誤字脱字の報告に“感謝を!”
お待たせ致しました。深き夜の深度カンストさせてたよね 申し訳ナスです……
さぁ、ついに原作本編序章の始まりです
だいぶ長いです…
燃えている。チェルノボーグが戦火に燃えている。
街道に転がる倒された車両の群れ、破壊し尽くされた街並み、そして…人々の骸の山
活気に溢れていたであろう移動都市チェルノボーグはこの世の地獄へと変貌していた。
──悪意を持った人災によって
「民間人の生き残りはいないか!?奴らは俺たち感染者を虐げてきた血も涙もない悪魔だッ!一人残らずこのチェルノボーグから駆逐せよ!!」
レユニオン・ムーヴメントの構成員たちの集団が怒号を上げながら都市を徘徊している
これはレユニオン・ムーヴメントが企てたチェルノボーグ占領を目的とした襲撃作戦だ。
概要は至極簡単、この街を手中に収める…過程がどれほど鬼畜めいた所業になろうがそれさえ完遂できればそれで良い
それはレユニオン・ムーヴメントに集った感染者たちは感染者への恨みや怒りをぶちまける絶好の機会でもあった。
チェルノボーグの住民である非感染者は一人残らず駆逐される勢いであった。
「思い知ったか!お前たちは俺たち感染者をゴミのように扱ってきた。今度はお前らの……うっ!?」
復讐心に支配されたレユニオンの暴徒達は止まることを知らなかったが、そんな彼等が徐に足を止めた。
真っ赤だった
彼らが踏み抜くはずだった街道が、その前に建つ建造物の壁が
そしてそこに立つ同じレユニオンの装束を着た者達が
ベッタリとこびりついた真っ赤な血に濡れていたのだ。
もう既に殺しに手を染めた彼等でさえ悍ましいと感じるほどの光景だった。
それだけではない。
同じレユニオン・ムーヴメントの同士である筈なのに明らかに自分達とは何かが違うのだ。
「……あ?おぉ、これはこれはレユニオンの雑……同士諸君!ここまで練り歩いた苦労を徒労にしてすまないがここは我々UNDEADの部隊が制圧させてもらった。他を当たってくれたまえよ」
こちらに気づいた彫像そのものな鈍器を担いだレユニオンの構成員が手を振ってくる。
同じレユニオン・ムーヴメントの同士である筈なのに明らかに自分達とは何かが違う
自分たちもつけている仮面をしたその姿が堪らなく恐ろしく感じる
「そ……そうか!そうさせてもらうとしよう!」
気圧されながらもなんとか声を張ってその場から立ち去る
幹部の部隊と末端でここまで格が違うとは。
あんな連中が敵ではなく味方で良かったなどと安堵しながらレユニオンの下っ端達はまだ見ぬ非感染者狩に戻っていった。
「……行ったぜぇ~?」
「確かに制圧したな。……そのレユニオンの同士達を」
「ノブリス・オブリージュ。子供の目の前で母親を嬲り殺すような連中、騎士として見逃せなかった。後悔はしていない、寧ろ誇らしいよ」
「血も涙もない悪魔を殺したから問題ないな。ヨシ!」
「実際アイツらにあんなこと言う資格あるんですかね。同類でしょどう考えても」
「何勝手に行動してんだよって話だろうが。アンタ騎士なら団体行動とか規律大事にしろや!!」
「……口よりも体を動かそう。このまま指示通り、ショッピングモールとやらに向かうぞ…立てるか?幼子よ」
「起きて、起きてよぉ…ママァ……!」
「……もう、大丈夫だ。我々がいる……」
一方その頃……
「攻撃見てからパリィ余裕でした。」
「ぐは…っ」
「ギャーッ!!?」
「ダメじゃないか思考停止してガン盾しちゃあ、“浄火”が無双しちゃうじゃんね」
「“吸精”キモチぃィー!」
アンデット達もまたチェルノボーグの一区画の制圧を完遂しようとしていた。
「ぬんッ!」
アッシュが目の前の警官の構える盾を左の“ゲルムの大斧”がかち割り、真っ二つになった盾の間から覗いた軍警察の脳天を借り受けた“煙の剣”で貫く。
レユニオンのチェルノボーグ侵略に対して迎え撃った軍警察たちだが、一人また一人と、あるいは纏めて屠られ蹂躙されてゆく
「う、狼狽えるな!奴らは感染者、屑の集まりだ!陛下の為に何としても──」
「“舞踏の火”」
隊長格らしき男が檄を飛ばすが、それを一笑にふすかのように前衛にいた軍警察達が焼却された。
「持ちこたえ……おい!?お前ら逃げるな!!」
「こんな暴徒共に臆するな──」
振り向き、隊員たちを呼び止めようと手を伸ばすが我先に逃げる者たちが増えていく
「…逃がしはしない」
アッシュが“煙の剣”を掲げると宙に無数の火の玉が現れた。
小さな火は徐々に姿を鋭利な切先を持った武器へと姿を変えまるで意志を持つかのようにアッシュの周囲にピタリと静止して標的を定める。
彼の真横を細く長い影達が豪速で飛び過ぎた
ザシュッ!!
流麗な銀の槍が、石でできた両刃剣が、絶えず冷気を放つ直剣が
弾丸のごとく
死に損なったた者は皆無。残るは──
「くっクソ!おのれ感染者風情ガ──!?」
動揺こそあれ孤軍となっても尚戦意を失わぬ彼は筋金入りのウルサスの軍人気質だろう
まぁ、あくまで精神だけだが
「ゴハッ…!」
アッシュの鋭い蹴りが脇腹に炸裂しサッカーボールのように警官が吹っ飛びもぬけの殻となったビルの壁に叩きつけられる。
極限まで高められた筋力による蹴りはそれだけでも致命の威力だ。
だが、それは初撃に過ぎない
壁にめり込み既に死に体となった彼の胴体をアッシュの貫手が穿ち、警官の心の臓が外気に晒され、絶命した。
「……これで最後か」
「うーむ、今の所骨なしばっかりじゃな」
「命乞いなんて初めて見たわ。そんなことする奴あの世界にぜんぜんいなかったもの」
下っ端こそ好き勝手暴れるだけで良いが、アンデッドを含む幹部達にはレユニオンのリーダーから任された都市の区画の“掃除”を行うという明確な指示を受けていた。
飽きるほどに敵を殺してきたアッシュとレユニオンに扮した薪の王達の手にかかればその程度容易い。現に彼等は約2時間足らずで任を果たしてみせた。
「……UNDEAD隊長、此方も終わりました」
骸から目を離し己のコードネームを呼ぶ平坦な声に振り向く。
声の主は当然だがレユニオンだった。しかし、ありふれた白ではなく黒色の装束を着ている上に上等な装備をしている。
要はそこらにのさばる下っ端ではなくエリートといったところ。
寄越した当人曰く幹部の部隊に配属するに相応しい者を…と言われたが大方私の監視を十全にこなせる人材なのだろう
忌々しいその姿も今となっては間者とカモフラージュの為に下っ端の姿をしている同胞達と見分け易くて助かる。
「そうか…では、レユニオンのリーダーに任務完了の報告をお前と…そことそこ、そして奥にいるお前に任せよう」
「それは…容認できませ──」
パキパキッ…
ん。と言い切ろうとした軽装兵の足元から硝子、あるいは氷が割れたような耳障りの良い音がする。
ゆっくりと頭を下に向けると己の手で屠った警官の骸が無くなっており、代わりに人型の結晶体があった。
蒼白の光輝を放ちながら足首へと手を伸ばすように肥大化する結晶に忌避感を覚え、後退る軽装兵。
「なっ…!?」
(コレは…源石!?まさか人体を源石に変えたというのか!?主から伝達された情報に無いぞ!このサイコキネシスといいまだ能力を隠していたか…!)
間者の洞察は半分的外れでいて、半分は的確であった。
その水晶は源石ではない……しかし、安易に触れてはならぬ呪物だ
「貴様等にとって命令は絶対ではないのか?」
「っ!」
理解不能な現象に動揺する軽装兵達に畳み掛けるようにアンデッドは威圧し、間者達の周囲のレユニオン兵達の目に殺意が宿る。
「私は貴様等の所属する部隊の隊長ではないのか?」
突き刺すような殺意に気圧される間も無くアッシュの背後に一本、また一本と命を刈り取る武器達が現れ、軍警官達にしたように彼等へと切先を向ける。
「部隊において協調性、連携能力は不可欠だとパトリオットやフロストノヴァが言っていた。私もそう思う……簡潔に言おう。嫌なら抜けろ……それとも貴様等は──死にたいのか?」
(この男……生気を取り戻している…?)
以前の衰弱し活力の無い男の姿は影も形も無く、底知れぬ殺意と決意に眼を輝かせる騎士にアッシュは回帰していた。
「……末端の者に任せては──」
「いやぁ、すみませんね先輩。俺らつい最近入ったばかりの新参なんでレユニオンリーダー様に報告なんて大役務まりませんよ。あぁけど……言うことの聞けない愚図よりは新参の俺らのほうがマシかもな?」
「っお前いつの間に…!」
異議を唱えようとするが刀身の歪んだ直剣を持ったレユニオン兵によってまたも阻まれる。
「歯向かうなら殺す……まぁ、死んだところでどうせ貴様らの代わりなどいくらでもいるだろうがな」
「…申し訳ありません。直ちに」
(丁度いい。主に報告する言い分にはなるだろう……)
4人の軽装兵は路地裏へと姿を消していった。
「……行ったか」
「良いのです?良からぬ告げ口をされるやもしれませんよ」
「……言うことを聞かなかったから叱りつけた、それだけだ。問題ないとも」
正直あのまま首を縦に降らなければ殺せたのに…とさえ思う。
早く奴の目から解放されたいものだ。
「しかし俺たちの武器を貸すとは言ったがあんな風に使うなんてなぁ」
「ぐっ……す、すまない……圧倒的な制圧力を持つ上に詠唱なし故自分も好きに動けるから便利でな……」
感嘆する薪の王に後ろ髪を引かれる気分になる。
今後多対一や強者と交戦するような状況は不可避、そう考えた私が薪の王たちにしごかれながら模索した末に思いついたのが武器を弾幕にして飛ばすという荒業だ。
武器を弾丸とする。かつて大王グウィンと彼の騎士たちが雷の槍の弾幕で強大な古竜を屠ったように
勿論極力自前のモノを弾に使うつもりだが同胞たちの持つ闇の衝撃波を放つ斧槍や、炎を放つトマトのような槍といった特異な力を持つ武器を弾にした方が威力が明らかに上がる故つい選定してしまう。
……回収・修繕を怠れば後ろからバックスタブされても文句は言えまい
「アッシュ殿、いつになったらこのダサい装束を脱げるのだね?」
「悪いがもう少し先になる。少なくともこのチェルノボーグにいる内は耐えてくれ」
……まだ一週間程度ではあるが私は偉大な火継ぎの英雄たる同胞たちとうまく関係を築けているだろうか?
そうであることを祈ろう。いざという時に連携を取れなければ話にならないからだ。
……取り敢えず既に行方知れずが数名いるような現状は絶対に改善したい。
「……で?次はどうするんで?旦那」
「あぁ、イー…メフィスト達と合流する」
することが無くなった以上自由に動かせてもらう。
パトリオットとフロストノヴァは援軍などいらぬだろう。他の幹部連中は……助けてやる義理も情も無い。
同胞たちがついているとはいえ心配でもある。
「そういや別働隊はどうした?迷子か」
「あぁ、彼らには私から独自の任を与えた。合流はこの都市の占領完了後、アジトの帰還後だろうな」
担当していた地区を離れ、メフィストとファウストの担当地区に足を踏み入れる。流石は薪の王となった者達というべきか、彼等のソウルの気配をたどり、メフィストの元へ移動する間にも粗方掃討を終えているようだ。
十数分ほど歩いた末辿り着いた森林公園らしき場所にメフィストたちが居た。
「作戦は順調か?」
「あれ?おじ……アンデッドじゃないか!」
知己の少年を見つけ、荒んだ心が凪ぐ
「駄目じゃないか指定された地区の範囲くらい把握しなよ~」
「終わった。遊軍として来たということにしてくれ。ファウストは?」
「あそこ」
メフィストの指さした先にはマンション群が立ち並んでいる。おそらくあのどれかの屋上に狙撃手として陣取っているのだろう。
彼なら見えるだろうと軽く手を振っておく。
「”蛇の目”が見当たらないけど?」
「作戦報告させに行かせた。少しは監視が外れる」
「少しじゃ何もできないねぇ……せいぜい僕らの作戦の話をできるくらいかな?」
「やめておこう。誰が聞いてるか分からん」
……私たちの作戦。レユニオンの暴君への反逆。
作戦というには曖昧なものだが、勝算はある。だが、実行に移すのは今ではない。確実に成功させるためにはレユニオンの次の作戦を実行に移させなければならない。
故にこのチェルノボーグ占領は前座ですらないのだ……躓いて戦力が削げればよかったがチェルノボーグの抱える軍事力では話にもならなかった。
「それもそうだねぇ…ん?」
雑談に興じていたアッシュ達だったが周囲に異変が起き始めていたことに気づく。
「これは…霧か」
「キャーッ!?」
「やめろ!」
前兆無く周囲に霧が漂い始め、公園を埋め尽くす勢いで蔓延してゆく。それから間も無く悲鳴やら怒号やらが聞こえ始める。
異常な事態が起きている。しかしメフィストもアンデッドも、部隊の誰も動揺を露わにしていない
彼らはこの霧の出所が人為的なものだと知っているからだ。
「やれやれ、アイツは僕たちがよほど信用ならないのかな?」
「……霧には良い思い出がない。不愉快だ」
心底からの悪態をつきながらアッシュがソウルから”嵐の曲剣”引き出すとその刀身に嵐が渦巻く。
そのまま曲剣で空を撫で斬るととも凄まじい暴風が放たれ、充満していた霧をいとも簡単に吹き飛ばした。
晴れた視界で状況を把握……案の定
己に集中する視線を気にも留めずに首を動かす。
そこに奴はいた
──クラウンスレイヤー、新生レユニオンの幹部が一人。
彼女は黒ずくめの何者かに馬乗りになって得物を突き付けていたようだが、己のアーツが私の手で無力化されたことに気づき、こちらを睨む。
「クラウンスレイヤー、ここで何をしている?」
「……その言葉、そっくりお前に返す」
「私の任は既に果たした。暇になった故遊軍としてここに足を運んだまで……まぁ、その必要はなかったがな」
「あぁそうとも!僕達は幸せ者だよ、こんなにも優秀な人材に恵まれるなんてッ!」
同じ幹部である者達であるはずの二人と一人の間には剣吞な空気が漂っており、今にも一触即発となっている。
「それに引き換えこんな少数の部隊すら蹂躙できない程度の部隊で中枢区画のエネルギーエリアを制圧してわざわざここまで加勢しに来てくれる余裕まであるなんて、クラウンスレイヤーはすごいなぁ!」
「…………」
「あれぇ、なんだいその顔?もしかして……君はまだやるべきことが残ってるのにここで遊んでたの!?駄目じゃないか、新参なんだから真面目にしなよ~」
イーノは随分と変わったものだ。以前の人見知りで引っ込み思案な少年がよもやこんな口の達者なクソガ……悪童に進化するとは。
「私はこいつに用がある…!」
「ここで油売る正当な理由にになってないよソレ。……さっさと持ち場に戻れよ狼女」
「その人から離れなさい!」
クラウンスレイヤーは尚も食い下がるが、彼女が交戦していた者達が参戦する。
「チッ……お前たちが惨めにやられるのが楽しみだ……」
分が悪いと判断したクラウンスレイヤーが再びアーツを展開し、彼女とその配下達が霧の中へと消えた。
「へぇ、言うねぇ」
「何度も霧を巻き散らすな“ウルサススラング”が…」
霧が散逸し、残されたのは……
「……さて」
アッシュが彼等へと体を向ける。
両陣営が睨み合い、緊張が走る。
「敵の幹部連中は協調性を欠いているな」
「どちらにしろ私たちにとっては好都合だが……よりによって残ったのがアンデッドか……」
レユニオンの幹部の中で注意すべき三人のうちの一人、その中で未知数な男
彼が出没した場には黒炭になった焼死体、未知の水晶に浸食された死体、そして戦場跡に徘徊する白骨死体といった異常な痕跡が残される。
手の内がわからない、それだけで恐ろしい
それが、周囲からの
「イーノ、お前は民間人をどうしていた?」
「さぁ?僕たちはこの地区で市民は一人も見てないからナー……っていうかこいつら民間人ではないでしょ」
「何?」
「こいつらは──ロドス・アイランド、だよ」
ロドス・アイランド。
ついに、灰は希望と出会えた。
「なんだそれは」
「はぁ?渡された資料の中にあったでしょ。製薬会社でありながら軍事力を持ち、感染者に関わる紛争とか問題解決に奔走する物好きな連中だよ。」
感染者の治療薬を追い求めながら、力を以て感染者の為に戦う組織。
否定はしない、むしろ応援したいくらいだ。それもまた感染者のよりよい未来を作る道筋なのだから
だが、そんなロドスと似た在り様の組織が何の功績も遺せず崩壊したことを知っている。
この者たちの存在意義が果たされるのはいつになるのか、そもそもそんな日は訪れないのかもしれん。
「今回は……この都市の地下の
二人の足元には黒ずくめの“こいつ”が呻きを上げ身じろぎしていた。
(こいつは……なんだ?)
アッシュは表にこそ見せないが、内心黒フードの人物に強い違和感を感じていた。
テラで出会ったどんな人間とも違う。明確に言えないが何か決定的なことが違う。
種族?血筋?それとも……?
「ドクターを解放してくださいッ!」
分からない。だがドクターとやらだけが彼の興味を惹いているわけではない
ロドスとやらの小隊を率いているこのコータスの幼子もだ。
何故こんな小さな娘が武装した大人を従え、こんな戦場に赴いている?
──頭上にあるソレは何だ?
「……はいはい、酷い目に遭わせてしまったねぇ。身内の非礼を許してくれ……ほら、行きなよ」
「ドクター!無事でよかった…!」
アッシュの意識の外でドクターがロドスの小隊の元へとふらつきながら戻った。
「あの人達……攻撃の意思が無い…?」
「当然だとも。僕らの任務は今回の作戦の完遂の障害の排除だ。あの狼女とか他の幹部はともかく、僕らは余力を残しておきたいんだよ……ま、サボりだね」
「……聞いてくれ。幸い全員が生きては居るが数名が負傷。酷い傷だ」
「そうか、ここを抜ければ処置に使えそうな場所がある。早くここから抜けよう」
サングラスをかけたフィディアの男と凛とした佇まいのベッローの女が潜めた声で話している。
彼らの言う通りクラウンスレイヤーたちとの交戦で幾人か負傷者がいるようだ。深刻な傷を負った者もいるがあくまでその程度の被害で収めているあたり、全体の練度も高いようだ。
「……何故この都市を襲ったのですか?」
ロドスの小隊が移動を始めたその時、ドクターの傍にいたコータスの少女が此方を見て疑問を投げてくる。
「知らないよ、僕らは言われたことをする、それだけ──」
そう、それだけ。その問いだけで終えていれば良かった。
「──どうして、あなた達は平気で何の罪も無い人々を傷つけられるのですか?」
コータスの次の問いかけを聞いて、自然と腕と足が動きかけていた。自制が間に合っていなければこの小娘の首を斬り飛ばしていただろう
何も知らぬ分際で、よくもまぁそんな綺麗事を押しつけてくれるではないか。
「僕らをアイツらと一緒にするなッ!」
「え…!?」
アッシュは内心でそう吐き捨てることで済んだ。しかし、まだ精神が未熟な子供であるイーノには自制しきれなかった。
「イーノ…」
「タルラ姉さんの理想を知りもしない癖に!何の信念も持ってない乗っかりで自分達が正義だと本気で思いこんだ“ウルサススラング”共なんかと一緒にするなって言ってるんだよッ!この分からず屋がァ!」
「──イーノ、落ち着け」
イーノを諌めるが、本気で止めはしない。この子の言い分が最もだ。
「僕たちは好きで姉さんを奪ったアイツに──」
「──アンデッド隊長、ここに居ましたか」
「……ッ!?」
その鬱陶しい程に聞いてきた声を聞き間違えるわけにいかない。反射的にイーノの口を右手で塞ぐ。
振り向けば、黒蛇へと遣わせた軽装兵達がそこにいた。
迂闊だった。動向を知らせなかったから、帰還が遅れるだろうと油断し過ぎた。こうも速く戻ってくるとは
「移動するなら情報を共有して貰わねば困ります。……成程、メフィスト隊長の援軍でしたか」
(……聞かれたか?…いや致命的なことは喋ってはいない……筈だ。)
とはいえ……この場は誤魔化さねばならん
「……そうだ。この者たちは軍警察よりは厄介でな」
「な…!?」
(レユニオンの次の計画に移行するまでは悟られる訳にはいかん…)
「だろう?メフィスト」
「……ロドスの諸君ッ!役者は揃った、僕たちとゲームをしようじゃないか!!」
(そうだ、それでいい。お前は聡い子だ。今は拙い優しさを捨てる時だ)
ほんの一瞬、気の所為かもしれないがイーノが今にも吐きそうな酷い顔をしていたように見えた。
「ルールは簡単、単なる鬼ごっこだ!君達は僕たちから逃げ切れば勝ちだ。そして君達を全員殺したら僕たちの勝利さ!」
イーノがレユニオンの残酷なメフィストを演じ、号令をかける
「レッツ、カウントダウン!」
「総員、撤退するぞ!」
「止まれ!伏兵だッ!」
「……戦闘要員、配置につけ!」
「ゲームスタート!」
「っ!ドクター下がれ!」
開始の宣言とほぼ同時。アッシュは体を沈め、一瞬でドクターの懐に入る。
“アストラの大剣”を喉目掛けて突き上げるが、ロドスの前衛オペレーター──ドーベルマンがドクターの装束を掴んで後ろにやり、ファーストアタックが不発に終わる。
追撃しようとするが、ドーベルマンが鞭を振るい刀身を絡めとり拘束する。
数刻の拮抗、鞭に縛られた大剣を強引に引き戻し、左手から呪術「大発火」を撒く。
狙いはドーベルマン……ではなく彼女の鞭だ。火炎によってピンと張っていた鞭が焼け切れ、拮抗が解けたその反動でドーベルマンが大きく仰け反る。
取った。
炎の幕を突き破り、“アストラの大剣”の燃える切先がドーベルマンの露出した腹へと迫る。
(まずは一人…!)
一瞬の攻防だけで分かる。このベッローの女は手練れだ。野放しにしておけば面倒になる。
ガァンッ!
「ヌ…!?」
「させねぇよ」
しかし、剣の進む先にACEの盾が割り込み、ドーベルマンは事なきを得た。
(防がれたか……ならば!)
アッシュの左手から再び火が起こる。しかし、先程の火ではなく「黒炎」だ。
深淵より生じる黒く、重い炎は盾によるガードを容易く剝がす……筈だった。
「馬鹿な…!?」
「む…?」
(受けきられただと!?)
ガード崩しに長けた「黒炎」を防ぎきられ、驚愕するアッシュ。だが、決して余裕で防いだわけではない
(今の炎…何だ?防いだはずなのに体を蝕むような感覚……厄介だな)
互いに別の理由で警戒を強め、地を蹴って距離をとる。
「ACE!すまん、助かった…!」
「このまま離脱するぞ、俺たちが殿だ!武器は!?」
「ある!」
「ボリバルの軍人仕込みの体術なら安心だな。コイツは俺に任せろ!」
「応!」
最低限、それでいて適確な意思疎通を交わし、ドーベルマンが撤退を試みるロドスのオペレーターたちを追いかける同胞たちへと駆けて行った。
ドーベルマンへと“ミダの捻子くれ刃”を投擲するが、またもACEの盾に妨げられる。
「お前の相手は俺だ……俺たちを見逃す素振りは罠だったようだな」
「……そのつもりだったさ。信じろとは言わん。事情が変わったのだ!」
半ばヤケになって吠えたアッシュが先制。
「黒炎」の衝撃力を耐えるならば、その耐える手段をかち割る。
数多の英雄を屠ったアイアンゴーレムの得物──“ゴーレムアクス”左手に装備し、ぶん回すことで勢いのついた重厚な鉄の刃をふり下ろす。
しかし、
「重いな…ッ!」
(これもダメか!)
“ゴーレムアクス”の一撃を真っ向から受けてなおACEの盾はヒビすら走ることなく健在のままだった。
ロドスは戦士の練度だけでなく武装の質も高いと見える
ACEがアッシュを手に握る“ゴーレムアクス”が弾け飛ぶ勢いで押し返し、カウンターの蹴りで吹っ飛ばす。
(まだだ!!」
受け身を取り体制を整え、柄にもなく声を荒立たせたアッシュは斧を失った拳を足元に打ち込む。
「──墓王の剣たちよ、舞い踊れ!」
突然の奇行に怪訝そうに眉を動かしたACEだが次の瞬間悪寒が走りその場から後退すると、そこから人骨でできた異形の剣が顔を出す。
「悪趣味な剣だな……」
執拗に足元から牙をむく骨剣の山に悪態をつくACEだが、その裏腹に回避は裕に間に合っている。
……完全に見切られた。不意を突いた初撃を避けられた時点で仕損じたといっていい
「貴様……」
「どうした、もう終わりか?」
私はまだ相手に一発も攻撃を与えられていない……。
盾を剝がすことも、壊すことも、ガード不可の攻撃すらも回避される。
これ程の強者と早々に遭遇するとは……あの堅牢な守りをかいくぐり、本体を叩くのは難しい。
どうしたものか──いや、思いついた。
(……出涸らしか?得体の知れなかったが……俺だけでなんとかなりそうだ。)
このまま──
「ぐわぁー!?」
「Guardさん!」
(っ!?)
自分の部隊員である青年の悲鳴に思わず振り向く。
見れば、撤退する医療オペレーターたちの背に向かってレユニオン達が弓を模った雷やクロスボウを連射していた。
それを庇おうと戦闘員が必死に応戦しているが、圧倒的に劣勢だった。
(俺の部隊すら押し負けている!?あのレユニオンの奴ら……何だ…!?──)
「──ここに来るまでに戦った雑兵より強い、そう考えているな?」
「……悪いがさっさとケリつけさせて貰──!?」
見透かされたようで、食いしばった歯を軋ませ視線を戻すと、目の前に5つの暗紫の光波が迫っていた。
「ぐぉ!?」
「誇らしいな!偉大なる同胞たちがそう思われるのは。クク、クハハ!!」
1,2
「私も負けていられないな──!」
3,4
……5
「くっ…!」
防御を解いたことで初めて気づく。アッシュの武装はいつの間にか変わっていたことに。
右手には緋色の刀身を燃え盛らせる特大剣──“罪の大剣”
左手には先に怒涛の連続光波を放った──“裁きの大剣
赫き炎と紫の魔力を纏った双剣を構えるその佇まいはさっきまでの殺気だったものとは一転して……優雅であった。
「これすら凌ぎきるとは。敵ながら強く、固いな、貴様は」
「……この程度、なんてことね無ぇさ…!」
「そうか……ならば次はコレだ」
墓王の権能は通じなかった。ならば次はコイツの力を試そうではないか
アッシュは徐に“裁きの大剣”を顔の前に構えると──
「!?何だと…!!?」
──アッシュが増えた。
「決めたよ、貴様は──」
ガードの上から属性で削り殺す…!
「ぐっ……おぉ…!?」
ソレは月の貴族達の都に君臨していた鴉人の魔術師の業。
魔術師でありながら二振りの剣と分身によって何度も、何度も火の無い灰であったアッシュを屠ってきた。
如何なる因果か、今アッシュは己にされたことをACEに仕掛けている。
最初こそアッシュと分身、さらに二刀流による絶え間ないリンチを盾と培ってきた戦闘技能で往なしていたACEだが徐々に立ち回りが乱れていく。
「ハァ…ハァ…ッ!」
「クハハ、先程までの余裕と冷静さが揺らぎ始めたな!」
(不味いな……だが負けるわけにいかない。早くアーミヤ達の援護に行かなければ!)
「ACEといったな。分かるぞ!後ろにいる護るべき者達と目の前にいる敵、この二つが集中が削げているのだろう?……私もかつてその経験をし、そして敗北したからなァ…!」
「……俺もお前の二の舞になるとでも思ってるのか?なら大間違いだ!エリートオペレーターの底力、見せてやるよッ!」
「……そうか。ならコレを言うのは野暮だな」
「あ…?」
アッシュが兜の内で邪悪な笑みを作る。
「──私と貴様は、一対一の騎士競技をしているのではないぞ?」
ACEは気づく。己の背後に“トゲの直剣”を持ったレユニオン兵がまるで今この瞬間にそこに出現したかのように立っていたことに
「っ!しまっ…!」
(馬鹿な!?こんな殺気を振りまいてる奴なら気づけたはず──!)
「えぐらせてもらうで…!」
如何にロドスが誇る精鋭エリートオペレーターといえど背後からの不意打ちを回避することも、迎撃することも不可能だ。時間が足りない
「「ACE(さん)ッ!!」」
(…すまん、アーミヤ……ドクター…!)
“トゲの直剣”が一直線にACEの背中へと突き進み──
──光あれッ!
その時、苦しむ者へ救いの光が現れた。
今回の薪の王
「おぉ、これはこれはレユニオンの雑……同士諸君!」
右1王の特大剣
左1下級兵の盾
頭王国兵の兜
胴亡者王国兵の鎧
腕王国剣士の手甲
足王国剣士の足甲
「確かに制圧したな。……その同志達を」
右1ヨームの大鉈
左1セスタス
頭騎士の兜
胴グンダの鎧
腕ミラのチェイン
足処刑人の足甲
「ノブリス・オブリージュ」
右1デーモンの大斧 右2竜狩りの大弓
左1黒騎士の盾
頭黒騎士の兜
胴黒騎士の鎧
腕黒騎士の手甲
足黒騎士の足甲
「血も涙もない悪魔を殺したから問題ないな。ヨシ!」
右1サンティの槍
左1ドランシールド
頭アルバの兜
胴王国剣士の鎧
腕王国剣士の手甲
足竜騎兵の足甲
「実際アイツらにあんなこと言う資格あるんですかね。同類でしょどう考えても」
右1処刑人の大剣
左1鉄の円盾 左2呪術の送り火
頭兵士の鉄兜
胴逃亡騎士の鎧
腕傭兵の手甲
足ファーナムのブーツ
「団体行動とか規律大事にしろや!!」
右1正統騎士団の大剣
左1影の短剣
頭影の仮面
胴クレイトンのチェインメイル
腕クレイトンのチェインローブ
足クレイトンのチェインレギンス
「……もう、大丈夫だ。我々がいる……」
右1グレートソード
左1ヨームの大盾
頭ハベルの兜
胴ハベルの鎧
腕ハベルの手甲
足ハベルの足甲
「攻撃見てからパリィ余裕でした」
右1グレートソード
左1セスタス
頭ラップの兜
胴ハベルの鎧
腕ハベルの手甲
足ハベルの足甲
「“浄火が無双しちゃうじゃんね”」
右1ロングソード
左1呪術の送り火
頭黒い手の帽子
胴レオナールの上衣
腕不死隊の手甲
足ファーナムのブーツ
「“吸精”キモチぃィー!」
右1狂王の磔
左1ダークハンド
頭トゲの兜
胴トゲの鎧
腕トゲの手甲
足トゲの足甲
「うーむ、今の所骨なしばっかりじゃな」
右1湾曲した両刃剣
左1ドランシールド
頭竜騎兵の兜
胴闇術のローブ
腕アーロン騎士の手甲
足バンホルトのブーツ
「命乞いなんて初めて見たわ。そんなことする奴あの世界にぜんぜんいなかったもの」
右1まだらムチ
左1まだらムチ
頭なし
胴獅子の魔術師のローブ
腕獅子の魔術師の腕輪
足砂の魔術師のスカート
「言うことの聞けない愚図よりは新参の俺らのほうがマシかもな?」
右1歪んだ直剣
左1狂戦士の刀剣
頭亡者王国兵の兜
胴リンドの鎧
腕狂戦士の手甲
足王国剣士の足甲
「……良いのです?良からぬ報告をされるやもしれませんよ」
右1黒騎士の特大剣
左1エスパダ・ロベラ
頭ザインの兜
胴リンドの鎧
腕リンドの手甲
足リンドの足甲
「しかし俺たちの武器を貸すとは言ったがあんな風に使うなんてなぁ」
右1ガーディアンソード
左1ガーディアンシールド
頭王国剣士の兜
胴ガーディアンメイル
腕ガーディアンガントレット
足ガーディアンレガース
「アッシュ殿、いつになったらこのダサい装束を脱げるのだね?」
右1正統騎士団の大剣 右2レイピア
左1正統騎士団の盾
頭ミラの帽子
胴ルカティエルのベスト
腕ルカティエルのグローブ
足ルカティエルのズボン
「そういや別働隊はどうした?迷子か」
右1ドランの双鎚
左1セスタス
頭アルバの兜
胴奴隷騎士の鎧
腕ミルウッドの手甲
足聖堂騎士の足甲
「えぐらせてもらうで…!」
右1トゲの直剣
左1鉄の円盾
頭傭兵の兜
胴ミラのチェインメイル
腕ミラのチェイングローブ
足ファーナムのブーツ
あとがき
ついにロドス・アイランドと出会ったアッシュ!ここまで長かったなぁ……
ここまで長くなるとは思わなかった。反省はしている。
あと記念すべき最初の対戦カードはACEにしましたが、アニメでもアーツ使う気配無かったので近接クソつよタンクとして書きましたが如何でしたでしょうか?エリートオペレーターの格を魅せられていたら嬉しいです
次回、希望の痕跡
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Undead
重量1
近距離 物理
HP B+ 移動速度C
攻撃力B 攻撃速度C
防御力C 元素耐性E
術耐性E 損傷耐性E
レユニオンの幹部、アンデッド。その実力は未知数である。襤褸纏いの騎士鎧の内に何者が潜んでいるのか、仲間であるレユニオン・ムーヴメントの兵士たちも知らないようだ。術耐性が非常に低いが、彼の奇妙な攻撃に注意すべし。彼の出没した戦場から生存した廃人化したウルサスの軍人はこう語ったという──アレは魂の群れだと。
ステータス
・ブロックされていない場合は周期的に周囲の敵ユニットの攻撃力を強化する
・HPが半分以下になると、攻撃力と防御力が上昇する