日本経済の縮小を背景に、企業の目線はますます海外へ向いている。すでに売り上げの大半を海外で稼ぐ企業も珍しくない。人口減少で国内の労働力が細りゆく中、生産や販売拠点を海外に広げることは、企業にとって重要な生き残り戦略のひとつになった。
しかし今、その期待の地域で異変が起きている。日系企業が数多く進出する東南アジアで、日本企業が現地人材を採用できないケースが増えているのだ。中国や韓国など、後から参入してきた他国企業に採用競争で負けていることが大きな要因だ。
成長市場で足元をすくわれ始めた日本企業は、これからどう立て直すべきなのか。
近藤 俊弥/Link and Motivation Singapore Pte. Ltd. CEO
2007年に株式会社リンクアンドモチベーション入社し、大手企業から中小・ベンチャー企業まで幅広くコンサルティングを担当。 2017年に「モチベーションクラウド」の事業責任者に就任し、9年連続国内シェアNo.1を獲得。 2025年より拠点を国外へ移し、Link and Motivation Singapore Pte. Ltd.のCEOを務め、世界にコンサルティングの幅を拡大。
「働きたい企業」が人材不足に
「ここ数年、採用目標の半分も届かないという状況が続いている」
「内定を出した志願者も、最終的に外資系の企業に流れ出てしまうことが少なくない」
東南アジアで金融系の事業を展開する日系企業の人事担当者からこんな声が寄せられている。
日系企業が東南アジアへ本格的に進出し始めたのは、プラザ合意後の急激な円高が進んだ1980年代後半だ。自動車や電機メーカーを中心に、安価な労働力を求めて生産拠点を構えたのが起点となった。
その後は製造業にとどまらず、現地市場の開拓やサプライチェーン再構築など、目的はさらに多様化。東南アジアは日本企業にとって「海外展開の主戦場」になっている。
経済産業省の2024年調査では、ASEANにおける日系企業の拠点数は約2万拠点にのぼる。最多はタイ、次いでシンガポール。ベトナムやインドネシアにも2000超の拠点が広がり、地域全体で日本企業の存在感は依然として大きい。
日系企業はかつて、東南アジアで採用人気を誇った。高度経済成長期もあり、30年ほど前は製造業を筆頭に、持ち前の組織力を活かして現地人材を確保した。現地の優秀な人材も、安定した雇用制度や誠実な経営文化を評価し、働きたい企業として日系企業を選択していた。
しかし、JETROの2023年度の調査では、東南アジアに展開する日系企業の約半数が「人材不足の課題に直面している」と回答。海外の人材獲得は厳しくなっていることが明らかになっている。
では、ASEANで何が起きているのか。