声優・アーティスト(歌手)として幅広く活躍してきた水樹さんが、大河ドラマ初出演で演じるのは女性狂歌師・智恵内子(ちえのないし)。江戸の狂歌界で活躍した人物とどう向き合い表現していくのか。収録中の舞台裏も含めて伺いました。
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江戸のポップカルチャー・狂歌の魅力
大河ドラマへの出演オファーは「何かのドッキリかな」と思ったほど驚きました。演じる智恵内子は狂歌師ですが、狂歌というのはとても自由な歌で、それだけに言葉をしっかりと伝えられることが大事なのだそう。そこで「歌とことば」の両方を表現している私を選んでくださったと伺って、ありがたくお受けすることにしました。
狂歌は、パロディーやだじゃれがふんだんにある楽しい歌です。元歌となる古典和歌の知識教養があるほど、さらに楽しいパロディー作品を詠めるし、それを今でいうラップバトルのように即興で詠んでいく。瞬発力、構成力、センス、そしてどれだけ知識を持っているかで選ぶワードも変わってくる。智恵内子はとても教養のある方だったんだなということを感じました。
女狂歌師は“ツンツン”な女将(おかみ)さん
人物像について最初に言われたのは“ツンデレ”ではなく“ツンツン”な女将さん(笑)。元木網の妻ですから、ふだんはお風呂屋さんを切り盛りし、狂歌の会では夫と一緒に主宰として仕切っている。かなり頭の切れるタイプのキャラクターで、そこがツンツンというイメージなんですね。
もちろん時代背景を考えれば、自分は一歩下がって旦那さんを立てるというところはあるのですが、手綱はしっかり握っている芯のある女性。優しく奥ゆかしくとは少し違うけれど、愛を持ってサークル活動のような狂歌会を楽しんでいます。羽目を外す部分もあるけれどユーモアのセンスも狂歌には必要なので、そこは少しキレのあるような形で演じていけたらいいですね。
元木網を演じるジェームス小野田さんとは今回初めてご一緒したのですが、狂歌師の夫婦として会を主宰する2人がどちらも音楽活動をしているということにすごく意味を感じています。“歌とことば”を伝える側の人物を、俳優さんとはまた違った視点からアプローチできるキャストを求めていたのかもしれないと感じて、よりいっそう気合いが入りました。
大河ドラマのセットに感動
ドラマ出演は10代のころに一度経験しただけなので、ドラマにたくさん出演されている声優の先輩方に相談したいと思っているうちに、収録当日を迎えてしまいました。とても緊張していたのですが、ジェームスさんが気さくに話しかけてくださったり、所作指導の先生に細かくご指導いただいたり、いろいろとお話しするうちに次第にほぐれてリラックスして臨むことができました。
スタジオに入り、セットの作り込みのすごさにも感動しました。
初めての現場が狂歌の会だったことも、うれしかったことの一つ。おならで詠んだ歌なども出てきて、百人一首の歌をもじって「へ」に変えてしまう内子の大胆さに「こういう表現が好きなのかな?」と想像が膨らみました。実は最初に披露する歌がこれだったんですよ。踊りの段取りもあったので緊張でガチガチで、リハーサルでは失敗してしまって、ご迷惑をおかけしました。収録の順番によってはなかなかお会いできない方もいるのですが、大勢のご出演者の皆さんが一堂に集う宴会シーンで「智恵内子です」とごあいさつできうれしかったです。
肉体と連動して出てくる声で
声優として演じるときに声を作るというイメージはまったくありません。そのキャラクターがどういうふうにしゃべるのか、まず骨格を見て、そこから声帯や音の響き方、こうしゃべるんだろうなとイメージをふくらませ、導き出されたものを当てていきます。自分の声色を調整しているというより、キャラクターの動きから出る音の形、息づかい、テンポなど妄想しながらしゃべっています。
今回は自分の肉体がキャラクターになるので、どういうふうにしゃべろうかと考えるより、自分の動きに合わせて連動してくる音が正解なんだと思っています。声優だから声を作るとか、歌を詠むときはいい声でといったことは、まったく意識していません。お芝居の中で自然に出てくるものをそのまま出すようにしています。
お風呂屋さんを経営しているので落ち着いたところもありつつ、ユーモラスな歌を詠むちょっとちゃめっ気のある部分もある、さまざまな表情を持つ人物だと想像しています。
蔦重の次なる飛躍の火付け役に
「べらぼう」で描かれている世界は、時代背景も含めてとても興味がありました。江戸の芸術文化がどのように発展していったのか、人間ドラマから政治的なものまで交えて描かれているところがとても魅力的です。
吉原の花魁(おいらん)の切ない恋や、どうしようもない苦しさの中でも自分らしさや輝ける瞬間を見つけ、信じて進む姿が胸に響いて、本当に感情移入して一緒に泣いたりもしました。同じ女性として、いっそう心揺さぶられる場面も多いですね。
これからは蔦重(蔦屋重三郎)さんのヒット作がどんどん生まれていきます。狂歌もそのきっかけとなる一つですし、また次なるステージにお話がぐーんと動いていく火付け役にもなっていると思います。
かなりくだけた場面も多くて、思わず笑顔になってしまうシーンが満載。中身はふざけているのに大人たちが真剣にやっている。そのギャップも笑えます。胸が痛くなるような緊迫した状況のなかでも、少しホッとして笑顔になれる。そこを楽しんでいただけたらと思います。
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