海の二大ハンターであるシャチとイルカ。天敵同士のはずの両者がタッグを組み、協力してサケを狩る様子を研究チームが初めてとらえました。
自然界の美しい光景
この種を超えた連携プレーが確認されたのは、世界有数のシャチの生息地として知られるカナダ西部のブリティッシュコロンビア州沖。
映像には、海面を泳ぐノーザンレジデントシャチの周りにハシナガイルカが集まってくる様子が映っています。ノーザンレジデントシャチは、ほかの種類のシャチと違ってイルカを捕食することはありませんが、それでもイルカとシャチの協力関係が撮影されたのは初めてのことです。この研究論文は、Scientific Reportsに掲載されました。
シャチの研究中に偶然発見

この発見は偶然で、当初、研究チームはカナダ北部のシャチの個体数が南部に比べて多い理由や、なぜ繁栄しているのかを解明するために研究していました。しかし、彼らの研究は予期せぬ障害に遭遇しました。それは、いたるところにイルカがいるという現実です。
本研究の共著者でハカイ研究所の地理学者Keith Holmes氏はCBCの取材に、「最初は『ここから出て行け。僕たちはシャチの調査をしようとしているんだ』という感じでした」と答え、イルカに対して「少しイライラした」ことを認めています。

しかし、研究者たちが詳しく観察してみると、すぐに状況は一変。イルカがシャチを追いかけていたわけではなく、むしろシャチがイルカを追いかけていたのです。ドローンと吸盤式のバイオロギングタグを使い、研究チームは空中と水中からこの連携プレーの撮影に成功。このシャチとイルカによるタッグは、2020年8月15日から30日の間に258回観察されました。
イルカとシャチのWin-Winな関係
研究チームはイルカとシャチが発する「エコーロケーション」と呼ばれるクリック音もとらえました。両者は自分が発したこの音の反響音を聞くことで方向を見定め、自分の周辺の環境を感知します。
なぜ、シャチがイルカを追いかけていたのか。理由として研究チームは、シャチがイルカのエコーロケーションの手がかりを使って大型のサケを探したと考えています。
では、イルカがシャチに協力するメリットは何か。サケは通常「イルカが捕獲して丸ごと飲み込むことができない獲物」だと研究者らは声明で説明しています。シャチはサケを捕獲すると、仲間内で分け合うために小さく切り分け、残りをイルカに与えていました。
また、イルカはシャチと一緒にいることで、イルカを餌にする別の種のシャチから身を守っている可能性があると考えられています。
ブリティッシュコロンビア大学の海洋生物学者Andrew Trites氏は、シャチは望めばイルカを簡単に殺すこともできるものの、このプロセス全体を通して攻撃的な兆候は見られなかったと説明しています。
また同氏は、
シャチは協力することでエネルギーを節約し、イルカをレーダー搭載の偵察機として利用することで、より深い海域で大型のキングサーモンを発見する可能性を高めることができるのです。
とリリースで述べています。
協力か、それとも搾取か?
とはいえ、この状況には他の解釈もあるかもしれません。
今回の研究には関与していないジョージタウン大学の行動生態学者Janet Mann氏は「シャチがイルカの追跡能力を利用してサケを探しているだけかもしれない」とScientific American誌に語っています。
シャチとイルカによるパートナーシップが年間を通して維持されているのか、それともキングサーモンのような価値の高い獲物が近くにいるときだけなのかは、いまのところまだ不明です。
なお、コメントで何か指摘される前に言っておきますが、シャチも厳密に言えばハシナガイルカと同じく、海洋イルカ科に属します。そして、シャチはクジラでもあり、正確にはハクジラ類です。
Source: Nature, CBC, Scientific American







