大河ドラマ「べらぼう」で、養子の蔦重を育て上げた駿河屋のあるじを演じる高橋克実さん。商売に対する姿勢と才覚に一目置きながらも、苛烈なまでの厳しさで蔦重に向き合う心境。そしてドラマが描く時代への思いなどを伺いました。
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少し複雑な蔦重への思い
駿河屋は、言葉よりも先に手が出る人物。息子(次郎兵衛=中村 蒼)を殴り飛ばすのは当たり前。蔦重を2階から突き落として襟首つかんで引きずり回す…なんて彼にとっては日常茶飯事です。でもこれは駿河屋だけでなく、当時は血のつながりのあるなしではなく、親子から師弟関係まで「見て盗め」と言うような時代です。だからこそ、一方的な暴力ですが、2人の息子に親としての圧倒的な圧力や力強さを見せつける大切なシーンなんだと納得できました。
一方で、蔦重の人当たりの良さや才能は認めていて、実の息子以上に愛情をもっているところもある。もともと身寄りのない子を集めて食べさせ育て上げているわけですから、人間としては良くできた人物なんだと思います。ただ、時代的な背景からも優しさは直で表現しないほうがいい。少し愛想良くしようとすると監督から、「いや、まだ早いです」「そういうのはいらないです」と言われます(笑)。
蔦重が地本問屋たちに対抗する細見を作ることに忘八たちが賛成したのは、もうかるなら、金を生んでくれるなら、というところがありました。でも駿河屋の本音としては余計な仕事だからやらなくていい。もともと自分たちを下にみている地本問屋たちにぺこぺこする必要はないというのが基本なんです。それでも蔦重は才能があるという周囲の人間の声に、親としてちょっとやらせてみようかという気持ちですね。本当は、本屋の仕事は、自分が継がせようと思っている本業とは違うわけなので、あまり気に入ってはいないんです。
粋人でもある忘八たち
吉原については、映画『幕末太陽傳』や『吉原炎上』を見ていて、品川宿より格上でそれなりの場所だという程度は知っていました。それが多くの書物を読んでいくうちに、 “市中と外”というふうに江戸の中では完全に差別化されて下に見られていたということを知りました。しかも、そんな差別化された中でありながら、あの江戸中期以降を彩ったさまざまな文化の発信地でもあったんですね。
その吉原をまとめている忘八は、ただ荒っぽい怖い人たちかと思いきや、実はあらゆる「粋」に精通している粋人でもあることも知りました。ドラマでも博打(ばくち)だけでなく「猫自慢の会」や「お茶会」といった忘八たちの集まりも描かれます。
駿河屋がお茶をたてて、忘八たちがそれをきちんとした作法でいただくとか、みな、それなりに教養がある。暴力は平気でふるうけれど、かなりのインテリなんだということもここで学びました。
すばらしい流星くんパワー
主役の(横浜)流星くんは、朝から晩まで出番が続くことが多いのに遅い時間になればなるほど元気になる(笑)。我々おじさんたちが少しくたっとなりかけたときに、さっそうとスタジオに入ってきて、その表情と勢いに、「おー、すごいテンションだな」とこちらも巻き込まれるんです。彼にはそんな現場を引っ張る力が溢(あふ)れていますね。
私の撮影初日は、蔦重をぼこぼこにするシーンでした。プロのライセンスまで持っているボクサーの流星くんに暴力か!?と焦りましたが、立ち回りというのは受ける側のほうが大事なんです。それなのに流星くんは、「克実さん、大丈夫です。好きにやってください」って(笑)。
未知に挑む新鮮さを実感
またかと思うほど男たちを投げ飛ばしたり叩(たた)いたりのシーンが続いていたので、初めて小芝風花さん演じる花の井の花魁道中(おいらんどうちゅう)を見たときには興奮しました。同じドラマとは思えないほど華やかで美しい。あの難しい動きで前に進む歩き方は本当に見事でした。
「べらぼう」が描くのは、これまであまり描かれてこなかった時代。歴史的な大事件や合戦が起きたりするわけではなく、芸術家を世に出す1人のプロデューサー的な人物に焦点を当てています。
あらゆることを徹底的に調べて忠実に再現しつつ、ぶっ壊したいところはぶっ壊す。これはチャレンジであり、かつて私が夢中になったドラマ「天下御免」を思い出させる新しい時代劇です。
そんなスタッフの気合いを感じながら、新鮮で興味が尽きない現場での撮影が続いています。
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