フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第3話 家政婦のご奉仕はフォースと共にあり

「おはよ、ジョーさん」

 

「……はよ。エレンでいいって」

 

「そう?急に呼び方変えると怪しまれると思ったんだけど」

 

「大袈裟……このクラス大体みんなあたしのことエレンっていうじゃん。名字呼びの方が目立ってるよ」

 

 そうなのか、と俺は朝学校に遅刻ちょい前あたりの感覚で教室に入ってきて隣の席に座るエレンさん。彼女の座り方というのは結構独特で、学校特有のちょっと背の高いパイプ椅子の背もたれとお尻をセットするところの間に尻尾を入れて座るのだ。前世にはシリオンなんていなかったので俺に取ってこれは非常に新鮮に映る。

 

 サメの後ろ半分、とでも形容すべき彼女の尻尾はタトゥーシールでおしゃれに彩られ、手入れをしっかりしているのか肌荒れ?のようなものもない。俺だったら絶対に目視で確認するかフォースで補助を入れるであろう座るときの動きをノールックでやってるあたり彼女とは完全に種族が違うんだなあと思うわけだ。

 

「……ん」

 

「なにこれ?」

 

「ノックノックのアドレス……バイトの時めんどいから」

 

「ああ、そりゃどうも……食べる?」

 

「……くれるなら」

 

 コンビニで買ったスナック菓子をぽりぽりしながら一連のやり取りをしていた俺ではあるが、エレンさんの目線がスナック菓子を取り出して口に運ぶ俺の動きと完全にリンクしていたので、差し出してみる。めんどくさそうにアドレスのQRを表示させたスマホを机の上に放ったエレンさんは俺が差し出したカップからがさっとまとめてスナック菓子をとり、ぼりぼりと食べる。

 

 半分以上持ってかれた、まあいいか。ノックノックのアドレスをカメラで読み取り登録、あれ?アイコン画像とかいろいろ設定されてる、そういうのするタイプだとは思わなかったけど流石は女の子って感じか。俺?俺のはあれだよ、宇宙の画像。なんでってそれはSTARWARSだからね。

 

 って半分以上食べたのにまだ物欲しそうなんだけどこの子?こんな腹ペコキャラだったかな?あーでもことあるごとに棒付きキャンディ舐めてたっけ?シリオンってカロリー消費が激しい人がいるって聞くから彼女はそのタイプなのだろう。

 

「残り、いいよ」

 

「……」

 

 無言でスマホとスナックのカップを持っていかれる。苦笑するばかりだが、彼女は大体こんな感じだから慣れた。むしろ今日は彼女から話しかけてくれたあたりだいぶ長くお話しさせてもらった方だろう。さてさて、と早速ノックノックにメッセージが。

 

 『今日、早速仕事だって』……横目で彼女を見るともう俺には興味を失った様子でスナック菓子を口に運びつつスマホを弄っていた。スタンプを押すだけ押して俺はスマホを仕舞い、瞑想に入る……前に教師が入ってきたのでフォースとは一体になれなかった。ああ、フォースよいずこへ……。

 

 

 

 

「……着ろと?」

 

「はい」

 

「契約に含まれてませんが?」

 

「ヴィクトリア家政として動いていただく際は必須になります」

 

「後付け条件はゆるせんよなぁ!?悪質な不動産か!」

 

 手で口元を隠したライカンさんと同じく手で口元を隠した俺。その間にあるのは机……ではなくその上に乗った執事服である。しかもこれ、ライカンさんが着てるのとだいぶ違う。ライカンさんのは趣味ってことぉ?じゃあ今この広げてるやつのデザインも趣味?なんだよこの背中を通る拘束ベルトみたいなやつ……足の膝にもベルトがバッテンでついてる。

 

 とまあここまではお約束みたいな感じで抵抗してみるものの俺はホロウレイダーであっちは表のお偉いさんまで伝手があるらしい家事代行兼裏エージェント派遣サービス。社会的に殺されても嫌なので素直に従っておくことにする……でもジェダイ・ローブは絶対に上に着るからな。

 

「……台無し」

 

「そんなもんわかっとるわ。でも俺にも譲れんもんがあるのよ」

 

「そのフード付きの茶色いローブが?もっとカッコいいもん着なよ」

 

「そういうエレンさんはよく似合ってるよね、特注?」

 

「裏のご奉仕にかかわる場合戦闘服になりますので特注になります。デザインはリナが」

 

「……らしいよ」

 

 台無しなんて言われるのは心外だが、俺自身も台無しだとは思うので強く反論はできない。明らかに俺のサイズに合わせてあるうえに素材も一級品だ。防刃防弾だろうしエーテル結晶を使っている感じがする。そんな上等な執事服の上に……小汚く見えるジェダイ・ローブを羽織ってるんだからそりゃ台無しである。

 

 ただジェダイ・ローブはSTARWARSを象徴するような衣装の一つだ。ジェダイの伝統的なこの衣装は彼らを平和の守護者とみなすアイコンであり、ライトセーバーを隠す鞘であり、脱ぎ捨てることで交渉は終わりであると示す交渉道具ですらある。ここから先は実力を行使する、という意味の。

 

 俺の場合、これは少し違う。俺は学生で普段は学校に通う一般人である。その一般人がホロウレイダーという違法行為に臨むために気持ちを切り替えるための戦装束なのだ。そしてもう一つ、できればフォースの光明面、ライトサイドに傾きたいという意思を確固たるものにするためだ。

 

 フォースのライトサイド、ダークサイドについては結局どちらがいいのって話ではなくバランスが大事なのだと俺はSTARWARSの映画を見て感じていた。光に傾きすぎれば足元の影は見えなくなり闇の中にいれば一筋の光すら目を潰す。ならばライトサイド強めのニュートラルでいたいがダークサイドの技術を使う以上俺が溺れるかもしれない。そうならないための戒めだ。

 

「ふーん、すごいんですねリナさんって。エレンさんの魅力を目いっぱい引き出してるいい衣装だ。着てる素材もいいんだからそりゃこんなに素晴らしくなるわけだ」

 

「……アンタ、それ素?よくもまあおべんちゃらがそんなに出てくるね」

 

「おべんちゃらじゃないよ。普通に似合ってるから誉めた、そんだけでしょ。本心」

 

「……うっわ」

 

 なんか軽く引かれた気がしたが別にエロいだとか煽情的だとかの女性が嫌がるであろう意味は全く込めていないので謎だ。素晴らしいものは素晴らしいという、これも大事なことだとは思うのです……もしかしてメイド服姿褒められるのって女の子的には微妙?

 

「では、本日の依頼を説明させていただきたく思います。オーダー様とエレンはペアで十四分町で先日発生したホロウへ侵入……内部の『お掃除』をしていただきます」

 

「対象人数は?」

 

「……見敵必殺、にて。またそれ以外に出くわした場合気絶させ外部で警戒している私共に引き渡しを。こちらはご主人様からの直接の依頼になります」

 

「……りょーかいしましたー」

 

 最初っから嫌な仕事振ってくんなーご主人様ってのも。エレンさんはわかってるのか慣れてるのか知らないがいつもの彼女とそう変わらない。ライカンさんが言っているのは先日発生したホロウ内に取り残されて救助されなかった人たち……エーテリアスに変わったやつらを駆除しろということだ。

 

 ただ、タイミング的には適当だろう。あの事件から2日はたってる。どんなにエーテル適応体質だろうがもう侵食されて外部治療も不可能なタイムリミットをとっくのとうにすぎている。もう無理ならばせめて終わらせてやろう……ある意味では慈悲深い対応ともいえる。普通なら()()が堅い対応だ。

 

 それ以外がいる可能性……要はほかのホロウレイダーやそれ以外のチンピラがいるかもってことだろ?ああ……そういうことか、ご主人様とやらの狙いは発生した小規模な共生ホロウの消滅だろう。

 

 そんなことできんのか?って話だか可能っちゃ可能だ。できたばかりの小さなホロウの中にいるエーテリアスを狩りまくりエーテル活性度を限りなく下げることでホロウを消すことができる。その際、中にいる生命体は問答無用で死ぬのでそれを避けるためにホロウを狩りつつ部外者を助けろってことか……俺がいつもやってんのと変わんねえな。

 

「んじゃあ、行きますか」

 

「はいはい……で、どうすんの。あたしキャロットとか最低限しか使えないけど」

 

「ああ、あれって結構勉強いるよね。まあこっちに行こう。あ、そこ裂け目あるから気をつけて」

 

 十四分街の共生ホロウ周りでは非常線が敷かれていたのでどう潜り込もうかと考えていたらライカンさんが局のやつらに2、3話したらあっさり通れた。なんじゃそりゃ、と思ったが調査協会の偽造パスが上役から配られてたとか。しかも協会にまで根回し済み……これ相当上のやつからの依頼じゃねえか。

 

 目立たない場所に移動してから俺とエレンさんだけホロウに入ると……あー、結構いるなエーテリアス。さすがに街一つ分のデカさのホロウだったらわからんがこのホロウみたいに出来立てでビル3,4棟くらいのサイズならフォース感知を広げたら中は大体理解できる。

 

 レイダーも……いるな、5人くらいか。エーテリアスを片付けながら進もう。俺はエレンさんに一番近いエーテリアスへの最短ルートに案内する。端末画面を見もせずそんなことをする俺にエレンさんは怪訝な顔をしつつちょっと後悔してるような顔。

 

「もしかして適当やってるんじゃないか、って感じ?」

 

「……心でも読めんの?」

 

「まあこれが俺のやり方だからね。正直言えば俺も俺のやり方が一般とは確実に違うと断言できる……確実性は今から証明するよ。右に曲がったらエーテリアスが4体。戦闘準備を」

 

「……」

 

 実際、フォースで相手の精神を覗き見たり干渉する技術はあるが今回は使っていない。エレンさんは嫌な時は割と顔に出るタイプだ。嬉しい時は多分尻尾に出る。朝スナック菓子をあげた時とかはいつもよりよくよく揺れていた。

 

 うさんくさ……と顔に出ているエレンさんだけど一応信じることにしたみたいで剪定用の枝切鋏を大きくしたような武器をしっかり持ち直した。俺は袖口からライトセーバーを取り出し、ダッシュで曲がり角を曲がると同時に起動する。

 

 ライトセーバーの起動音で振り返ったエーテリアスが、4体。フォースの導き通りだ。一太刀で纏めて2体を上と下で泣き別れさせてフォース・グリップというフォースで物を掴む技で一体を拘束、そして残りの一体を切り飛ばしグリップした奴をそのまま壁に叩きつけて終了……って、あ。

 

「ごめん、残すの忘れてた」

 

「べつに、楽でいいし。ずっとそれでもいいよ」

 

「そりゃどうも。んじゃ、あなた達がフォースと共にあらんことを……よし」

 

「なにそれ」

 

「俺流の祈りの言葉。エーテリアスと言えども元は人なんだ……特にここは……二日前は普通だったんだから」

 

 人じゃなくなったら殺してよし、ではない。人であったんだから苦しみから解放して次へ行けるようにしよう……俺がエーテリアスを殺すために身に着けた理論武装だ。映画のセリフで適当にやってるように聞こえるかもしれないが祈りはきちんとやっている。フォースの実在は俺が証明しているので解放された彼らをフォースが導いてくれることを祈るばかりだ。

 

「ふーん……あんま考えたことなかったかな。エーテリアスはエーテリアスだし」

 

「いいや、エレンさんの方が正しいよ。科学的にはもう彼らに人であった痕跡は残ってない。俺がやってることはもはや哲学だからね」

 

「……でも、人間だった。そうでしょ」

 

「そうだね……ただ、彼らが人間から変じたエーテリアスであるかどうかは別問題だろ?エーテリアスは勝手に湧いてくれることもあればそこらの石ころが変わることもあるんだから」

 

 大体の人はホロウ内に入ることはないから浸食されるだのエーテリアス化だのは大体画面の向こうの出来事だ。実感して初めて本当のことを知る……俺たちホロウレイダーはそれが少し近いのだが。だからエレンさんみたいにエーテリアスはエーテリアス、という価値観は常識で全くもって間違っていない。

 

 これは俺の前世にある輪廻転生の概念だとかそういうものの……いわゆる前の倫理を俺が引き継いでいるからなのだ。だから、異端なのは俺ってだけ。エーテリアスが人間だったから殺せない!なんて余裕ぶっこくほどこの世界は平和じゃないしね。

 

「さ、どんどん行こう。次は下の階だ。階段使う?ショートカット?」

 

「ショートカット。歩くのダルい」

 

 実にエレンさんらしい回答だと俺は苦笑する。フスー、といった感じで地面に突き刺した武器にもたれて頬杖をつくエレンさんにどこでも変わんないんだなという感想を抱いて……俺はライトセーバーで床を切り抜いて落として飛び降りるのだった。




ゼンゼロ世界の死生観ってどうなってるんでしょうね。序盤の赤牙組のあんちゃんがエーテリアスになったときも結局ぶち殺そうぜ!になったし。主人公は大体こんな感じの考えをしてますが。
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