※この記事は2025年5月20日初出です
ダニエル・ベックマンはアルツハイマー病の研究を進めるため、2017年にブラジルからアメリカに渡ってきた。
あれから8年。ベックマンはアメリカを離れるつもりだ。
「ここで自分の家を持ちたかった。アメリカで教授になって、自分の研究室を持ちたかった。ここで自分の人生を生きたかった」
カリフォルニア大学デービス校に在籍しているベックマンは現在、COVID-19の後遺症(ロング・コビット)の研究もしている。
「なので、多くの人々が病気になって、そうした人々がわたしたちの研究によって希望が持てるようになったのと同時に、政府はわたしたちの研究をもはや重要視しなくなったという感覚があります」
ベックマンのもとにはこの4月、アメリカ国立衛生研究所(NIH)から受けている5年間、250万ドル(約3億6500万円)の助成金が更新審査の対象にならないとの通知が届いた。トランプ大統領が高等教育機関の研究助成金の削減を進める中、ベックマンの研究に「COVID」という単語が含まれていることが打ち切りの"フラグ"になったという。
ベックマンはこの助成金なしに研究を続けることはできないため、ドイツでの新しい仕事のオファーを受け、そこで研究を続けるつもりだと話した。さらなる資金が得られそうなフランスでの機会も探っているという。
「まだまだ自分は貢献できると思っています。ここにはもう機会がないというだけで、自分の時間を無駄にしたくありません」
「ここに留まる価値はありません」
トランプ政権はここ数カ月間、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&IまたはDEI)への取り組みの廃止など、政権の要求に従わない大学への助成金を数十億ドル規模で削減してきた。中には、こうした姿勢がアメリカの頭脳流出に拍車をかけるとBusiness Insiderに語る科学者もいる。そして、世界の国々はアメリカの研究者を誘致するプログラムを推進することで、すでにこのチャンスをものにしようとしている。
アメリカ教育省のマディ・ビーデルマン(Madi Biedermann)広報担当副次官補はBusiness Insiderの取材に対し、「研究者が卑劣な反ユダヤ主義のテント村や暴力、ハラスメントによって業務が絶えず妨害されることのないキャンパスでの研究を好む理由はたくさんある」と語った。
「これがアメリカ政府の推奨する改革が非常に重要である理由の1つだ」
「学問的使命に専念し、キャンパスで学生を保護し、全ての連邦法に従うアメリカの大学がそのプログラムに対し、税金による手厚い支援を受けることには何の問題もない。わたしたちはこうした大学が今後も優秀な人材を引き付け、支援していくことを期待している」
ベックマンによれば、他の科学分野の同僚もアメリカを去ろうとしていて、これはアメリカにとって大きな損失になるだろうとベックマンは語った。
「わたしは自分の研究が重要だと感じているし、他の場所でも重視されています。アメリカ政府にとって重要でないだけです」
「ブラジルから迎え入れられましたが、突然、この国にとってわたしは価値がなくなりました」