成功した後の自分をイメージするな
~脳科学で強制的に学習させる技術~
その「張り紙」はいつ剥がす?
前回の記事で私たちは最強の行動システム「If-Thenルール」を構築しました
おそらく真面目なあなたはそれを紙に書き出し、モニターの横に貼っていることでしょう
しかしあえて聞きます
その張り紙は、いつ剥がすのですか?
まさか、自分の命運を左右する大事なルールをまだ覚えていないわけはないですよね?
モニターを見ないとルールが言えない
もしそのレベルならはっきり言います
その紙は現場では何の意味もない、ただのゴミです
それは勝利への地図ではなく「私は勉強しました」と自分を慰めるためだけの、やった気になっただけの自己肯定感の表れに過ぎません
相場が急変し含み損が膨らみ、脳内物質(アドレナリン)が暴走している時、あなたのIQはチンパンジー並みに低下しています
時速200kmで暴走する車のハンドルを握りながら、「交通安全マニュアル」を読んで理解できる人間がいるでしょうか?
そんな人間はいません
必要なのは「文字の確認」ではなく「脊髄反射」です
今回は勉強方法に特化してます
作ったルールを脳の深層に物理的にインストールする
「脳科学的勉強法」の最終段階
「音声ラーニング」と「イメージトレーニング」について解説します
脳科学が証明する「走馬灯」の正体
なぜ緊急時に「文字」は役に立たないのか?
ここで、少し専門的な脳科学の話をしましょう
あなたは交通事故や命の危機に瀕した人たちが語る、こんな証言を聞いたことがありませんか?
「世界がスローモーションに見えた」
「景色から色が消えて、モノクロになった」
「まさか、映画じゃあるまいし」と思うかもしれません
しかしこれは、脳科学的に実在する「生存のための防衛反応」です
1. タキサイキア現象(Tachypsychia)
別名「精神加速」とも呼ばれます
脳(扁桃体)が「死ぬかもしれない」という強烈な恐怖を感じると、生き残るために情報の処理速度を極限まで引き上げます(オーバークロック)
1秒間に書き込まれる記憶の密度が通常の10倍、100倍になるため、後で再生した時に「時間が引き伸ばされて(スローに)」感じます
2. センサリー・トンネリング(Sensory Tunneling)
脳はエネルギーを一点集中させるため、生存に不要な情報の電源をカットします
視覚においては「色彩」や「周辺視野」が不要と判断され、遮断されます
その結果色が消え、視界がトイレットペーパーの芯を覗いたように狭くなります
これが、損切り直前のあなたの脳内で起きていることです
含み損が膨らんだ瞬間、あなたの脳はこれを「死の恐怖」と誤認し、この緊急モードを発動させています
色が消え時間の感覚がバグり、視野が点のように狭くなっている状態で、「壁の張り紙(文字)」を読む余裕などあるわけがありません
だからこそ、思考も視覚も介さない「脊髄反射」レベルまで動作を刷り込んでおく必要があるのです
脳を騙す「2つのイメトレ」
本題に入ります
多くのトレーダーを廃人にしている「間違ったイメトレ」を破壊し、プロだけがやっている「正しいイメトレ」をインストールします
なぜ、イメージでスキルが上がるのか?(科学的根拠)
まず、この疑問に答えておきましょう
「想像するだけで上手くなるなんて、そんな都合の良い話があるか」と
ハーバード大学医学大学院の神経科学者、アルバロ・パスカル・レオーネ教授が行った有名な実験が、衝撃的な事実を証明しています
教授は、ピアノを全く弾いたことがない被験者を集め、2つのグループに分けました
そして両方のグループに「5日間」にわたり、「毎日2時間」の練習を行わせました
グループA(肉体練習): 実際にピアノの前に座り、指を動かして練習した
グループB(イメージ練習): ピアノの前に座るが、鍵盤には一切触れず、頭の中で「指を動かして弾いている自分」を鮮明に想像し続けた
5日後、TMS(経頭蓋磁気刺激法)を使って両者の脳をスキャンした結果、世界中の科学者が息を呑みました
「指を動かす脳の領域(運動野)」の拡大レベルが、両者で全く同じだったのです
指一本動かしていないグループBの脳内で、神経回路が物理的に太くなり
実際に練習したグループAと同じレベルまで「脳の構造」が変化していたのです
これは何を意味するか?
脳にとって「現実の体験」と「鮮明な想像」には区別がないということです
鮮明にイメージした瞬間、脳は「今、実際にやっている」と錯覚し、ミエリン(神経回路)の工事を開始します
つまり、ベッドの中で行うイメトレは、単なる妄想ではありません
「実弾を使った訓練」と同等の物理的な脳改造手術なのです
この「脳のバグ」を利用しない手はありません
ただし、何をイメージするかで「薬」にも「毒」にもなります
1. 【猛毒】結果のイメトレ(これは捨てろ)
よく自己啓発本にある「大金持ちになって豪遊する自分を想像しなさい」という教え。 脳科学的には、これは「自殺行為」です
前述の通り、脳は現実と想像の区別がつきません
キラキラした未来を想像した瞬間、脳は「あ、もう成功したんだ」と勘違いし、その場で「達成感のドーパミン」を放出してしまいます
するとどうなるとおもいますか?
その未来を手に入れるために必要な「ハングリー精神(行動エネルギー)」がシャットダウンしてしまうのです
よく考えてみてください
大金持ちになった人間が金持ちになる過程で「豪遊する自分」なんて想像していたと思いますか?
そんな暇があるなら目の前の仕事やチャートに張り付いていたはずです
彼らが四六時中考えていたのは「どうすれば利益を残せるのか?どうすれば勝ち抜けられるのか」のプロセスであって、「勝った後の姿(結果)」ではありません
結果を生み出すプロセスが重要なんです
結果しか見ていない人間が、結果を出せるわけがないのです
彼らが売っている「成功した気分になれるドラッグ」に酔っている間に、あなたの資金は吸い尽くされます
2. 「完璧な執行」のイメトレ(アクセル)
では、何を想像すべきか?
まずは、「ロジック通りに始まり、ロジック通りに終わる」一連の美しいプロセスです
これがなければ、タキサイキア現象のようなパニック下では、指一本動かせません
【セットアップ】 あなたの得意なパターンが出現し、インジケーターの条件が全て合致する
【エントリー】 迷いなく、スナイパーのように静かにクリックする
【利確(エグジット)】 思惑通りにチャートが伸び、目標レートに達した瞬間、欲をかかずに淡々と利確する
この「成功の型」を脳内で何千回も再生してください
「自分はこの通りに動ける」という確信(自己効力感)があって
初めて本番で恐怖を感じることなく指が動くようになります
3. 【正解②】「地獄」のイメトレ(ブレーキと忍耐)
しかし相場は常に思い通りにはいきません
だからこそ、もう一つ「本能に逆らう苦痛(動詞)」のシミュレーションが必要です
【エントリーの苦痛】 「怖い、逆行したらどうしよう」という恐怖で指がすくむ中、勇気を振り絞ってクリックする瞬間
【保有中(ホールド)の苦痛】 順行して含み益が乗った後、レートが戻ってきて利益が削られていく「ああ、あの時利確しておけば!」という後悔と「今すぐ逃げたい」という衝動を、歯を食いしばって耐え抜いている時間
【損切りの苦痛】 逆指値アラートが鳴り響く中、脳が「ずらしたい!助かりたい!」と絶叫するのを無視し、無表情のまま損切りを受け入れる瞬間
これらをただ漠然と思い浮かべるのではありません。
脳内で何千回、何万回と、できる限りリアルに、鮮明に脳内再生してください
ベッドの中で、脂汗をかくほどリアルにシミュレーションし尽くすのです
そうすれば、本番でその状況が来ても、脳はこう反応します
「ああ、この『不快感』ね。知ってる。いつものやつだ」 そう思えた瞬間、焦燥感(チキン利食い)や恐怖は消滅します
目は「遅い」、耳は「速い」
正しいイメトレの対象(成功プロセスと地獄の予行演習)が決まったら、次はその「素材」を脳に送り込みます
ここで多くの人が「本を読む」「ノートを見る」という手段を選びますが、それでは遅すぎます
■ 目は「意識」の検問を受ける
文字情報(視覚)は、脳の言語野で一度「解読」され、論理的なフィルターを通ってから理解されます
これは処理が遅く、エネルギーを食います
パニック時には真っ先に機能停止する回路です
■ 耳は「脳」への強制割り込み(インタラプト)
対して、聴覚情報は「脳への強制介入権限」を持っています
人間はまぶたを閉じて視界を遮断することはできても耳を閉じることはできないからです
分かりやすい例を挙げましょう
あなたが静かな図書館で超難解な数式を解くのに集中していたとします
目の前の人が動いても無視できますし、風景は気になりません
しかし、背後で「あなたの名前」を呼ばれたり、スマホが「ピロン」と小さく鳴ったらどうでしょうか?
決して大きな音ではありません
しかしその瞬間、思考は強制停止させられます
この時、脳内では上記で触れた「センサリー・トンネリング」に近い現象が起きています
音を処理するために、脳が勝手に「視覚」や「思考」への電源を落とし、聴覚へリソースを全振りしてしまうのです
どれだけ集中していても「音」は理性の壁をすり抜け
脳の中枢(扁桃体や脳幹)に「割り込み処理(インタラプト)」をかけることができます
この「脳が無視できない(強制的にリソースを奪う)」というバグを、学習に応用します
If-Thenルールを「知識」ではなく「音」として脳に流し込む
意識していなくても、BGMとして流れているだけで、音はあなたの脳の検問を突破し、無意識(潜在意識)を勝手に書き換えていきます
【実践】ミエリン増強・インストール手順
では、具体的にどうやって脳を書き換えるのか
『才能とはなにか?』で解説した、「絶縁テープ(ミエリン)を巻いて、信号速度を100倍にする」作業を実践しましょう
Step 1:脚本(スクリプト)を作る
前回作成したIf-Thenルールを、読み上げるための「脚本」にします
『ルールという言葉の罠』で解説した通り、「不安になったら」などの形容詞(ポエム)は排除してください
【OK例:動作の脚本】
「私は、エントリーの条件が整ったら、恐怖を感じていても即座にクリックしている」
「私は、利確目標まであと1pipsで反転しても、建値に戻るまで決して決済していない」
主語を「私は」にし「現在進行形」にすることで、脳はそれを「他人事」ではなく「自分の行動」として認識します
Step 2:【最重要】「誰の声」でインストールするか?
ここで、学習効率を分ける決定的な分岐点があります
録音する「声の主」を誰にするか、という問題です
ルートA:独学の戦士(自分の声)
師匠がおらず、一人で戦う場合は「自分自身の声」で録音してください
自分の声は脳にとって最も拒絶反応が少ない音です
ルートB:リスペクトする師匠がいる場合(師匠の声)
もしあなたに、心底憧れる師匠(メンター)がいるのなら、その人の肉声を聴き続けてください
これが脳科学的に最強のインストール法です
理由① ミラーニューロンのハック
『学ぶ=まねぶ』で書いた通り、人間の脳には「他者の行動をコピーする細胞(ミラーニューロン)」があります
リスペクトする対象の声を聴く時、この細胞が最大活性化し、師匠の思考回路そのものを自分の脳内にコピー&ペーストしようと働きます
理由② 「外部の権威」による強制介入
自分の意志(内部の声)は、恐怖の前では甘えが出ます
「今回だけは…」と逃げたくなる
しかし、脳内に常駐させた「師匠の声(外部の権威)」は「絶対的な命令(スプリーム・コマンド)」として響きます
「待て、それは違うぞ」という師匠の声が脳内で再生された瞬間、扁桃体の暴走は強制停止します
Step 3:隙間時間を「練習場」に変える
作成した音声を、通勤中、入浴中、就寝前、ありとあらゆる隙間時間にイヤホンで聴き流してください
机に向かって集中してはいけません
「BGM」として脳に流し込み続けるだけで、RAS(網様体賦活系)がそれを「生存に不可欠な情報」としてマークし回路を太くし始めます
結論:才能の正体は「退屈」である
『才能とはなにか?』で記載があったと思います
「才能とは、ミエリンによって高速化された電気信号のことである」と
多くの人はプロトレーダーを「強靭なメンタルを持った超人」だと思っています
違います
彼らはただ、「脳の配線工事」を完了させただけの人間です
イチロー選手が来る日も来る日もバットを振ったように、彼らは「脳の素振り」を何万回も繰り返した
最初は苦痛だったはずです
損切りの恐怖、待つことの焦り
しかし、音声ラーニングとイメトレで1万回シミュレーションした結果、その痛みは「日常」になり、やがて「退屈」にかわった・・・
ここがあなたが目指すべきゴールです
トレードでドキドキしないでください
興奮しないでください
「損切りが、あくびが出るほど退屈な作業になること」 これこそが、あなたが最初に手に入れるべき最強の才能です
今日この瞬間から、あなたのイヤホンはただの音楽再生機ではありません あなたの脳を書き換える「手術器具」です
通勤電車の座席、お風呂の中、寝る前の布団の中
そこが誰にも邪魔されないあなただけの「精神と時の部屋」になります
現場で血を流す必要はありません
大切なお金を失う必要もありません
脳内で先に1万回失敗し、1万回克服してください
その圧倒的な「量」だけが、いざという時のあなたを守ります



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