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ルーブル美術館“160億円窃盗”のツケは日本人観光客に? 実行犯は“闇バイト”集団か…露呈した「甘い管理体制」

2026年1月2日 14:00

■素人集団に破られた「穴だらけの警備」と経営陣の“記憶喪失”

衝撃的なのは、このような“闇バイト”集団に、世界最高峰の美術館があっさりと突破されたという事実だ。フランス会計検査院の報告書と事件後の行政調査により、その原因が「美術館側の管理不全」にあったことが露呈している。

行政調査の報告書によると、男らが侵入した「アポロンの間」の窓には、かつて鉄格子が設置されていた。しかし2003年の改修時に「消防隊の進入路確保」などの名目で撤去されて以降、20年以上も無防備な状態で放置されていたことが分かった。

実は2018年に行われたセキュリティ監査で、この窓の脆弱性は明確に指摘されている。そこでは今回の事件同様、「高所作業車による侵入の手口」が図解入りで警告されていたという。しかし、2021年に就任した現館長は「引き継ぎを受けていなかった」ため、その報告書の存在すら知らなかったと証言している。一連の管理不全を、行政調査報告書は「経営陣の記憶喪失」と揶揄した。

さらに報告書は警備の欠陥を指摘。指令室では、防犯カメラを見るためのモニターの数が足りておらず、リアルタイムで監視できない状況だったと糾弾している。実際、現場がモニターに映ったのは侵入の4分後で、警備員が映像を確認した時には実行犯たちはすでに「アポロンの間」を立ち去った後だったという。

そして会計検査院も、美術館が長年、予算配分の優先順位を誤っていたと厳しく指摘している。 2018年から2024年の間には「作品の購入」だけで総額1億4500万ユーロ(約265億円)もの巨額を投じている。その一方で、建物や防犯設備の維持費用は、わずかだったと批判した。これに対してルーブル美術館は「2023~25年に134台の防犯カメラを追加・更新した」と反論したが、その金額は約2億3000万円に過ぎない。巨額の作品購入費との落差は歴然としており、かえって「セキュリティ軽視」の姿勢を浮き彫りにする結果となった。

つまり、ルーブルは「見栄え」を優先するあまり、侵入者にとって“あまりに好都合な死角”を、自ら作り出していたのである。

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■経営の“ツケ”か未来への投資か―日本人観光客は「値上げ」
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