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小説:ballad.(バラード)⑪完


     建物の外、空では鳥が三羽、空を舞い、地上ではパトカーが数台囲っている。居酒屋店内は依然として無言と緊張した息づかいが聞こえる。いよいよクライマックスとも言えるこの状況。時刻は高田が自白をしはじめて二時間経過していた。

    「どうして殺さなきゃ――いけなかったんですか?星野を――」中村の発した言葉は高田には疑問だった。貴方は星野の何なのだと。三木田は薄々内情を察してはいたし、神田も事情を知っているため涼しい顔をしているが、山田と並木は高田同様の表情が浮かんでいるが何も言わなかった。

   神田が間に入って「教えていただけませんか?」と問う。高田は眉を顰めて俯いた。なめくじのようにしわくちゃな唇から深いため息が出た。

  『――事件が起きる二週間前だ。お酒を飲みすぎた私は屋上で風に当たりながら酔いをさまそうと屋上に出たんだ。』声に覇気がない。高田は眉を緩め、顔を少しあげて周囲を見渡しながら続けた。『その時に彼らに出会った。星野を闇討ちの計画を立てていたのを聞いてしまった。たまたまと言うと言い訳に感じるかもしれんがな。』

    (実際言い訳だろ)とこぼす山田に中村が咎めた。山田はまた俯いて床を見つめた。

  『――彼らの話を聞いたことで、私が殺されるとは思わんかったよ。むしろ久美子さんを守るためには都合が良いとさえ思った。だから星野殺害計画に乗った。そして計画は実行された。しかし予想外だったのは、金木が路地裏に来たことだ――見られたんだよ――星野から凶器であるサバイバルナイフを私が抜く瞬間をな。リーダー格が金木を追い、三階にある山田くんの家に来たのも予想外だった。それもそうだ。防犯カメラを押収されてしまえば動きすぎたことで足がつくからな。私は部外者はほっとけと声を出した。奴らは手を引いた。それが深夜二時前の時間に起きた事件の真相だ。』

    高田はグラスにほんの少し残っていたお酒をちびりと飲んで、グラスを黙って見つめた。そして自白を続けた。

   『雪が確実に降る前に、私は彼らが残した痕跡やら髪の毛やらをなるべく徹底的に消して、いやもうその頃には雪はうっすらと積もってはいた。金木が山田くんの家に来たこと、金木が彼らに襲われている映像を丸々消すように、AIに指示を出した。AIってやつはすごい。そっくりそのまま作ってくれるんだからな。証拠?私の自宅のパソコンを調べればいい。』

  「防犯カメラの改ざんを認めた…!やったな!山田!」三木田が笑顔で山田を揺さぶるが、山田は力なく揺れていた。

   並木さんはグラスに入った氷水をカウンター越しに置いていく。三木田は一気に飲み干したのと対比で、山田はグラスを置かれたことにすら気づかない。

   中村はグラスを二つ受け取って、縁台に座ったままの神田にひとつ手渡しした。ありがとうと神田が言うと、中村は「いえ」と短く答えて席に戻った。神田はグラスに口つけながら、目を細めて高田を見つめた。

  『おそらく郷田組にとって山本組は邪魔でしかなかったんじゃないかな。星野は特に目を引く存在だとはクドいくらいに聞かされてきていた。先程も言ったが、私にはそんなのどうでもよかった。平和な生活を久美子さんに与えられればそれでよかった。ただそれだけだ。』

  「そんなん」三木田が叫んだ。「自分勝手じゃないすか!山田にも迷惑かけて、並木さんがそんなこと高田さんに頼んだわけじゃないなら!!何度も何度もチャンスあったじゃないですか!!警察に相談できたでしょ!?」並木はびっくりした顔をしている。中村が三木田を制するより速く、鋭い声が三木田の名前を呼んだ。「神田刑事…?」三木田と中村は拍子抜けた顔で神田を見つめた。

   神田は厳しい顔で横を振ると続けた。
  「正論で人を傷つけてはいけないよ。人殺しは確かに重罪で許されない。けどね、時には人は精神的に余裕が無いと正常な判断を取ることはできなくなる。僕からただ言えることは、高田さん――」高田の目に光が宿る。

「貴方が金木を再度襲うまでにこの事件を解決して捕まえたかったです。遅くなって申し訳ありませんでした。自白していただきありがとうございました。」と言い切ると、神田は深く頭を下げた。もう誰も、何も言わない。並木の泣き声が響いた。

   高田は席を立ち「凶器は私の仕事のデスクの中です。」と言いながら腕をお縄に出した。神田はズボンから手錠を出して、高田の腕に手錠を掛けた。

   全てが終わった。
   警察のサイレンがビルの側面を赤く照らし出し、パトカーに高田と神田が乗り込んだ。そしてその一台が走り出した。残された木ノ内と警官数名が自供通りの場所を捜索し始めていた。

  居酒屋店内は並木だけになっていた。とっくに他の三人も日常に戻っている認識でいた彼女は店内にまた、誰か入ってきたことに気づいた。「すみません――もうすぐ店じまいで――。」

   木ノ内が店内に入った時、静けさと、血の匂いが充満していることに気づき、急いで応援を呼びかけた。

  事件解決した、約一時間後、並木は何者かに刺殺されてる状態で警察に発見された。

  更にその一時間後、三木田が自宅で胸を刺されて死亡した状態で警察に発見された。

  二人を殺害した容疑をかけられている山田は依然と行方がわからなくなっている。

  十二月二十九日正午。

    東京の府中にある合同墓地である霊園に中村は来ていた。目的はそう、星野悠星の墓参りだ。「ここか――」見晴らしも良く、周囲を見渡せる場所にお墓があった。中村は手元の花束――色とりどりの菊の束をそっと置いた。「並木さんと三木田の顔はちゃんと見れたのに。」

「結局一度も、ちゃんと、顔を。見れなかった。」中村の表情はどこか遠くを見つめて目を閉じた。

  白い空間に、誰かが砂利を踏みながら中村に近づいてくる音がする。

   「健人」と名前を大きく呼ぶ声がした。


ballad 終わり。
Believeに続く。

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コメント

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ヒロ

まずは執筆お疲れ様でした!  遂にballad.最終回を迎えましたが、読み終わった時の僕の脳内は、え?????ど言う事なんだぁーーーーー モヤモヤし過ぎて、登場人物の言動に布石があったのかな 動機はなんぞー ってなりましてすぐに1話から読み直しちゃいました笑  読み直しても、全然考察はか…

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過ぎ去りし夏*海汐 いいね
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長文の感想と、繰り返し読んでいただきありがとうございました!山田はミドルストーリーなため、「あるいはそうではないか」で解釈を委ねるやり方をしています。(つまるところ解答編はありません!すみません!)ヒントを与えるとしたら山田が精神的に気がおかしくなるトリガーとなる暴言爆音心理的恐怖…

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