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J/53  作者: 池金啓太
十八話「雪の見えるその場所で」

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目に見える白

いつものように教師からの激励の言葉があってから静希達はすぐに移動を開始した


意気込んで移動してはみたものの片道五時間かかるとあってはさすがにモチベーションを保つことも難しくなると言うものである


今までの実習の中で最長の移動時間というだけあって暇を持て余してしまった


持ってきたゲームなどで適度に暇をつぶすのだが、個人でやるといかんせん盛り上がらないためにパーティーゲームで一勝負しているところだった


「あ、ちくしょう、ここもう買い占められてるのかよ・・・」


「残念だったわね、さっさとターン終了しなさいよ、後ろについてる厄介な神様押し付けてあげるから」


「でもそろそろ変化するんじゃないかな、結構時間経ってるし」


「今のうちに遠くに避難しておくか、進行系買っておいてよかった・・・」


四人がやっているのは全国各地の物件を購入して日本を発展させるというゲームだが、これにおいても人間性というのは本当にでるものだ


静希は進行系や妨害系のカードを手に入れて運よりも知略で進行するタイプ

明利は持ち前の運の良さで普通のカードがもらえるはずの駅でレアカードを引きまくりサイコロの目も平均して高いものが多い


鏡花は知略を駆使しようとしているのだが如何せん運の悪さが出てしまい苦戦しているようだった


陽太は不思議とびりになることを回避し、適度な位置などにほぼ無自覚で止まっている、何も考えていないのにこの成果は大したものだと言えるだろう


「そういやせんせー、今日俺らはどこに泊まるんすか?」


「ん、今日は依頼主の管理するキャンプ施設の一部で寝泊まりする予定だ、暖房も風呂もあるから安心しろ」


「ちょっと静希!冬眠カードとかやめてよね!今私ボンビーついてるんだから!」


「はっはっは、付いてるからこそだろ、さっさとびりに転落してもらうぞ」


「あ、回避できた・・・よかったぁ・・・」


陽太と城島の会話など全く聞いていないかのように静希達はゲームに熱中している


明利が持ち前の運を発揮している中、鏡花が静希の策略にはまり見事にお邪魔キャラに搾取されている、他人の不幸は蜜の味とでもいうかのような静希の笑みが印象的である


「静希ってさ、こういうパーティーゲームやると本当に性格悪いってのがわかるわよね」


「なんだよ今さら、俺の性格の悪さなんて今に始まったことじゃないだろ」


「静希君、自分でいう事じゃないと思うよ?」


明利が苦笑いしているが、鏡花は理解していた、静希は自分の性格の悪さを自覚している、だからこそ性質が悪いのだと


「でもよ、静希ってこういうのやると大抵二位とかになるよな」


「そうなんだよ、どうしてもトップになれないんだ、頑張ってはいるんだがなぁ」


その事実に鏡花はへぇと意外そうな表情をする


静希達が行うパーティーゲームは比較的運の要素と頭脳戦略のバランスが取れているものが多い、ある程度までは頭脳で何とかなるのだが最終的に物を言うのは運の良さなのである


「こういうので一位とるのってあんたらの中で誰なの?雪奈さん含め」


「あー・・・雪姉は強いぞ、あと明利も強い」


明利の運の良さは以前のカジノの時に知っていたが、雪奈が強いという事実に鏡花は再び意外そうな表情を作った


雪奈はそこまで運もよさそうではなく、なおかつ静希のように策略を巡らせるタイプではないと思えたのだ


「雪さんはあれだな、自然と相手を落としていくのが得意なんだよ、相手が活躍しようとする少し前に活躍しておいしいところ持って行くっていうか・・・」


「あー・・・確かにそういう感じかも、これで言うと目的地の物件すでにほとんど買い占めてる状態にしてたりだとかかな」


「・・・なるほどね、なんとなくわかったわ」


静希のように意図的に妨害をするのではなく、自分の思うように動いた結果が相手への妨害になっているのだ、それはそれで厄介なことでもある


「で、明利は運の良さで勝ちまくると」


「あぁ、明利は凄いぞ、運の要素があるミニゲームでの勝率ほぼ十割だ」


「一番すごかったのはあれだな、メテオ回避したときだな、サイコロ五個対サイコロ十個で勝ったことあるし」


もちろん明利がサイコロ五個でお邪魔キャラが十個での合計出目勝負だったのだが、明利が負けることを確信していた彼らの予想を裏切りダイスの女神は明利に微笑んだ


確率的には何もおかしい話ではないが、それにしても実際にそういうところを見てしまうと驚愕してしまうのだ


そんな話をしていると何回目かの乗換の駅へと到着する、さすがに内陸部に近づいているためか電車の本数が限られてきている、乗り換えの待ち時間もそれなりにかかってしまうのだ


「そういえば昼飯どうする?なんも考えてなかったけど」


「・・・そこら辺で駅弁でも買いましょ、こういうときくらいしか食べることないだろうし・・・いいですよね先生」


「あぁ構わないぞ、どうせ次の電車が来るまで時間もある、今のうちに買ってこい、荷物は見ておいてやる」


城島の厚意もあり静希達は近くの売店へと向かい、それぞれ目についた駅弁を購入することにした


思えば駅弁を食べるのは初めてかもしれないなと思いながら、長い電車移動の良い楽しみができたと静希達は満足していた


電車での移動をしてどれくらい経っただろうか、昼食の駅弁を平らげ、何度目かのトンネルを通り抜けるとあたりの風景が一変し白銀に包まれた雪景色となっていた


普段自分たちが住んでいる場所ではめったに拝むことのできない銀世界に、一班の人間のテンションは否応なしに上がり続けていた


雪が降り積もっているのにもかかわらず空は青々としており、太陽が雪に光を注ぎ続けているせいか大地そのものが輝いて見えるのだ


スキーなどを行う際にゴーグルをつけるのはこの光で目をやられないようにするためでもあるが、今の静希達にはそんなことは関係ないと言わんばかりに窓の外の景色をその眼に収めていた


「おおおぉぉ!雪だ雪!すっげー積もってんな!」


「積もってる雪を見るのは久しぶりだな、雪姉に写メ送ってやろ」


「これだけ積もってるとさすがに邪魔ね・・・」


「うわぁ、柔らかそう・・・」


陽太は窓に張り付くように、静希は携帯を取り出し写真を撮りながら、鏡花は口では悪態をついているがその口元は笑みを浮かべている、明利は目を輝かせて窓の向こうにある雪に想いを馳せていた


「お前達、騒ぐのはいいが周りの迷惑にならないようにな・・・そろそろ到着だ」


城島の一喝を受けてなお静希達のテンションは収まるところを知らない


目的の駅についてまず最初にしたのは雪に触れることだった


「おぉ、冷たい、これ全部雪かぁ・・・」


目的の駅から下車してバスを待つ間、静希達は雪かきによって歩かない場所に集められた雪に触れながらその冷たさを直に味わっていた


肌を刺す寒気も静希達の住む街より強いというのに、雪があるという事実が静希達の体を活発にさせているのだろうか、ちっとも寒いと感じなかった


「鏡花!この雪の塊でなんか作ってくれよ、せっかくあるのに積んであるだけじゃもったいないぞ」


「ったく、変なところでこき使わないでよね」


口では文句を言っていても鏡花はノリノリだった、陽太の近くにある雪の山に手を当てて能力を発動し大雑把ながら大きな雪だるまへと形を変えていく


雪は基本氷が細かくなった状態である、普段変換していない不慣れな物質な上に、一つ一つが接合したものではないため、変換の能力で形を変えるのには少し時間がかかったようだが、そこは天才の名を欲しいままにした鏡花だ、少ない時間でもコツを掴んだのか、数回の試行錯誤を重ねて雪像を作り出して見せた


「ふふん、どうよ」


「流石っす姉さん!まじぱねえっす!」


鏡花と陽太がそんなことをやっている間に静希と明利は小さな雪だるまを作ってバス停の近くにちょこんとおいていた


能力で作るのもいいがこういうものは実際に手で作ることにも楽しみを見出せるものである


雪で遊ぶ中、静希の後方で短く黄色い悲鳴と鈍い音が聞こえる


どうやら鏡花が転んだようだった、さすがにしっかり舗装されている道とはいえ雪を完全に除去しきれていないのか、僅かに残った雪が氷となって地面に残り滑りやすくなっているようだった


「きょ、鏡花ちゃん、大丈夫?」


「こういう雪ってさ、普段見ないからこそいい物よね、毎日だと殺意を抱きそうよ」


「もう抱いてるんじゃないのか?」


明利が転んだ鏡花の体についた雪や水を払う中、雪の洗礼を受けた鏡花は眉間にしわを寄せて周囲にある雪を睨んでいる


雪に罪はないとはいえ、雪が及ぼす被害はかなり大きい


都心で大雪が降った日には多くの交通機関に影響を与えるだろう


鏡花が滑ったように車が滑ることも多くなるだろうし、電車も安全確認のため止まることも増える、多く雪が降るところでは陸の孤島となるような場所だって出てくるのだ


自然災害とまで言うつもりはないが、晴れも雨も雪も、適度にほどほどにあるからよいのだと実感できる


「お前達じゃれるのもそこまでにしておけ、見てるこっちが恥ずかしい」


「えー・・・先生、こういう時にはしゃがないのはダメっすよ、こんだけ積もってるんすから」


「お前は犬か、周りの目があることを忘れるな、私たちは遊びでここにきているわけじゃないんだからな」


城島の言葉はもっともだ、確かに今静希達は一般の人間から依頼を受けるという形で実習を行っている、行動には常に責任が伴う、今の静希達は生徒でありながら喜吉学園という学校そのものの看板を背負っているのと同義だ


その気の引き締まる言葉も、彼女が手の中で雪玉を作っていなければもっとまじめに聞くことができただろう


「先生だって雪玉作ってるじゃないですか、おあいこですよ」


「バカ者、これは雪質を確認しているんだ、お前達も向こうについたらやっておけ、今後に響くぞ」


雪質などと言われても雪に触れる機会の少ない静希達にとってその雪がいいものか悪いものか、あるいはどのようなものかなどわかりようがない


城島と同じように手の中で雪玉を作ってみるのだが、これがどのような質の雪なのかというのはよくわからなかった


誤字が五件分溜まったので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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