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【鬱病ではない】映画『aftersun / アフターサン』の正しい考察

はじめに

この記事にはaftersunのネタバレが書かれています。まだ観てない方はぜひ先にご覧になって下さい。
(今ならprime videoで無料)

暗い内容が含まれますが、軽く観ただけではその正体に気付けない仕掛けになっています。真相に近づくほど辛くなる恐ろしい映画です。

この映画を「暖かい親子愛のお話で感動した」と思った方は、これ以上記事を読まない方が良いです。(本気で)

この記事を書くに至った理由

見当違いな考察とレビューが溢れており、多くの人が適当な説で満足して終わっている現状が勿体なすぎる為。

巷に溢れている説
・父はうつ病
・父はゲイで悩んでいた
・父は最初から死にたがっていた
これらは全く違います。説が雑過ぎます。

答えは分からないように出来ている、というのも違います。この映画は「ある仮定」をしてから観ると全てのシーンで整合性が取れます。逆にこんなに答えを用意してくれている映画も珍しいです。

・父親は死んでいる説
おそらくこれは合っています。しかし理由を正確に解説している記事が見つかりませんでした。この記事を読めば何故そのような結果になったか分かります。

この映画では11歳のソフィと31歳のソフィが登場しますが、それぞれ父親のカラムに対する印象が異なります。

この映画に謎が残っている状態は言うならば11歳のソフィの状態です。
そしてこの記事の内容を理解した後、31歳のソフィとなるのです…


覚悟は宜しいでしょうか。
それでは書いて行きます…

3つのパート

この映画には3つのパートがあります。

・過去パート
カラム(30〜31)、ソフィ(11歳)
2人でトルコのリゾート地へ旅行する。

・現在パート
ソフィ(31歳)
過去パートで撮影されたビデオを見ている。

・暗闇パート
カラム(31歳)、ソフィ(11歳、31歳)
踊っている(ように見える)大勢の人、
ダンスフロアの(ように見える)激しいストロボの点滅
→ 様々な記憶が重なって映し出された心象風景

序盤では父親が人に遮られて娘と離れた場所にいますがストーリーが進むにつれ近付いて行きます。これは父の本当の姿に近づいたことを表しています。

基本は過去パートで、合間合間に暗闇パートが挟まり、最後に現在パートで終わります。

現在のソフィがビデオを通じて父との旅行を思い返している形式です。

父は何を抱えていたのか

もう書いてしまいますが、
この物語のコアの部分、
父親が抱えていた問題、
それは娘に対する性的な感情です。

内容が内容であり、監督の実体験もベースとしていることから直接的に分からない作りにしているかと思います。それを私が直接的な記事にするのはどうかと思いましたが、他の変な説で満足するよりは良いと信じて書きます。

これが小児性愛に依るものかは不明ですが、劇中にセクシャルマイノリティのテーマが含まれている為その可能性も無いとは言えません。
(私は後述の理由で違うと考えています。)

私がこの父親の悩みに確信を抱いたのは終盤の暗闇のシーンでした。ソフィが父を突き落とす瞬間、真顔の31歳のソフィと笑っている11歳のソフィが対比的に入れ替わります。つまり、11歳の時に気づかなかった「何か」に31歳のソフィは気付いているのです。

そして、父親がこの問題を抱えていたと仮定して映画を見返すと、驚くほど全てのシーンに意味があったことに気がつくのです。

(時間がある方はここで記事を閉じてもう一度映画を観てみて下さい)

各シーンの解説

次に時系列順で気になったシーンを振り返ってみます。

タバコを吸う父

映画考察あるあるですが無駄に尺が長いと感じるシーンには必ず大きな意図があります。

このシーンでは背中を向けてタバコを吸っているだけなのにやたらと長尺です。

そして、タバコを吸っている人とは思えないほどソワソワしています。タバコでもチルし切れない、抑えられない何かがあると考えるのが自然でしょう。

結論ありきですが、これは欲求不満を表しています。このようなヒントが映画内に散りばめられており徐々に露骨になっていきます。

後半にも意味深なタバコのシーンがあります。

太極拳をする父

これもタバコと同じで自分を落ち着かせようとしています。この後も欲求不満な状況で行われます。

ギブスを外す父

ギブスは抑圧を表しており、それを解放することを暗示しています。
ここでの娘との会話もなんだかチグハグで、転んだのではなく、自分を抑える為にわざとギブスをしていたのではないかと勘繰ってしまうほどです。

ソフィの視線

周囲の人物を観察するソフィの視線が度々描かれており、思春期の成長として段々と恋愛的な関係を意識するようになります。
また、父と自分との関係と他人同士の関係が対比するように描かれています。

日焼け止めを塗る親子、日焼け止めを塗るカップル、カップルのボディタッチ、ダンスetc.

旅行客から親子ではなく兄妹と勘違いされる

重要なシーンだと思っています。ストーリーに関係があるものではなく、観客に対するメッセージだと感じました。

客観的には父は歳より幼く娘は歳より大人に見え、雰囲気を含めて親子には見えなかったということです。
かなり私見ですが父は単純に小児性愛なのではなくソフィ自体を愛しているという意図を感じました。また、暗闇パートでソフィの年齢も関係なく激しく抱きしめているように見えるのも根拠の一つです。

また、監督のインタビューによると

“最初はカラムがセクシュアルマイノリティだという設定があったが、映画を作っていく中でその設定を消していく方向にシフトしていった”

https://realsound.jp/movie/2023/06/post-1351288_2.html

ということなので、おそらく最初は小児性愛の設定だったのかもしれません。

潜水マスクを海に落としてしまう

娘が気にする程度に父はお金に困っていそうなことが分かります。これが後にお金を使うシーンと繋がっていきます。

潜水マスクの為に海に潜るシーンは妙に印象的です。個人的には「娘が父の愛(マスク)を受け取らなかった結果、父が絶望する(深い海に潜る)」という映画全体のテーマをこの段階で表しているのだと感じました。

唾を吐く父

男の子とコインゲームで遊んで充実感に溢れたソフィはそのことを父に話します。
ここで父は信じられない行動を起こします。鏡に唾を吐きつけるのです。初見時にはさぞ難解なシーンだったと思います。
もうお分かりだと思いますが、これは嫉妬によるものです。

以降、父の奇行が際立って来ます…

タオルを被る父

白い布が全面に写っているだけで最初は何のシーンだかさっぱり分かりませんでした。よく見るとタオルを被って呼吸している父の顔なんです。唾を吐くほどヒートアップした感情を抑えるため、タバコや太極拳に次ぐ新たな落ち着かせる手段が必要だったのです。
この日は他にも扇風機に当たりながら太極拳を行なっています。

絨毯を買う父

これはソフィのこと以外を考えないと辛いために走った奇行だと思います。お金もないはずですし、欲求不満から来る浪費と取れます。
この後に父がもうめちゃくちゃナナメに座っている場面もあって辛さが溢れています。

ホテルのドアがゆっくりとズームアウトされる映像

遂にここに来てしまいました…
この旅行中、最も不穏な出来事が起きたのは、おそらくこのタイミングでしょう。

まずカメラワークが不穏すぎます。雰囲気も暗く最早ホラーです。そしてこの尺の長さ、最後に微妙に上から降り注ぐ光、これで何も起きてないと考える方が不自然です。

一転、次のカットでは両手を広げて空を見上げる父。開放感溢れる映像です。
しかしベランダの手すりの上という非常に危険な位置に立っています。

また、忘れてはいけないのがこのドアのカットの前に父だけではなくソフィもアルコールを摂取している点です。

音楽もスロー加工されており、酒で酔った二人の感覚を表現してるのでしょう。(音楽は翌朝のカットまで続いているのでおそらく二日酔いもしている)

以上を踏まえると、この晩、限界を迎えた父が事に及んだと考えるのが自然ではないでしょうか。

と言っても流石に近親的な行為までは行なっていないでしょう。仮に酒で意識が薄かったり記憶が飛んでいたとしても体に残るようなことはしていないはずです。

ですが翌朝の両手を広げて抑圧から解放されたような描写があることからソフィの記憶に残らない形で父が果てた可能性が高いです。だからこそ同時に罪の意識によって手すりの上で死と隣り合わせになっているのでしょう。

暗闇パートの点滅には複数の意味を感じますが、その内の一つはこの酩酊時の断続的な記憶なのではないでしょうか。

(タイトル的にはここでアフターサンローションを塗るくだりでもあったのではと勘繰ってしまいますが、それは単純過ぎる気もするので難しいですね)

その翌日

翌日から2人の雰囲気がこれまでと全く異なるのです。

今まで塗ってもらっていた日焼け止めを自分自身で塗ろうとしたり、父がカラオケに全く乗り気でなかったり、全体的に2人ともダウナーな感じです。
(初見だと旅の終わりで憂鬱気味になっていると解釈出来てしまう作り方が凄い)

水球で遊んでいて、ボールがソフィに回ってこないカットは象徴的で、仲間はずれにされている、つまり自分が普通とは掛け離れた所にいるのではないかという不安を表しています。

なぜビキニを着ている?と言ったり、歌が下手なことを指摘したり、父はこれまでに見られないほど攻撃的です。

罪の意識から来る転嫁なのか、もしくは前夜に拒否されていてその仕返しなのか、ここは様々な解釈が出来ます。

他人が捨てたタバコを吸う父

今の父を落ち着かせる物がなく、錯乱状態であることを表しています。

ソフィのキスシーン

本作随一のホラーシーンです。
ソフィが男の子とキスしている最中、水面に映る、窓ガラスをバンバン鳴らす父。
こんなシーン見た事ありますか???
話が分かった上で見るこのシーンは本当に怖いです。娘に気付かれない程度の音で窓ガラスを叩き続けている父…
嫉妬、裏切られた憎悪、父としてあってはならない黒い感情がこちらにも恐ろしいほど伝わって来ます。

その後、仕返しとして部屋に鍵をかけて裸で不貞寝をします。

暗い海へ入る父

そりゃ行きますよ。最大のチル(死)を体験しない限りこの感情はどうしようもないのだから…

でも無事に娘を旅から帰すという父親としての自分がまだ残っていたから帰って来れたのです。

そして翌日、娘を帰すその時まで父親100%としてソフィに接する心構えとなったのでしょう。

ちなみに、監督のインタビューによると

カラムが一人のシーンは基本的に、大人になったソフィが、彼女の見えないところでカラムがどのように苦しんでいたのかを想像したものだと思っています。

https://fansvoice.jp/2023/05/27/aftersun-charlotte-wells-interview/

ということなので事実ではないかもしれません。

ただ、父の絶望をソフィが感じているのは確かであり、その理由は直前のソフィのキスシーンに関わるものと考えるのが自然でしょう。

また、この真っ暗な海に向かうシーンは父の最期を想起させます。

男性同士のキスを眺めるソフィ

31歳のソフィのパートナーが女性であることから、この場面の影響は大きいと思えます。

この映画のラストでソフィに子供がいることが分かります。両親とも女性というのは父への忌避感も大いに影響しているのではないでしょうか。

この夜の暗闇パート

父がずっとハァハァと息を切らした声を出しています。これまでの流れで言えばそういう行為の表現なのですが、海から帰ってベッドに倒れた夜にそのような事が行われたとは考えにくいです。
暗闇パートが時系列と独立しているのであれば、前日の夜の出来事と捉えても問題ないかと思います。

肩の傷

これもまた意味深なシーンです。
そのまま受け取れば夜に海に入った時の傷ですが、爪の引っ掻き傷のようにも見えます。自傷行為でしょうか。

ソフィが抵抗して出来た傷かとも思いましたが根拠が薄いです。前日はアルコールも入って無かったのでソフィが忘れているのは無理がある気がします。

彼は いい人

31歳になった父へソフィのサプライズにより、ソフィと旅行客に誕生日ソングを歌って貰えたわけですが…
その内容があまりにも残酷。

彼は いい人 彼は いい人 みんなそう言う
おめでとう

うああああああ… ここがこの映画で一番キツい…

父はいい人なんです。こんなに凄い物抱えて頑張ってお父さん演ったよ… 娘からもこんなに愛されて…

そして、背中を向けて咽び泣く父のカットにオーバーラップ…

もう人一人が背負える罪悪感を遥かにオーバーしてしまいました。

そして娘への手紙が映る。

“ソフィ 愛してるよ
忘れないで パパより”

これは、遺書です。泣きながら片隅に映るこの手紙、それ以外の何物でもありません。娘を帰した後に間違いなく死にます。

今のソフィはパパを愛してくれている、でもこの先ソフィが大人になったときに、この旅行で起きたこと、パパが何を考えていたか、その真実を知ってしまう、それを考えたらもう生きていけない。
だから、”今の”ソフィの中にあるパパのことはずっと、忘れないで。

ということですね……

このあとのシーンではもう覚悟が決まって顔が清々しいです。記念写真にも躊躇なくお金払います。

このポラロイド写真も象徴的で、ソフィに忘れてほしくない父をここに閉じ込めたように感じます。

その他の死んでいると思われる要素

・31歳のソフィが父が買った絨毯を使用しており、形見に思えます。

・父のビデオを持っており、それを一人で見ているのは死んでもいない限りやや不自然ではないでしょうか。当時の父と同じ歳になったタイミングで見返す決心がついたように思えます。

・暗闇パートはあの夜の海の暗闇を彷彿とさせる。
これは少し飛躍しますが、父の入水自殺が明るみになった際の野次馬とサイレンの点滅とも受け取れます。

ラストに娘に突き落とされる表現があることから父の最期は入水自殺ではなく飛び降りだった可能性も考えられます。

暗闇パートはソフィの心象風景であると同時に、あの世の表現でしょう。最後にソフィを送り届けたあとにその暗闇へと歩く父はそのまま帰らぬ人となったことを表しています。

また、これは少しメタですが監督は10代で父親を亡くしており、この映画に自分の父親を追悼する面もあるそうです。

最後のダンス

そして、最後のダンス。
父は全力で思いを込めます。

流れるUnder Pressure
暗闇パートと重なりソフィを強く抱きしめる。
♪ love love love…

嫌悪感を露わにし、父を突き落とす31歳のソフィ。そして11歳の笑顔のソフィと入れ替わります。

11歳のソフィは激しく抱きしめる父を振り解きはしたものの、愛情を感じて笑顔を浮かべていました。

一方で31歳のソフィは、父を突き落とし、悲しい表情を浮かべた状態で暗闇パートが終わってしまうのです。

ビデオが見終わったソフィも視線を落としており、本当の父を受け入れることは出来なかったようにも見えます。

これは完全に憶測ですが、自身もセクシャルマイノリティの経験を経て、旅行時の父親と同じ歳になった今なら父親のことを受け入れられるのではないかと希望を込め、ビデオを再生したのではないでしょうか。しかし、その結果は…。


ラストはソフィを見送ったときの映像が流れます。

そして父は帰る、遠い記憶の中へ。


以上です。

もう11歳のソフィとしてこの映画は見れなくなっているのではないでしょうか。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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コメント

1
あ

感想は人それぞれだがこれを「正しい考察」などと書くのはいかがなものか。

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