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J/53  作者: 池金啓太
十八話「雪の見えるその場所で」

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その意識

「いい感じだね」


「あぁ、さっきの言葉さすがに引いたけど鏡花的にはオッケーだったみたいだな」


鏡花と陽太が座っているところから少し離れた場所で静希は明利の髪を洗いながら横目で二人を観察していた


明利も同様で二人がいい雰囲気になるかどうかを細かくチェックしているようだった


「・・・ねぇ静希君、静希君は私の体って好み?」


「変な影響受けんなよ・・・かなり好きだぞ、細いし、小さいけど柔らかいし」


髪を洗いながらそんなことを言っていると明利は嬉しいのか気持ちいいのか目を細めて笑みを浮かべている、雪奈という比較対象がいるだけに自分の体にコンプレックスを抱くことの多い明利だが、今はこの状態が幸せなようだった


そして静希の視線の先にいる陽太は髪を洗い終え、次は体を洗うようだった


鏡花も少ししてから体を洗おうとするのだが、そうなると当然体を覆っているタオルは外さなくてはいけないわけで、どうしようかとかなり葛藤しているようだった


どうするどうすると何度も自問自答を繰り返しながら鏡花は他ならぬ自分自身が言った言葉を思い出す


陽太にだけは全部見せる


だから鏡花は足を地面に叩き付けた


その瞬間静希と明利がいる場所と鏡花と陽太がいる場所の間に薄い壁が作られた


さすがに静希に裸を見せるのは憚られたかと明利は少し安堵し、静希もその行動の意味を把握して小さくため息をついた


「ん?おいおい勝手に壁作っちゃまずいだろ」


「後で戻すわよ、体洗う時だけ」


そう言って鏡花はタオルを外してボディソープを垂らして身体を洗っていく


白い肌を包む泡と、僅かに揺れる乳房に陽太は一瞬目を奪われた


「・・・なによ」


「え?あ、いやなんつーか・・・でかいなと思って・・・」


相変わらずデリカシーのない発言だが、鏡花は陽太の態度の変化に気づいていた


僅かに狼狽しているのだ


先程まで何の関心も示していなかったのに対し、陽太はこちらを意識的に見ようとしていない、だがちらちらとこちらに目を向けている


そういえば陽太が女性の裸を見たのは幼い時だったなと思い返し、鏡花はにやりと笑う


「どうしたのよ、女の裸は見慣れてるんじゃなかったの?」


顔を真っ赤にして羞恥心で僅かに指と声が震えながらも鏡花はにやにやと笑う


わざと胸部を強調するようにして陽太に視線を向けると、陽太も顔を赤くしているのが見て取れた


「いや、そりゃ昔の話で・・・」


これはチャンスかもしれないと鏡花は内心ガッツポーズした


陽太ははっきり言って鈍感だ、相手の気持ちだとかそんなものを全く考えない上に、自分の言葉や行動がどんなものであるかさえも考えていないほどのバカでもある


今まで陽太にとって自分はある意味師匠のような存在で、教えを乞うだけだった、恐らく女性としても正しく認識されていなかっただろう


ここで鏡花は確かに女性なのだと認識を改めさせることができる


無論鏡花だってここで好意を向けてもらおうと思っているわけではない、どちらかと言えば自分が女性だということを認識し、少し意識させることができるだけでいいのだ


恐らく陽太自身も、今まで女性と言うものを正しく認識してこなかっただろう


過剰なスキンシップをする姉、まったく成長しない明利、残念姉貴分雪奈


身の回りに正しい女性像ともいえる存在がまったくいなかったのだ、当然ともいえるかもしれないが、逆にこれは好機でもある


「ふぅん、そういう反応するんだ、あんたもちゃんと男なのね、さっきまでは無関心っぽかったのに」


「しょ、しょうがねえだろ、お前スタイルいいんだし、こんな近くで見るの久しぶりだし・・・」


陽太の狼狽が面白くてついついにやけてしまう、とはいえ鏡花だって今いっぱいいっぱいな状況だった


他人に裸を見せるというのはあまり経験はない、しかもそれが男子であればなおさらだ、しかもそれが自分の好きな相手、頭の中は今にも爆発しそうなほどに熱を持っていた


心臓は今までにないほどに脈打ち、顔はのぼせているのではないかと思えるほどに赤く、手はわずかに震え、喉が渇いてしょうがない


これ以上は自分も危険だなと感じながら鏡花は早々に体を洗うことにした


恐らく陽太の頭の中には自分の裸体がしっかりと記憶されたことだろう


これから鏡花と話すごとにそのことを思い出し、鏡花が女であるという認識を強くすれば今回の行動は成功に近い


「・・・あれだな、お前思ったより細いんだな」


「ん?まぁそりゃ女の子だしね、それに体には特に気を付けてるし」


陽太の思わぬ言葉に鏡花はついいつもの調子で返答してしまう、陽太が見ているのはどうやら体全体の話のようだった


腕だけではなく体全体の厚みの問題、男子のそれとは圧倒的に違う細さ、陽太はそれを見て、何を意識したのか、頬を掻きながら頭からシャワーを浴び始めた


陽太の体は前衛ということもあって筋肉質だ、体中に小さな傷も見受けられる、対して鏡花の体は胸部を除いて全体的に細く、その白い肌にはほとんど傷はない、筋肉もないわけではないが目に見えるほどあるわけでもない


陽太を見て鏡花は微笑む、自分がここまでしたのだ、絶対に陽太を惚れさせてみせる


そう再び決心し、鏡花は体中についた泡を落とすことにした


鏡花が再びタオルを巻き、壁を元に戻すとすでに静希と明利は髪も体も洗い終え、湯船につかっているようだった


静希の膝の上に明利が乗る形でのんびりイチャイチャしているように見える

さすがにここで情事に至るようなことはないようだが、明利の表情を見るにかなりギリギリのところで踏ん張っているようでもあった


自分たちがいては邪魔なのかもしれないなと思いながら鏡花はタオルで体を隠しながら湯船に身を沈める


湯船にタオルを入れるのはマナー違反ではあるが、この場では目をつむってもらうほかない、もしここでタオルを湯に入れるなと言われたらまた能力を使ってでも隠すしかないのだ


熱い湯が体の芯まで温めるべく全身に熱を帯びさせる、ゆったりと湯につかっているだけでその柔肌からゆっくりと漏れ出すように汗が滲んで、瑞々しい肌からゆっくりと滑り落ちて行く


極楽とはこのようなことを言うのだろう、風呂に入った言葉として確かにこれは正しい言葉だと理解できる


「ああぁぁぁぁぁ・・・気持ちいい・・・」


「明利、だらしない声でてるわよ」


つい口から出てしまったのだろうか、間延びした声に明利ははっとなりながら口を押さえるが今さらもう遅い、明利を乗せている静希は苦笑しながらその頭を撫でていた


「今日寒かったからな、しょうがないって、こういうのもいいもんだろ」


「・・・まぁ否定しないけどね」


自分の額から垂れる汗を手で拭いながら鏡花は横目で陽太を見る、自分たちと同じく湯船につかっている陽太は、これまた自分たちと同じように熱い湯を楽しんでいるようだった


熱に耐性があってもやはりこういった湯につかるというのは気持ちいいものなのだろうか


「ていうかあんたらさ、随分とくっつくようになってるけど・・・ちゃんと学生らしい付き合いしなさいよ?」


「安心しろって、そこまでバカじゃないよ、それに明利がいればほぼ確実に避妊できるしな」


「し・・・静希君・・・そういう事はその・・・秘密の方が・・・」


陽太以外にもデリカシーと言うものを教えたほうがいい人間がここに一人、鏡花はそう思いながら額に手を当てる


確かに明利の能力なら体内の状態もすべて同調によって理解できるだろう、免疫などの能力を強化すれば確実に避妊も可能、だからと言って完全に避妊できるというわけではない


というか情事を行っていることを前提に話しているところが恐ろしかった


「明利はどうなのよ、そういうことするのって」


「え?えっと・・・その・・・静希君と一緒になれてるって感じがして、すごくうれしいよ?」


「・・・なんていうか、最初に会った時から随分変わったわねあんた」


鏡花が最初にあった明利は気弱そうな小さな女の子だった


静希に恋しているというのはその態度からわかっていたし、勇気が足りなくて一歩前に踏み出すことができなかったところも十分に見てきた、その明利が今少女ではなく、女の顔をしている


時間経過とは恐ろしいものだと実感しながら鏡花は湯船に深く体を沈める


自分もいつかあんなふうになるのだろうか、陽太相手に


そんなことを考え、想像した途端に顔が一気に赤くなる


鏡花も知識でどのような行為をするかは知っている、いくら天才だのなんだの言われようと思春期の女子だ、そういう事に興味も関心もある


だからこそ、自分と陽太がそういう事をしているのを想像してしまい、血液が沸騰しているのではないかと思えるほどに体と顔が熱くなっているのがわかった


「・・・もう出るわ・・・このままだとのぼせちゃいそう・・・」


ゆっくりと立ち上がる鏡花を見て明利は静希と視線を合わせた後、互いに頷いて立ち上がる


「私も上がるよ、ちょっとくらくらしちゃった」


「くっつきすぎてるからよ、自業自得ね」


二人でそう笑いながら女用の脱衣室へ向かっていくのを見送って静希は小さく、陽太は大きくため息をついた


「どうした陽太、珍しくげんなりしてるな」


「あー・・・あぁ、そうかも・・・」


陽太の様子から、落ち込んでいるというよりも気まずいという感情があるのを読み取った静希はふむと呟いて口元に手を当てた


「もしかして鏡花に見とれてたか?」


「・・・」


「・・・図星か?」


冗談のつもりだったのだが、陽太は視線をそらしながら黙ってしまっている、この反応は当たりだろう


まさか事実を言い当ててしまうとは思っていなかっただけに静希は少し驚いていた


陽太は単純だ、その気にさせればそれだけモチベーションは上がり、モチベーションに比例して発揮できる力も変わる、そしてそれは何も戦闘だけに限らない


おおよその行動や感情に対しても陽太は単純だ、好きなことは好きだし嫌いなものは嫌いだ、そして無関心なものはとことん無関心である


今まで鏡花に対して女性としての関心がなかったはずの陽太が、なぜか今鏡花を女性として意識している節がある


流石は陽太の担当について半年程度しか経っていないのにもかかわらず高成果を上げることができた鏡花である、どうやら陽太のツボを的確に刺激することに成功したらしい


誤字報告が五件たまったので二回分投稿


今日から数日間ちょっと用事があるために予約投稿になります


反応が遅れてしまうかもしれませんがどうかご容赦ください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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