アリウスの象徴は今日も死んだ顔で仕事をしている 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ
じゃあ名前無しでいきますね☆
このブラックマーケットとかいう地、かなり資本主義が極まっていた。クッソチョロい先輩に話を聞いて、自分で見て、普通に終わってんなって気持ちになった。
国だとか自治体だとか、そんなもん関係無しに個々の企業が営利目的で幅利かせてやがる。それに伴って実力主義でもある。
まあ、資本主義の時点で実力主義なのは当然なんだが、資本主義が極まりすぎてるせいで実力主義も極まってんだよな。力こそ正義みたいになってる。それは不良達の間でも企業の間でも変わらず。多分ここはスラム街。
敵対してるはずのクソロボットと人間があくどい事して協力してたりするんだぜ?人間もロボットも堕ちれば同じ、ってか?よかったな、ここならクソロボットも人間も共生できるぞ。汚え心が通じ合ってんだな。おお、汚え汚え。
まあ、なんていうか、治安も何もない終わった環境だが俺にとっちゃ都合はいい。実力主義の資本主義、おかげで金も結構貯まった。
金が貯まればすることは一つ。そう、あの時の恩を返しに行くぞ!社会人として、受けた恩は忘れてはならない!待ってろワンちゃん大将!
ブラックマーケットから離れ、どうやらアビドスと言うらしいあの大将の居る地へ足を踏み入れる。今日も屋台やってるかね?やってなかったら出直すしかないからできれば居て欲しいんだけども……。
ついでに飯も食えたら嬉しいねぇ。あのブラックマーケット、ゆっくり飯を食うことすらできない。不良共が騒がしいんじゃボケ!ドンパチしてる頻度がおかしい!
何度巻き込まれたことか。言うほど強くないんだから大人しくしてなさいよ。やはりスラム街、安定した仕事とは縁がなさそうだ。いつかはあそこを出てちゃんとした仕事を探さないとなぁ。どっかにいい仕事落ちてない?シレッとマダム復活してない?
あー、でもマダム見捨てたこと怒るかなぁ。結局言われた仕事達成出来なかったもんなぁ。マダム復活してもちょっと顔合わせづらいかも。
「クックック、これはこれは、随分と見違えましたね」
っ!?こ、この声は!!
「――さん……いえ、今もその名前で活動しているのかは分かりかねますが」
「……久し振り」
お、おじさんだ!大変ご無沙汰しております!
黒服おじさんっていつ見てもスーツビシッとキマってるんだよな!本当にカッケェ……!毎日着てるのにシワ一つないんだぞ!何着あってどれだけ手入れに気を遣っているのか、いつか聞いてみたい!ビジネスマンとして尊敬するぜ!
それに、この人俺のために口座とか用意してくれたし。マダムからのお賃金を手で持っとく訳にもいかなかったからマジで助かった。それに敬語も要らないって言ってくれた優しいおじさん。流石マダムの仕事仲間!懐が広い!
……口座?もちろんスクワッドとの戦闘時にカードを持ってなかったせいで今も持ってないし使えないけど?クソがよ!俺の金が!
「ええ、お久し振りです。それにしても意外でしたよ。貴方がマダムの元から去り、一人生活しているなんて。それこそマダムに身も心も捧げたように思えたのですが……何か心境の変化でも?」
「……」
うぇぇ、なんであの職場を辞めたんですかってこと?確かにマダムの仕事仲間なら気になるか?
……だってマダムボコされてたやん。あそこにいても未来はなかったやん。アレはリスクヘッジなのですよ。決して、決してマダムのことが嫌いになったとかそういった話ではなくてですね。
で、でも、言っていいのか?保身のためにマダムを見捨てて逃げましたとか、マダムの仕事仲間に言っていいのか?くっ、良くしてくれたおじさんにこんなこと言うのは……
「実は心の奥底では解放されたかった、ということですか?それとも別の理由が?」
「……」
「ああ、私相手では答えにくいですか?安心してください、マダムには秘密にしておきますので」
う……でもおじさんに黙ってるのは不義理か……?
「…………から」
「ほう?もう一度申し上げていただいても?」
ええい!どうにでもなれー!
「……マダムが負けたから」
「ク、ククッ、クックック……!!それはそれは、なるほど理に適っていますね。いつまでも敗者に固執する道理などありはしませんから」
……おや?なんか、あんまり気にしてない?むしろ結構好印象?よく正直に話してくれたな、ってコト?それとも社会人としてリスクヘッジは当然だよなって共感してもらえているのか?
分からない。おそらく社会人レベル上位の黒服おじさんの考えは俺なんかでは推測できないのだろう。俺もいつかその域に到達出来るのだろうか。
「貴方は私の思っているより面白い方なのかもしれませんね。……ふむ、今度は私の元で働く気はありませんか?」
「……仕事?」
むむ!仕事のかほり!おじさんの元で働けるということですか!?ワタクシめを働かせてくださるということですか!?
「ええ、貴方の持つ膨大な神秘を私の研究に役立てるつもりはありませんか?」
け、研究……?神秘……?わ、分かんね……何言ってんのか分かんね……そういえばおじさん研究職だったわ。
……。
うん、無理だ!俺にはおじさんの足を引っ張る未来しか見えない!研究ってすごいお金が動いてるんだろ!?資金とかヤバいんだろ!?ここは断腸の思いで拒否させてもらう!
なんかやらかして罰金とかシャレにならん!世話になった人に迷惑はかけられねぇ!
「……いい」
「ほう、私では貴方のお眼鏡に適いませんでしたか。それは残念です。ではこのお話はまた、次の機会に」
申し訳ない……非常に申し訳ない……肉体労働とか書類仕事ならいつでも手伝いますから……雑用なら出来ますから……。
「世間話もこの辺りにしておきましょうか。さて、貴方の門出を祝い、素晴らしいモノを差し上げましょう」
おぉ、懐からスッと取り出す仕草もイケてるねぇ!やっぱピシッとキマってる人は動作もカッコいいんだよなぁ!でもなにそれ、カード?
……ま、まさか!!
「貴方の新しい口座です」
ウオォォォォォ!!!!流石は黒服おじさん!!俺の一番欲しているものをピンポイントで持ってくるその気遣い!!仕事を断ったというのにソレを与えてくれる寛大さ!!イケオジ!!やはり黒服さんはイケオジだった!!
「流石に以前のモノを回収して使い続けるのはどこかで足が付いてしまうかもしれませんからね。嗅ぎ回っている者もいるようですし。ゼロからとなってしまいますが、無いよりはいいでしょう?」
「……ありがとう」
「いえいえ、私と貴方の仲ですから――「どうして黒服がここにいるのかな」
わぁ、なんかすっごい圧のある声……というか誰?ピンクちゃんが銃口を向けているんですけど。目とか怖いよ。初対面の人に銃口を向けるのがこの世界の挨拶なのかな?
「おやおや、こちらもお久し振りですね小鳥遊ホシノさん」
へえ、小鳥遊ホシノって言うんだ。おじさんの知り合い?この子も俺みたいな感じ?にしてはちょっと血の気が多い気もするが。なんか人違いでもしてるんじゃね?
「そこで何をしていたのかな?君も、見たことない気がするんだけどな〜」
ちょっと間延びした口調のくせに銃口はしっかりと向けてきやがる。なんだコイツ、サイコか?おじさん、この子ヤバいって。排他的な人間だって。関わるの危ない感じだろ。いつ暴れてもおかしくない精神してるぞ、見れば分かる。
「顔見知りを見かけたもので、ついつい話し込んでしまいました」
「へぇ……」
なんか圧強くなってない!?あっ、今カチャッて音した!おじさん!絶対逃げたほうがいいって!こういう子は容赦なく引き金を引くぞ!おじさん!
……おじさん?
あれ?おじさんどこ行った?
「ちょっと君には色々聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
まさか逃げた?いや、逃げたほうがいいとは思ったけどさ、思ったけどさ!
「さっき何を手渡されていたのかと、ここで何をしようとしていたのかを。場合によっては少し痛い目を見てもらうけどね」
せめて俺も一緒に連れて行って欲しかったかなって!それか逃げる時に一声かけてほしかったかなって!標的がコッチに移ってるんですけど!?このピンクサイコ野郎め!銃を下ろせ!それが人と話す態度か!
で、でも正直に言うのは違うよな!?仕事の話とかは外部にしたら駄目だし、変なこと言っておじさんの考えと違うんですけどみたいなすれ違いが起きるのも良くないよな!?
な、なんとか穏便に話を終わらせなくては!
「だんまりかな?私もあんまり待ってあげられないんだけど」
「……私は、貴方の敵じゃない」
知ってるぞ!こういう子はこれまでや現在の環境のせいで周りの全てが自分を害する存在に見えているんだ!そういう子なんだ!寄り添う姿勢というのは非常に重要!敵ではないと伝えながらこの子の警戒心を少しでも解く!
それで少しでも凶暴性を抑えてくれれば……
「……なにそれ」
What……?
「今更、そんなのを信じろって?黒服と一緒に居た、お前の言葉を?」
「……!!」
マズい!!失敗した――バァンッッ!!
「……よく避けたね。黒服と組んでるだけあるか」
ヤッベェ!!マジでヤッベェ!!コイツはヤバい!!ノータイムで顔面狙って来やがった!!屈むのが遅かったら直撃だぞ!!顔ってのは仕事に影響するんだぞボケナス!!考えろクソガキ!!
クソがッ!!こんなキチゲ解放クソガキに付き合ってられるか!!俺は逃げるぞ!!
「逃がすと思ってるの?」
あーー!!追ってこないでくださいーー!!誰か助けてーー!!おじさーん!!マダムー!!助けてー!!
おい!なんだよあのクソガキ!どれだけ走っても追いついて来やがるんですけど!?俺の自慢のフィジカルに迫る程のフィジカルを持っているというのか!?あの厄介クソガキが!?神はなんて奴に力を与えたんだ!!
ダァンッダァンッ!!
「ッ……くッ……」
「チッ、躱したりポイントをずらしたり……面倒くさいなぁもう」
面倒なのはコッチなんですけど!?クソガキの弾の威力ヤベェんだよ!!衝撃を逸らしてんのにメッチャ痛えんだって!!俺はこんなことをしに来たわけじゃねぇのに!!
くっ、無理だ!!このクソガキを相手に容易に撒くことは出来ない!!かといってクソガキと正面から戦うのはもっと嫌だ!!絶対強いもんコイツ!!無駄に体力と弾持ってかれるクセに勝利報酬も無い!!逃げ一択!!なんとかしねぇと!!
「なんで反撃してこないのかは知らないけどさ、早く諦めてくれると助かるんだけどな!」
ダァンッ!!
っぶな!!テメェマジでフザケンナや!!走り回ってんのに正確に狙い撃ってくんなや!!ショットガンだろそれ!!エイムどうなってんだよ!!
……よし、社会人必須のアイテム「メモ帳」と「ペン」はちゃんと持ってるな。ここだ!!食らえクソガキ!!音響閃光弾じゃァ!!
「なっ!?」
よしよし!!反撃は無いと思ったか馬鹿め!!ついでにスモークグレネードもくれてやる!!そんで足音を消して全速前進!!えーっと、メモ帳とペン!!あと財布!!急げ!!
「さてと、そろそろお昼時だな」
開店時間も間もなくという頃、柴関ラーメンの店主は屋台を開け、食器や食材を揃えていた。今日は誰か来るだろうか。会社員共か、それともアビドスの生徒達か。
屋台となったことで以前より客との会話が増えた。店が無くなったことを知った客は、それでも食べに来てくれる。応援してくれる。細々と続けていくのも良いものかもしれない。
まだ誰も客はいない。
屋台の裏へ回り、咥えていたキセルを手に取って灰を落とし、刻みたばこを軽く丸めて詰める。そして火を付けようとした瞬間、大将の頬を風が撫でた。
「……ん?」
思わず顔を上げるが、辺りは何も変わらない。風が吹いただけか、屋台の正面へ顔を覗かせても屋台に付けてある暖簾が僅かに靡いているだけであった。
「さっきまで風も何も吹いてなかったんだがなあ」
ふと視線を手元のキセルに戻そうとした大将の視界に、何かが映った。違和感を覚え、客が食事に使う台へ視線を向けると、そこには1枚の紙と幾らかの金銭が調味料を重しとして置かれていた。
「これは……」
「はぁ、はぁ……大将!今怪しい奴通らなかった!?」
「いや、見てないなぁ。ご覧のようにお客さんも居なくてね」
「……そっか」
「どうしたんだい?ホシノちゃんがそんなにムキになるなんて……」
「あー、あはは、なんでもないよ。ちょっとね」
(……嬢ちゃん、いったいなにがあったんだ?)
急いでいたのか、感謝の言葉が殴り書きで書き綴られたソレを、大将が誰かに話すことはなかったとさ。
屋台の裏に行っていなければ会えたのにね、大将。
ここにホシノと社畜のチェイスの様子をニコニコで観察している黒服おじさんをひとつまみ……。