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紅白とゲーム音楽、星野源と近藤浩治、創造と地上BGM

あけましておめでとうございます。ゲーム音楽DJ/キュレーターのすいそです。

2025年の大晦日に放映された「第76回NHK紅白歌合戦」、星野源さんによる『スーパーマリオブラザーズ』35周年テーマソング「創造」が披露され、私は泣きました

近藤浩治さんが紅白に出た。

あまりにも素敵な演出とサプライズでした。私はテレビの前で、ぽかーんとする2歳児を抱え、風呂上がりの妻に心配されながら、感極まって顔面をぺしゃぺしゃにしていました。

この感情の昂ぶりについて胸の内を語る前に、紅白とゲーム音楽の接点を振り返ってみたいと思います。

紅白とゲーム音楽

まず何といっても、印象に残っているのが2021年の第72回。『ドラクエ』の「序曲」と「そして伝説へ」が演奏されました。それはその年に亡くなられたすぎやまこういち先生の功績を称え、東京都交響楽団による敬意のこもった“指揮者不在”の演奏でした。

ちなみに、すぎやま先生といえば「恋のフーガ」(1967年・第18回/ザ・ピーナッツ)、「学生街の喫茶店」(1973年・第24回/ガロ)、「花の首飾り」(1989年・第40回/ザ・タイガース)、「亜麻色の髪の乙女」(第53回・2002年、第56回・2005年/島谷ひとみ)など、グループサウンズや歌謡曲の名手としても知られており、紅白の舞台も数多く彩ってきました。

また、過去の紅白ではほかにもゲーム関連の楽曲が披露されたことがありました。「夢を信じて」(2013年・第64回/德永英明)、「ようかい体操第一」(2014年・第65回/Dream5)、「ゲラゲラポーのうた」(2014年・第65回、2015年・第66回/キング・クリームソーダ)、「めざせポケモンマスター」(2015年・第66回/松本梨香)など、いずれも元を辿ればゲームカルチャーから生まれた曲です。とは言え、これらはあくまでアニソンとしてヒットした曲という位置づけの方が強いでしょう。

星野源と近藤浩治

だからこそ、今回の近藤浩治さんの出演は、これまでの歴史とは決定的に意味が異なる“事件”だったのです。

ゲーム音楽作曲家が、ゲーム音楽作曲家として紅白に出た

「『スーパーマリオブラザーズ』音楽 作曲」の肩書きとともに近藤さんが登場し、鍵ハーで「地上BGM」を演奏し始めたときの感動たるや。ゲームと音楽とゲーム音楽をこよなく愛し生きるものとして、あまりにも幸せな光景でした。このときの星野源さんのにこにことやわらかい表情もたまんないですよね。本当に好きなんだなと思います。

ポップスターが、純然たるゲーム音楽を国民的音楽番組のど真ん中に連れ出した。その姿の向こうには、世界初のゲーム音楽アルバム「ビデオ・ゲーム・ミュージック」をプロデュースし音楽としての価値を提示した細野晴臣さんや、ゲーム音楽をクラシックや歌謡曲と文化的に接続したすぎやまこういち先生、偉大な先人たちが切り拓いてきた道が続いているように思えてなりませんでした。

創造と地上BGM

「創造」は、冒頭にも書いた通り『スーパーマリオブラザーズ』35周年テーマソングとして2021年にリリースされた楽曲です。

曲中にはゲームキューブの起動音や『マリオ』作品のSEなどが散りばめられていますが、これらはすべてサンプリングではなくビブラフォンやアナログシンセで演奏されたものです。この、電気的な信号を肉体的な演奏へと変換する行為に詰められた愛とこだわりは、そのまま今回の“ゲーム音楽を紅白に連れ出す”に通じているような気がします。

紅白の映像では近藤さんとのセッション中、ファミコンの2コンマイクで歌っているシーンがありました。このパートは実際のレコーディングでもファミコンの2コンマイクで歌録りが行われたそうです。

インスタでは“ゲーム機にマイクを付けるというアイデアと、長い間品質を保ち続ける技術力に脱帽”と語っていますが、この星野さん自身の遊び心こそ任天堂イズムですよね。

歌詞にも、横井軍平氏が提唱した「枯れた技術の水平思考」を指す“枯技”、“水平に見た”といったワードが用いられています。単なる引用に留まらず、自身の血肉になった思考で実践し、尚且つエンタメとして我々に見せてくれているのが本当に素晴らしいです。

歌詞でいうと、もうひとつ印象的なのが“YELLOW MAGIC”というキーワード。これは『スーパーマリオブラザーズ』のファミコンカセットの色であり、多大な影響を受けたYellow Magic Orchestraへの敬意であり、そしてアルバム「YELLOW DANCER」などで掲げてきた星野さんの哲学を指す言葉でもあります。自身のルーツであるジャズやソウル、ファンクなどのブラックミュージックに対し、日本人としての感性で昇華させたイエローミュージックという音楽性。 それはまさに、ラテンやジャズのリズムをゲーム音楽に持ち込んだ近藤さんの試みともシンクロしています。

初めてジャズを意識したのは、『スーパーマリオブラザーズ』をやった時ですね。(最初のステージである)「1−1」のBGMが家でいつも流れている音楽と同じように聞こえたんです。メロディの裏のチッチキチッチキチというリズムが、ライドシンバルをフォービートで刻んでいるように聞こえて。それがジャズを──その頃はまだジャズという言葉では考えてなかったけど──なんとなく意識した瞬間だったような気がします。

星野源さん、“ジャズ”の楽しさって何ですか? | ブルータス| BRUTUS.jp

星野源さんにとって、『スーパーマリオブラザーズ』の「地上BGM」はジャズでした。「創造」もまさしくイエローミュージック的なソウル/ファンク要素を持つ楽曲です。これらが紅白の舞台で、作曲者自身の手による演奏によって交わったというのは、あまりにも文脈的に完璧で美しく、私は気が付いたら涙が止まらなくなってしまっていたのでした。

オマケ:星野源とゲーム音楽

さて、最後に星野源さんとゲーム/ゲーム音楽との関わりについて、簡単に楽曲紹介をしつつ〆たいと思います。

エイト・メロディーズ / SAKEROCK

SAKEROCKの2ndアルバム「songs of instrumental」(2006年)収録。糸井重里がゲームデザインを手掛けたファミコンのRPG『MOTHER』(1989年)より。オープニング「MOTHER EARTH」と、作品を象徴する楽曲「EIGHT MELODIES」を組み合わせた構成。原曲は田中宏和と鈴木慶一。ハマケンのたおやかなトロンボーンが響く名カヴァーです。


千のナイフと妖怪道中記 / SAKEROCK

3rdアルバム「ホニャララ」(2008年)より。坂本龍一の「千のナイフ THOUSAND KNIVES」(1978年)とナムコのアーケードゲーム『妖怪道中記』(1987年)のBGMをマッシュアップした楽曲。ナムコとYMO周辺との関連性を挙げるとキリないですが、「ゲームセンターCX」を見ていてこのオマージュに気付いたそうで、さすがすぎます。子気味いいマリンバと、ほにゃほにゃしたワウワウミュートの音色が印象的。


Rosenkranz / SAKEROCK

スクエニのゲーム音楽トリビュートアルバム「More SQ」(2011年)より。浜渦正志が手掛けた『サガ フロンティア2』(1999年)の楽曲をバンドサウンドでカヴァー。マリンバとトロンボーンのアンサンブルが溶け合う、まどろみのようなアレンジ。SAKEROCKのベスト盤「SAKEROCKの季節 BEST 2000~2013」(2014年)にも上記2曲含め収録されています。


恋 / 前川みく

アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』にて、前川みくによるカヴァーとして実装。盤では「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER PLATINUM NUMBER 10 全開!ミラクルアドベンチャー!」(2023年)に収録。前川みくのファンであることを公言し、“星野源P”としても知られる彼の代表曲を、担当アイドルが歌うという、色んな意味で夢が詰まったコラボでした。編曲はTRYTONELABOの滝澤俊輔が担当。例の“恋ダンス”はMVでも再現。


Pop Virus / 星野源

5thアルバム「POP VIRUS」(2018年)の表題曲であり、星野源が提唱する“イエローミュージック”の集大成とも言える楽曲。強調されるバックビートと音の隙間が心地いいソウルで、ゲーム『DEATH STRANDING』(2019年)作中のミュージックプレーヤーでも聴くことができます。これが世界中のゲーマーに聴かれた結果、いろんな言語での感想が届いたとか。


Sayonara / 星野源

アルバム「Gen」(2025年)収録曲。ディープなピアノが響き渡るアンビエントソウル。ゲーム『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』(2025年)に提供され、本人役でゲームに出演したことでも話題になりました。小島秀夫監督から冒頭のストーリーを聞いた後に作曲にとりかかったそうで、孤独な楽曲制作とサムの旅路を重ねながらイメージを膨らませたとのこと。


2026年のゲーム音楽シーンではどんなことが起こるのでしょうか。今回の紅白での「創造」のパフォーマンスによって繋がった何かも、この先きっと生まれることでしょう。それが本当に、何より楽しみです。

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ゲーム音楽DJ/キュレーター、本職はゲーム作り屋、ときどきライター
紅白とゲーム音楽、星野源と近藤浩治、創造と地上BGM|すいそ
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