大河ドラマ「べらぼう」で、吉原という場所の客と女郎でありながら、お互い運命的にひかれ合った2人。小田新之助役の井之脇 海さんと、うつせみ役の小野花梨さんにお話を伺いました。
☞【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」見逃し配信はNHKプラスで】※別タブで開きます
――足抜けに失敗した2人がその後、また再会しますが…
井之脇 海:足抜けに失敗してから数年、祭りのさなかに2人は偶然再会します。あれだけ大勢の人がいる中、目から入る情報だけではなく、新之助という人間全部で感じて見つけることができた。気配とか第六感みたいなものが働いて湧き上がってくる感情のようなものを本当に大切にしながら、あのシーンを演じました。2人はその後、豊かな暮らしはきっとできないだろうけれど、それでも一番大切な人と一緒に暮らしていけるのはすばらしいことだと思います。
小野花梨:うつせみが新之助さんと偶然再会して光の先へ進める。そのことに視聴者の皆様もホッとしてくださったのではないでしょうか。女郎は大門から先には出られない存在だったのに、そこを新之助さんと2人で出ていく。現実的に考えると、また見つかったらどうしようという恐怖、この先の生活への不安など、いろいろな感情があったと思います。でも、監督が「ネガティブな感情を出さなくて大丈夫」「幻想的であっていいし、豊かであっていい」「希望に満ちていていいんだ」とおっしゃってくださった。そういう演出も含めて、私はとてもうれしくて大好きなシーンになりました。
――どんなことを意識しながら演じていましたか?
井之脇 海:新之助がうつせみにひかれた理由は、不可抗力というか衝動のような止められない心の動きがあったからだと思うんです。恋してはいけないと頭では分かっているのに好きになってしまった。すごい純愛だし、あらがえない大きな力のようなものを画面を通じてなんとか表現したい。そのためには新之助の葛藤や心の揺れを丁寧に積み重ねていかなくてはと、少ないシーンの中でも一つ一つを意識しながら演じていました。
小野花梨:うつせみは、お客さんの名前を腕に彫られたり、折檻(せっかん)を受けたり、花魁(おいらん)の中でも吉原の闇の部分を担っている場面が多かったのですが、吉原の現実、花魁の現実をきちんと知るうえで大切な存在だと思います。吉原は存在したし、女郎も確かに生きていた。くさいものに蓋をするのではなく、事実を事実として受け入れることの大切さを、うつせみが教えてくれました。それは今この時代を生きる自分にとっても必要なことで、学びの場としてもこういう機会をいただけたことに感謝しながら演じていました。
――お互いの魅力を教えてください
井之脇 海:小野さんが演じるうつせみは、随所ににじみ出る人間らしさが魅力です。女郎は芯が強くないと生きていけない職業で、うつせみも彼女なりの信念を持ってはいるけれど、そこに強さだけではない柔らかさや愛らしさが満ちあふれている。それはおそらく小野さん自身が持つパワーだと思うんです。ほかの作品でも役ごとに顔は違うけれど、そこには常に人間らしさ、みずみずしさ、生々しさがある。どんな人物を演じていても小野さん自身の魅力が湧き上がってくる。そういうところが小野さんのすてきなところだと思います。
小野花梨:共演させていただいて驚いたのが井之脇さんの持つお人柄が、こんなにも役からあふれ出るんだということ。うつせみと新之助のシーンはそんなに多くはないですが、とても印象的に描かれていると思います。新之助さんのたたずまいなど、言葉や形にならない部分にうつせみがひかれたんだということを演じている中で実感することができました。それは井之脇さんご自身の持つ価値観や人生観、これまで積み重ねてきた軌跡などが自然とあふれ出ていたからこそ、より魅力的に映ったんですよね。
――演じている中で芽生えた思いや気づきなどはありましたか?
井之脇 海:「べらぼう」の時代、江戸の中期を演じて気づいたのは“不便さの豊かさ”ですね。『吉原細見』一つにしても、みんなで集まって手作業でやらなければ作れない。うつせみとも見世に行く以外は文でしかやり取りができない。最初に手紙をもらったときにも、うつせみの口紅がついていたことにものすごく喜べる。現代はSNSがあり、電話やメールですぐに「おはよう」って言えますよね。それがかなわないからこそ、会ったときの「久しぶり」、別れぎわの「またね」の一言の重さみたいなものを感じました。不便だけれど、だからこそ会えたときの豊かさがある。物作りも試行錯誤していくことで形に残るものができる。そこに改めて気づくことができて良かったと思います。
小野花梨:私は今回が初めての大河ドラマ出演ですが、どこに行っても「べらぼう見てるよ」「楽しみにしているね」と皆さんが温かい言葉をかけてくださるんです。それがとてもうれしくて、「べらぼう」という場所に自分を存在させてもらえたこと、うつせみという人物を演じさせていただけたことは私にとって財産になりました。
【あわせて読みたい】
大河べらぼうのインタビューをもっと読みたい・見たい方はこちらから☟
📖小田新之助 役・井之脇 海さんインタビュー
📖うつせみ 役・小野花梨さんインタビュー
📖いね 役・水野美紀さん音声インタビュー