ〜!」
…コンコンという優しいノックではなく、ガンガンと殴りつけるようなノックだったが、まぁいい。
はいはい、とドアを開けると、赤いコートを着たアンドロイドのような機械人…本人曰く「知能機械人」との事だが、似たような物ではないのか?
論理コアがどうたらと、懇切丁寧に言われてもピンとこなかった為、あまり興味はない。
ふとそんな考えが頭によぎるが、これでも相手はお客さんだ。丁重にお迎えせねば。
「あぁ、いらっしゃい。とりあえず欲しそうな物は並べておいたから、適当に選んでくれ。料金はその後に伝える」
「要するにいつも通りだな!センキュー!」
これがこの店のやり方だ。値札は無く、全て選んでから支払い金額を提示する。
いくらでも金額を釣り上げようと思えばできるが、せっかくの常連さんにそんな事はできない。
ましてや自分がホロウや死体からパクってきた物が全てなのだから、対して費用はかかっていない。
恐らく他の店と比べても格安価格…のはずだ。
如何せん自分で他の店に行く理由が無いため、通常価格は分からんのだ。
遠くの方でビリーが「これもいいなぁ〜」とか何とか騒いでいると、別客が来たらしい。
カツンカツンと甲高い足音が近づいてくる。
ホロウレイダーにしても治安局にしても、こんな雑な侵入はしないだろう。
「何よここ?辛気臭い場所ねぇ。ビリー!いるんでしょう?」
「んな!?ニコの親分!?」
バン!と力強く扉が開かれる。
淡いピンク色の髪に、自信たっぷりの立ち振る舞い。そして豊満な胸…はどうでもいいか。
ともあれビリーの発言から彼女が邪兎屋の社長、ニコ本人で間違いないのだろう。
「ここがいつもビリーが調達している店とはねぇ。あら、アンタがここの店長かしら?」
「辛気臭い店長ですまんね。ビリーの上司なら、初回限定サービスと友達紹介サービスをつけてやろう」
「あら、いいの?太っ腹で商売上手ね。嫌いじゃないわ!」
ふんふ〜ん、と鼻歌を歌いながら商品の前に立つと、怪訝な顔付きで「値札がないのだけど?」と聞いてくる。
説明するのも面倒なのでビリーに任せたところ
「アンタこんな怪しい所で買い物してたの!?」
「いやいやいや!ニコのオヤブン聞いてくれよ!ここの商品は全部他の店で買うよりも格安だぜ?」
「いーや!信じられないわ!例え安くてもそれには必ず理由があるはずよ!それが裏の組織やら例の軍団からの横流しだったら、まーた変な奴らに目をつけられるじゃない!」
そんな危ない人とは知り合いじゃないでーす。知り合いたくもないでーす。
「まぁまぁ、それならオヤブンも何か買ってみたらいいんじゃないか?そうすれば価格帯も分かるってもんだ」
「むぐ…それもそうね」
そう言うとじーっと商品を品定めしてきた。気持ちは分からんでもない。ただ如何せん面倒なのだからしょうがない。
拾い物を直してそれを売っているのだから、これがこんな性能で〜なんて知った風に言っても必ずボロが出るのは明らかだ。
だからこそ、お手頃価格でもちろん試し撃ちもオッケーだ。あ、それは別部屋だからここでやらないでね。
これにするわ!と目の前に商品をドサッと置いてきた。物を見ると、スタングレネード数個にガンオイル数種類、それと銃弾300発。
やれやれ、守銭奴相手は面倒極まるな。これを機に常連になってくれたらいいが…
そう思いながら裏に勘定しに行く
━━━━━━━
「これにするわ!」
とりあえず目に入った物を引っ掴んで店長の目の前に力強く置く。
これらはどこの店も似たような金額で置いてある物だ。だからこそ試してみる。
値札もない癖によく格安などと言ったものだ。先程言った割引もそれらを使ってやっと適性価格なのだろう。
それに
さぁ化けの皮をひっぺがしてやるわ!と意気込んでいると勘定し終えたのだろう、店長が戻ってきた。
「こんなもんだろう。もちろん割引価格だ」
「ふん!やけに早いじゃない?さぁどんな価格設定なのか見てやろうじゃない!」
「早いも何も電卓叩くだけなんだが…」
店長とビリーは仲良く肩を竦めているが、知ったこっちゃない。
これが他の店より高かった暁にはこのアタッシュケースを振り回して……
えっほんとに?
「アンタこれ、入力ミスしてるんじゃないわよね?」
「ゆっくりと入力したからミスはないな」
「なんか怪しいくらい安いんですけど!?」
他の店ならちょっと出すのを躊躇うぐらいの金額になるはずだが、その数段安いお手頃価格?
…絶対怪しい!
「アンタどこの組織に繋がってるの?」
「俺はフリーの個人経営だが」
「じゃあ何なのこの価格は!?絶対何か繋がりがあるに決まってるわ!」
「あ、ちゃんと割引価格でーす」
「黙らっしゃい!それじゃあその理由を聞かせてちょうだい!私が納得できるり・ゆ・うを!」
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うーん、まぁこうなるだろうなとは思っていた。
ビリーも横で「スマン!」とジェスチャーで伝えている
。
いやまぁいいんだけどね?別に減る物ではないし、同じ穴のムジナだから喋っても問題無いだろう。
あ、でも死体漁りしてるって思われたら引かれるかな?その時は何とかするか。
「それはだなぁ…」
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一通り説明し終えると、ニコはうーんと頭を抱えていた。
「つまり?アンタもホロウレイダーで死体漁りやジャンク品集めをしていて、それを売ってるから出費はほぼゼロでこの値段価格ってこと?」
「つまりはそういう事だな」
「信っじられない!あんな危険な場所で物集め!?ましてやほぼ丸腰でって…アンタ死にたがりにも程があるわよ!」
「捨てられるんなら使える奴が使った方が有意義だろ?それにジャンク品も直したらコレクターやら収集家には高く売れるからいい商売になる。」
「えっそうなの?」
「まぁさっき言ったのは表側のネット販売の事だから。はいこれURL」
あと死にたがりでは無いという事も伝える。
郊外ではこんな事をしているが、新エリー都では主に機械修理や修理完了した物をネット販売で売り払っている。
たまに物好き連中がオークション形式で勝手に値段を釣り上げてくれるからこちらとしては願ったり叶ったりだ。
「まぁ…値段の事は一旦納得してあげる」
「そいつはどうも、ただ何でも何時でも揃っている訳では無い事を覚えておいてくれ」
「はいはい、わかってるわよ…それはそうとこのサイト、何処かで見覚えあるわね…」
「お!そりゃアンビーがたまに覗いてるサイトじゃないか?」
「あ!そうよそれよ!」
ふむ、知らぬ間に邪兎屋全員とコネができてしまったようだ。
「この前もこっそりテレビ新調してたわね」
「前のよりもちょっと画面が大きくなったよな!」
「これはどうもご贔屓にしていただいてるようで」
「う、そうなるわね…はぁ、分かったわよ。とりあえずこの分の料金よ」
「忘れるところだった、俺の分も会計頼むぜ!」
まいど、とディニーを受け取ったら今日の仕事は終わりだ。さっさと店じまい、と言ってもドアとカギを閉めるだけなのだが。
邪兎屋の2人も帰るらしく、仲良く社用車に乗り込み何処かへ去っていった。
さて、自分も帰るとするか。アキラの店から借りた映画も見なければいけない。
そうだ、どうせ映画を観るんだから酒でも買って帰るか。
コーラもいいが甘い物はあまり好みではない。かといって紅茶やコーヒーも気分では無い。
そうと決まれば早く帰らねば、もちろん安全運転で。
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それから数日後、ある程度品も売り切ってしまったので、どうしたものかと苦悶していた。
品が無ければホロウに潜ればいいのだが、そんな気分では無い。
映画やゲームもちょっと触ってすぐに飽きてしまう。
テレビを見ても十四分街でホロウが拡大しており、近隣のマンションが爆発したとの事しか流れていない。
そういえば邪兎屋の連中はどうしているのだろうか。
まぁ、こんなタイミング良く巻き込まれる方がおかしな話だ。今頃借金と治安局に追われてる頃だろう。
さて、こんな何もやる気が起きない時は友達と駄弁るのが一番の過ごし方だ。
経営中だけど暇してるかなーと思いながらノックノックを開く。
『おはよう。レンタルしてるビデオを返しにいっていいか?』
『おはよう。もちろんいいとも、ぜひ来てくれ。楽しみに待ってるよ。』
うーん、アキラは天性の人誑しなのか?
こんな歯が浮くような事をよくスラスラと…
まぁこのせいでアイツが苦労するなら、それはそれで笑い話にしてやろう。
と、アキラをどういじってやろうか考えていたらいつの間にか店前まで着いていたらしい。
思えばすっかり常連になったと実感する。
映画にはあまり興味がなかったがあの兄妹に熱弁されると、嫌でも興味が湧いてくる。
それで見た映画の感想を言ったら、アレもこれもと勧めてくるのだから困ったものだ。
今日はどんな映画を勧めてくるのかと思いながら店の扉を開く。
「いらっしゃい、カイ。さぁその映画の感想を聞かせておくれ」
「まぁそんな慌てなさんな。そんなに俺と話すのが楽しみだったのか?」
「あぁ、君と話すのはどんな時も楽しいよ」
「はぁ…悪い気はしないが、女性にもそんな口振りなのか?いつか後ろから刺されても知らんぞ?」
「御忠告ありがとう。リンからもよく言われてるから耳にタコができそうだ」
リンちゃんからも言われてるのか…こりゃ本物だな。
アキラにはあえて言わないが、リンからよくノックノックで『お兄ちゃんがまた女の子を〜』と愚痴ってくる俺の身にもなってくれ。なんて返せばいいか分からん。
開店から時間が経っていないのもあるせいか、幸いにも周囲に客はおらず完全に2人だけでだべっていた。
正確には店番をしている…18号(トワ)もいるのだが。
そういえばリンの姿が見えないな、と思っていると荒々しく店の扉が開かれた。
そこにはつい先日会ったばかりのニコが、余程切羽詰まっているのかアキラの肩を掴み揺らしながら話した。
「ニュース見たわよね!?状況は大体一緒!私が当事者だから!だけどビリーとアンビー、それと依頼のターゲットもホロウに落ちた!だから」
「「ちょ、ニコストップ!」」
裏部屋にいたリンも慌てて飛び出してニコの口を塞ごうとするが、従業員の危機が迫っているニコの口は止まらない。
「
…うん?プロキシ?聞き馴染みはあるが、この場に相応しくない単語が聞こえた様な気がする。
ゆっくりとアキラとリンの方を見ると2人仲良く額に手を当てて溜め息を吐いている。
裏部屋の方を見ると、その奥に煌々と光る画面が見え隠れする。それも大量にあるのが光量で伝わってくる
さらにそのドアを開け閉めするボンプである06号(レム)も「ンナ〜(あちゃ〜)」と顔に短い手を当てている。
かなり衝撃的な告白をした張本人であるニコはこの重大性を感じ取れていない様子。
とりあえずニコに事情を聞こうとした矢先
「あ!アンタも居るのなら話が早いわ!アンタも同じホロウレイダーなら助けてちょうだい!」
「お前マジか」
まさかの飛び火である。アキラとリンも目が点になってこちらを見ているのが分かる。
「…カイ?ニコが言っていた事は」
「伝説のプロキシ、
……もう何も言えねぇよ
アキラと目が合い、同時に頷く。
「「ニコ」」
「もっ、もちろん報酬は払うわよ!店長もそうだけど、パエトーンにもツケを一括で返すから!」
「「ニコ、少し黙ろうか」」
その瞬間、ニコはピタリと止まった。それと同時に大量の冷汗を吹き出しているのが分かる。
そしてアキラ、リン、カイの3人はさらに大きく溜め息をついた後
「あ〜、なんだ、改めて自己紹介でもするか?」
「あぁ、その方が良いだろう」
「うん、私も」
01号(イアス)もこの騒動で起きてきたらしい、いつの間にいたのやら。
合計3匹のボンプも同時に「ンナンナ(それが良いよ)」と頷いている。
…はぁ、何と言ったものか
早速タイトル回収。
もっと捻ったタイトルにした方が良かったかなぁ?
まぁ、いいでしょう。
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