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J/53  作者: 池金啓太
十八話「雪の見えるその場所で」

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鏡花の心境と報告

静希と陽太がそんな会話をしている中、一足早く風呂から離脱した鏡花と明利は脱衣室で寝巻に着替えていた


「ったく・・・顔から火が出るかと思ったわよ・・・」


「ふふ、ごめんね、急に巻き込んで」


「本当にね、あれで私が風呂場に残らなかったらどうするつもりだったわけ?」


今回の混浴が静希と明利の合同の作戦だったことは鏡花は何とはなしに察していた、無論偶然から始まったものだったとしても一時的にとはいえ静希と明利の脳内がシンクロした結果でもある


今回は鏡花が自棄になったためあの場に残ったが、もし生娘のように脱兎のごとく走り去ったらどうするつもりだったのだろうか、最悪自分だけ一人で入浴する羽目になったかもしれないというのに


「ん・・・鏡花ちゃんだったら残ると思ったから、残らなかったら陽太君に向ける気持ちはその程度ってことだし」


裸を見られるくらいで動揺してちゃ恋愛なんてできないよと明利は堂々と言ってのける


実際に静希と結ばれた明利が言うと重みが違うなと鏡花は少しだけ気圧されていた


もし鏡花が何の布石もなしに陽太と全裸で鉢合わせすることになったらまず間違いなく陽太を生首状態にさせていただろう、今回は静希と明利が一緒にいたというのが大きい


「それに途中から積極的にできてたと思うよ、壁の向こうで何してたか後で教えてね」


「ぅぐ・・・あんたなんか最近アクティブになったわね・・・」


そうかな?と首を傾げながらも明利は微笑んでいる、静希のおかげなのか、それともただ単に自分以外の恋愛ごとだからか、生き生きしているように見える


当事者としては複雑な気持ちだが、明利は純粋に自分を応援してくれているのだから感謝しなくては、もっともその行動に感謝できるかどうかは別問題だが


「ところでさ、あんたさっき静希の上に座ってたけどさ、あぁいうことよくやるの?」


「ん・・・私の定位置は大体静希君の足の間か隣かな、雪奈さんのお気に入りの位置が静希君の足の間なんだけどね、たまに雪奈さんに抱きしめられた状態で一緒にいることもあるよ」


明利は雪奈と一緒に静希を共有している間柄だ、恐らく互いに折り合いをつけているのだろう、というより明利は両者にマスコット扱いされている節があるからこそ上手くいっているのかもしれない


静希の足の間に雪奈が収まっているところを想像するのが嫌に簡単だったのは言うまでもなく、不思議と微笑ましくなる


「なんていうか、よくもまぁあぁいう風にくっついていられるわね、私だったら十秒持たないかも・・・」


「あはは、慣れっていうか・・・恥ずかしさの限界を超えるとあれくらい普通にできるようになるよ、それは多分鏡花ちゃんも一緒だと思う」


恥ずかしさの限界を超える


明利はわざと言葉を濁したが、恐らくそれは情事のことを言っているのだろう


明利は、いや正確に言うなら明利と雪奈は静希にあられもない姿をすべて見せているはずだ


それこそ本人が見せたいと思っていない、見せたくないところまですべて見せた可能性もある


静希の趣味趣向の部分まで詳しく聞くつもりはないが、恥ずかしがり屋だった明利をここまで変化させるあたり、一体何をやったのか気になるところだ


「恋する乙女はってやつかしらね・・・あぁ、思い出したらまた顔赤くなってきた・・・」


「ふふ、頑張って、ほとんど裸を見られたんだからもう何見せても恥ずかしくないよ」


明利は壁の向こうで何が起こったのかを知らないために、タオルで体を隠した状態だと思っているのかもしれないが、実際は鏡花は陽太に体をほとんど見せた


さすがに秘所までは見せていないとはいえ、陽太の目はその体のほとんどを捕えていただろう


そう意識した瞬間、鏡花は再び顔が赤くなる


本当にのぼせなくてよかったと思いながら着替えを終えてタオルや洗面用具を片付ける


このことを後で明利に話すかもしれないと思うと億劫な気分に陥る


きっとアドバイスと一緒にもっとハードルが上がった提案をしてくるに違いない


今回は実習中だからそこまでのことはしてこないとは思いたいが、もし寝床を同じにするなどと言うことがあったら先に断っておくべきだろう


学生身分で、というか実習中の場所で男子と同衾するつもりなどない、それがたとえ自分の好きな相手でも


そんなところを想像するだけで顔が赤くなる、下手に知識があるせいでかえってそんな行動を自分が取れる気がしないのだ


逆に、そんなことをしても堂々としていられる明利がうらやましい、本当に相手が好きだったら意に介さず抱かれることができるのだろうかと鏡花はうつむいてしまう


「明利、あんたって地味にすごいのね」


「え?えっと、褒められてる?」


「うん、すっごい褒めてる」


褒められたと言われてうれしいのか明利ははにかみながら頬を掻いている


相手を一心に想うことができるというのは一つの才能だ、時にその才能は暴走を引き起こすこともあるが、何の問題もない日常などではほとんどがプラスに働く


逆にマイナスに働いたところを、鏡花は見ている


静希を一心に想うがあまり、静希が死んだと思ったあの時、明利は人さえも殺そうとした


過ぎた感情は危険を及ぼす


静希がいる今はそれでもいい、だがいつか明利が静希を失ったらどうなってしまうのだろうかと少しだけ不安になると同時に、どうしたらそんな風に人を想うことができるのかとうらやましくもなる


どれが正解なのかもわからない、恋に楽な道などないのだなと改めて実感した鏡花は明利の頭を撫でながら小さな同級生を少しだけ見習うことにした






「以上が今日の報告になります、とりあえず明日から本格的に行動して目標の位置を特定したいと考えています」


静希達は入浴後髪を乾かしてから城島に宛がわれた部屋へと向かい、今日の細かい報告を行っていた


行動時間が少なかったためそこまで状況は進んでいないが、少なくとも大型の動物が一体存在するということは確認できている、これだけでも行動するだけの価値はある


「わかった、今雪がかなり降っているから、明日もまた積もるだろうから注意して行動しろ」


「了解です、あんたたちの方から何かある?」


報告はすべて鏡花が行っていたために静希達はその場で座って鏡花が話をしているのを見ているだけだったのだが、唐突に話を振られて少し悩んでしまう


なにせ言うべきことはすべて鏡花が言ってしまったのだ、物事をまとめたり報告するというスキルが格段に上達しているために静希達が突っ込むべきところがないのである


「あ、一つあるんですけど、万が一の場合こいつを使わせてほしいんです」


そう言って静希がトランプから取り出したのは以前エドから譲り受けた拳銃だった


それを見て城島の視線が鋭くなる


「相手が動物とはいえ、射撃か・・・」


「はい、大きさが最低でも二メートルくらいある可能性があるので一応と思いまして」


静希が拳銃を持っているという事実は特に気にしないのか、城島は腕を組んで悩んでいるようだった


彼女自身銃を扱った経験があるために、こういう状況でどう立ち回るのかアドバイスができると思ったのだが、どうやら悩んでいるのは全く別の事柄であるらしい


「射撃はいいが、誤射だけはするなよ?身内を撃ったなんて笑い話にもならん」


「それはもう、もしかしたら陽太にあたるかもしれませんけど、拳銃くらいだったらこいつには効きませんから」


能力発動状態の陽太は極端に耐久力が上がっているため銃程度では傷つけることはできない、それは以前の実習でも確認済みだ、それに仮に銃口が向けられても陽太だったら避けるだろう


「まぁまずは対象を補足することを前提にしておけ、戦闘が行われるかどうかはその後だ」


「それなんですけど、どういう行動をとったら戦闘するべきなんですか?」


城島の言葉に鏡花が質問を返す


今回の静希達の実習内容は未確認生物の調査という名目だ


もし対象が人間に対して害悪となるものであった場合処分もやむを得ないということだが、その境界線があいまいなのである


「そうだな、肉を食えるとわかった時点で処分しろ」


「え・・・そんな段階ですか・・・?」


性格が温厚だとか、どういう体をしているかは全く関係なしに、肉を食えることがわかった時点で処分、静希達はその指示に少しだけ驚いていた


「えっと・・・何で肉が喰えたらアウトなんすか?別にそれくらい普通じゃ・・・」


「あぁ、動物としてそれは普通だろうな、だがこの場所と、目標の大きさが問題だ」


城島の言葉に静希と鏡花はその意味を理解した


静希達が今いる場所は時期が時期ならそれなりのレジャースポットとなり人が多く集まる場所でもある、そんな場所に大型の動物が偶然とはいえやってきたらどうなるか


それが完全な草食動物であれば多少客を驚かせるだけで済むかもしれない、もしかしたら客を呼び寄せるための因子にもなりえるだろう


だがその動物が肉を食えるタイプだったら


万が一、人が大勢集まる中で、人を食い、その肉の味を覚えたらどうなるか

一度でもそんなことが起こればこの場所は危険だとして二度と客などは訪れないことだってあり得る、この場所の安全性を考慮し、何より起こり得る事件を未然に防ぐためにも必要なことなのだ


「じゃあ、どっか別の場所に行ってもらうとかできないんすか?」


「動物に話が通じるのであればそれもいいがな、殺すのが嫌なら捕獲ということを視野に入れてもいい、相手が奇形種だった場合は研究対象だ、貰い手はいくらでもある」


動物は何か意志があってそういう風に生まれるわけではない、奇形種に生まれたからと言ってそれが悪だということはありえない


だが万が一のために殺すというのも、実験動物扱いされるというのもやるせない話だ


人間を優先的にする以上仕方のないことであるというのはわかっているが、少し目標である動物が哀れに思えてくる


以前のザリガニのように実際に危害を与えたわけでもなく、ただそこら辺を動いているだけなのだ、同情の気持ちがわかないわけでもない


「・・・それに、清水も言っていたが、その行動自体不審な点もある、それを考えれば、九割方戦闘はあると考えておけ、場合によっては私も動く」


城島の言葉にその部屋の中の緊張度が一気に増す、城島が動く、それは鏡花が報告の中で言った目標と思わしき足跡の軌道の裏付け考察に関するものだ

直線的過ぎる軌道から、目標が特別な訓練を受けているか第三者が操っているかというものだが、万が一そこで能力者が出てくるようならば以前のようなことになりかねない


以前のように部隊が一緒にいるのであれば危険は少ないかもしれないが、その状態でさえ静希が重傷を負ったのだ、今回は部隊などはいない、そうなった時に城島が動くつもりでいた


本来生徒たちの身の安全は彼らを監視し審査している監査の教員がすることになっているが、樹海での行動から城島は監査の教員の信頼度をいくつか落していた


監視が主な仕事であるため、死ぬギリギリまで助けようとしないのだ、自分の生徒が死ぬくらいなら自分が手を出す、本来教師が生徒に過度に手を貸すことは禁じられていることではあるが城島の決意は固いようだった


引き続き予約投稿ですが土曜日なので二回分投稿


曜日感覚が若干狂っているのでもしかしたらミスしてるかもしれませんが、その時は生暖かく見逃していただければと思います


これからもお楽しみいただければ幸いです

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