ロドスとレユニオンの両陣営を高速で反復横跳びする一般9級フィクサー()の奮闘劇   作:名も無き悪魔の執筆家

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お疲れ様です〜
お久しぶりの方はお久しぶり。初めましての方は初めまして
名無しさんでございます。
長らく執筆ができなかったのですが、なんとか時間を確保して書くことができました
これからはもうちょっと早く投稿できるようにします!




 【ロドス・アイランド号】。製薬会社ロドス・アイランドの本拠地であり、一連の業務をすべて行う場所だ。

 居住スペースに、発電所、貿易所に作戦室など、この場所だけすべてが完結する移動型拠点。

 普段であれば落ち着いているはずの艦内だが、今日は一段と騒がしい。それもそのはず、現在ロドスはチェルノボーグにおいてドクターの救出作戦を行っており、今はその救出部隊が帰還したところなのである。

 作戦自体は成功した。ドクターの救出には成功し、レユニオンや天災の脅威を押しのけ、無事に帰還することができた。

 

_____もっとも、多くの犠牲を払うことになったが

 

 今回の作戦で多くの人命が失われた。そのほとんどは寄せ集めの一般オペレーター。エリートオペレーターのような、巨額の大金や複雑な契約も無く、他の企業の役職者というわけでもない。

 武術の才も、天才的な頭脳も、圧倒的な適応力も、戦場を視る戦術眼も、超人的な身体能力も、あらゆるものを跳ね除ける精神力も.......そのどれもが途中で止まってしまった凡才たち。

 だが、そんな彼らでも一様に生命であり、ロドスの職員である。故に、彼らを悲しまない者はいなかった。

 ロドス内で行われた集団葬では多くの人が参列した。形だけでも行わなければ、士気に大きく影響すると判断したのだろう、簡易的にひっそりと行われた。

 戦死者の顔写真と、思い出の品が納められたその場所に、中でも一際大きく多くの人が集まったそこには『Ace』とだけ掘られている。多くの人が、彼の墓の前で敬礼するその姿から、彼がどれだけ愛されているのかがわかるだろう。

 

 だが、墓の中は『何もない』

 

 Aceだけでなく、他の墓もそうである。激しい戦場と苛烈な環境の前に、彼らの生きた印を持ち帰って来れるものはいなかったのだろう。彼らに残っているものなど、もうこの世にありはしないのだ。何も入っていない空っぽな箱の前で、生者が死者へ祈りを紡ぐなんて皮肉この上ないではないだろうか?

 

 どちらの声も、もう届きはしないというのに

 

 だが、それでも続けるのだ。悼み、哀しみ、祈り、願い、継ぐ。人が人であるが故に行われた哀悼の儀。自己満足であり、ただのエゴであると分かっていながらも、それを止める事は出来ない。人が人であるが故に。

 

 

 その様子をドクターはただ一人、感情の消えた冷たい目で観ていた。

 

 

 


 

 

 

 

その後の動きは速かった。ドクターの帰還により、ロドス内の士気は保たれ、次の目標も明確だった。

 次の目標は龍門。暴徒と化したレユニオンに対処するため、次に狙われる可能性のある龍門と協力しようと考えていた。龍門とロドスで1()1()()()()()()を通して契約を結び、龍門へ足を向かわせるドクターたち。

 道中レユニオンや、奇怪な姿をした生き物たちを対処しつつ龍門に着けば、そこにはそびえ立つ壁。重厚な装備を身につけた近衛局の職員たちが検問を行なっている。

 龍門は炎国の一部の都市である。ウェイ・イェンウによって統治された、広く発展した経済都市である。

 検問所の前までたどり着いたドクターたちは、近衛局特別督察隊隊長であるチェンに案内され、ウェイの元へ向かう。

 慎重に行われた交渉の末、ある条件のもと、協力が認められることになった。現在はその条件である合同任務のために、スラム街へと向かっているところだ。

 龍門の中央部は発展した都市が広がっているのだが、少し離れれば寂れたスラム街が点在している。そこにいるのは貧困者や感染者ばかり。

 隠そうにも隠すことのできない、はっきりと視覚できる貧富の差は、言ってしまえばこの世界では当たり前に見られるものである。

 スラムにて少女の目撃情報が上がっていることから、少女が感染者か、それに準ずる扱いを受けていることは自ずと導かれていく。

 現に、今回の合同任務の内容は、『ミーシャ』というウルサスの少女を保護することが目的だからである。

 とはいえこちらはそれ以外の情報は何も知らされていない、目的も、意図も、少女の身辺情報も、近衛局が把握している情報も渡されておらず、こちら側に情報が足りない。龍門自体に来ることもないので、スラムの地形すら把握していないので、捜索するにはあまりにも不利である。

 ので、こういう時はその手の専門家を頼るのが得策だろう。幸い、龍門にはこの手の状況にぴったりな「事務所」がある。今回は彼らと共に行動するため、今は合流地点へ向かっているところである。

 

「なるほどな?事情はわかった........だけどさぁ.................」

 

____これ俺いる?

 

 ドクター一行の後ろを歩きながら、疲れが見える顔でそういったローランが、疑問と不満半分といった声で言っている。

 事情は聞いた。状況もある程度把握している。ゆえに今回は俺の出番がないと思うのだが、どうやらそうではないらしい。

 

「本来は『ペンギン急便』の皆様に頼むつもりだったんですが...........」

「私の判断よ」

 と、前を歩いているドクターが言う

 

「なんとも優秀な情報屋がいると聞いたから、実力を見てみようと思ったのよ。個人的に興味が湧いたのもあるわ」

「あのドクター様が私めになど興味を持つなんて何たる幸せでしょうか。ですが私めは一介のフィクサーでござますのでお期待に沿うことはできません

誠残念ではございますが、今回の依頼は無かったことに..........」

「適当なことを言って無かったことにしようとしてるみたいだけれど、契約書のことを忘れたのかしら?しっかりとあなたの名義の下でサインされた書類があるのだけれど?」

 

 流石に知ってたか。俺がこうやってロドスから定期的に依頼を受けるのは、毎月更新型の契約を結んでいるからだ。月に何回か依頼をこなすことで月末に依頼達成回数に応じた報酬が振り込まれる。

 向こうは低価格でお抱えの情報屋を確保できる。こっちは毎月一定の収入を得ることができる。お互いにとってWIN-WINの契約だ。........こっちに拒否権がないこと以外はな!!

 燃やさないと現れないインク使って契約書書くとか酷すぎないか?

 

「俺に拒否権はないってわけか........全く、相変わらずいい性格してるよ」

「この世界で生きていくなら、如何にして人を利用するかを考えるのが基本じゃないかしら?」

「相変わらずこの都市に染まりきってるようで安心したよ。さすがドクター様」

 

 ここ(テラ)で生きていくなら、人間の感情........とりわけ復讐の連鎖に巻き込まれないことだ。ここではありふれた悲劇なんざ無数にあるが、悲劇の張本人が易々とそれを受け入れられるとは限らない

テラの大地を破壊し尽くす勢いで怒り狂う可能性もあるわけだ。まぁ、そんなことができるやつはそういないがな

 

「それで、俺はどうすれば良いんですかね?

まっさか、か弱い9級フィクサーに護衛なんて頼まないだろうし、雑用なんかでこき使われるんだろうなぁ〜!」

「貴方には私たちと一緒に行動して、対象の捜索をしてもらうわ。護衛はしなくてもいいけど、自衛はしなさい。もちろん、そのついでに色々と調べてもらうけれど」

「.........聞き間違いか?ド底辺9級フィクサーに頼むべきじゃないし、到底できるはずのない依頼内容が聞こえた気がするんだが?」

「安心しなさい、聞き間違いでも、幻聴でも空耳でもないわ。今言ったことそのままが今回の依頼内容よ」

「........嘘だろ?」

 

 おいおいマジか。完全に俺が担うような案件じゃない気がするんだが.......

 もしくは怪しまれてるか?あの仮面がある以上、俺の正体がバレることはないだろうが、タイミングなんかで怪しまれている可能性もある。

 ............下手なことはできないな

 

「巻き込んでしまいごめんなさいローランさん。申し訳ないのですが........私たちロドスに協力してもらえませんか?」

「まぁ、もとより受けた依頼をこなすのがフィクサーだ。もちろん協力させてもらうさ...........ただ、報酬はいつもより上乗せしてもうぞ。明らか俺の業務範囲外だ」

 

 元々俺は情報戦専門だからな......体動かすのは『赤い霧』とか『紫の涙』とか『青いキチg....残響』とかの役目だ。俺は裏でコソコソやってるだけでいい

 

 

 

 


 

 

 

 人気の少ないスラムの通り。光で遮られたその場所に、一人の少女が駆け出していた。背後には少女を追うスラムの住人たち......いや、暴徒と呼ぶのが正しいだろう。彼らは一心不乱に少女のことを探している。

 なぜかこちらを追ってくる彼らから子供達を逃し、スラムを走る少女である『ミーシャ』は、恐怖に足がすくみながらも必死に足を動かして逃げる。膝が笑っていた。肺が焼けるように痛んでいた。脈は乱れ、鼓動が胸を内側から殴るように跳ねる。

 逃げて、逃げて、逃げ続けて......そうして辿り着いたのは放棄された廃ビル。スラム街においては無用の長物で、何を生み出すも集めるもなく、ただそこにあるだけ。都市部にあるビルとは大違いだ。もっとも、人の醜さが渦を巻いて溢れている点で言えば、スラムも都市部も同じだが

 

「.......ここまで来ればもう見つからないよね」

 

 足を止めて壁に背を引きづりながら地面へ倒れ込む。安心感と疲れからか、疲労で身体中が悲鳴を上げる。生死の危機を彷徨いかけた状態での、体の許容量を超えた動きは幼い少女には厳しいもののようで、アドレナリンを放出しきった脳は急速に冷や水に入れられたように冷静になっていく。

 冷たい床へと座り込み。外からの刺激を一切受け付けないようにと顔を埋める。さながら親に叱られた子供のような姿だが、果たして親と呼べるものはいるのだろうか。おそらくいないであろう。でなければ、一人でこんなとこに、こんな状況になっていない

 少女は暗く冷たい床の上で、ただ一人俯いている。それは何故か。己が追われていることか、それとも己が孤独であることか......それとも己の体を蝕む原石(絶望)のせいだろうか

テラにおいて鉱石病感染者は差別の対象である。ここ龍門でもそれは変わらず、感染者はまともに生きることはほとんど不可能。ここを追放されるか、スラムでひっそりと暮らすことを余儀なくされる。それは老若男女、誰であろうと理不尽に降りかかるものであり、ミーシャも例外ではなかった。

 

「なんで.....こんなことになっちゃったのかな」

 

 誰に言うでもなく、一人で自問するミーシャ。答えは明確であるにも関わらず問うのは現実逃避ゆえか。足首を伝う黒い鉱石を軽く見やり、深く息を吐く。

 

「私が追われている以上、もうあの子達には会えない。どうにかしてここから脱出しないと____!」

 

 現在の状況を憂慮し、ここから逃げようとするミーシャだったが、ビルの階段を上がる足音があたり一体に反響する。こんな場所にわざわざ来る以上目的は一つ。逃げた自分だろう

かなりの距離があったはずだが、この時間でここを特定できたのだろうか?

 

「..........」

 

 体を無理やり起き上がらせ、正面の扉を睨みつける。いつでも逃げられる体勢を作り、必要であれば一発入れらるように呼吸を整えれば準備は万端。どんどんと近づいてくる足音に呼応するように、己の心臓も激しく動く。そうして、開けられた扉の先にいたのは、くたびれた黒いスーツの男。戦闘をしたのか服は所々ボロボロで、顔にできたクマから非常に疲れているように見える

 彼はこちらのことをじっくり見ると、何かと確認するかのように小声で呟いた後にこちらへ声をかける

 

「あぁ〜....君がミーシャ.......でいいんだよな?」

「だったら何?」

「君を保護しにきた。立ち話もなんだ、ひとまずはどっか移動するか?」

「そんな話、信じられない」

 

 目の前の男をキツく睨みつける。年頃の少女から警戒されて、睨まれていることに何かしら思うことがあったのか、少々顔を顰めたが、なんでもないかのように振る舞う

 

「まぁそうだろうな。俺も逆の立場だったらそう言う」

「わかってるなら、さっさとどこかに行って。それでももし私を連れて行こうとするなら.........」

 

 手を曲げ、相手からも見えるように爪を立てる。いつでもお前のことを切り裂けるぞと警告をする

 

「落ち着けって、俺らは君を怪我させるつもりはないし、どうこうするつもりもない。ただ君を保護したいだけ.........って言われても信じられないよな

わかった、ミーシャこれを見てくれ」

 

 そういうと目の前の男は服の袖をたくし上げる。本来であれば人の柔肌が映るだけだが.........そうではなかった。

 黒、まるで深淵のような黒であった。腕にびっしりと、まるで縄のようにまとわりつくその姿は、大地の恨みつらみを一身に受けているかのようだった

 

「それは......あなたも感染者?でもこんなに進行してるなんて............」

「驚かせたよな。俺も君と同じ感染者なんだ.......それも結構重度の」

「.........なんで、そこまでして私を?」

「ぶっちゃけた話、詳しいことを俺は知らないんだよな。俺はただの雇われフィクサーで、受けた依頼をこなすためってのが理由なんだが........まぁ、後から来る奴らはそうじゃないから、詳しい話はそっちに聞いてくれ」

 

 男は足を曲げて、こちらに目線を合わせる。拗ねた子供をあやす兄のような動きだ

 

「俺の雇い主であるロドス・アイランドって製薬会社は、鉱石病の治療と感染者の問題をなくすことを目的としてる、なんとも崇高な使命を持っている組織なんだが.........別に俺はそんな理念に共感してるわけでも、賛同してるわけでもない

俺がフィクサーである以上、雇い主の意向に従って依頼を達成するだけだ。それ以上でも、それ以下でもない」

「えらく正直に言うのね」

「なんだぁ〜?「俺は鉱石病に苦しむ感染者を救うためにきた!君のことも俺が助ける!!」とか言えば良かったのか?そんなの怪しすぎて信じようとしないだろ。裏路地の勧誘でももっと上手くやるぞ?」

「ふふふ。確かにそうね、あまりにもむず痒くて爪を立てそう」

「だろ?フィクサーは別に正義のヒーローでもないからな」

 

 あまりにもぶっちゃけて話す彼に、思わず笑ってしまうミーシャ。何か裏があるわけでもなく、本心で話されることは久しぶりで、少し懐かしく思ってしまう

 

「俺は依頼を達成できる。君は追われることなく安全な場所に行くことができる。お互いWIN-WINだ。どうする?俺たちと来るか、それともあの暴徒どもと終わりのないイタチごっこを続けるか?」

 

 目の前の男から提示された選択肢。ついてくるか、一生追われる身としてその生涯を閉ざすか、というわかりやすい二つの選択肢。

 幼い少女にとって選択肢は一つしかなかった。

 

「........わかった、行くわ。それしか選択肢がないんでしょ?」

「よし、話がわかるやつみたいで良かったよ。俺はローランだ、短い間だろうけどよろしく」

「よろしくローラン。ミーシャよ」

 

 ローランから差し伸べられた手を取り、構えを崩す。どうにか信用を勝ち取れたことに安堵したらしく、ローランの雰囲気も柔らかくなったのが感覚でわかる

 

「さて、それじゃあひとまずは俺の仲間と合流しないとなんだが.......外が騒がしくなってきたな」

 

 そう言われて外から聞こえてくる音に集中すると、大勢の足音がこちらに近づいてくる音が聞こえる。このビル一帯を包囲するつもりなのだろうか?

 それほどまでに多くの人から追われていたことに、今更ながらゾッとする

 

「さ〜てどうしたことか.....俺一人じゃあ突破することも難しいし..........耐久戦か?」

 

 どうにかしてこの状況を打開しようと、頭を悩ませるローラン。ロドスのメンバーが来るのは持って20分後。それまで一人で耐えなくてはならない

 

「移動を続けて囲まれないようにするか......しっかり捕まってろよ!」

 

 勢いよくミーシャのことを引き上げて、消防士搬送よろしく肩に担ぐ。さながら米俵を担ぐ農民のようである

 

「ちょっと、もうちょっと丁寧に扱ってよ!?」

「仕方ないだろ状況が状況なんだから!しっかり捕まってろよ、気を抜いたら振り落とされるからな!」

 

 本当なら後方支援担当が欲しかったんだがなと、ローランがつぶやくが、そんなことを言っても状況が好転するわけではないので切り替えて向かうしかない

幸いこのビルは大きい。ヒット&アウェイを繰り返せば時間を稼げるだろう。彼女らが来るまで耐え切ればこっちの勝ちだ

 

「相変わらず貧乏くじをよく引くなぁ......ま、焦らずゆっくり初めましょうか」

 

 いつも通りのペースで。いつも通りの様子で、焦らずゆっくりとやっていくことにしよう。慌てると失敗しないことも失敗するって言葉が東にあったはずだし。フィクサーとして最後まで依頼を全うしよう、それが俺のポリシーで、ルールなのだから。

 そうして、一人の兵士のように、黒い警棒を左手に、片手でミーシャを担ぎつつ歩を進める。

 くたびれた様子で、ため息をつきつつ、それでもいつも通りに振る舞って戦場へと向かうのだ。

 

 

 

 

 

 そんな彼を遠くから、しかし誰よりも近くから見ている赤い天使がいた




ちなみにローランくんがこんなに早くついたのは、付近から情報を集めまくって位置を割り出したからです
彼は情報戦専門のフィクサーです()
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