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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」

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用意したもの

「ふんふん・・・いやなかなかに似合っているね・・・このまま商談にでも行けそうなくらいだ」


エドは自分が用意した服を静希に着せると満足そうにうなずいていた


彼が用意したのはスーツだった、どこのブランドかまではわからないが少なくとも安物ではないように思える、まるで静希用に作ったかのような出来のよさだ


「エド・・・嬉しいんだけどさ・・・俺スーツとか着たことないんだけど」


ワイシャツに黒のスーツ、そしてネクタイをしていると社会人かどこかの要人にでも見られるかもしれないが、今の静希は完全にスーツに着られてしまっている、普段の制服と違い随分と堅苦しい印象を受けた


「そこはすぐに慣れるさ・・・というより僕は君の腕が義手だったことに驚いているよ」


着替える時に肌スキンがはがれてしまっている静希の左腕を見たエドはわずかながらに動揺していた


エドと初めて会ったときは静希はまだ五体満足だった、以前会ったときにはすでに左腕はなかったが、その時は自分の腕が義手になっているということは伝えていなかった


「まぁ・・・いろいろあってな・・・こっちとしても五体満足でいたかったけど、なかなかどうしてうまくいかないもんだ」


「ん・・・まぁ君が納得しているのであれば僕から言うべきことは何もないよ」


少しだけ残念そうに、そしてつらそうな表情をするエドを見て静希は苦笑するしかできなかった


この左腕は自分のミスの結果だ、誰も責められないし、だからと言ってそのままでいたいとも思わない


いつか治す手段が見つかれば、そう思いながら静希は自分の腕の調整を終えた


「手袋もあるから、今はそれで隠すといい、長袖ならまぁばれることはないだろう」


「何から何まで悪いな・・・このスーツは洗って返すよ」


「いや、それは君にあげるよ、これから必要になるかもしれないからね」


エドの言葉に静希は再度自分が来ているスーツを見てみる、静希はスーツなどのことはよく知らないが、それでもこれが高級なものであることくらいはわかる、さすがにこれを貰うのは気が引けた


「エド、そういってくれるのは嬉しいけどさ・・・さすがにこれは」


「そうかい?じゃあ出世払いだ、いつか君が大人になったら返してくれ」


なんと適当な銭勘定をしているのだろうかと静希は呆れてしまうが、恐らくこれ以上言っても聞き入れてもらえないだろうことを理解し僅かにため息をつくだけにとどめることにした


左腕のスキンが無くなってしまったことは少々痛手だったが、長袖でいても不思議はないこの時期であれば手袋にさえ注意していれば問題ない


問題なのはここから先だ


「それでエド、お前どうして俺がいる場所がわかったんだ?」


「ん、まぁ君が殺人犯にされてどうのって話はあの子たちに調べてもらったんだけどね、君が事件現場の近くにいるんじゃないかと思ってうろちょろしてたら大きな爆発音が聞こえてそっちの方に行ったら見覚えのある獣が見えてね、あれは運が良かった」


カラカラと笑うエドを見ながら静希はわずかに苦笑する、あの時陽太の能力を暴発させた時、まさか近くにエドがいるとは思っていなかったのだ


それよりもエドの弟子ともいえるアイナとレイシャがそこまで高い情報収集能力を持っているとは思わなかった


「さて、じゃあこれからの話をしよう、シズキ、君はこれからどうするつもりだい?」


「どうするって、とりあえず問題を解決するかな、解決のめども立ってきたし」


実際、先程の陽太との接触によりこれからの方針はほぼ決定したも同然だ、これからの行動のために準備も必要だがまずは休むことが必要である


「なんだ、国外に逃亡するつもりならすぐにでも手を貸せるのに、ちょっと残念だよ」


「俺はこの国を気に入ってるんだ、そんな簡単に国外逃亡できるか」


何とも緊張感のない国外逃亡の誘いに静希は呆れてしまう、だがエドのコネならおそらく簡単に国外に逃げることができるだろう


その場合人としてではなく恐らく荷物としての扱いになるだろうが、そのくらいの違いは許容してしかるべきだ


じゃあ冗談はさておいてと呟いた後でエドは少し表情を鋭くする


「今回は警察に手が回っているそうだね、明らかに動きが妙だ、彼らの上司かあるいは別のところから圧力がかかってるとみてまず間違いなさそうだね」


「あぁ、でもその力がかかってるのも多分ごく一部だ、とりあえず第一目標として俺をはめるための証言をさせた和田って刑事に話を聞きに行く」


静希の言葉にエドはわずかに眉をひそめる


「聞きに行くって言ったって、その彼がどこにいるのかわかるのかい?」


「あぁ、もう手は打ってあるよ」


静希がわずかに邪笑を浮かべるとエドはさすがだね君はと手を上げて笑って見せる


静希は頭の回転が速い、常に次の行動に対して準備を行っておくことが彼にとっては最も重要なことでもある、もとより収納系統というのは事前準備に重きを置くタイプでもあるが、静希はその傾向が特に強い


「なんだか君と一緒にいると、もうすでにやることが決まってるから楽でいいね」


「楽って言われると微妙だけどな、戦う前に勝敗をつけるのが理想だからな」


戦う前に勝敗を決する、いうなれば事前準備ですでに相手への敗北を確定づけるようなものだ、実際にそのようなことができる状況は限られるが、事前に準備することで優位な状況を作るのは必須


静希が理想とするのはこの世界で誰も成し得ていないことなのかもしれない


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