「本当に複雑な作業だった」と彼は振り返る。「ある意味、2回編集したようなものだ。最初は直感と感情に従い、誰といっしょにいたいか、何を見たいか、その瞬間のアドレナリンに任せてつないでいった。勢いに引っ張られつつも、人間味がにじむ場面に差しかかると、どうしてもテンポがゆっくりになる。というのも、この物語はすべてが“誰かの判断や感情への反応の連続”で進んでいくからだ」
バクスターは、さらにこう続けた。
「2回目の編集は、もう少しデータに基づいたアプローチだった。たとえば“大統領にどの言葉を言わせるか”を選び抜くような作業だ。脚本の段階で想定していた以上に繰り返しを増やしたのは、同じシーンでも、視点を変えれば別物のように新鮮に見えるからだ」
こうした編集作業を重ねるなかで、バクスターは“ある恐ろしい気づき”に行き着いたと語る。「私はもっと安全だと思い込んでいた。米国にはもっと万全の対応があると思っていた」
一方、『ニア・ダーク/月夜の出来事』などの作品でも知られるビグロー監督は、この作品が突きつける現実をこう補足する。「有権者が大統領選で投票する相手は、ある日このような決断を下す立場になるかもしれない。その人物には、2分間というわずかな時間と、単独で決断する権限が与えられている」
普通なら絶対に会えない人物が、キャスリンのひと言で案内してくれた
『ハウス・オブ・ダイナマイト』の制作で、ビグロー監督は美術デザイナーのジェレミー・ヒンドルと再びタッグを組んだ。2人は以前に『デトロイト』や『ゼロ・ダーク・サーティ』でも仕事をしていたが、ヒンドルはこの作品で、米軍の極秘作戦施設を忠実に再現するという難題に取り組んだ。
ヒンドルはこう明かす。「私はそういう施設を何ひとつ知らなかったし、最初はホワイトハウス以外思い浮かばなかった。予算を組む前の段階から、キャスリンとプロデューサーのグレッグ・シャピロといっしょに大量の資料を集めていくなかで、“これはとんでもなく特殊な場所ばかりだ”と気づいた」