フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第5話 道場にはフォースがあり

「あかん、そろそろ行かんと月謝払い損だ」

 

 ここにやって来た時から住み続けているヤヌス地区の六分街にあるアパートの一室、寝室のベッドの上で胡坐をかいて瞑想をしていた俺は唐突にそう呟いた。最近ヴィクトリア家政がらみでめっきり足が遠のいてしまっていたが、道場に行かなければいけないということを思い出したのだ。

 

 この世界においてフォースはあれどフォースに付随する技術はない。俺がそれを身に着けることができたのは8割フォースの導きという何でもありなアレのせいなのだが残り2割の努力、つまりフォームを実際に振るったり戦いの基礎を教えてもらったりした場所がある。

 

 その名も雲嶽山の適当観、冗談みたいな名前だが冗談ではない。結構な歴史を持つ老舗の道場なのだ。特に占星術とエーテルを利用した術法、格闘技術においてはそんじょそこらの比ではない上に実戦武術と来ればトーシロだった俺が通わない理由もないというものだ。

 

 そうと決まればと背嚢の中に胴着とお土産、そしてジェダイ・ローブとライトセーバーを放り込み、玄関の鍵を閉めて1回の駐車場に脚を進める。するとそこにはゴツくてでかいバイクが鎮座しており俺は背嚢を背負ったまままたがって鍵をかけてエンジンを始動する。

 

 新エリー都郊外産のエンジンは調子よくかかる。俺の身長からしたらデカすぎるゴツすぎるがこういうのが好きなんだよ、男として。乗りこなすのにフォースを利用しているのは内緒だ。かっこ悪いしな。そういうの。

 

 こいつのすごいところはハイブリットバイクなところである。エンジンとライトセーバーを作ったときに出たバッテリーセルの副産物を搭載しエンジンとバッテリーのダブル動力で化け物みたいな馬力を誇るモンスターマシンなのだ。本音を言えばエンジン音がうるさすぎて近所迷惑になり搭載したという何ともダサい理由でできたバイクなのだが。いいもん郊外で思いっきりエンジン吹かすから。

 

 向かう地区はスロノス区内の衛非地区、ラマニアンホロウとかいうクソデカイ原生ホロウが外洋にある街だ。独特な文化圏で有名だが抗エーテル資源の採掘ができるということでいろんな企業が根を張っている。栄えているかどうかはまあ、どうだろうか。

 

 電気で走っているからかかなり静音性が高いバイクを操り俺は結構立派な道場の門の前にバイクを止めて、立派な門をくぐる。雲嶽山は来るものにのみ修行を見てくれるので来なくなった場合追ってきたりはしない。金もまあ、払わなくなったらそれきりだ。俺は金だけは払うようにはしてるけど。

 

 そんなことを考えながら俺は昔はもっと盛況だったらしいけど今となっては人がまばらに修行をしている感じの適当観を歩いて本堂とも言うべき建物にたどり着く。人の数自体はそれなりにいるけど適当観には寮のような宿泊施設はないのでみんな通い弟子なのだ。だから来てない人来ている人が日によって違う。

 

 とりあえずお師匠様にご挨拶を、と思ったがそれよりも先に面白いものを見つけてしまった。ぴょこぴょこと動き回り、ふりふりと尻尾を揺らし、背が低くて届かないのか雑巾をもってジャンプしながら窓の上を拭こうとしているシリオン。

 

「おいっす、福姐(フーねえ)さん。お久しぶり」

 

「んにゃっ!?猫ちゃんじゃないですっ!ってザインさん!2週間近くも来ないで何してたんですか!?修行をさぼるなんて感心しませんよ!?」

 

「修行ならホロウの中でしてたよ。というかここ2週間マジで忙しくてさ……」

 

「……あたし相手だからいいですけど、あんまりレイダー行為をしてることを言わないほうがいいですよ?それよりも、ハイっ!」

 

「おおっと、早速?」

 

 ぽむん、と少々不敬ながらもその人物の頭に手を置くと俺に気づいてなかったのかビクゥ!と背を跳ねさせたのちにお決まりのセリフを言って振り向く。相手が俺だと気づいたからかパァッと顔を輝かせたのちに今度は指を一本立ててお説教モードに入る。

 

 表情感情動きその他もろもろ愉快なこの人物の名は橘福福(チーフーフー)。皆大姉弟子、姉弟子などと呼ぶが俺の場合は福姐さんと呼んでいる。なにせ俺がこの世界に来てホロウに入りだしてからだから……もうすぐ6年になる付き合いなんだから親しく呼んだっていいはずだ。文字通り俺に取っては姉さんみたいな人だし。

 

 長い金のロングへアにトラ模様の入った髪、もふもふの耳、こっちも毛量が多く、リボンで飾りつけしている尻尾。茶トラ猫のシリオンといつ間違えられて憤慨しているが本当は新エリー都の中でも希少中の希少、トラのシリオンだ。いつの間にか背は逆転してしまったが俺にとっては大きく見える人だ。揶揄うと面白いのは内緒。

 

 そんな福姐さんは、一通り俺に会えた喜びを発散し終えたのか唐突に貫手による突きを顔に向かって繰り出してくる。俺はそれを掌で逸らしてそのまま反撃の逆水平チョップを繰り出すものの軽くパシンと受け止められてしまう。

 

「おみごとっ!」

 

「そっちも」

 

 縁側のような場所から石畳の庭に場所を移し、拳と拳の応酬を続ける。対打と呼ばれるまあ、訓練というか修行というか……約束組手という説明が最も近いだろう。この動きにはこの動きで対処するという型の確認をより実践的にしたものと言えばいいか。

 

 直線的で力強い拳や掌による打撃を主とする俺に対し福姐さんは曲線的で柔らかくもありつつも瞬発力を重視した貫手や文字通りの虎拳で対抗してくる。俺の場合はフォースによる身体強化があるので技で小細工するよりも一撃の威力を重視した大砲のような体術を目指している。対人間の場合ライトセーバーは使えないからね。

 

 対して福姐さんは肉食獣であるトラのシリオンという恵まれた身体能力がありつつも上背がなく体重も軽めなのでどうしても一撃の威力よりも手数重視のスピード型だ。拳法家としては彼女にはまだ歯が立たないが、戦闘なら食らいつけはする……たぶん。

 

 この対打がなぜ行われるかというと俺自身生活のためにホロウに潜っているので適当観には高い頻度では来れない。それに頬っぺたを膨らませた福姐さんが私を認めさせなければ修行のサボりなんて許しません!と来たので来るたびにこうやって確認されているわけだ。

 

 ただ、俺に取っては嫌なことではなくむしろ楽しい。なにせ雲嶽山の実質ナンバー2である福姐さんが俺につきっきりになって修行を見てくれるみたいなもんなんだぞ?もろ手を挙げて喜ぶべきだろ普通は。

 

 バチィ!と手刀と掌底が交叉して改めて間合いを取った俺たちはどちらともなく構えを解いて体の力を抜く。うーん、相変わらず福姐さんにクリーンヒットを出せる気がしない。かといってフォースを使うのは反則なので純粋な技量でこれだ。まだまだだなあ俺も。

 

 ぱちぱちぱち、と音がすると福姐さんが両手で拍手を俺に向かって送ってくれてた。ニコニコ笑顔で尻尾も機嫌よく揺れているところを見るに今回も合格をもらえたみたいだ。改めて挨拶をしようと福姐さんに向かって歩いていくと、あ。

 

「うむ、見ていたぞザイン。よく研鑽を積んでいる。見事だ」

 

「お師匠様、御無沙汰してます」

 

「お師匠さま~!見てください!ザインが、ザインがですね!」

 

「ああ、さっき見ていたと言ったろう?より鋭くなった、悪い遊びが続いてると見える」

 

 声をかけてくれたのはこの雲嶽山で一番強くて一番偉い人、宗主の儀玄(イーシェン)さんだ。つまり俺のお師匠様である。長身の女性で豊かな白髪を長く伸ばし、プロポーションのいい体を姿勢よく揺らして俺のほうに歩いてきて、頭にポンと手を置く。うーん、この人にとっては俺はいつまでもザインの小僧ってわけか……。

 

 フォースを使ってないにもかかわらず俺のフォース感知がより精密かつ範囲が広がっていることを言いあてたこの人は俺のホロウレイダー活動には反対なのでちくりとお小言を言う。ただ、これをしないと生活できないことも知っているのでお小言でとどめてくれるのだが。

 

「お前の力、我ら雲嶽山の歴史の中でも同じものはひとつとして見ないものだ。結局私には会得できなんだしな。だがそれでサヨナラでは修行場としての沽券に関わる。今一度構えろ、今度は私だ」

 

「今日はいやにスパルタですね」

 

「なに……調子に乗ってないか見るだけだ」

 

 2連戦か、と思いつつ拳を構えようとしたらお師匠様は首を振り自分の周りに術法でいくつもの墨でできたような鳥を出現させる。そういうことか、と俺は背嚢からジェダイ・ローブを取り出して羽織り、背嚢を投げ捨てたのちライトセーバーを起動させた。

 

 選択するフォームはフォーム1、シャイ=チョー……ジェダイが金属剣からライトセーバーに武器を移した際に最初に作られた原初のフォームだ。一番古いだけあってライトセーバーの基本、攻撃と防御が全て集約されている。

 

 ざわ、と俺に共鳴したフォースが収束して俺の周りに力場を作る。それが前よりも洗練されているのをお師匠様は感じ取ったらしく薄く笑みを浮かべて法印を切る。すると墨の鳥たちはそれぞれ剣に変じて四方八方からほぼ同時に俺に襲い掛かった。

 

 先に到達する順番で対処しようと思ったらほぼ同時だったので、バックステップで一歩下がって後ろ振り向きと同時に袈裟懸けで二つの剣を叩き切り、動いたことで到達時間に差ができた前方と横の剣を正眼に構えたセーバーで切り払う。

 

「術法だけとは私は言ってないぞ」

 

「やってくるとは思ってました!」

 

「それでこそだ」

 

 術を操るお師匠様がただそれだけに終始するはずもない。術を使いながら体術で殴ってくるという修業とはと首をかしげる攻撃をセーバーを気にしつつ対処する。師匠の打撃は福姐さんより素早くて尚且つ俺より威力があるという反則攻撃だ。しかも着弾時にエーテルが爆発するというおまけ付きでもある。

 

 フォースによる未来予知がなければとっくの昔にやられている。というか寸止めの気配がないのでワンチャンぶっ刺さって俺死んでるかもしれん。打撃をフォースを纏った肘で防御し、抜き打ちの散弾のような墨の弾丸をすべて切り払う。

 

 両手に墨の剣を持ったお師匠様が切り込んでくるもののライトセーバー相手では切り結んだ瞬間に武器が壊れる未来が待っている。一本目を切り飛ばした瞬間に持ち手を変えないままフォースで強引に逆方向に斬撃を入れる。お師匠の持っていたもう一本を柄から真っ二つにする。ライトセーバーが全方向斬れるからこそできる使い方だ。

 

「ふむ、はあっ!」

 

「おおおおっ!!」

 

 初めて両手で印を結ぶ師匠。集中力を研ぎ澄まし腹から声を出して気合を入れフォースへの感応を高める俺。数瞬後に訪れたのは濁流のような剣の雨だった。フォースで未来を見てもなお対処不可能だと匙を投げるほどの物量、だがしかし……諦めるのはダサすぎる。福姐さんが見ててお師匠様が試してくれてるんだぞ?乗り越えて見せる。

 

 両手に力を込めてライトセーバーを握る。こいつは結局ただの剣でしかない。ビームは出ないし、巨大化もしない。分裂もしない。勝手に空飛んで自動で攻撃してくれない、実直なただの剣だ。扱う俺次第で強くも弱くもなる。

 

 見えた未来へ切り込む。フォースを信じろ、俺を信じろ。死線に活路を見いだせ。当たらないものは無視しろ、かすっても死にゃしない。当たるのだけを切り裂いていけ。無数の未来の中から最善を選び続けろ。右、上、ひだり、みぎ、みぎ―――ッ!!

 

「……無理だな」

 

「……期待外れでしたか。まあまあ防いだ気はするんですが」

 

「そうではない――――私がお前を殺す気で攻撃するのは無理だ、という話だ。情というやつは一度湧くと厄介極まる」

 

 体中のかすり傷から血を流しながらもなんとかクリーンヒットはゼロで押さえたんだが……と思ったがこれ遠回しに誉めてくれてるのか?殺す気でかからないと仕留められそうもない、って?やば、ちょっとうれしいぞこれ。

 

 なにせ儀玄さんは最強の称号でもある虚狩りを持つエージェントと互角の実力を持つを噂されてる人だ。その人がそんなことを言うのだから少しだけ自分に自信が持てるぞ……それでもまあ、調子に乗ったらいけないけど。

 

 福姐さんはすごいすごいと飛び跳ねている、俺からしたらあなたの方がよっぽどすごいんだけどなあと苦笑するばかりだ。セーバーの刃を消していつものように袖口にしまい込む。それを確認したお師匠様は口を開いた。

 

「ザイン、お前の今の実力ならばホロウ内で後れを取ることはそうそうないだろう、頑張ったな。だが強いて言うとすれば……お前は真の意味で死線を超えたことはない、そうだろう?」




 フォースを操る主人公くんは危うきに近寄らずが余裕でできるので今まで死にかけたことがありません。だけどフォースくんが唯一自分を知覚できる主人公くんにBIGLOVEを抱いているので実力だけは多分にあります。修行だけでたどり着ける限界にいる感じですね。
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