馬毛島基地工事費…発注から4年。入札経ず5300億円増えていた――当初比2.2倍、総額9726億円に 南日本新聞調べで判明
鹿児島県西之表市馬毛島の米軍機訓練移転を伴う自衛隊基地工事で、防衛省や国土交通省が変更契約を繰り返し、2022年1月の発注から約4年で工費が当初契約金額の計4342億円から計9726億円と、約2.2倍に増えたことが南日本新聞の調べで分かった。資機材・人件費高騰や工期延長などを理由に、入札を経ない増額が5300億円を超えた。防衛省は総工費を示しておらず、工費は歯止めなく膨らむ可能性がある。 【写真】〈関連〉防衛省発注と国交省発注の工事の主な内訳と、当初契約金額と変更後金額が一目で分かる表
馬毛島工事の契約額は、調査段階の12年度から26年度予算案を含めると1.4兆円を超える見通し。情報公開請求などで確認した契約関係資料を基に、工事発注が本格化した22~25年の工事111件を調べた。 工事は、防衛省の財源で支出委任を受けた国交省九州地方整備局と、防衛省九州防衛局熊本防衛支局が発注する。九地整は22年、港湾や滑走路など6件を計1680億円で随意契約。熊本支局は22~25年にかけ、土地の造成や管制塔建築など105件(一般競争入札100件、随契5件)を計2661億円で契約した。 資料によると、九地整の6件は22年10月~25年9月までに4086億円増の計5767億円に。当初見積もりは計約3950億円としていたが、6件いずれも見積もりを超えた。 熊本支局の105件は、22年1月~25年10月までに1296億円増の計3958億円。変更の内訳は増額58件、減額8件、工期変更などで増減なし38件で、変更契約なしは1件だった。
資料記載の変更理由は、九地整分が「資機材の費用」「作業船の待機費」などさまざま。熊本支局は「現場精査」など短く記すのみだ。いずれも金額の内訳や詳細な変更理由は示されていない。 防衛省によると、増額は各年度の予算の範囲で、財源は在日米軍等駐留関連諸費や防衛力基盤強化推進費を充てる。変更契約による増額は「本体工事と密接に関連しており工事を進める上で必要。法令を踏まえ適切に実施した」としている。 ◇解説~透明性欠く増額の根拠 西之表市馬毛島の基地整備は、変更契約が繰り返されて工費が倍増しており、見積もりが甘い「見切り発車」との印象は拭えない。増税で防衛費をさらに膨らませようとする中、事業の透明性に疑問符がつく。 変更契約は、追加工事などに伴う増額・減額や工期延長の手続き。発注者と折り合うまで受注者が金額を提示する。複数業者が手を挙げる一般競争入札と異なり競争原理が働きにくい。 変更契約を確認するには、防衛支局や整備局に出向くか情報公開請求で調書を閲覧する必要があり、ウェブ上での公開はごく一部だ。情報公開は不十分で増額の必要性や妥当性を検証できない。
来年度予算案の防衛費は9兆円を超えた。公共事業や文教・科学振興費の6兆円超を大きく上回る。今後も防衛費は増える見通しで、財源確保のため所得税などの増税が決まった。国民の理解を得るには予算の無駄は許されないはずだ。 専門家は、巨費が約束され「予算の使い方に緊張感がない」と危惧する。馬毛島整備は、地元に説明がないまま当初予算にない設計や土地買収が、米軍関係経費の流用や組み替えで賄われた経緯があった。防衛機密を免罪符に透明性が担保されなければ、外部チェックが効かず予算の「恣意(しい)的」な運用が可能になってしまう。
南日本新聞 | 鹿児島