アリウスの象徴は今日も死んだ顔で仕事をしている   作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ

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フリーター?結局何やってるの?仕事しなよ。って言われるオチ。


無職とフリーターって、世間の目は言うほど変わらないよね

職を失ってから2日が経った。安定した仕事を求めて色々調べてはいるが、なんだかいけそうな雰囲気が無い。なぜ高卒じゃないといけないんだ!こちとら中卒の証明もできねぇんだぞ!ふざけんな!

 

安定した仕事は結構厳しいことが分かったから、今はブラックマーケットってとこでフリーターやってる。ちょこちょこ仕事して日銭を稼いで今を生きてるぜ。肉体労働なら任せろ!

 

もちろん今日も仕事。よく分からん警備の仕事。でも警備って基本突っ立ってるだけだし、何かあっても敵は弱いしでめちゃくちゃ楽なんだよな。こんなので金貰っていいの……?まあ、やるからにはしっかりとやらせてもらうが。

 

「おう、お前今日も来たのか」

 

「……どうも」

 

「よせよ、昨日一緒に仕事した仲じゃねえか」

 

この人またいるのか。昨日も仕事被ったんだよな。俺が職無しフリーターであることを察してかそういうのは触れないでくれるし、結構いいヤツ。見た目は明らかに不良だけど。バツ印のマスクってどこに売ってんの?

 

「それにしても、お前マスク買ったんだな」

 

「……一応」

 

「なんだァ?アタシの見て着けたくなったか?」

 

ポニテのへそ出し足出しの少女がヘラヘラと笑って自身のマスクを指差している。目が怖い。でも様になってるというかなんというか。

 

それに、この人の言ってること正解なんだよね。警備とかパワーでゴリ押しするし、取り押さえた奴からの逆恨みも面倒だから顔隠すのは大事かなって。バツ印のやつは見当たらなかったから真っ黒のマスクだけど。

 

「……うん」

 

「おっ、おう、そうか」

 

それにしても……暇だ。いいのか、仕事ってこんなので。

 

……。

 

……いや、待てよ?この人は明らかに俺よりもこの場所に慣れてやがる。つまり、仕事やら何やら色々知っているのでは!?こんな所で2日連続この人と仕事が被ったのは運命!?このチャンスを逃す俺ではない!!仕事への嗅覚舐めんな!!

 

「……先輩」

 

「は?……え?せ、先輩?アタシが!?」

 

「……私は、ここに来たばかり。だから、先輩」

 

「そっ、そう考えたらそうかもな。へへ、先輩には気を遣えよ?」

 

うーん、簡単に調子乗るなこの人……大丈夫か?簡単に騙されそう。まあ、その方が楽だけども。お仕事にはおべっかも大切なんだぜ。

 

「……先輩、この場所のこと色々教えて欲しい」

 

「ヘェ……?ここは有名だぜ?いくら来たばかりとはいえ、色々知ってるもんだと思うが」

 

ふむ、ここは有名な場所なのか。俺の生息範囲外なので知らないですね。だが、そのせいで怪しまれている……?よし、頼れる先輩助けて〜作戦だ!

 

「……知ってる。でも、実際にここに居る人から話を聞きたい。カッコいい先輩から話が聞きたい」

 

「へー……ふーん……」

 

なんか嬉しそう。あと一押しだな。お願いするときはしっかりと目と目を合わせるのがポイント。

 

「……カッコよくてカワイイ先輩、困ってる後輩を助けると思って」

 

「……そんなに言うならしょうがねえなぁ。どうせ警備なんて暇な時間も多いし、このカッコよくてカワイイ先輩がいろいろ教えてやるよ」

 

チョロ。将来営業にカモられそうなんですけど。ちょっと心配になってきたぞ。大丈夫?不良みたいな見た目してるのにこんなチョロくていいの?

 

 

 

 

 


 

 

 

 

もう2日だ。あの子の足取りが掴めないまま、2日。スクワッドのみんなは今も様々な場所を駆け回って情報を集めているが、成果はない。私もアロナに頼んで様々なデータベースからあの子の情報を探してもらいつつ、空いた時間で探している。が、これも成果はない。

 

"はぁ……どこにいるんだ……"

 

一度しか顔を合わせていない。たった一度、ほんの少しだけ戦ったあの時。それでも、あの子の在り方は、立ち姿は、どこか浮世離れした雰囲気を感じた。

 

凛とした立ち姿、けれどその表情はピクリとも動かない。まるでロボットのような、諦念したような……少なくとも学生がする表情では無かった。事件当時、スクワッドとして私たちと敵対していたサオリの冷酷な表情とも違う。

 

分からない。ベアトリーチェの命令で私達の足止めに来たはずだ。なら、なぜ私達を追いかけて来なかったんだ。なぜあの場から去ったんだ。なぜ……

 

『あ、その子なら多分見たよ。私とみんなが別れた後、ピアノを見つけてさ。つい、ピアノに手を伸ばしちゃったんだ。そうしたらいつの間にか服が少し傷ついてる女の子が部屋の入口に立ってて、目が合ったんだよ』

 

『……え?うーん、多分その子かな?特徴は同じかも。それでね、敵がまだ残ってたのかって思ったけど、その子は私を置いてどこかに行っちゃった』

 

『その時の私、本当にボロボロだったんだよ?それなのに見逃されちゃったから、私も少し気になってたんだ。あの子は何者だったんだろうって』

 

……ミカの所には行っていた。恐らく、ピアノの音が聞こえたから。命令で?いや、違うはず。あの子は私達を止めるために立ちはだかった。なら、ただの興味本位?

 

トリニティのティーパーティー、しかも今回の事件に深く関わっているミカのことは知っていたはずだ。なら、ミカと分かった上で見逃した?

 

 

あの時点であの子はミカを、私達を本気で止めようとはしていなかった?

 

 

「先生」

 

"っ……あ、あぁ、サオリか"

 

いつの間にかスクワッドのみんながシャーレに集まっていた。思考に集中しすぎて来ていたことに気付かなかったらしい。

 

"どうだった?"

 

どう、というのは勿論あの子のことだ。だが、みんなの表情を見れば聞かなくても結果は分かる。

 

「いや、今日も駄目だった」

 

「どこにも居ない。アイツ、痕跡を何も残さないように移動してる」

 

「さ、流石です……私達じゃ敵いません……えへへ……」

 

「……あんまり喜べる場面じゃないと思う」

 

"あ、あはは……追手の方は大丈夫?"

 

「ああ、毎回撒いてからシャーレに来るようにしている。これ以上迷惑はかけられないからな」

 

気にしなくていいのに。まあ、そんなこと言っても聞かないだろうけど。それにしても、2日かけて本当になんの情報も掴めないなんて。わずかにだけどみんなの士気も下がり始めている。なにか進展があるといいんだけど……

 

『先生、お待たせしました』

 

っ!!アロナ!!ナイスタイミングだ!!

 

『先生、私は2日間かけてキヴォトス中の様々なデータベースを探り、普段入れないようなところもちょちょっと特別な力を使って探ってきました』

 

……それ、大丈夫なの?

 

『……つまり、キヴォトス中のほぼ全ての閲覧できるデータは見尽くした、ということです』

 

あ、うん。

 

『ですが先生、重要なのはここからです』

 

『私が2日かけて分かったことは、'――'なんて生徒さんは存在しないということです』

 

え……?

 

『どこを探しても、先生の探している生徒さんの情報は見つかりませんでした』

 

"そっ、そんなっ、そんな馬鹿なっ!?"

 

思わず立ち上がり、シッテムの箱を両手で掴んで顔を近付ける。

 

アロナが見つけられないなんて、そんなことがあるはずがない!だって、キヴォトス中のデータを見たんだろう!?少し危ない手法を使ってでも調べてくれたんだろう!?それなのに、見つけられないなんてことがあるはずが……。

 

だが、視界に映るアロナの顔は申し訳なさそうな、気の毒そうな表情のままで……

 

「先生!?どうした!?」

 

「先生?」

 

『産まれた時に登録されて存在するはずの個人情報も、学校への在籍記録も見ましたが……この世界に産まれたという記録も、アリウスで育ったという記録も……その生徒さんがこの世界で生きてきたという記録はこのキヴォトスに一つも存在していませんでした』

 

"なっ……なんてことだ……"

 

隠蔽……?改竄……?それとも、最初から……?

 

……ありえない。いや、ありえてはならない。

 

本当に、何も無いのか?あの子が居たという証明が、あの子があの子である証明が。もしあのままだったら、ただベアトリーチェの駒として生きて、何も残らず死んでいくだけの人生だったとでも言うのか?

 

そんなの、そんなのって……。

 

……。

 

誰だ……?

 

誰が、誰がこんなことをした!?人の人生をなんだと思っている!?こんなの人に対する扱いではない!!都合のいい人形だとでも!?居なくなっても誰も気付けない!!最初からいないのと同じじゃないか!!

 

……こんなことならあのとき、あのときベアトリーチェを――「先生っ!!」

 

"はッ……!?さ、サオリ……?"

 

気付けば、私の肩にはサオリの手が置かれていた。その顔はひどく真剣で、私の目をジッと見つめてくる。思わず視線をサオリから外すと、サオリの後ろからスクワッドの三人が同じく真剣な眼差しで私を見つめていた。

 

「先生」

 

"……っ!!"

 

「今の先生はまるで、この間までの私を見ているようだ」

 

心配の色を織り交ぜたサオリの言葉に、急速に頭が冷えていく。どうやら周りが見えていなかったらしい。一度深呼吸をして、肩の力を抜いた。ふと手元を見ると、アロナも心配そうにこちらを見上げていた。

 

"……ごめん、心配かけさせちゃったかな"

 

「そんなの、今に始まったことじゃない」

 

"は、はは、手厳しいな"

 

「生身でアリウス自治区に突っ込んでくるんだから妥当でしょ。それで、何を知ったの?先生がそんなになるとかよっぽどの事があったんじゃないの?」

 

ミサキの言葉に、思わず体が硬直した。

 

みんなは、知っているのだろうか。あの子の置かれた状況を、あの子の扱いを。いや、知らないはずだ。個人情報の登録状況や在籍記録なんて本人すら知っているかも怪しいのに、みんなが知っているわけがない。

 

……伝えてもいいのか?余計な情報でみんなの心に傷を負わせることにならないか?

 

"……"

 

分からない。

 

先生として、こんな惨いことは知るべきではないと思っている。汚い大人の付けた汚い傷跡は、あまりにもあんまりだ。一人の人生を、ただの駒として、記録にも残らない都合のいい捨て駒として……。

 

でも一人の人間として、私としては、あの子と共に過ごしてきた過去を持つみんなはこれを知っておくべきだとも思ってしまう。たとえそれがみんなの心に傷を負わせたとしても。何も知らないより、後から、本当に取り返しのつかないことになってから後悔するよりも、知っていた方が……そう思ってしまうのは、私のわがままなのだろうか。

 

そのくせ、ようやく前を向くことが出来たみんなに、歩き出したみんなに水を差すようなことはしたくないなんて……そう思ってしまうのは、余計なお節介なのだろうか。

 

「大丈夫」

 

"アツコ……?"

 

「私達なら、大丈夫。だから、あの子のことを教えて」

 

そう言われてしまえば、既に揺らいでいた私の心は簡単に傾いてしまった。喉元まで来ていた言葉は、そのまま吐き出されていく。

 

"……あの子に関する記録は、一つも見つけられなかった"

 

「……そう」

 

先程の私の反応である程度察していたのだろう。四人の反応はない。ただ、次の言葉を続けると四人の表情が変わった。

 

"個人情報も、アリウスへの在籍記録も、何一つ……"

 

「……なんだと?」

 

「アリウスへの在籍記録がない?そんなわけない。だって、私達は実際に……」

 

サオリとミサキの視線に私は首を横に振るしかない。

 

「じゃ、じゃあ……それって、そ、そういうこと、ですか……?そんな……ひ、姫ちゃん……」

 

「……うん、一緒に居たから勘違いしていたのかもしれない。あの子は、そもそもアリウス生じゃなかった。……私たちが知っている名前が本当の名前かも分からない。もはや、何処の誰でもないのかもしれない」

 

そうして、沈黙が訪れた。息を吸うことすらままならない、何も言葉にできない沈黙が。水の中にいるようなもどかしさを抱え、体を動かすことすら難しい。事実、ガスマスクを着けたアツコは確認できないが、アツコ以外の三人の表情は苦虫を噛み潰したように歪んでいる。

 

「……ありえない」

 

「リーダー……?」

 

「そんな馬鹿な話が……なら、どうしてアリウスに……」

 

片手で頭を押さえ、心の中で抑えきれない感情は言葉となってポツリポツリと紡がれていく。そんなサオリを見ていたアツコは、冷静に言葉を投げかけた。

 

「サっちゃん、あの子と知り合ったのはいつ?」

 

「いつって……同じチームになったときだ。私達と、アズサと、まだスクワッドができる前に」

 

「じゃあ、あの子を知ったのはいつ?二人はどう?」

 

そうして、アツコは横で聞いていた二人にも問いかける。サオリもミサキもヒヨリも、アツコの言葉に記憶を思い返しているようだった。

 

「なぜそんなことを……」

 

「アイツを知った日?」

 

「……あ、お、覚えてます。わ、私達がチームになる少し前です。すごい人がいるって話題になって……それで、その人が同じチームになるんだって、思って……」

 

「……私もそうだ」

 

「私も。でも、急にどうしたの?」

 

「うん、私も同じ。その時まであの子のことは知らなかった。……あの時、あそこまで話題になるような人だったのに、名前や顔も、何も知らなかった」

 

言外に「おかしいだろう」と訴える。それは、その状況の異常さは、私でも分かる。アリウスは閉鎖的空間だ。さらに自治区も栄えておらず、土地があろうと人が生活するのは限られた範囲のみ。なら、そんなコミュニティで有名になるような子を、どうして前からアリウスにいた四人が知らなかったのか。まるで、突然現れたかのような……。

 

「あの頃は何も疑問に思わなかったけど、あの子のマダムへの忠誠は、今考えると正直異様だった。外に憎悪を向けることはあれど、あそこまでマダム本人に忠実な人は見たことが無い」

 

「……何が言いたい」

 

「もしかしたら、本当にもしかしたらだけど……あの子が幼い頃、孤児かなにかで個人を特定できるような情報を持たないあの子に目を付けたマダムが、裏で自分に都合のいいようにあの子を「やめてくれ」……サっちゃん」

 

「それ以上、言うな。それ以上……」

 

サオリの頭を押さえていた手は震え、頭に爪が食い込みそうなほど力が込められていた。サオリだけではない。ミサキは嫌悪感を前面に押し出した表情で目を逸らし、ヒヨリは背負った荷物の肩紐を強く握りしめながら今にも泣きだしてしまいそうである。かくいう私も、胸の内で暴れまわる激情を表に出さないようにこらえることで精いっぱいだった。

 

「そ、そんな……なんであの人が……なんであの人じゃないといけなかったんですか……うぁ、あ……」

 

「……」

 

洗脳か、それとも調教か。少なくともまともな扱いはされていなかっただろう。実はすべてが違くて問題なんてなかったかもしれないなんてそんな希望的観測は、あの子の在り方とピクリとも動かない表情、死んだような瞳が否定してくる。

 

でも、部外者である私には正確なところは何も分からない。それでも確実に言えるのは、あの子は必ず救わなくてはならないということだ。

 

"……みんな辛いかもしれないけど、聞かせてほしい。あの子を救うために、あの子の話を"




ぽっと出の存在に個人情報なんてあるわけないだろ。マダムがわざわざ途中参加で外からやってきた都合のいい駒にアリウスへの編入手続きとかやるわけないだろ。
コイツ、この世界じゃ中卒どころかホイ卒ですらありません。正規の仕事なんて絶対無理だね。


ちなみに、一向に社畜の名前が決まらないせいで「あの子」とかでなんとか誤魔化しています。イメージ像が固まらないんですよね。
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