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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」

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彼の依頼

「それじゃあ、僕はそろそろホテルに戻るよ、二人とも、準備して」


「「了解、ボス」」


「あ、エド・・・一つ伝えておくことがある」


アイナとレイシャが店を出る準備をする中静希がエドを呼び止めた


店の扉に手をかけた状態でこちらを向いたエドを見ながら、静希はわずかに眉をひそめる


伝えるべきか否か、少しばかり悩んだ後で静希は口火を切った


「まだ未確認だけど、悪魔の契約者の情報が手に入った・・・例の仮面の奴が関わってるかもしれない・・・詳細はメールで送る」


「・・・っ!・・・そう・・・そうか・・・わかった、ありがとう」


そういってエドは店から出て行った


最後に見せた複雑な表情は、一体何を考え、何を思っていたのか、それは静希にも分からない


「仮面って・・・あんたたちが契約者になるきっかけを作った奴ってこと?」


「あぁ・・・俺は実質被害ゼロだったけど・・・あいつは友達を殺されてる・・・思うところもあるだろうと思って伝えたけど・・・藪蛇だったかもな・・・」


それはこの事件が起こる前に静希がテオドールから仕入れた情報の一つだ、悪魔の契約者の話、何も関係ないとは断言できない


四月、六月、八月、それほど連続して起こった召喚が無関係とは思えないのだ


静希が誰かに気遣うというのを見るという状況に慣れていない鏡花は少し意外そうな表情をした


なにせ他人に対して、というより自分たちに対して一切の遠慮のない静希が、誰かに気を使っているという場面を見れたことに驚いていたのだ


静希でも気を使ってしまうようなところだったという事だろうか、それとも相手が恩のある相手だからだろうか、鏡花は測り兼ねていた


「それじゃあカエデさん、俺たちもお暇します」


「あらそう?残念ね」


「また今度来ます、全部終わったらきちんと」


静希の言葉にカエデは楽しみにしてるわと微笑む


支払いを済ませ店を出た静希達はひとまず城島の元へと戻ることにした


警視庁はかなり忙しそうにしており、その中で城島は悠々と缶コーヒーを飲んでいた


「先生、一班全員戻りました」


「帰ったか・・・ひとまずお前たちがやることはない・・・体を休めろ・・・だが五十嵐、お前には少し話がある、付いて来い」


何とはなしにそんな気はしていたという顔をしながら静希はとりあえず城島の後についていくことにした


城島の後についてきたところにいたのは一人の男性だった


スーツ姿に鋭い瞳、細身ながらに鍛え上げられた肉体であることがわかるその男性に静希は見覚えがあるような気がした


「悪いな国岳、ずいぶん待たせた」


「気にするな、まさかお前の教え子がここに来ることになるとは思ってなかったけどな」


二人の口ぶりからどうやら二人は知り合いであることがうかがえるが、静希からすれば初対面、この場にいるのは非常に居心地が悪く感じられた


「初めまして、国岳だ・・・お前のことは資料とこいつからの愚痴で聞いている」


「あ・・・あんまりよさそうな内容じゃなさそうですね・・・五十嵐静希です・・・」


差し出された手を握り返し、苦笑いする静希はその顔にやはり覚えがあった

どこかと聞かれると困るが、どこか見覚えがある顔だちをしている


「あの・・・国岳さんって」


「あぁ、こいつは学生時代、私と同じ班だった奴だ、ドロップキックしてた奴と言えばわかるか?」


そう言われて静希は頭の中で城島に関わる情報を探し出し、かつて見せてもらった完全奇形の討伐後の写真を思い出した


奇形種の前で肩を組んで微笑む村端と帽子をかぶった城島、完全奇形の屍の上で高笑いする町崎、そしてもう一人、その町崎にドロップキックを放っていた男子生徒


「あ・・・あぁ!あの!」


「・・・その覚えられ方は凄く不本意だけどな・・・」


城島、町崎、村端、国岳


この四人が学生時代同じ班で活動したかつての班員たち


今や全員が職を持ち、それぞれ活動しているというのは知っている


城島は教師、町崎は軍人、村端は霊装の売人、となると国岳は何をしているのだろうか


「城島、本題に入ってもいいか?」


「あぁ、こいつでよければ好きに使ってやれ」


「あ・・・あの、えっと、俺なにさせられるんですか?」


一体どういう状況になっているのかわからない静希は戸惑いながらも苦笑いを浮かべてしまう


かつて城島と一緒にいたこともある人間だ、一体何を考えているかわかったものではない


しかも今まで出会った人間の構成上、この人が班の頭脳役だったと考えるのが妥当だろう


城島は高校時代少し荒れていて暴れまわることが多かったと聞く、町崎は今は落ち着いているものの死体の上に登って高笑いするあたり少年時代はやんちゃだったと推察できる、村端はあの性格上班を制御するには向いていない、となれば眼前の男性がかつて班を取りまとめていたと考えるのは実に自然な思考だ


「単刀直入に言う、お前にある仕事を頼みたい」


「仕事・・・ですか?」


一体何を任されるのかもわからない中静希はわずかに眉をひそめた、静希に仕事を頼むという時点でそこまでいい話ではない、なにせ静希は悪魔の契約者だ、まともな仕事を回されるとは思えない


今までの経験上、まともな内容ではないことは静希はわかっていた


その表情を見て察したのか、国岳は一つ息をついて静希をまっすぐに見つめた


「一つ断っておくが、俺はお前の連れに頼むのではなく、お前に頼むんだ、そこを間違えるな」


「って言ったって・・・ねぇ・・・」


今まで静希に届いた依頼は別に静希じゃなくても解決できるような、どちらかというと悪魔の力が原因で起こった内容だ、静希の力を求められたというわけではない


大人たちが静希に仕事を頼むときはたいていろくなことはない、それがわかっているが故に静希はため息が止まらなかった


「国岳、もっとわかりやすく話してやれ、今こいつは軽い疑心暗鬼になってるんだ」


今回の件で静希は改めて大人の恐ろしさと頼もしさを実感した、たった数名の無能力者が企てたことで自分がここまで不利な状況にさせられたのだ、多少なり大人を警戒してしまうのも無理のないことかもしれない


「・・・そうだったな、じゃあ明確に言おう、今回の事件の原因を潰したい、その手伝いをしろ」


その言葉に静希は首を傾げた、何故そんなことを自分に言うのだろうか、事件の解決は警察の仕事であって自分に回すような内容ではないはずだ


「あの・・・国岳さんって警察の人ですか?」


「あぁ、公安に所属している、お前に頼みたいのはこいつとの接触、および逮捕までの時間稼ぎだ」


国岳の言葉に静希は息をのむ


公安、警察において公共の安全を保持するための機関のことを指す、主に危険レベルの高い事件などの捜査を担当し、機密性の高い内容のものを扱うことからその内容が知られることはあまりない


「・・・そういうのって、俺みたいな一般人に協力要請しちゃダメなんじゃないですか?」


「お前は俺たちの中では一般人扱いされていない、世界に数えるほどしかいない悪魔の契約者、しかも今回の事件のほぼ中心人物、問題はないだろう」


現在確認されているだけで悪魔の契約者は手で数えられる程度しかいない、しかもその中で所在が正確に把握できているのは今のところ静希を含め二人程度しかいないだろう


そのほかの契約者は国に依存せず、好き勝手行動する人間が多数であるためにその現在位置を把握する事すら難しい


その為現在位置がわかっており、なおかつ学生である静希は非常に貴重な存在なのだ、多少の無理は効くという事でもある


「今俺たちは・・・いや正確には今まで俺たちは山本孝之の情報を集め続けていた、そして今尻尾を掴む寸前まで来てる」


「・・・そこに今回の事件・・・ですか」


国岳が言いたいことが大体わかってきた、今まで黒い噂の絶えなかった山本孝之の犯罪への加担の証拠を集めるものの、人脈や各所への根回しなどで一つ一つ潰されてきたのだという、政治家を相手にするということは同時にその危険を孕むという事でもあるから国岳は気にしていないようだったが、問題はここから先だ


今回のことで山本孝之の国家治安機関である警察への意図的な介入の可能性と、その証拠に近い情報が上がってきた


そしてその危険を冒してまではめようとした人物は、日本の悪魔の契約者五十嵐静希


そうなると諸外国との結託や、裏取引なども考えられるため、公安所属である国岳はかつての同期、城島を訪ね話を持ち掛けたのだという


「そうだ、恐らく向こうもこちらの動きは掴んでいるだろう・・・となれば可能な限り早く動きたい・・・そこでお前には工作活動を行ってほしい」


「・・・工作活動?」


あまりいい言葉には聞こえないが、少なくとも学生に頼むような内容ではないことは理解した、一体何をやらせようというのかと静希が訝しんでいると城島が静希の背を叩く


「証拠がそろうまでの間、お前には山本孝之の気を引いてほしい、多少攻撃的にな、少なくともはめようとした張本人が自分を狙っているとわかったら、何よりも早く自分の身の安全を優先し情報操作が遅くなるだろう」


「要するに嫌がらせして余計なことさせないようにしろってことですね」


静希の要約に国岳はそうだと相槌を打つ、やってほしいことはわかったが、あまり気乗りしない


なにせ今静希は警察機関のど真ん中にいる、簡単に言えば違法捜査にも近い行動、恐喝やら脅しやらとそういう行動をとれと言われているのと同義なのだ、ここで頷くだけで法に触れそうである


「それって、また俺が捕まるようなことになりませんか?暴行とか器物破損とか不法侵入とかで・・・」


「そこは証拠を残さず上手くやれ、お前は隠密行動に長けていると城島から聞いている、現にお前は数日とはいえ警察の追跡から完璧に逃げおおせた・・・無能力者相手なら問題ないだろう」


その言葉に、静希は城島が自分の背を叩いた理由がわかった


国岳は悪魔の契約者としての静希ではなく、ただの能力者としての静希の力を借りようとしているのだ


悪魔の存在がなくとも有能な人間であると判断し、今回の仕事を任せようとしている


彼らは警察だ、立場があり、それが発覚しただけで離職、最悪刑務所行きだ

それに引き換え、静希は今回の被害者にあたる、目の前に姿を現すだけでも効果があると踏んだのだ


嬉しい反面少し面倒でもある、期待されては頑張りたくなってしまうからだ


「・・・一つ確認したいんですけど・・・証拠が残らなければなにしてもいいんですか?」


「問題ない、目的遂行が最優先事項だ、それ以外はとるに足らないことだ」


自分に向けてまっすぐ放たれた言葉に静希は小さく息をついた、その眼は鋭く、そして強い力を秘めていた


「お願いがあります、まず相手の情報が欲しいのと、準備に少し時間をください、準備ができ次第、行動開始します」


静希は、この仕事を受けることにした


個人的に思うところがあったというのもある、自分自身の力が必要とされているのであれば、少し鬱陶しくもあるが嬉しくもある


そしてそれ以上に今回自分をこんな目に遭わせてくれた人間に多少なりとも仕返しをしたいという気持ちがあるのも事実だ


「わかった、情報に関しては城島経由でそちらに渡そう、他に要望あるいは質問はあるか?」


「作戦の最長時間は?」


「遅くても明日の夕方までだ、それだけ時間を稼いでくれれば十分事足りる」


その言葉を聞いた後、静希は少し悩んで、眼前にいる城島と国岳を見比べて小さく意を決する


多少賭けでもあるが、ここは城島の人徳を信じるほかない


「明日、その山本孝之のちょっとした情報が仕入れられることになっています、それをそちらにお渡しします・・・ですが出所は聞かないでください」


「・・・了解した・・・有益であればありがたい・・・他には?」


「ありません、今すぐ準備を開始します」


後で雪奈に連絡しなくてはいけないなと思いながら静希が去っていく中、その場に残された城島は小さくため息をついて国岳を睨む


いや、睨むというより国岳の方に視線を向けたという方が正しいかもしれない、仕事続きで眉間にしわが寄っているから睨んだように見えてしまうのだ


「あまりうちの生徒に危ない橋を持ってこないでくれ、こちらとしても立場がある」


「そうだったな、まぁ学生ながらになかなか肝の据わった奴だ、うちにほしいくらいだよ」


煙草に火をつけて大きく紫煙を吐く国岳を見て城島は目を細める


どのような形であれ自分の生徒に対して危険な依頼を持ってきたのだ、多少思うところはあるだろう


「さて、俺は目標の情報を整理してくる、お前はあいつのフォローでもしてやれ」


「・・・言われなくてもそうするさ」


煙草の火を消してその場から去っていく国岳の背を見ながら城島は目を伏せる


今回のことで城島は自分の考えを改め始めていた


静希は確かに行動力や判断能力は高いが、その能力は集団でこそ活かされるものだと思っていた、だが今回静希は人外たちと共にいたとはいえ単独でここまでの行動をして見せた


静希の報告から頼れる大人がいたということで、完全なる単独行動とは少し違ったようだが、それでも普段慣れた連携ではなく、ただの隠密行動でここまで動いて見せたのだ


静希の才能が目覚め始めたのかもしれないと、城島は考えていた


もとより派手な行動が得意というわけではなかったが、夏の部隊での訓練により静希は隠密行動とそれに関するスキルをかなり多く習得していた、日々訓練を重ねようやくその努力に実がついたという事でもある


個人の能力が高くなっているというのは勿論喜ぶべきことだ、だが静希の場合は少しだけ事情が異なる


なにせ彼は悪魔の契約者だ、これから大人になれば否が応でもさまざまな任務を押し付けられるだろう


単身での行動能力が高くなればなおさらその傾向は顕著になる


彼が真価を発揮するのは集団行動時の指揮だが、今後どうなるかによっては静希に対してこちらから進路のことを話さなくてはならないかもしれない


場合によっては、日本という国に属するのではなく、自由に行動させた方が静希のためにもなるのではとも考えていた


教師というのは面倒なものだなと自覚しながら、城島は静希の後を追うべく部屋から退室していく


一方準備を始めると言って部屋を出て行った静希はまず最初に鏡花たちの場所へと向かった


携帯で連絡を取り現在位置を聞いてから即座にその場に向かうと、三人は飲み物を口にしながら談笑していた


「あ、お疲れ様、お説教でもくらったの?」


鏡花が笑いながら皮肉を言ってくるのを苦笑しながら流すと、静希は大きくため息をつく


「いや、仕事を頼まれた、ちょっと嫌がらせをするだけの簡単なお仕事だとさ」


「・・・?嫌がらせ?」


さすがにこの説明ではわからなかったのか、三人は首をかしげてしまっている


とりあえず静希が事情を説明し終えると三人は渋い顔をしていた


なにせつい先刻まで逃げ回っていた立場の人間が今度は追いまわす立場になったのだから


少し位休めばいいのにとも思うが、仕返しをしてやりたいという静希の気持ちもわかるために何とも言い難い


「で?あんたはこれから行動開始すると・・・何するつもりよ?」


「聞きたいか?」


邪笑を浮かべながらそう聞き返す静希に鏡花は苦い記憶を追想しながら遠慮しておくわと首を横に振って見せる


静希は静希で結構苛立ちが溜まっているだろう、まだ山本孝之が今回のことを指示した人間であると確定したわけではないが、それを確認するためにもこれからのことは必要だ


どちらにしろ彼は捕まえておいた方がいい、それは静希が確信を持って言えることでもある


「静希君、何か手伝えることはある?」


「そうだな・・・明利にはナビを頼みたい、目標に種を仕込むからその道案内を頼むよ」


明利の申し出を静希はありがたく受けることにした、今回のことで分かったが、状況把握ができる索敵系の能力者がいるかいないかで難易度は一気に変わる


今回は人外たちの協力も得て簡易的な索敵を用いたが、明利の索敵の方が高性能であることに変わりはないのだ


「話は聞いたようだな・・・」


四人が話しているところに、静希の後を追ってきたのか城島がやってきた


その声音から彼女の機嫌がそこまでよくないことを察すると静希達は少しだけ表情を硬くする


なにせ城島が不機嫌な時にはろくなことが無いからだ、今までの経験上彼女の機嫌が芳しくない時に事態が好転したためしはない


「先生、いいんすか?こんないかにも面倒そうな内容だっていうのに・・・」


「まぁなんだ、こいつ自身思うところもあるだろうし、何より件の議員が逮捕されておいた方が何かと都合がいい、その手伝いならまぁ問題は見過ごして然るべきだろう」


「犯罪行為をする時点で見過ごせないレベルで問題だらけだと思いますけど?」


「今回は私も加担する、少なくとも万が一が起きないようにはするさ」


陽太や鏡花の疑問を完全に受け流し、静希をはじめ城島と明利はやる気満々のようだった


明利がやる気があるのは半ば当然かもしれないが城島までやる気を出しているあたり少し珍しい


「何も犯罪行為だけを行うわけではない、今回はあくまでグレーゾーンでの行動に限定する、もちろん証拠は残さないがな」


「それでも気が引けますよ・・・静希、本気でやるわけ?」


「おうよ、憂さ晴らしには丁度いい陰湿さだと思うぞ?」


もう完全に八つ当たりに近い、目標が自分を陥れた相手かどうかはもはや関係なくなっている節がある気がしてならないが、もう止まる気はないようだった、相手が不憫でならない


危害を加える以外にも方法はいくらでもある、法的にグレーゾーンを突けば無論反応は遅れるし証拠の隠滅も楽になる、相手が静希に対して大きな負い目があるのであればなおさら優位に事を進められるというわけだ


犯罪者にされかかっていた生徒に犯罪行為すれすれを要求するというのも何ともおかしな話だが、それほど事態は切迫しているという事だろうか


鏡花は政治のことはよくわからない、というより政治家が犯罪を犯した場合の対応と言うものがわからないと言った方が正しいだろうか、裏で手を回して捜査をさせなくするなんて言うドラマかマンガのような話が現実にあるとは考えにくいのだ


証拠がそろっている以上、目標の捕縛は時間の問題ではないかとも思えてしまう


「あの先生、そこまでして時間稼ぎする必要あるんですか?もうさっき静希がいろいろ取りそろえてたみたいですけど・・・」


「策は何重にも張っておいて損はない・・・それに証拠がいくらあっても、別の証拠を用意されると厄介だ」


別の証拠


城島の言葉に一瞬その意味が分からなかったが鏡花は数秒してその言葉の真意を理解する


今回静希が用意させたのは目標である山本孝之に不利な証拠だ、だが時間的猶予を与えれば、彼にとって有利な証拠を用意させるだけの時間を与えることになる


彼の名前が挙がったのはつい数時間前、仮に山本孝之が警察署内の全ての情報回線を網羅していたとしても数時間のうちに用意できるものなどたかが知れている


だからこそそれ以上の時間的猶予を与えないために静希達が動こうとしているのだ


警察がそんな行動をとればひと悶着起こすことは間違いなく、後々面倒の種になりかねないが、完全に証拠を消せるだけの実力を持った能力者に依頼するのであれば話は別だ


「五十嵐、準備はあと一時間で終わらせておけ、日が暮れ次第動くぞ」


「了解です、明利、索敵の準備頼むぞ」


「うん、任せて」


やる気満々の三人を眺めながら陽太と鏡花は自分たちも加担するべきだろうかと悩んでしまう


陽太はさておき鏡花の能力は隠密行動には非常に有用に働く、だがどうにも気乗りしない


何か目標があってそれを手に入れるだとか、誰かを連れ出すだとか、そういう明確な目的があるのであれば鏡花のモチベーションも上がっただろうが、今回静希達がするのは早い話が嫌がらせだ


陰湿な行為がそこまで好きではない鏡花としてはどうしてもやる気が出ない


「鏡花、お前はいいのか?参加しなくて」


「ん・・・まぁあの三人だけで十分事足りるでしょ・・・今回は留守番させてもらうわ」


鏡花の言葉に城島がほう?と呟いて見つめてくる、まるで獲物を見つけた蛇のような瞳だ


鏡花はわずかに震えながら城島の動向を観察していると、彼女はデスクの方から数十枚の書類を持ってきた


随分と分厚く、かなりの量の書類であることは一見して理解できた、もっともそれが何の書類で何を意味しているのかまでは理解できなかったが、彼女が鏡花に何をさせたいのかは何とはなしに把握できた


「留守番をしているというのなら書類仕事を頼むぞ、なにお前なら問題なくこなせる内容だ」


「先生、生徒に自分の仕事やらせるってどういう事ですか」


「安心しろ、これはさして重要でもない内容だ、何もしていないとさすがに角が立つだろう、仕事をしているアピールでもしておけ」


城島の言う通り警察署に身を置いていながら何もしていないと周りからの視線が非常につらいことになるだろう


静希の話を聞く限り明日の夕方頃までずっとこの場で待つことになりかねないため、確かに暇をつぶすという意味でも何かやるべきことが必要であるということは理解できる


「わかりました・・・精一杯時間を使ってやらせていただきます」


「そうしろ、お前はきっとこの先書類を相手に格闘することが多くなるだろうからな、今のうちに慣れておけ」


そんなものには慣れたくないなと思いながらも、実際そんな風になりそうだなと自己分析しながら鏡花はため息をつく、もはや後始末やしわ寄せは慣れたものだと変に気にすることもなく陽太を引き連れて書類をまとめて集中できるような場所へと移動していった


二十回分投稿中、二十回中十六回分投稿完了


流石に時間がかかりますね、でもあと少し


これからもお楽しみいただければ幸いです

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