フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第4話 戦場にはフォースがあり

「……ねえ、それさ」

 

「これのこと?」

 

「そう。いいよね、それ。楽そう。ちょっとうるさいけど斬るのに力要らなそうで」

 

「自分に当てたら普通に死ぬよ」

 

 エレンさんが指し示すのはライトセーバー。大体何でも溶断するステキSFソードである。ただこれ、扱いが死ぬほど難しいのだ。マジでフォースの導きというか身体能力の強化とかそういうのがない素人が降ったら10振り以内に自分斬って死ぬよ。

 

 まず重心の位置。大体普通の剣は振りやすいように重心が中央あたりにあるんだがライトセーバーは柄しかないので重心が柄そのままにかかる。この時点で振りにくい。さらにはプラズマの刃は微妙に回転し続けているのでジャイロ効果により変な方向に力がかかる……総じて、変な使用感の武器なのだ。その分一撃必殺の威力があるし頼りになる……フォースがあればだけど。

 

 倒したエーテリアスの数が50を超えたあたりで俺はそろそろエーテル活性度が下がりそうかなと推察する。既に探索は8割が終わっていてあとは、後回しにしていたレイダーたちとその近くにいるエーテリアスを残すのみ。先にレイダーを片付けてエーテリアスを……あれ?

 

「エレンさん、眠そうだけど大丈夫?」

 

「……いつものことだし平気」

 

「学校とは違う感じだからさ、ホロウ内なんだから無理はダメだよ……もしかしてお腹減った?」

 

 返答はビタン!という尻尾が壁を打ち付ける音だった。あー、このタイプの指摘あかんかったかぁ……と若干後悔しながらの俺と少しだけ顔を赤らめて無言を貫くエレンさん。どうも、戦闘回数が10を超えてから若干眠そうに瞼が下がってるのを見てしまった。

 

 彼女の戦闘スタイルは極めて省エネって感じだが、だからとはいえ回数が重なれば節約したところでエネルギーは消耗する。全部俺が倒したっていい、という割には仕事だから動こうという意識はあるらしくちゃんと連携をとって戦ってくれるし。

 

 無言でローブの中に増設したポケットの中からすっとチョコレートバーを取り出す。携帯できる割に高カロリーのちょっとお高いやつだ。ちら、とそれを見る彼女だが受取ろうとはしない。ので。

 

「はい」

 

「……なんかムカつく」

 

「文句は受け付けないからね。バディ組んで仕事してるんだから」

 

 包装紙を向いて、むす……という感じの彼女の閉じた唇に押し付けた。ここまでやってようやくエレンさんはチョコバーを受け取って齧る。ギザギザの歯がザクザクとチョコバーを削り取ってあっという間に消滅。

 

 まだあるよーと懐から見せると伸びてくる手、2本、3本……ポケットの中身が全部なくなってしまったがまあもうすぐ終わりだし問題ないだろう。エレンさんも多少は眠気が飛んだみたいだし。あーでも、でてってくれないかーホロウレイダー。

 

「次、レイダーと接触する。数は10人ちょい、俺たちがエーテリアスを掃除してる間に出てって増えたね」

 

「え、それ引っ張ってくの?」

 

「別の出口が近いからそこから出せばライカンさんが気づくでしょ。問答無用でいくよ、俺はともかくエレンさんの浸食限界もあるし」

 

 フォース、というのはエネルギーであり力場である。それを常に纏っている俺はエーテル侵食にかなり強いという副産物があるのだ。一応エーテル適応体質だしね、フォースってのはとにかく何でもありな物質なのだ。その気になればライトセーバーのバッテリーセルへフォースで充電するなんてこともできる。

 

「……任せる。あんたの能力とやらが本物ってのも確認できたし」

 

「やっぱそうだった?言っていいの」

 

「気づいてんなら隠す意味ない」

 

「おっしゃるとおりで」

 

 ヴィクトリア家政が欲しいのは俺じゃなくて俺が使っているホロウ内への探索方法だ。これが個人に寄らないものなら……最悪奪えるからね。エレンさんはクラスメイトであるということで俺の警戒を多少なりとも解くような役割兼試験監督みたいなものだろう。俺が実力をきちんと持っているかどうかの。

 

 エレンさん自体は多分後者の方しか知らされていない。こういってはなんだけど、彼女は隠し事が上手じゃない。嬉しいことは尻尾に出るし、嫌なことは顔に出る。言動も割とドストレート……バレても問題がないし、そういう人だと知っているからこその役割だ。

 

 ただ、彼らにとって誤算だったのは俺のホロウ内探索の方法は完全に俺個人による感覚(実際はフォースの導きに従ってる)での方法だったので俺しか真似できない……正確にはフォースを感じ取れるようになって修行を積めばできるのではあるが、一朝一夕には不可能だ。まず才能いるし、努力じゃなくて先天的な。

 

「んじゃ、この先すぐ。問答無用の見敵必絶でよろしく」

 

「絶ってなに」

 

「殺すんじゃなくて気絶させろってこと」

 

「わかりにく……りょーかいっ!」

 

 場を和まそうとした冗談にため息をついたエレンさんが武器を一回転、しっかり持ち直して走り出す。俺もセーバーを起動し、前方の部屋の合金製の扉を袈裟懸けに両側から斬り飛ばす。そしてそこにエレンさんが横回転しながら尻尾を叩きつけてドアを粉砕し中へ侵入する。

 

「なにも、がっ!?」

 

「ぐぉっ……!?」

 

「まず二人」

 

「何もんだテメェら―!!!!」

 

 突入と同時に顔面への飛び蹴りで一人アウト、さらに着地と同時に身を沈め左の肘を下から上へ突き出すような感じの肘撃ちで二人目だ。エレンさんが着地し、前に飛び出そうとするものの相手の武器、銃が向けられたのを見て止まる。

 

 しまった、銃程度なら問題ないかと思ったけどそれは俺だけの話だ。エレンさんに銃が当たれば……当たるか?という疑問はあるにしろこれは俺のミス、挽回しないと。一足飛びにエレンさんの前に飛び出て今までは適当にぶら下げていたライトセーバーをきちんと構える。

 

 半身になり、左手を前に出し指を二本立て相手を指さし、セーバーを持つ手を弓を引き絞るように引いて突きの構えをとる。ライトセーバーの七つのフォームの3つ目、ソレスだ。おそらく一番有名なフォームだろうと思う。

 

 数瞬後、俺とその後ろにいるエレンさんに向かって銃口から火が吹く。だが、ソレスは対ブラスターを念頭に置いた防御の構えだ。あまつさえ銃弾よりも速い光弾であるブラスターを反射させて相手を打ち倒すことすらできるのに、ただの弾を切り飛ばすだけならいくらだって続けられる。

 

 反射神経を全開に、フォースで数瞬先の未来を見、導かれるままにセーバーを振るう。無数の光の軌跡が俺の周りを走り抜け、セーバーに切り落とされた弾丸が地面に落ちたり熔けて壁にへばりついたりしていく。後ろのエレンさんは驚いた気配を見せるもののすぐに気を取り直して足に力をためていくのがわかる。

 

「今ッ!」

 

「はぁっ!!」

 

 ガチン!と弾切れの音が響いた瞬間に俺の後ろから飛び出すエレンさん、彼女は右に、俺は左に飛び出して挟み撃ちにするような感じで相手に襲い掛かった。エレンさんは持っている武器の側面や尻尾や蹴りなんかを駆使して相手を伸していく。俺は起動しっぱなしのセーバーを相手に当てないように掌底やら肘撃ちやら蹴りなんかの体術にフォースの力を上乗せして相手をノックアウトする。

 

 数十秒後、そこにはフンと鼻を鳴らすエレンさんとセーバーを仕舞って荒縄を取り出す俺の二人だけになっていた。ひとまとめにぐるぐる巻きにしたホロウレイダーをフォースで浮かせて運ぼうとするとエレンさんの顔に『便利』と書いてあることに気づく。便利だろ、毎日瞑想して頑張った成果だぞ

 

「あたしにもできないかな、それ」

 

「毎日のほとんどを修行に費やせるなら教えるけど?」

 

「無理」

 

 ばっさりなことで、と俺は予想していた答えを返してくるエレンさんの変わらない姿勢に逆に好意を抱いた。エレンさんは誰でも彼でも変わらない。もちろん友達か、上司か、あるいはクラスメイトかその他大勢かでちょっとした違いはあるけど大体一緒だ。親友らしい3人の女の子たちを除いて彼女の姿勢はすべてフラット、平等で何も変わらない。

 

「ま、両手がふさがってるときにおにぎりを口に運べる程度には便利だよ」

 

「……そういえば、どうして使わなかったワケ?その剣」

 

「必要なかったってのが一つ。ただ、大部分の理由はこれをできるだけ人には向けたくないっていうのが本音。さっきエレンさんがその武器の側面で殴ったみたいなことはできないからね」

 

「そう……あんた、お人よしだ。命の取り合いして相手の心配とか」

 

「場合によるさ、俺だって聖人君子じゃない。殺す理由を持ってないだけだよ」

 

 お人よし、かあ。まあこのホロウ探索を通じてエレンさんが俺に持った印象がそれだっていうなら悪い気はしない。少なくとも「バカ」だとか「アホ」とか「スピリチュアル」とか言われてたら俺は泣いていた。

 

「でも、そういうフツウってやつ。ちゃんと持っていられるのはスゴイんじゃない?あたしはあんまりそういうの考えないけど」

 

「めんどくさいから?」

 

 返答は尻尾での背中ビンタだった。イッタ!と思うもののエレンさんが薄くニンマリしてるのを見てある程度は信頼を得ることができたのだということは理解できたのだ。んじゃあ、そろそろ……。

 

「ライカンさん、大荷物なので手伝ってもらっても?」

 

「――――驚きました。今回は本気で隠れたのですが」

 

「……ボス?なんでいんの?」

 

「あのね、エレンさん。得体のしれない外部協力者を従業員と本当に二人きりにすると思う?」

 

「お気を悪くしないでいただけると嬉しいのですが……」

 

「まさか、むしろ好感度上がりましたよ。ちゃんと部下のことを考えるいい上司って」

 

 申し訳ないが、気配を消した程度ではフォースの感知から逃れることはできない。フォースを断つという絶技をもってしないと宇宙そのものの力であるフォースからは隠れられないのだ。気配を消したところでフォースはそこにあるのだから。

 

 今回何度か空間を跳躍したができるだけ安定した道を選んだつもりだ。キャロットを十全に使いこなせるであろうライカンさんが少し距離を離してついてきているのは最初からわかっていたから、安定して通れる道を通ってライカンさんと離れないようにしていた。

 

 たとえスカウトをした側だとしても裏稼業なのだ、真に信頼を置けるまでは警戒を解かない。全くもって当たり前のこと。それを卑怯だなんだ試すなんてふざけんななんて言うわけない。むしろこれで信頼を得られるならば安いものだ、だって安定した収入になるかもしれないのだから。

 

「……あと数体エーテリアスがいますがどうしますか?多分縮小しても消滅は無理かもしれません。時間をおいてもう一回湧いたエーテリアスを狩ればいけそうですが」

 

「いえ、ここまでにいたしましょう。オーダー様の手腕には感服いたしました。是非とも教えを受けたいものです」

 

「……残業代、よろしく」

 

 そうか、第一目標はホロウの消滅ではなく縮小あるいは現状維持でこれ以上被害を広めないためだったのか。そして俺の実力及び人柄の再確認を同時にやってしまおうというわけね。合理的ではあるが、少々人の心がないような気がする作戦だ。

 

 ライカンさんやリナさんが考えるわけない、なにせエレンさんの言葉を借りるなら彼らだって相当な『お人よし』である。つまり指示はライカンさんの言うご主人様ってわけか。それでライカンさんはどうにかしてついてきた、あたりが適切か?

 

 ふんじばった10人のホロウレイダーには申し訳ないがフォースで思考暗示をかけさせてもらって俺とエレンの顔を曖昧にさせてもらう。オビ=ワンをはじめとしたジェダイが使うマインドトリックだ。一応ホロウで助けたやつらには使うようにしているからこそバレなかったはずなんだがなあ。

 

「しかし、驚きました。エレンがこんなに長時間の探索をこなせるとは。もしもの時のためでしたが、今後は不要そうです」

 

「正直、ものすごい楽。いつ敵が来るかとか、どこに何があるかとか全部わかるから考えなくていい。戦うのだって最低限。ね、ボス……できるだけザインとはセットにして」

 

「おやつもでてくるからねってイッタっ!?」

 

「マジで一言余計」

 

 エレンさんって意外とおしゃべりしてくれるタイプなんだなあと新たな一面を発見しながらのからかいは彼女の尻尾によるローキックにより中断された。いや、でも面白いぞ。本気で嫌がってたら多分顔にあの剪定鋏が飛んでくるから揶揄われてるのをわかって小突く程度には気を許してくれてるんだろう。ちょっと仲良くなれた感あって嬉しいわ。




 多分ライカンさんは過保護、これ絶対。エレンって実質リナさんとライカンさんにとっては義娘なのでは……?じゃああれじゃん、どこから生えてきたかわかんない胡散臭いフード被った一般クラスメイトといっしょにホロウに入れるわけないじゃん。さすがは執事様。
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