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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」

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世話になった人へ

『もしもし、そこからかけてきたということは、ひとまず終わったようだね』


「えぇ、ようやくです、いろいろとありがとうございました」


静希が自分の携帯からかけたということで、実月はほとんどの事情を察した様でその声音はとても安らかに感じられた、それだけ心配をさせていたという事でもあるため少し申し訳なく思ってしまう


『まぁ、君が無事ならそれでいい、こちらもこちらでよいことがありそうだ、むしろ感謝したいくらいだよ』


一体陽太は何を犠牲にして実月と交渉したのだろうかと少し気になるが、ここはスルーしておくべきだろう、無駄に首を突っ込んで碌なことになる気がしない、だがよほどその何かが楽しみなのか嬉しいのか、今まで聞いたことが無いようなほどにうきうきとした声をしている


陽太のことが少しだけ心配になったが、ここは本題を進めることを優先したほうがよさそうだ


「で、鏡花が頼んでいたことの『答え』とやらに関してなんですけど・・・」


『あぁその件か・・・一通り済んでいるよ、こちらから情報を渡そう、君の携帯に送ればいいかな?』


「はい、構いませんが・・・いったい何を・・・?」


静希の質問に見ればわかるよと実月はつぶやいた後、そのまま通話を切ってしまう


通話が終了した数秒後に静希の下に幾つかの情報が添付されたメールが送られてくる


一体なんだろうかととりあえず開いてみるとそこにはここ数日、橋本が個人的に通話した人物の情報がずらりと記されていた


警察署の署長室、橋本個人の携帯電話、自宅の電話などから繋がったすべての連絡先が記され、その中のいくつかの連絡先が赤く点滅していた


「あぁこれか・・・なるほどね」


それを横から覗き見た鏡花は軽く呆れながらも納得して見せていた


「ひょっとしてこれって・・・」


「そ、あんたが送った情報を元にして今回の裏にいる奴を割り出してもらおうとしたのよ、まさかこんなに簡単に割り出せるとは思ってなかったけどね」


現代の電話などはすべて電子制御がされている、昔の黒電話などと違い、そのすべてに施されている機械的な制御に対して実月の能力は圧倒的なまでの把握力を見せる


鏡花が実月に依頼したその少し後に静希から今回の事件の原因ともいえる橋本の存在が露見したことで実月が調べる範囲は一気に狭まったのだ


結果、今端末に表示されている中で赤字で表示されているのは警察関係者を除くと、約一名に絞られる


そこには山本孝之という名前が記されていた


「・・・この名前知ってるか?」


「知らないけど・・・警察の人だったら知ってるかもね、一応事情話して調べてもらう?」


自分たちだけでわかるような内容ではないため、静希達はとりあえず忙しそうに右往左往している警察の中から一人捕まえてこの人物について聞こうとしたが、そこに丁度鏡花たちと一緒に来ていたのか、それとも追ってきたのか、静希達の担任教師城島の姿があった


「あ、先生、お疲れ様です」


「・・・五十嵐・・・堂々としているということはとりあえず状況終了と見ていいのか?」


「はい、御迷惑をおかけしました」


静希が頭を下げるのを見て城島は大きくため息をついて見せた


まさか自分の教え子が冤罪をかけられるとは思ってもいなかったのだろう、肩の荷が下りたのか近くにあった椅子に座って不機嫌そうに眉間にしわを寄せている


だが同時に安心したのか、その頬はわずかに緩んでいるのが見て取れた


「で、今回のことは何が原因だったんだ?」


「えっと、捜査本部のあった警察署の署長が誰かから指示を受けてやったんじゃないかって感じですかね、あの人犯人って感じじゃなかったし・・・」


実際に接触し、少し話した静希の率直な感想がこれだった


どちらかというと彼は体よく利用されたのではないかとさえ思えてくるほどに、その対応がお粗末だったのだ


人に罪を擦り付けたにしては事後処理が随分と適当だし、捜査をしていた警察各員に対する指示もいい加減、何より無関係な人間を犯人に仕立て上げるには証拠が少なすぎるのだ


もし静希が第三者を犯人に仕立て上げるなら現場におびき寄せたり凶器に触れさせておいたりなどと事前工作からもっと本気で行うと思ってしまうのだ


「それで、ちょっと調べてもらって、怪しそうな名前がこれなんですけど・・・」


静希の携帯端末に表示されている赤字の名前を見て城島はわずかに首をかしげる


「この名前・・・どこだったか・・・どこかで見た覚えが・・・」


彼女自身、どこかで見たことがあるようなのだが思い出せないようで頭をひねっている


喉から出かかっているのにもかかわらず出てこない、この不快感は年齢性別問わず共通のようで城島は非常にやきもきしながら頭を悩ませている


「あぁそうだ、確かニュースで見たんだ、今回議員が亡くなってライバルだった議員のインタビューがどうのこうのという内容だった気が・・・」


城島の話を聞く限り、この山本孝之という人物は国会議員なのだろう、ならばネットで調べればすぐにでも出てきそうだ、それに気づいた静希と鏡花はそれぞれその名前を検索すると、その情報はすぐに出てくれた


国会議員にしては随分若く三十半ばという年齢、だが不自然に発言権が強く、何かしらの裏工作でもしているのではないかとささやかれている議員だ


「・・・これもうまっ黒じゃないの?」


「・・・一応ちょっといろんなところに確認してみようか・・・」


静希は携帯を使ってある所へ電話をかけることにした、裏事情に関しては話を聞くには最適な人物がいる、静希の嫌いな人物ではあるが、今は背に腹は代えられない




『なに?ヤマモトタカユキ・・・?少し待て・・・あぁお前の国の議員だったか?』


「あぁ、そいつのちょっときな臭い情報が知りたくてな、何か知ってるか?」


静希が電話を掛けたのはテオドールだった、可能なら必要以上に関わりたくない相手だが、こういった裏の情報を仕入れるためにはもっとも簡単で信頼できる相手だ


以前日本の委員会の要望を叶えた時のように、静希とのかかわりが深くなってしまったが故に日本の政治情勢にも詳しいのではないかと踏んで聞いてみたのだが、テオドールは楽しそうに笑うだけだ


『お前がそんなことを俺に聞いてくるとはな・・・どういう心境の変化だ?』


「ちょっとおいたが過ぎたんだよ、直接俺にケンカ売ってきたんだ、しっかりと答えてやらなきゃ失礼ってもんだろ?」


静希の言葉にテオドールは笑いながら怖いねぇと呟いて何やらパソコンを操っているような音を響かせた、恐らく情報を集め始めているのだろう、数秒後に再び笑いと共にテオドールの声が戻ってくる


『待たせたな・・・ヤマモト・・・こいつはうちの顧客でもあるらしいぞ?』


「・・・顧客・・・おい待てよ、お前の組織ってたしか非合法だったよな・・・?」


海外の非合法組織とつながりのある日本政府議員など正直シャレにならない、一体何を考えて何をしていたのか聞きたくもなるが、今はそこは重要ではない


今欲しいのは山本孝之が不正を行ったという証拠だ、それさえあれば逮捕することができる、静希からすれば何故自分を陥れたのかその理由を知るためにも彼は逮捕されていた方が都合が良いのだ


「よし、じゃあその情報を全部くれ、決定的証拠になるようなものをな」


『待て待て、顧客だって言っただろ?そんな情報を簡単に渡せるかよ、こっちの信用問題にもなるんだから』


テオドールの言うことはもっともだ、事実企業などは顧客情報は最重要情報として管理しているところがほとんどである、それは裏社会で威信を示す組織でも同じ、いや裏社会にいるからこそ顧客などの情報は厳重に管理されて然るべきだ


理解したうえで、静希は大きくため息をつく


「テオドール、少し台詞を間違えたみたいだ、訂正するよ、そいつの情報を全部よこせ、これは頼みじゃない、命令だ、自分がどういう立場にいるのかもう一度よく考えて発言しろよ?」


静希の言葉にテオドールはわずかに息をのんだ


受話器越しに僅かに呼吸音が聞こえるほどの静寂、どうやら迷っているようだ、ならば言い方を変えるべきだろう


「わかった、いい情報を教えてやるよ、今回、俺にケンカを売る過程でそいつは警察を利用した、しかもそれはもう露見しかけてる・・・明るみに出るのは時間の問題だ」


電話をしながら先程の情報を警察の上層部の人間に渡し、同時に実月を通してカエデの方にも送ってもらった、いつでも拡散できるし調べることも可能な状況である


「お前は今、選択肢がある、逮捕されるのが秒読み段階に入った顧客に義理を通して情報を渡さないこともできる、逆に、顧客を裏切って俺に情報と恩を売ることもできる、お前はどっちを選ぶ?」


死に体の客に情けをかけるか、最も厄介な敵に恩を売るか、静希が提示したのはその二つの道だ、損得勘定を含めた時どちらに動くかは静希にはわからない


静希自身自分の価値を測り兼ねているのだ、もし彼らにとって静希の脅威度が、静希の予想よりも高ければ情報を手に入れられるかもしれない


逆に、静希が思っている以上に、脅威度が低ければ情報は得られないだろう


『・・・ふぅ、そうだな・・・わかった、わかったよ、オーライだ・・・今から送る、どこに送ればいい?』


「警察に直接送ってくれても構わないぞ?そのほうが話が早くて済む」


静希の軽口に冗談言うなと切り返した後でテオドールは情報を郵送で送ると言ってきた


携帯でやり取りするには少々危険なものだという事だろうか、とりあえず十分以上に情報は手に入るということになる


「静希、報告してきたわよ」


「こっちもいい情報が手に入りそうだ、後は・・・あぁそうだ、一応報告に行かなきゃいけないところがあったっけ」


ひとまず、全てが終わったわけではないにせよ危機的状況は解除されたのだ、一度きちんと報告に行くべきだろう、静希自身ちゃんと礼を言いたい


「先生、ちょっと行きたいところがあるんですが、こいつらも一緒に連れて行っていいですか?」


「ん・・・そうだな、まぁいいだろう、行ってこい、できる限り早く戻るように」


城島は少し迷っていたようでもあるが、ようやく静希が戻ってきたのだ、班員としても一緒に行動したいというのは道理でもある


正直に言えば事後処理がまだたっぷりあるのだが、少し位なら問題ないだろう


「静希君、どこに行くの?」


「ん、今回すっごいお世話になった人のところ」


「あぁそういえばあんたこの数日どこにいたわけ?橋の下とか?」


「ホームレスみたいだな、でもそれにしちゃ体調よさそうだけど」


勝手な想像を膨らませている二人は置いておいて、静希は三人を連れて今回一番世話になったカエデのいる水ノ香リへとやってくる


店外からの様子は全く普通の店なのだが、その中身は普通とはいいがたい


扉を開くと喫茶店独特の鐘の音と、コーヒーや紅茶の芳ばしい空気と一緒に少し甘い香りが鼻孔をくすぐる


「いらっしゃい・・・あら、随分とすっきりした顔になったじゃない?」


カウンターで迎えてくれたのは筋骨隆々でありながら女装して化粧までしているかなりきつい外見をしている店長カエデだった


「ようやく片が付きそうですよ・・・あ、全員に紅茶を」


先に静希がカウンターに座り、その後に店内を見回しながら明利達が後に続くと、全員カエデを二度見してしまう


一体何がどうなってこんな外見をしているのか、不思議でしょうがなかったのだ


「え・・・えっと・・・静希・・・?この店って、喫茶店・・・よね?」


「あぁ、今回この人には凄い世話になってな、改めてお礼に来たんだよ」


「え・・・えっと・・・この人・・・は・・・」


「な、なんというか・・・衝撃的というか・・・一度見たら忘れられなくなりそうというか・・・」


静希以外の三人は完全に面喰ってしまっているようでかなり動揺している、確かにこの外見としゃべり方では動揺するのも無理はない、実際静希もかなり動揺していたのだから


「あら、あなたたちがこの子のチームメイトね、初めまして、この店の店長のカエデよ」


「ど、どうも、き、喜吉学園一年B組一班班長の清水鏡花です・・・こ、今回はうちの静希がお世話になったようで・・・」


鏡花がここまで取り乱すのは珍しいなと思いながらカエデの淹れてくれた紅茶を飲みながら静希は苦笑する、流石の鏡花もこんな外見の人間が喫茶店を営んでいるというのは予想外だったのだろう、かなりの動揺が見られる


「あ、じゃあそっちの大きいのが陽太ちゃんで、小さいのが明利ちゃんね?」


「え!?な、何故に俺たちのことをご存じで・・・!?」


「えと・・・初めまして・・・?」


二人の反応にカエデは笑いながら三人を席に座らせ、紅茶を出していく、カップから上る湯気からは紅茶独特の苦みを含んだ香りが漂っている


「いやねぇ、陽太ちゃんは昔あったことあるじゃない・・・もう何年も前のことだから覚えてないかしら?」


その言葉に全員の視線が陽太に集中する、対して陽太は何を言っているのかわからなかったのかきょとんとしてしまっていた


「え?カエデさんって陽太と面識あったんですか?」


「陽太君、この人に会ったことあるの?」


「ないないないない!こんな人に会ったら絶対忘れねえって!」


「それも失礼な物言いだけど・・・あ、この紅茶美味しい・・・」


呆れながらも紅茶を飲むとその質の高さがうかがえたのか、鏡花は顔をほころばせながらその味と香りを楽しんでいた


鏡花に褒められてうれしかったのか、カエデは全員分ホットケーキまで用意してくれた


すでに日が暮れているためかほんの軽食程度のものだが、均等に切り分けられ甘い香りがあたりに漂い食指を刺激する


「もうかなり前のことだからねぇ・・・その時の写真であればあるけど・・・あ、これね」


カウンターの裏に飾ってあったのか、写真を一枚出すとその中には幼いころの陽太と実月が写っている、静希達の記憶からこの姿の頃の二人の姿を検索するが、それが十年近く前のことであることがわかる


本当に静希と陽太が出会うか出会わないかくらいの年の頃だ


だがそこに写っているのは陽太と実月だけではない、筋骨隆々な短髪の男性も一緒に写っている


小さな陽太と実月を肩で担いで豪快に笑っているのが印象的だ


「・・・えっと、ひょっとしてこの男性が・・・?」


「そう、それ私よ」


全員が食い入るように写真の中にいる男性は、とても快活に笑っており、笑顔が眩しい好青年という印象が残る


だが目の前にいる人物は厚い化粧と女性服を身に着け柔らかな笑みを浮かべており、第一印象として衝撃が残る


この十年ほどの間にいったい何が起こったのか気になる時間の経過具合ではあるが、少なくともかつての陽太と実月が一緒にいたことのある人物であることは間違いないだろう


「えっと・・・カエデさんって・・・陽太や実月さんの親戚の方なんですか?」


「違うわよ、私は実月ちゃんのお師匠様よ」


その言葉にほかでもない明利が凍り付いた


陽太は驚き、鏡花は唖然としている中、明利だけは凍ったように動かなくなりまったく反応しなくなってしまっている


恐らくかなりショックだったのだろう、明利は実月から同調のイロハなどを教わり、それなり以上に深い付き合いがあった


明利も実月のことを尊敬していただろうし、恐らくではあるが口頭で彼女の師匠についても何らかの言葉を受けていたのだろう


そしてその師匠が目の前にいる


ガチムチオカマという、想像しうる中でほぼ最高の衝撃を伴って


「明利?明利?・・・あ、だめね、フリーズしちゃってる」


「あー・・・まぁ衝撃的だからなぁ・・・」


陽太も自分の姉がこんな人の師事を受けていたという事実を知って少なからずショックを受けている、マイナス方向に傾くわけではないにせよ、それなりに驚きはあるのだ


「カエデさん、改めて今回はありがとうございました、本当にお世話になりました」


「はい、どういたしまして、困った時はいつでもいらっしゃい、歓迎するわ」


ごつごつとした手で頭をなでられると、自分がまだまだ子供であることを再認識させられてしまう


この大きな手に追いつけるまで、この大きな手に慣れるまで、静希はあとどれくらいかかるだろうか


「カエデ・・・ボスが目を覚ましました・・・あ、ミスターイガラシ」


そこにやってきたのはエドの教え子でもあるアイナだった、エドがどこにいるのかわからなかったが、どうやら眠ってしまった後そのまま裏で睡眠をとっていたようだ


「おぉアイナ、エドはまだ寝てたのか」


「はい、先程目を覚ましました、今お呼びします」


アイナはそのまま奥に戻っていくが、その場に残された静希を除く三人は興味深そうにその様子を眺めていた、いつの間にか明利が復活しており、先程のショックを忘れるためか口にホットケーキを含んでいる


「静希、今の子誰?」


「外人さんだったな、日本語しゃべってたけど」


「小さいね・・・何歳くらいだろう・・・?」


そういえば三人はアイナやレイシャのことを知らなかったなと思い返しながらどう説明したものかと少し悩んでいると、少し寝癖をつけたエドが欠伸交じりにこちらへやってきた


「いやぁシズキ、おかえり・・・っと、チームメイトもいたのか」


寝ぼけ眼をこすりながら僅かに笑みを浮かべるが、僅かに乱れた着衣やその風体からあまり大人としての余裕は感じられない、なんというか残念な感じになってしまっていた


「ボス、しっかりしてください、寝癖ついてます」


「ボス、服位ちゃんと着てください、ネクタイまがってます」


二人の教え子に恰好を直されながらカウンターに座ってコーヒーを注文すると、ようやくエドは目が覚めてきたのか咳払いしてこちらに向き直る


「えっと・・・そっちの小さなお嬢さん以外は初めましてかな?エドモンド・パークスです、こっちは教え子のアイナとレイシャだ、よろしくね」


そう言って頭を下げる、実は鏡花はエドに一度会ったことがあるのだが、どうやらエド自身はそのことは忘れてしまっているようだ


小さい明利が印象に残るというのもまた妙なものだが、三人はとりあえずよろしくと頭を下げた


「あー・・・ひょっとして夏に静希に助けられたっていう外人さん?」


「あ、そうそうそれそれ、いやぁ、シズキには世話になってね、そっちの小さいお嬢さんからシズキがピンチだと聞いて飛んできたんだよ」


ことごとく小さいを強調されることで明利はわずかに傷ついたのか、その場で項垂れてしまうが、今さらと言うものである


そんな中静希はあぁそうそうと一度辺りを見渡した後で三人に顔を近づけ、極小の声で話し出す


「・・・こいつ悪魔の契約者だから」


その言葉にその事実を知らなかった鏡花と陽太は勢いよくエドの方を振り返り驚愕の表情を見せる


以前家に来た時にいた明利は彼が悪魔の契約者であるということは知っているが、この二人は知らなかったのだ


今この店の中に、悪魔の契約者が二人いる


その事実が知られるべきところに知られればそれだけで警戒レベルが格段に上がりそうなものだ


「あんたさ、そういうことをこういう場所で言う?」


「こういう場所だからこそだ、万が一俺に何かあった時の備えにな」


静希の言葉は少しだけ重く鏡花たちに圧し掛かる


今回明利がそうした様に、これからエドに頼ることがあるかもしれないのだ


今回はほとんど静希だけの力でもなんとかなったかもしれないが、少し危なかった


今後どうなるかがわからない以上、少しでもつながりを作っておくのは必要不可欠なことでもある


「まぁ、今回僕はあまり役に立たなかったけどね」


「いや、十分助かったよ、あの時は結構やばかったんだ、そこのバカと全力で戦ったからな・・・」


「ふふん、俺相手に無事でいられる奴なんているかっての」


自慢げに胸を張っているがあんた負けたでしょと言う鏡花の言葉にしょぼんとしてしまっていた


事実陽太と静希の戦いは、ほとんど陽太の勝ちに近いが、実質は静希の勝ち逃げだ


これは二人の勝利条件の違いによるものでもある


陽太は静希を気絶なり拘束なりして連れ帰るのが目的で勝利条件だったが、静希は数十秒から数分間陽太の視線から離れ、その場から逃げればよかったのだ


実際の戦闘能力では静希は陽太に及ぶべくもない、それほどに二人の実力差はある


戦闘が仕事の前衛型と違い、静希はもともと支援型だ、戦闘をするという選択肢自体がそもそも浮かばないところなのだ


だが結局静希は勝っている、条件付きの戦闘に置いて静希が負けるという状況が、予想できなかった、だからこそ鏡花は陽太を向かわせたのだ


「じゃあ、そういえばエドモンドさんはお仕事は大丈夫なんですか?」


「あぁ、正直に言えばちょっと無理して休みを取ったからね、明日にでも日本を発つよ、あまり長くいられないのが残念だが・・・こればかりは」


「本当に悪いな・・・借りは返すよ」


「だから、僕の方が借りを返したんだって言ってるのに・・・まぁ、君がそういうなら、そういう事にしておくよ、いつかまた僕を助けてくれ」


エドの差し出された手を軽く握りながら静希は微笑む、本当に助けになった、だからこそ次は静希が助ける番だ


敵意には敵意を、そして善意には善意を、静希らしくもない人情的な場面でもある


二十回分投稿中、現在十二回分投稿完了


まだまだ時間がかかりますがご容赦ください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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