新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
照ちゃん可愛いやったー
野菜がたくさん入った買い物袋を両手に、『あなた』は自宅へと向かって帰路を歩いています。
今日は運良く新鮮なにんじんが手に入ったため、にんじんを使った料理がいいだろうと、頭の中でいくつもの献立を思い浮かべていました。
カレーや肉じゃが、野菜炒め、きんぴらごぼう。
次々と案が浮かんでは消えていきましたが、やがて『あなた』の中でひとつの答えに辿り着きます。
やはり、あれしかない、と。
そんなとき、背後から『あなた』を呼ぶ、聞き慣れた明るい声が聞こえてきました。
「やっほー、お疲れ様!」
振り返ると、そこに立っていたのは『照』でした。
TOPSの監査組織『クランプスの黒枝』に所属する、“常勝不敗”の異名を持つウサギのシリオンの女性です。
可愛らしい外見とは裏腹に、底知れない実力と冷酷さを秘めており、彼女を恐れる者は決して少なくありません。
しかし、『あなた』にとっての照は、そうした存在ではありませんでした。
なぜなら、照は『あなた』の恋人なのですから。
「あー! これって、今話題になってるにんじん!? ザオちゃんのために買ってきてくれたの!?」
照は買い物袋へ視線を向けると、宝物を見つけたかのように目を輝かせ、『あなた』を見つめてきました。
その視線があまりにも素直で、『あなた』は思わず優しく微笑み、ゆっくりと頷きます。
次の瞬間、照は年相応の花が咲いたような笑顔を浮かべ、『あなた』に勢いよく抱きついてきました。
「やったー! ありがとね!」
その無邪気な喜び方に、『あなた』は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じます。
もっとその笑顔を見ていたくなり、『あなた』は照に、今日の晩ご飯は何がいいかと尋ねました。
「晩御飯? うーん……ザオちゃんは、キミが作ってくれるものなら何でもいいんだけど……」
照は少し考え込むような仕草を見せつつ、どこか言いたげな表情で、ちらちらと『あなた』を窺っています。
本当は食べたいものがあるのでしょう。
しかし、それを口にするのが少し恥ずかしいようでした。
その気持ちを察した『あなた』は、穏やかな笑みを向けながら、先ほど心に決めた料理を提案しました。
「えっ? また特製のサラダを作ってくれるの? それも、にんじんスティック入りの? ざ、ザオちゃん的には嬉しいんだけど……キミは嫌じゃないの? 昨日も一昨日もそれだったし……」
照の瞳は一瞬きらめきましたが、すぐに申し訳なさそうに揺れます。
それを見て、『あなた』は首を横に振り、問題ないことを伝えました。
「ほ、本当? ザオちゃんに合わせて無理してるとかじゃなくて?」
無理などしていない。
むしろ自分も好きなのだと正直に伝えると、照は目を見開き、驚いた表情を浮かべました。
「す、好き!? そ、そっか……それなら、それでお願いしようかなーって……」
照は顔を赤く染め、慌てたように視線を逸らします。
その仕草があまりにも愛おしく、『あなた』は迷うことなく、自分の想いを言葉にしました。
「“もっと好きなのは、照と一緒にいること”?……うーーーー!! も、もうっ!!
どうしてキミは、そんな恥ずかしいことを平気で言えるのっ!?」
顔を真っ赤にした照は、照れ隠しのように『あなた』をぽかぽかと叩いてきます。
その様子が可笑しく、また嬉しくて、『あなた』の口元には自然と笑みが溢れました。
やがて照は、顔を『あなた』のお腹に埋め、小さな声でぼそりと呟きます。
「ざ、ザオちゃんも……き、キミのことが……大好き……だよ……?」
上目遣いでこちらを見上げる照があまりにも愛おしく、『あなた』はそっと彼女のおでこにキスをしました。
照は「えへへ」と小さく笑い、キスをされた場所に手を当てます。
そして、どこか満足そうな表情を浮かべると、『あなた』の持っていた買い物袋を手に取り、空いているもう片方の手を差し出しました。
「はい、ザオちゃんが持ってあげる! だから、ね? 『等価交換』だよ?」
『あなた』は、差し出された手を優しく握り返しました。
照の小さな指が絡み、ぎゅっと力を込めてくるのを感じます。
その温もりがあるだけで、不思議と今日一日の疲れがほどけていきました。
買い物袋を揺らしながら、二人は並んで歩き出しました。
どんなに辛く厳しい世界でも、帰る家があり、そばにいてくれる人がいる。
それだけで、この世界は十分に優しいのだと『あなた』は思いながら、照と共に歩みを進めていくのでした。
感想・高評価・お気に入り登録お待ちしております。
モチベーションに繋がります。
また、『あのキャラの話を書いてほしい』等のリクエストがありましたら活動報告にコメントくれると嬉しいです。
本当は感想欄に書いて欲しいんですけど、ハーメルンの規約的にNGっぽいので……。
よろしくお願いします。