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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」

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接触

電車を使わずに歩きで移動する分時間はかかったが、静希は昼前に問題になっている警察署前を通過することができた


途中から雨が降り出したため黒と水色の傘をそれぞれ購入しさして歩いていたが、警察の内外問わず慌ただしく人が行き交っているのが見て取れた


町の中心部から少し外れているとはいえ、昼前ということもあって人通りはそれなりにあるため人込みに紛れることも容易だった


近くにいる警官や外からでも確認できた人間の顔を見てみても写真で見た和田の姿は確認できなかった


「さすがに外部からでは状況は判断できかねますね」


「でも場所と構造はある程度覚えた、万が一の場合侵入することも視野に入れておくぞ」


少し小声で物騒なことを話しながら静希達はそのまま人込みに紛れながらその場を離れていく


次に静希達が足を運んだのは事件が起こった事務所だった、警察官たちが何人も出はいりしたり、出入り口に見張りや立ち入り禁止のテープなどを張っているようだが、中には警察官以外の人間も見受けられる、どうやら関係者は中に入れているようだ


その場にいる警察官一人一人に視線を向けて顔を確認するも、目標である和田の姿は確認できなかった


現在の時刻は十五時近く、途中でコンビニで買った昼食をとったとはいえさすがに歩き続けるというのもなかなか辛い


雨もそれなりに強くなってきているせいで、気温も一気に低下してきている、これから夜になっていくにつれもっと気温は下がっていくだろうが、完全に日が落ちるまでにはもう少し時間がかかる、それまでに今日できることは終わらせておきたいものである


次は和田の自宅でもある住宅街に向かうことにする、そんな中だった、静希とオルビアの視線の先に車から降りてくる鏡花たちの姿が目に入った


三人の近くには彼らの見張りだろう、警察官の姿も見受けられる、どうやらあちらもそれなりに面倒な状況に身を置いているらしかった


なぜこうもタイミングよく、いやタイミング悪く接触してしまうのか


恐らくは事務所にいる警察官に事情でも聞きに来たのだろうか、それとも静希の動きを読まれたのだろうか、場所が場所だけにもう少し急いで行動したほうが良かったかもしれないと歯噛みするが、こうなってしまっては後の祭り、二人はたがいに視線を合わせて極力表情に出さないように歩く


「で?今回は誰に話聞くんだっけ?」


「ここにいるのは・・・山本さんね・・・ちゃっちゃと終らせましょ」


「何かわかるといいけど・・・」


三人はメモを見ながら話をしている、どうやら本当に警察官に話を聞きに来ただけのようだ、この場にいるのはただの偶然と見て間違いないだろう


街中、人込み、雨、傘、誤魔化せるだけの条件は十分以上に揃っている、これでばれたらそれはそれで貴重な体験だ


傘をさして並んで歩く三人と警察官、依頼で自分を捕まえるために行動している同級生、同じく並んで歩く二人、警察から逃げ、変装している逃走犯


その二つのグループが交差し、すれ違う


たった数瞬のことなのに、数十秒も続いたかのような時間的矛盾を起こす静希、身近だった人物から逃げるというのがいかに困難であるかを静希は極度の緊張からくる体感時間の変化という錯覚で思い知った


すれ違って数歩歩いた時、陽太が不意に足を止めた


『シズキ・・・ヨータが止まったわ』


『・・・よもや気づかれたか・・・?』


『冗談じゃねえぞ、こんだけ手間かけて変装したんだぞ・・・』


周囲を警戒していたメフィと邪薙が警告を飛ばしてくる中、静希は表情に出さずに悪態をついて見せ、そのまま歩き続ける


なぜ陽太が歩みを止めたのかその意味は分からない、そして陽太は止まったままあろうことかこちらを振り向いた


「・・・陽太君?どうしたの?」


「・・・鏡花・・・悪い、ちょっとトイレ行きたくなってきた」


「・・・!」


陽太の言葉に、鏡花は眉をひそめる、その言葉の意味を理解しているのだ、そして自分たちの監視役である警察官にその表情を見せないように気を付けながら小さく笑みを浮かべる


「あの事務所・・・は調べてるから借りられないか・・・しょうがないわね・・・さっきコンビニがあったから、そこでトイレ借りてきなさい・・・さっさと『済ませて』帰ってきなさいよ?」


「おう、任せろ」


多少含みを持たせた言葉を陽太に投げかけながら鏡花は監視役である警察官に詫びを入れながら陽太をその場から離れさせる


聞き込みは自分たちだけで十分、あいつは後から合流しますからほっといて問題ないですよと


早歩きで移動を始める陽太を確認すると、静希達の焦りの色は強くなり始める


『追ってきてるわね・・・こりゃ完全にばれてるかもよ?』


『マジか・・・万が一のために人込みを経由してから広いところに出るぞ・・・追ってきてる理由がもしも捕まえるためだったら・・・』


『・・・戦闘になるかもしれんな・・・』


邪薙の言葉に静希は苦虫を噛み潰したような表情になる、陽太相手の戦闘なんて冗談ではなかった、雨のおかげで多少能力が減衰されるとはいえ、陽太の能力と真正面からぶつかるなんて正気の沙汰ではない


だが腹をくくるしかない、すでに状況は動いた、逃げるにしろ、立ち向かうにしろ、もう後には引けないのだ


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