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J/53  作者: 池金啓太
十八話「雪の見えるその場所で」

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冬の一幕

十二月、今年も最後になろうという月に五十嵐静希の暮らす部屋にはある一つの家具が出されていた


それは古来から日本にある家具だった


その歴史は古く、室町時代にはすでにあったとされるほどである、現代においてもそれはところによって形を変えながらも、冬の季節に置いては多くの人々を温める役割を担っている


歴史深いだけあって、日本人でこの家具を知らないものはいないのではないかと思えるほどの知名度を誇り、その性能も高いが、同時にそれはとても危険でもある


曰く、人を堕落させる悪魔の道具である、人を縛り付け二度と動けなくする化生の家具である


マイナスイメージが先行しそうな言われようだが、その言葉には嘘偽りは一切ない


「あぁあぁ・・・これ・・・いいわね・・・」


「これこそ日本の冬の風物詩・・・あぁ・・・これはよいものだ」


「このようなものがあるとは・・・日本・・・素晴らしい国ですね・・・」


「お前ら目に見えてだらけてるな」


そう、人だけではなく人外たちまで堕落させてしまうその家具とは『炬燵』である


そもそも暑さ寒さなんてものを人外たちが感じるのか否かはさておいて、どうやら暖かい炬燵の中に入っているというのは彼らにとっては娯楽のようだった


今までソファの近くにあったテーブルを少し大きめの炬燵テーブルと入れ替え、炬燵布団をかけてスイッチを入れたのが二日前、そしてたった二日でこれほどまでに人外たちは炬燵の魔力に取り込まれてしまったのだ


「まぁまぁ静、そう言わないの・・・あったかいからいいじゃない」


もちろん人外だけではなく、人間である雪奈も当然のようにその魔力に魅了され炬燵から首だけを出して静希の足を枕にしてぬくぬくと暖をとっている


「まさかそんなに炬燵を気にいるとは思ってなかったよ、邪薙はまだ日本の神様だからわかるけど、お前ら海外出身だろ?炬燵は合わないと思ってたんだけどな」


「いやいや・・・この絶妙な暖かさ、そして保温性・・・これは抜け出せなくなるよ・・・ちょっと背中が寒いのが難点だけど」


「私が生きていたころは暖房器具などと言う概念も、暖炉程度しかありませんでしたからね・・・人々が座ってその場で団欒を過ごせるようなものはありませんでした・・・それに比べ炬燵は素晴らしい、食事もできる、寝ることもできる、何より誰かと共にいられる、これは素晴らしいものです!」


メフィとオルビアからすれば今まで炬燵と言うものを見たことはなかったのか、これまでにないほどにテンションが上がっているように見える


寒さなんて感じないようにすることだってできるだろうにこの喜びよう、どうやらかなり炬燵という道具が気に入ったようだ、気に入ってもらえて何よりなのだが、銀髪褐色肌の悪魔、金髪碧眼白人女性、そして極め付けに犬顔の大男が炬燵に入って暖を取っている光景はかなり異様だ、今まで人外と共に暮らしてきたが、ここまで異質な空間になったことは未だかつてない


何よりこの三人がここまで緩んだ顔をしたのを見るのは初めてなのだ


メフィは気を抜いている時は基本だらけていたりするが、邪薙やオルビアは基本的にしっかり者なのでこういった表情を見られるのは非常に稀である


「二人とも、お茶淹れたよ、あとみかんもあるよ」


「お、お茶―!みかーん!明ちゃん愛してるぅ!」


キッチンの方から盆に暖かい茶の入った湯呑とみかんを持ってくる明利、まるで妻のようなたたずまいに静希は苦笑するばかりである


「悪いな明利、ほら入れ、あったかいぞ」


「うん、それじゃ失礼するね」


テーブルの上に湯呑とみかんを置いて少しずれてくれた静希の横に入り込んで嬉しそうに静希に自分の体を預ける


その様子を静希と邪薙、オルビアは微笑ましく、雪奈とメフィはニヤニヤしながら見守っていた


その視線に気づいたのか、少し恥ずかしそうにしながらも明利は静希から離れようとはしなかった


「いやぁ、やっぱり一線超えると女の子は変わるわねぇ・・・見てて面白いわぁ」


「むふふ、眼福眼福、こりゃ私も負けてられないね」


メフィの言葉に明利は少し顔を赤くしてうつむいてしまう


そう、先日の静希の冤罪事件があってから数日後に、静希と明利はめでたく結ばれた


明利としても、そして雪奈としても念願の形だった


次の日に腰が抜けてまともに立てなかったり、歩こうとすると体に違和感があったりと明利に対する負担はかなりあったようだが、それでも明利は幸せそうだった


二人が結ばれた次の日にはすでに鏡花が事の内容を知っていたりと恥ずかしいこともあったが、静希もこのことにはおおむね満足していた


「そういや二人とも明日は鏡花のところに行くんだっけか?」


「うん、ガールズトークしてくるよ」


「寂しかったら来てもいいんだよ?お姉ちゃんが何とかしてあげるから」


さすがに遠慮しておくよと静希は苦笑いする、女だけの中で自分だけ男というのは非常につらいものがある


なにせ話が合わないことだって考えられるのだ、男と女は別の生き物とはよく言ったもので、価値観から考え方まで何もかも違う


中には似たような考えができる人もいるかもしれないが、明利を始めとして鏡花も雪奈もれっきとした女性だ、そんな中に自分が入り込んでいくのはさすがに憚られるのだ


それに静希は静希で予定が一つできているのだ、ある意味丁度良かったかもしれないと思いながら、静希は明利の淹れた茶を飲んで大きく息を吐く


やはり炬燵はいい、そう思いながら





翌日、明利と雪奈は宣言通り鏡花の家にやってきていた


目的は静希に言ったとおりなのだが、実際はただ遊びに来ただけである、お菓子を食べながらのんびり過ごす、炬燵はないものののんびりできる空間が鏡花の部屋にはあった


女の子らしい部屋に置かれたテーブル、そして紅茶とクッキーが甘く芳ばしい香りを部屋に充満させていく


雪奈も陽太と同じく鏡花の家のペットである犬、ベルがお気に入りで思い切りその毛をなでまわしながらテンションを無駄にあげていたのが鏡花の印象に強く残っていた


「そういや、そろそろ私と鏡花ちゃん誕生日じゃん?鏡花ちゃんっていつもはどんな感じで祝ってるの?」


「え?どんなって・・・普通ですけど?ケーキ買って蝋燭立てて・・・でもどうしてです?」


唐突な雪奈の疑問に鏡花は疑問符を飛ばしていたが、明利と雪奈が目を見合わせてうぅんと唸る


「いやね、私たちはいつも祝い慣れてるけどさ、鏡花ちゃんの誕生日会開くのって初めてだからさ、なんかやっちゃいけないことあるかなと思って」


「例えば宗教上の都合でお肉食べられないとか、甘いものは控えてるとか」


「・・・私みんなの前で肉とかお菓子とか食べたことあったと思うんだけど、一応そういうのはないから」


あくまで一般的な家庭に育った鏡花には、人と比べて特別な点があるというわけではなかった、強いて言えば家族全員能力者で少し優秀というくらいである


だが確かに明利と雪奈の心配も理解できる、自分にとって普通なことがほかの家庭では異常に見られてしまうことだってあるのだ、鏡花は今年から静希達と仲良くなったために互いの家庭環境に関して多少知っておいた方がいいと思ったのだ


「うちは基本おおらかよ?あの陽太を見ても普通に接してたし、あからさまに非常識な行動をとらなければ・・・」


自分の父と母を思い浮かべるが、彼らが本気で怒ったところはあまり見たことが無い、自分が悪戯をした時などはきちんと叱られたが、あれは怒っていたと言えるのだろうかと首をかしげてしまう


「そう?なら安心かな、ちゃんとプレゼント用意しておいてあげるから楽しみにしておいてよ」


「喜んでもらえるように頑張るよ」


「ん・・・あ、ありがとね・・・あ、でも刃物貰っても困りますよ?」


鏡花の言葉にカラカラと雪奈は笑って見せる、確かに雪奈は明利達の誕生日の時も何かと刃物を贈っていたが、鏡花はそれほど刃物を使うというわけでもないので持て余してしまう、というより誕生日プレゼントに刃物を送るというのはどうなのだろうと思ってしまう


「安心してよ、使わない人にはそういうのは贈らないって、実用的なのを用意させてもらうよ」


世話になった先輩とはいえ、誕生日プレゼントにナイフや刀を貰ってしまったらさすがの両親も苦い顔をするだろうなと思いながら鏡花は内心安堵する

なにせ以前鏡花にナイフの指導をしてから度々その指導をしようと鏡花に接触してきているのだ


有難く指導を受けさせてもらい、それなりに腕は上がったと自負しているが、それでも鏡花は接近戦やナイフを用いての戦闘を行うようなタイプではない、いざという時以外は秘めておくのが一番だろう


「そういえば雪奈さんと鏡花ちゃんってどっちが誕生日先なの?」


「えっと・・・私の方が先じゃない?来週末だし」


「私は再来週、実習が終わった後になるわね、雪奈さんの方が先かぁ」


雪奈の誕生日の方が早いという事実に、明利は二人を見比べる


同じ月に生まれているのになぜこうも見え方が違うのだろうかと不思議に思えてしまう


「そういえば、リサーチじゃないですけど、雪奈さんは何が欲しいですか?刃物以外で」


「刃物以外って・・・鏡花ちゃん、私だって別に刃物が好きってわけじゃないんだよ?刃物を使うことが多いってだけで」


雪奈はその能力の性質上常に刃物を持ち歩いているために、一時は刃物中毒者であると認識されていたほどだ、まったくもってそれは過ちなのだが


中身はただの女子高生、少し攻撃的であることは否定できないまでも別段戦闘狂というわけでも刃物がないと生きていけないというわけでもない


「んん・・・そうだなぁ・・・心がこもってればなんでもいいけど・・・実用的なのがいいかなぁ・・・」


「・・・明利、雪奈さんがよく使うものって何?」


「・・・刃物・・・かなぁ」


実用的と言われて真っ先に思いつくのは刃物だった、雪奈はそれこそ化粧をあまりしない、化粧品などは実用的ではないだろう、恐らく外出するときや礼服などを着る際は静希に化粧をさせているだろうが、その場合雪奈ではなく静希にとって使えるものになってしまう


雪奈は服のセンスは悪くない、むしろいい方で時折買い物に出ては何気なく似合う服を買ってくる、だがその体形から、下手なものを買ってしまうとサイズが合わなかったりする上に彼女のセンスに合わない可能性もある、靴なども同じようにサイズと履き心地の関係からプレゼントとしては微妙だ


装飾品の類は雪奈はあまり好まないために実用的ではない、そうなってくると最も彼女が使用する道具、刃物が思い浮かんでしまうのだ


「・・・こうなったら私の技術の粋を凝らして最高級の剣を作るしかないんじゃ・・・」


「いやいやいや・・・もっと考えてよ、何で私イコール刃物の構図が成り立ってるのさ・・・いやまぁおおむね私のせいだけども」


雪奈だって花も恥じらう女子高生、普通の誕生日プレゼントが欲しいと思うのは至極当然のことである


雪奈との付き合いが長い明利でも、彼女へ贈るプレゼントはなかなか悩みどころなのだ


彼女の日々の行動サイクルなどを知っているが故に、彼女が使うもの、使わないものもおおむね把握している、だがその生活の中で必ず使用頻度が高いところに入ってくるのが何を隠そう刃物である


もう刃物を贈るしかないんじゃないかと明利が悩んでいるなか、鏡花も同じような考えに至りそうだった


「あ、でも静希からは明利と一緒に付き合うことになったんだし、いいもの貰えるんじゃないですか?」


「ん・・・まぁ、そうだけど、実は静からもらうものはもう決まってるんだ・・・あ、いやこの場合は私があげる立場になるのかな?」


少し意味が分からない言葉に鏡花は首を傾げながら紅茶のお代りを入れてクッキーを口に頬張る


「あげる?貰うのにですか?なにをあげるんです?」


「私の処女」


雪奈の言葉を聞いた瞬間鏡花は口の中にあったものを勢いよく吹き出してしまい、大きく咳き込む


なにも恥じらうことはないというかのようなバカ正直な発言に、無駄な男らしさを感じながら明利は鏡花の吹き出したものを布巾でふき取っていく、その顔が赤くなっているのは言うまでもない


「あ、あの、雪奈さん?あのですね、まぁせっかく付き合ってるんですし?不純異性交遊するなとまではいいませんよ、だけど表現がストレートすぎます!」


「あ、そっか・・・ごめんごめん、私誕生日になったら静に抱いてもらうんだ」


「まだストレートすぎます!もうちょっとひねって、オブラートに包んでください!」


先日、明利と静希が結ばれたというのは鏡花も知っていた、その時の話は明利に根掘り葉掘り聞いたこともある、その全てが赤面してしまうほどの内容だったために聞かなければよかったと思ったのは内緒である


だがそのおかげで雪奈もようやく静希に愛されることができるのだ、今まで明利に気を使って遠慮していたために、ようやく雪奈も報われるだろう


もっともその結果がどうなるかわかったものではないが


「それで明ちゃんに聞いておきたいんだけどさ・・・初めてってやっぱ痛い?」


「え?あの・・・私は・・・小さいから、静希君がすごく気を使ってくれて・・・」


同じ恋人を持つもの同士つながる部分があるのだろうか、何の抵抗もなく初体験の話に移行しているが、明利も明利で話すつもり満々だった


鏡花の聞いた話ではその体格差と静希の『アレ』のサイズを考慮してかなり念入りに前戯を行い、二、三回明利を絶頂させてから行為に及んだのだという


明利はその時点で意識朦朧としていたが破瓜その痛みで朦朧としていた意識が強制的に覚醒させられたのだという、静希のサイズが大きかったというのもあるらしいが、かなり衝撃的だったそうだ


「そういやさ、確か最後のあたりで気絶しちゃったんだっけ?そんなにすごいの?・・・その・・・やるのって」


「え?あ、わ、私は三回目で・・・気絶しちゃって・・・でも、その・・・すごく幸せだった・・・かな・・・」


静希と明利の初体験は合計三回の行為に及んだのだという、もちろん避妊をきちんとした状態であったらしいが、三回目の途中で明利の精神が耐え切れなかったのか、それともあまりの快感に脳が拒否反応を起こしたのか、それとも体力の限界を迎えたのか明利は意識を喪失してしまったそうだ


「まぁ、初めてが痛いっていうのはわかったけど、そんなにすごいのかぁ・・・私もそうだけど、鏡花ちゃんにとっても為になる話だね」


「え?何で私も!?」


鏡花の驚きに対して雪奈が浮かべたのは満面の笑み、何も言わなくても分かっているよという慈愛に満ちた瞳をしていた、そして対照的に明利は気まずそうな顔をしている


しゃべったな


鏡花の責めの瞳に耐えきれなかったのか明利はどんどんその体を小さくしていく


どうやら雪奈にも鏡花が陽太に恋しているというのは話してしまったようだ

無論、別に話したことを咎めるつもりはない、陽太を相手にしている時点で幼馴染である雪奈にもいずれ知られるとは思っていた


だからと言ってそのまま話されていい気持ちはしない、そこで鏡花はちょっとした仕返しをすることにした


「だったら、経験豊富な明利が雪奈さんと一緒に静希に抱かれればいいんじゃない?あいつもそれなら喜ぶと思うけど?」


「えぇ!?そ、それは・・・その」


本当にちょっとした仕返し、というか冗談のつもりだったのだが、明利は顔を赤くして雪奈をちらちらと見ている


この反応ではまんざらでもないようにとられてしまってもおかしくない


「いやまぁ、私はどっちでもいいけど、明ちゃんがいいっていうなら・・・」


雪奈が反論するかと思ったらこっちも乗り気だったために話の終着点が見えなくなってきてしまった


自分で言っておきながら面倒な発言をしてしまったかもしれないという事実に気づき鏡花は深く後悔した


この二人、というか静希をはじめとした幼馴染たちに自分の常識は通用しない、改めてそれを思い知らされた瞬間だった


「え、えっと、や、やっぱり初めては一人の方がいいですよ・・・大事にされてるって・・・わかりますし・・・それに、自分だけを見てもらえるし・・・」


「んん、そう言うものかなぁ?」


同じ人を好きになって同じ人と付き合っておきながらこの考えの違い、どうにも明利と雪奈のこの違いについては不思議に思ってしまう


明利は静希が好きだ、そして雪奈も好きだ、そして雪奈も同じように静希も明利も好きなのだ、そこは両者ともに変わらないのにこの考えの違い


そのうち自然に三人で情事を行うことになっても不思議ではないなと思いながら鏡花は紅茶を一気に飲み干すことにした


「そうだよ、私のことは後でもいいよ、鏡花ちゃんはどうなのさ?陽のこと」


「わ、私ですか?私は別に」


唐突に話を振られてどうしたものかと悩んでしまう鏡花、まさかこっちに飛び火するとは思っていなかったのだ


既に明利から情報を貰っていたためか、随分とこちらの事情に明るくなっているようで雪奈はしきりに笑みを浮かべている


静希とは別の意味で知られたら厄介な人に知られてしまったものだと鏡花は項垂れてしまう


「そりゃ、私だって・・・その、陽太とそういう風になれればって・・・思いますけど・・・思いますけど、まだ今はいいです」


「ほう?そこまでがっつくことはないと?」


雪奈の言葉に鏡花は頷く


この二人のように長年の思いが募り募ったものであるならば、今のように強く相手を求めるというのも理解できる、だが鏡花と陽太は出会ってからまだ一年も経っていないのだ


普通の人よりは濃厚な時間を過ごしているとはいえ、肉体関係を強烈に欲するまでには至らない、というか鏡花の常識がそこまで至ってはいけないと警鐘を鳴らしているのだ


自分の気持ちさえ相手に伝えていないというのにいきなり関係を持つなどと、幼馴染たちや彼の姉が許しても常識人である鏡花が許しはしない


静希達を常識人と考えてはいけないのだ、無駄に考えがぶっ飛んでいるのだから自分がブレーキ役になってやらなければ


「今はあいつのことを知りたいし、あいつに私のことを知ってほしい、それで一緒にいたいって思ってほしい、まずはそれで手一杯です」


以前の鏡花なら恥ずかしがって本心を隠していたかもしれないが、今の鏡花は昔の彼女とは違う、静希に出会い、陽太に救われ、明利に諭され、彼らが信頼に足る人物であると心の底から言うことができるのだから


「ふむふむ・・・なかなか青春を送っているんだねぇ・・・あの陽相手にかぁ・・・」


以前静希がしたようなリアクションをしたことで、目の前の人は確かに静希の姉貴分だということを思い出しながら小さくため息をつく


血の繋がりに関わらず強い繋がりを得ている、これは過ごした年月の賜物だろう、ここまで来ると本当に血がつながっていないのか疑うレベルだが


「あそうだ、参考までに聞いておきたいんですけど、陽太の好みの女性ってわかります?」


せっかく昔から一緒にいる人物が二人もいるのだ、聞いておいて損はないと思ったのだが、質問に対して明利も雪奈も悩みだしてしまっていた


「好み・・・好みかぁ・・・明ちゃん知ってる?」


「んと・・・スタイルがいい人によく視線が向いてたけど・・・あれは好みなのかな・・・?」


かつてメフィと戦闘したときにも、スタイルの良さを聞いてテンションを上げていたのを思い出す、男子高校生としては至極当然な反応だとも思えてしまう


そんなことを考えながら鏡花は自分の体を軽く指で撫でる


「私は・・・あいつ的にオッケーかな・・・?」


鏡花はかなりスタイルがいい、もとより頭だけでなく体を動かすことも好きなために日々の運動に加え自分のスタイルの維持にも余念がない、肌にも髪にも気を使ってかなり高いレベルで維持されていると自負している


「鏡花ちゃんなら平気でしょ、かなりスタイルいいし」


「そうだよね・・・同い年とは思えないよ・・・うん・・・本当に・・・」


スタイルの話に移行したせいで明利の押してはいけないスイッチを押したのか、自分の体を触りながら鏡花のそれと見比べてはため息をついている


明利と鏡花を見比べた時、同い年であると判断できる人間はどれほどいるだろうか、身長的にも、そしてスタイル的にも明利と鏡花ではかなりの差がある、それはもう絶望的なほどに


「め、明利は静希に好かれてるんだからそれでいいじゃない、別に陽太に好かれたいってわけじゃないんでしょ?」


「それは、そうだけど・・・静希君も小さいより大きい方が好きなんじゃないかな・・・」


大は小を兼ねるっていうしなどと諺としてそれは正しいのだろうかと思えてしまうような使い方をしているところを見るとかなり落ち込んでいるようだった


話の持って行き方をミスったかなと反省しながら鏡花は何とか明利を慰めようと言葉を考える


「で、でもさ、男って興味ない体には反応しないっていうしさ、あんたはちゃんと静希にしてもらえたんでしょ?だったら静希は明利みたいな体が好みなのよ」


「・・・そ・・・そうかな?そうだったらいいなぁ」


先程よりは少しだけ元気が戻ったようで、顔を少し赤らめながら明利は微笑んだ


明利をマイナス方向に持って行ってはいけない、それは以前の実習で学んだことだ、明利は普段がおとなしいために一度手が付けられなくなると静希以上に何をやらかすかわかったものではないのだ


静希がいれば基本明利の精神は安定するのだが、いない時にマイナス方向に入るとなかなか持ち直すのに時間がかかる、なんというか本当に明利は静希に依存しているというのがわかる一面である


「そっか・・・静は明ちゃんみたいなのが好きなのか・・・じゃあ・・・私はダメなのかな・・・」


明利が持ち直したのとは正反対に今度はスタイルのいい雪奈が落ち込んでしまっていた


今度はこっちかと鏡花は内心ため息をつく


彼女のスタイルはかなりいい、前衛ということもあり多少筋肉がついているところもあるが、少し高めの身長に鏡花以上に豊満な胸部、それでも腰や足に無駄な脂肪がついているということもない


一体どんな体調管理をしているのだろうかと問い詰めたくなるほどの肉体を持っていても相手に喜んでもらえるのが最高なのだろう


さてこの人をどうやって持ち直させようかと鏡花は頭を抱えてしまった


自分もそうだが、静希の周りには面倒な人間が多い、鏡花はそう思いながら雪奈を慰める言葉を頭の中で模索し始めた


誤字報告が十五件ぶん溜まったので四回分投稿


やっぱりかという感じですがまぁお付き合いください


そして今回から十八話スタートです


これからもお楽しみいただければ幸いです

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