映画

2025.11.20 17:30

Netflixの核映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』、曖昧な結末をキャスリン・ビグローが解説

2025年10月9日に行われたNetflix作品『A HOUSE OF DYNAMITE』のロサンゼルス特別試写会(Charley Gallay/Getty Images for Netflix)

「本当に複雑な作業だった」と彼は振り返る。「ある意味、2回編集したようなものだ。最初は直感と感情に従い、誰といっしょにいたいか、何を見たいか、その瞬間のアドレナリンに任せてつないでいった。勢いに引っ張られつつも、人間味がにじむ場面に差しかかると、どうしてもテンポがゆっくりになる。というのも、この物語はすべてが“誰かの判断や感情への反応の連続”で進んでいくからだ」

バクスターは、さらにこう続けた。

「2回目の編集は、もう少しデータに基づいたアプローチだった。たとえば“大統領にどの言葉を言わせるか”を選び抜くような作業だ。脚本の段階で想定していた以上に繰り返しを増やしたのは、同じシーンでも、視点を変えれば別物のように新鮮に見えるからだ」

こうした編集作業を重ねるなかで、バクスターは“ある恐ろしい気づき”に行き着いたと語る。「私はもっと安全だと思い込んでいた。米国にはもっと万全の対応があると思っていた」

一方、『ニア・ダーク/月夜の出来事』などの作品でも知られるビグロー監督は、この作品が突きつける現実をこう補足する。「有権者が大統領選で投票する相手は、ある日このような決断を下す立場になるかもしれない。その人物には、2分間というわずかな時間と、単独で決断する権限が与えられている」

『ハウス・オブ・ダイナマイト』。レベッカ・ファーガソン演じるオリビア・ウォーカー大尉(Eros Hoagland/Netflix)
『ハウス・オブ・ダイナマイト』。レベッカ・ファーガソン演じるオリビア・ウォーカー大尉(Eros Hoagland/Netflix)

普通なら絶対に会えない人物が、キャスリンのひと言で案内してくれた

『ハウス・オブ・ダイナマイト』の制作で、ビグロー監督は美術デザイナーのジェレミー・ヒンドルと再びタッグを組んだ。2人は以前に『デトロイト』や『ゼロ・ダーク・サーティ』でも仕事をしていたが、ヒンドルはこの作品で、米軍の極秘作戦施設を忠実に再現するという難題に取り組んだ。

ヒンドルはこう明かす。「私はそういう施設を何ひとつ知らなかったし、最初はホワイトハウス以外思い浮かばなかった。予算を組む前の段階から、キャスリンとプロデューサーのグレッグ・シャピロといっしょに大量の資料を集めていくなかで、“これはとんでもなく特殊な場所ばかりだ”と気づいた」

次ページ > 米戦略軍(STRATCOM)の施設やホワイトハウス、シチュエーションルームも視察した

翻訳=上田裕資

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政治

2025.11.10 08:00

核戦争はもはや「非現実的」ではないのか 弱まりつつある抑止力

ロシアのRS24ヤルス核弾頭搭載大陸間弾道ミサイル。2024年5月5日撮影(Contributor/Getty Images)

ロシアのRS24ヤルス核弾頭搭載大陸間弾道ミサイル。2024年5月5日撮影(Contributor/Getty Images)

核兵器が再び使用されるのかという懸念は、ほぼ1世紀にわたり世界を悩ませてきた。

冷戦時代の教義では、そのような行為は「相互確証破壊(MAD)」の脅威によって抑止されるとされていた。関連する概念である「核のタブー」も、こうした抑止の一翼を担っていた。このような攻撃は道徳的に忌むべきものであり、攻撃者の国際的地位を著しく損ない、実行した指導者や国家に永遠の汚点を刻むため、先制攻撃を企てる考えそのものを思いとどまらせるに十分だという考え方だ。

東西冷戦の終結から35年が経過した今、核兵器の増強が進む新たな時代でこうした概念が依然として有効であるかを問うことは有意義だ。残念ながら、有効ではないと結論付ける理由がある。

広島と長崎への原爆投下は1世紀近く前

筆者は核の専門家ら(当然ながら、匿名で取材に応じた)と話し合ったが、時間という要素が頻繁に言及された。広島と長崎への原爆投下から1世紀が経とうとする中、これらの恐ろしい出来事とその直後に起きたキューバ危機によって投げかけられた危険の影を実際に経験したことがない人々が増えている。

専門家らは、今日では人々の不安が気候変動や人工知能(AI)、感染症のパンデミック(世界的流行)といった一見差し迫った脅威に向けられていると指摘する。核軍縮の崩壊や北朝鮮の核保有、各国の核兵器の「近代化」といった現実でさえ、一般市民や政治家の懸念を喚起するには至っていない。

冷戦終結後の世界

1980年代、米国とソビエト連邦の核弾頭保有数は合わせて7万発以上に達していた。これには、爆発力が100キロトン以上で長距離の標的を狙う「戦略」兵器と、爆発力が50キロトン未満で短距離使用を目的とした「戦術」兵器が含まれていた。比較のために申し添えておくと、広島を破壊した原子爆弾「リトルボーイ」の推定爆発力は15キロトンだった。

1991年にソ連が崩壊すると、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領は一方的に、欧州から米国の戦術核兵器をほぼすべて撤去すると発表した。ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領もこれに応じ、大規模な核兵器削減の時代が始まった。

ところが、ロシアのウラジーミル・プーチン政権下では、同国の「近代化」計画により戦術核兵器が約2000発に回復した。この数字は現在米国が保有する数の約10倍に相当する。これは北大西洋条約機構(NATO)の優位な通常戦力を抑止するための戦略とみられる。

しかし、専門家らは、こうした「戦場」兵器が特定の指導者によって使用の基準が低くなる可能性を懸念している。これは例えば、通常兵器と統合され、攻撃的または防御的な軍事行動計画に組み込まれることを意味する可能性がある。

次ページ > ウクライナ侵攻から得られた教訓

翻訳・編集=安藤清香

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2025.11.01 18:00

80年代を代表する傑作やカルト的な人気作まで「最高の青春映画」30選〜Vol.1

2005年のMTVムービー・アワードにて「シルバー・バケット・オブ・エクセレンス賞」を受賞した『ブレックファスト・クラブ』の出演者たち(Photo by Frederick M. Brown/Getty Images)

2005年のMTVムービー・アワードにて「シルバー・バケット・オブ・エクセレンス賞」を受賞した『ブレックファスト・クラブ』の出演者たち(Photo by Frederick M. Brown/Getty Images)

青春映画(coming-of-age movies)を観るのに、年齢は関係ない。このジャンルの映画が思い出させてくれるのは、魔法のような若者時代。今よりも責任が少なく、はるかに純粋だった年頃だ。

最高の青春映画は、思わず引き込まれるような本筋(例:主人公がある使命に駆り立てられる)と、優れたバックストーリー(例:主人公が自分に向き合い、受け入れる)を巧みに組み合わせている。すべての素晴らしい作品には、記憶に残る脇役もいる。主人公が自分ひとりでは気づけなかった何かを学ぶのを助けてくれる人物だ。

楽しいか、感動的か、洞察に富むかどうかにかかわらず(3つすべてを兼ね備えるものも多い)、このリストに選ばれた最高の青春映画は、何度観ても飽きることがない。

第1弾では、そんな30作品の中から10作品を紹介する。

編注:Amazonのプライム・ビデオで配信されている作品は「アマプラ」、Netflixで配信中の作品は「ネトフリ」としてリンクを掲載。両サービスで配信していない作品、また日本からは視聴できない作品は映像関連データベースサービス「IMDb」へのリンクを掲載している)

30. ヴィクター・ヴァルガス(2002年)

青春映画の主人公は例外なく、何かと折り合いをつけようとして葛藤する。本作『ヴィクター・ヴァルガス』(IMDb)の場合、ヴィクター(演じるのはヴィクター・ラサック)は、表面的には女性に恵まれないことに落ち込んでいるが、心の奥底では家族との葛藤を抱えている。ピーター・ソレット監督の本作は、興行的には成功しなかったが、カルト的な人気を博した。

29. ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから(2020年)

『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』(ネトフリ)は、古典『シラノ・ド・ベルジュラック』を現代に蘇らせた、PG-13指定のNetflix配信映画。新型コロナウイルス感染症によるロックダウン中に熱心なファンを獲得した。

周囲に馴染めないアジア系の女子高生エリー(完璧な配役のリーア・ルイス)は、アメフト部員の優しいポール(ダニエル・ディーマー)に頼まれて、アスター(アレクシス・ルミール)へのラブレターを代筆する。エリーも密かにアスターに好意を抱くが、ポールはそのことに気づかない。ポールとエリーが親しくなっていくにつれ、3人の関係はより複雑になっていく。

28. ブルックリン・ストーリー/旅立ちの17才(1992年)

黒人少女を中心に描く青春映画は、嘆かわしいほど少ない。レスリー・ハリス監督によるこの知的で繊細なインディーズ映画で、シャンテル(アリヤン・A・ジョンソン)は、大学に進学して医者になる夢を叶えるため、高校で猛勉強中だ。しかし、ある新しい関係性によって、彼女の将来は急に危うくなる。

本作『ブルックリン・ストーリー/旅立ちの17才』(IMDb)は、権威あるサンダンス映画祭で特別審査員賞を受賞した。

27. ベター・ラック・トゥモロー(Better Luck Tomorrow 2002年:日本では未公開)

『ベター・ラック・トゥモロー(Better Luck Tomorrow)』(IMDb)は、ジャスティン・リン監督の単独監督デビュー作。東アジア系米国人のハイアチーバー(高い目標を設定し、努力することによって飛び抜けて良い成果を達成する人)たちという、ステレオタイプ的なグループを描く。

高校生活を刺激的にしようとした彼らは、小さな悪事に手を染めるが、次第に深刻な犯罪へとエスカレートしていく。出演はパリー・シェン、ジェイソン・トビン、ジョン・チョーなど。

次ページ > 「最高の青春映画」26~24

翻訳=高森郁哉/ガリレオ

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