欧州

2025.12.31 09:00

ロシア周辺諸国が対人地雷禁止条約から相次いで脱退 侵略の脅威を理由に

ウクライナ中部キーウ州で、訓練用地雷の捜索訓練を行う退役軍人。2025年10月30日撮影(Danylo Dubchak/Frontliner/Getty Images)

対人地雷政策を撤回した米国

米国のドナルド・トランプ政権は今月、朝鮮半島を除く地域での対人地雷の使用を禁止していたジョー・バイデン前政権時代の政策を撤回した。だが、米紙ワシントン・ポストは、バイデン大統領が退任の直前、ウクライナへの対人地雷の移送を承認していたと報じた。この決定は、ウクライナ侵攻でロシア軍が対人地雷を使用していることに対抗するために下された。その結果、ウクライナは世界で最も多くの地雷が埋設された国の1つとなった。

ピート・ヘグセス米国防長官は、トランプ政権の政策転換により、米国の戦闘員は「戦力の倍増効果」を得られるだろうと述べた。同長官はさらに、米国の地雷備蓄の廃棄に制限を設けるよう命じた。従来の政策では、北朝鮮との非武装地帯沿いで韓国の防衛に必要でない対人地雷の除去を求めていた。

対人地雷の歴史

地雷の起源は、16世紀のイタリアで用いられていた「フガス」にさかのぼる。フガスは地中に埋設された大砲を起爆させ、岩石やその他の破片を戦場に降り注がせるものだった。だが、フガスの信頼性は低く、敵にも味方にも同様に危険を及ぼす可能性があった。

最初の真の圧力作動式地雷は、それから約2世紀後に登場した。18世紀のドイツの歴史書には「粘土にガラス片と金属片を埋め込んだ陶器の容器から成る兵器」と記述された。

米国の南北戦争で初めて、こうした兵器が戦場で日常的に使用されるようになった。同戦争で活躍した米ノースカロライナ州出身の軍人ガブリエル・レインズは、現代の地雷を完成させたという不名誉な称号を持つ。米陸軍士官学校を卒業したレインズは、化学と砲兵学に秀でていた。レインズは、鉄板で作られ、導火線が蜜蝋で覆われた真ちゅう製のふたで保護された「レインズ特許」地雷を開発した。この地雷は摩擦式起爆剤と直接接触することで爆発した。間もなく他国も同兵器の潜在能力に気づき、地雷は世界中の軍隊に急速に普及していった。

地雷は2度の世界大戦でも用いられたが、報道で広く取り上げられるようになったのは、冷戦期以降の地域紛争で使用されてからだ。地域紛争の残留地雷により、1990年代には年間2万6000人以上が犠牲になったとの推計もある。今日でも世界中で、実際の戦闘が終わってから長い時間が経った後も、無数の不発地雷が犠牲者を出し続けている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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Updates:ウクライナ情勢

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2025.12.08 16:00

「プロセスに満足せず結果にコミットする」スタジオプログラムがもたらした、ある社会起業家の変化

東京都では、昨年度より「持続可能性(社会的インパクト)」と「成長(経済的リターン)」の両立を目指す社会起業家やスタートアップなどと自治体・大企業等との共創を促進し、社会課題解決を図るプロジェクト「TOKYO Co-cial IMPACT」をスタートした。本事業は、今年度も継続して実施される。
昨年度のスタジオプログラム参加者の小室拓巳は、寄付市場活性化を目的としたサービスの開発に取り組む社会起業家。プログラムを通じて事業や小室自身の姿勢はどのように変化したのか、支援者の1人であり、社会課題をテーマに複数の事業を運営するリディラバの筒井崇生とともに語り合った。


「寄付」の課題に着目した現役大学生

「目指しているのは、日本の寄付市場の活性化。どうすれば寄付する人を増やし、寄付市場のパイ自体を大きくすることができるかという点に着目しています」

そう語るのは、現在(2025年11月時点)横浜国立大学4年生で、ZOYO創業者の小室拓巳(以下、小室)。ZOYOでは、ネットショッピングのおつりで寄付できる「ポチキフ」などのサービスを展開し、寄付への興味を持っていながらもアクションには至らない「潜在的寄付者」へのアプローチに取り組んでいる。

「『ポチキフ』は、ECサイトに募金機能を組み込むことができるサービスです。ECサイトの決済画面におつり(=購入金額の100円未満の端数を切り上げた差額)を募金するかどうかのチェックボックスが表示されて、ワンクリックで寄付することができます。数十円という少額から、買い物ついでに気軽に募金できるため、余計な手間やお金がかからず、寄付へのハードルを大幅に下げた仕組みが特徴です。昨年度の『TOKYO Co-cial IMPACT』のスタジオプログラムを通して、このポチキフの事業化に取り組みました」(小室)

事業化の過程で小室をサポートしたメンバーの1人が、リディラバの筒井崇生(以下、筒井)だ。もともと学生団体を対象としたスタディツアーを企画・運営していたリディラバは、「問題の発見」「社会化」「資源投入」という3つのプロセスに分けて事業を展開し、幅広いアプローチで社会課題解決に取り組んでいる。「TOKYO Co-cial IMPACT」では、エントリープログラムの講師やスタジオプログラムのメンターとして、起業家を支援する役割を担う。

「小室さんから初めてポチキフの話を聞いたとき、着眼点が非常に面白いと感じました。寄付市場に限らず、社会課題解決の取り組みにお金が流れていかないという問題は非常に大きなポイントで、あえてそこに切り込んでいく姿勢にとても共感できたのです。もっとも、アプローチの方法については、初期段階では見通しが甘いところも散見されました。それでもしっかりと、考え抜かれたうえでの仮説を立て、それだけの行動量を積み上げていることが想像できたので、期待感は大きかったですね」(筒井)

プロセスに満足せず、ファクトに着目し、結果にコミットを

初期のフェーズではポチキフというアイデアがあるばかりで、事業化するための知見やネットワークなど、「とにかく足りないものばかりだった」と小室は語る。実際にスタジオプログラムに参加したことで、どのようなアクションが生まれたのだろうか。

「プログラムに参加した半年間は、メンターの方と約1時間の壁打ちを週1回という高頻度で行っていただきました。今週の進展はどうだったか、今、何につまずいているかを言語化し、ネクストアクションに簡単なKPIを定めて、次の週までに実行する。このサイクルを繰り返すことで、事業化に向けて確かな進捗が得られたという実感があります。

もう1つ、スタジオプログラムを通して絶対に達成したかったのが、ポチキフのベータ版を実際にECサイトに組み込んで、PoCを実施することです。数十社の企業にアプローチして、ベータ版の検証に協力まで漕ぎつけられたことは、非常に有意義でした」(小室)

小室はほかにも、法人登記の事務作業等について事務局から助言を受けたり、行政書士など専門家につないでもらったりと、プログラムのリソースを最大限に活用した。

ZOYO代表取締役 小室 拓巳
ZOYO代表取締役 小室 拓巳

半年間にわたる「TOKYO Co-cial IMPACT」のスタジオプログラムを終え、大きく2つの変化があったという。

「多くの社会課題解決型ビジネス同様、ポチキフもまた不確実性の高い事業だといえます。この不確実性を乗り越えるための仮説の構築と検証を幾度となく繰り返すなかで、失敗することに抵抗を覚えなくなり、その結果としてPDCAをより速く回せるようになりました。

また、私は社会課題を構造化して、それを解決するためのレバレッジポイントを探すのが好きだったりと、頭で考えて物事を進めがちなのですが、それだけではなく、手と足も動かして現場の知見や知識をしっかりと吸収していくことの大切さを学べました。頭を使うパスと、実際に現場に出て、手足を動かしながら何度も検証を積み重ねていくパスの切り替えができるようになってきたことも、今の自分のケイパビリティの1つだと考えています」(小室)

メンターの1人として小室を支えた筒井も、小室のスタジオプログラムの前後の変化について証言する。

「まず、立ち振る舞いが堂々として、より力強くなった印象です。これまでに多くの大学生らを支援してきましたが、そのなかでも小室さんはビジネスパーソンと会う機会が圧倒的に多かった。事業の世界観や貫きたいインパクトを物怖じせずにアウトプットしていける点は、飛躍的に成長したと感じます。

もう1つは、やはり社会課題解決に対して『事業』という目線でより向き合えるようになったことも大きい。インパクトと事業性のどちらかに偏ることなく、同じバランスで思考のブリッジを確立できるようになって、今後、さらにステージアップすることを期待しています」(筒井)

「実は、高校時代に募金活動を行っていたこともあり、ポチキフ以前にタッチ決済で募金ができるキャッシュレス募金箱みたいなものを自作したことがあるんです。その募金箱ではインパクトもビジネスも創出できませんでしたが、自分が突き詰めた事業アイデアを捨てるのはなかなか難しいんですよね。

しかし、『TOKYO Co-cial IMPACT』のスタジオプログラムを通じて、社会課題解決に取り組むプロセスに満足するのではなく、それによって本当にインパクトを起こせるのか、その揺るがないファクトにきちんと着目し、結果にコミットすることこそが重要だと考えるようになりました。私自身のマインドセットも大きく変化したのです」(小室)

社会起業家の支援に必要なエコシステムとその活かし方

社会起業家への支援では、何が重要なのか。そこで「TOKYO Co-cial IMPACT」が果たせる役割とはどのようなものなのか。これまで多くの社会起業家の支援に携わってきた筒井の回答は明快だ。

リディラバ 事業開発チームサブリーダー 筒井 崇生
リディラバ 事業開発チームサブリーダー 筒井 崇生

「支援には、3つの重要な要素があります。まず、起業家を育てていくこと。次に、起業家や事業者に経済的なインセンティブが得られるよう、社会課題解決に取り組む事業のトップラインが伸びていく仕組みを制度も含め整えていくこと。さらに、起業家を支え、支援者にもリターンが広がるような金融のエコシステムを構築していくことです。例えば、上場市場においても企業が課題解決を最優先に志向し事業活動を行うことが、株価にもプレミアとして跳ね返っていくといった仕組みづくりなどすべてが一体となって進められる必要があると考えています。

起業家を育てていくという点に関して、それぞれのフェーズで適切な支援を受けられる『TOKYO Co-cial IMPACT』は出色のプログラムです。過去にさまざまな支援プログラムに携わってきた私の目から見ても、これほどまでに幅広い領域をカバーしつつ、各分野のプロフェッショナルが1つの船に乗ってくれる取り組みは極めてまれだといえます。本気で事業を立ち上げようとするときに必要なものは全部そろっているので、半年間でそのリソースを使い倒してやろうというぐらいの覚悟をもって参加してほしいですね」(筒井)

小室はポチキフに続いて、誰でも・簡単に・ほんの気持ちをおくれる、デジタルチップサービス「ポチップ」の事業化を目指す。そこには、特定の職種に限らず、例えば保育士や看護師のようなエッセンシャルワーカーの人々が仕事を続けやすくなるようにという、小室の願いが込められている。これは、社会課題解決型のビジネスの今後の可能性を信じるからこその新たな取り組みだ。

「2010年代まではスタートアップで起業するのがメインストリームでしたが、近年ではスタートアップがマスで取れるような市場は取りつくされた感があります。また、近年はやりのAIビジネスは、ファイナンスの大きさが幅を利かせる領域で、誰でも簡単に手を出せません。一方、社会課題解決型のビジネスは、難易度の高い挑戦にはなるものの、未着手の領域が多いブルーオーシャンで、事業性と社会性が合致したときのアウトカムには大きな可能性がある。実際、私たち学生の間でも、社会課題解決型ビジネスへの注目、存在感は高まっています。

ただ、起業経験もない人がインパクトを創出し、それを事業としても成立させるのは至難の業です。だからこそ、『TOKYO Co-cial IMPACT』のような支援プログラムに意義がある。やりたいと思った熱量はその人にしかないもので、それをどう社会にブーストさせていけるかが本当に大切なんだと、あらためて思いました」(小室)

「付け加えると、同時に素直さや柔軟性も大切です。プログラムではさまざまな人のフィードバックが受けられますが、ここは譲れない、という思いが強すぎると、事業に反映されていきません。仮説検証を繰り返してインパクトを測り、意思決定を回せる事業は伸びる。思いの強さと思考の柔軟性、このバランスが大事だと思います」(筒井)

TOKYO Co-cial IMPACT
https://tokyo-co-cial-impact.metro.tokyo.lg.jp/


こむろ・たくみ◎ZOYO代表取締役。一般社団法人アクトポート代表理事。横浜国立大学経営学部4年生。20歳でサステナビリティをテーマに教育コンテンツの企画・制作や出張授業・ワークショップを行う一般社団法人アクトポートを創業。高校時代に募金活動をしたことから寄付に関心を持ち、株式会社ZOYOを創業。ネットショッピングのおつりで寄付ができるサービス「ポチキフ」、誰でも・簡単に・ほんの気持ちをおくれる、デジタルチップサービス「ポチップ」の開発に取り組む。経産省主催の社会起業家アクセラレーションプログラム「ゼロイチ」にて最優秀賞を受賞。

つつい・たかのり◎リディラバ事業開発チームサブリーダー。早稲田大学を卒業後、通信業界のベンチャー企業にてBtoC営業、マネジメント業務を担当し、2チームのV字回復に従事した後にリディラバへ参画。 大手企業との社会課題解決型事業創出の伴走支援や、大学生・社会人を対象とした社会起業家創出支援に携わる。現在では自社事業の統括として、インパクト投資や寄付を通じた社会課題解決マーケットの創出や、「子ども体験格差」などの社会全体へのイシューレイジングが必要な社会課題領域の課題解決に取り組んでいる。

Promoted by 東京都 | photographs by Yoshinobu Bito | text by Nao Arai(AGITO)| edited by Ryuji Muratsugi(AGITO)

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私たちがビジネスで社会課題解決に挑む理由

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2026.01.02 09:00

ウクライナ交渉団に加わったブダノウ情報総局長、先行きを「楽観」 独占インタビュー

ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノウ総局長(Laurent Van der Stockt for Le Monde/Getty Images)

ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノウ総局長(Laurent Van der Stockt for Le Monde/Getty Images)

ウクライナでの戦争は世界と歴史の流れをいくつもの面で変えてきた。とりわけ、情報戦から技術競争まで戦争のあり方そのものを変容させ続けている。こうした地殻変動的な変化はあまりに決定的に見えるので、人はそれを自然の力になぞらえて受け止めがちだ。構造的な圧力の結果としてただ「起こる」ものだというふうに。だがもちろん、これは自然に起こっていることなどではない。そこには人間の「作者」が存在する。

ウクライナ側のドローン(無人機)ロボティクスや精密攻撃の驚異的な進化、綿密な諜報活動に基づく燃料施設や海軍・陸軍目標に対する目を見張る長距離攻撃、ロシアという途方もない「ゴリアテ」による侵略に対する一連の非対称抵抗──。これらはすべて人間の努力、個々の英雄的行為の所産だ。多くは無数の設計図やコンピューター画面上から始まるが、かなりの程度、上層部によって調整・展開されている。時おり、それを担う影の人物たちにスポットライトが当たり、その姿を垣間見ることができる。

そうしたリーダーのひとりで、戦争革命の主たる設計者と呼んでもいいかもしれない人物が、ウクライナの情報機関を率いるキリロ・ブダノウだ。彼は最近、和平合意をめぐりドナルド・トランプ米大統領の米国代表団などと直接交渉するチームにも加わった。

ブダノウは2020年にウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領から国防省情報総局長に任命され、以来、静かに地位を高めてきた。現時点で、ゼレンスキーの右腕として隣に立つ人物として、ブダノウほどふさわしい人物はほかに見当たらない。それはたんに職務上必要な能力という点だけでなく、この歴史的な局面に必須の資質、さらに国民が今日、こうした地位にある公人に求めている要件という点でもだ。すなわち、超有能で、汚職と無縁で、透明性があり、そして何より誠実さで知られるリーダーという条件である。

ブダノウは最近も表舞台に姿を見せた。2025年12月、地元メディアのフォーラムに出席し、その内容は国内で広く報じられた。ブダノウはこの場で、ロシアは欧州に対して軍事行動を起こす準備を進めており、バルト諸国に侵攻して占領することや、ポーランドを攻撃することを計画していると警告した。ロシア側の計画で行動開始の準備が整う年は以前は2030年と想定されていたが、現在は2027年に前倒しされているという。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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