フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第2話 お冷めなメイドはフォースの知り合い

「スカイウォーカー、だっけ……マジ?」

 

「あー、うん。いかにも」

 

「エレン、面識が?」

 

「……クラスメイト」

 

「なるほど……ンッン!お騒がせしました。私共は、ヴィクトリア家政と申します。オーダー様とお見受けしました。取り急ぎご用件をお伝えしたいので、どうか私共にご同行いただけませんか?」

 

 目の前にいるのは同じ高校のクラスメイト、ジョーは名字でフルで呼ぶとエレン・ジョー。端正な顔立ちと高い運動能力でクラスメイトから非常に人気があるサメのシリオンの女の子だ。ただ、本人はかなりのローテンションで雑談もぶつ切り、エネルギッシュとは真逆のよく言えばクール、悪く言えば無愛想な感じだ。当然俺もお隣の席であっても朝の挨拶くらいしか会話しない。だから名字も曖昧なのだ

 

「うーん、理由は?局につき出そうという感じか?」

 

「いえ、むしろそれとは真逆でございます。危害は加えず、情報も漏らさないと約束いたします。どうか」

 

「……んー、まあ断ってジョーさんに学校で工作したりされたらアレだから同行します」

 

「は?そんなめんどくさいことするわけないじゃん」

 

「自分からはね。多分仕事ならやるでしょ」

 

「……チッ」

 

 ジョーさんは、必要最低限のことしかしない。裏を返せばそれは必要なことはやり遂げるということだ。そのスタイルは信用できる、普段の彼女を見ていれば。だからこそ、報酬付きの仕事として依頼すればやるだろうというある種の信頼があるのだ。他のクラスメイトよりは話すと思うしね、お隣さんだから。

 

「ま、いいでしょう。どちらへ?」

 

「こちらへ。お荷物をお持ちいたします」

 

「いや、それはいいよ。話し合いをしたいと言ったのは俺だし、素直についていこう」

 

「承知いたしました。ご挨拶が遅れました、私の名はフォン・ライカン。どうぞライカンと」

 

「アレクサンドリナ・セバスチャンですわ。どうぞリナと、こちらはカリン・ウィクス」

 

「カリンですっ!よ、よろしくお願いいたします!」

 

「エレン・ジョー、知ってるよね。名字で呼ばれんのゴツくて嫌いだからエレンでいいよ」

 

「オーダー、ってこっちじゃだめか。ザイン・スカイウォーカー。ザインで構わない」

 

 ジョーさん、いやエレンさんにバレているから偽名で名乗ってもしょうがない。しかしまあ、どこで足がついたんだか。プロキシをつけず、依頼を滅多に受けずにエーテル結晶を少量採掘するだけしかしていない俺をどこでこの人たちは見つけたんだ?

 

 路地裏を抜けるとそこには、車が止まっていた。いわゆるリムジンという奴。ライカンさんはその後部ドアを開けて恭しく俺に一礼する。そんなことされ慣れていないので戸惑っていると気だるそうなエレンさんが、ん。と顎で示すので乗り込むことにした。

 

 続いて、カリンさん、エレンさんが乗り込みドアが締められる。助手席にリナさん、運転席にライカンさんが乗ってものすごく滑らかに車が発進した。丸くなっている後部座席の上座に座らされた俺、あたふたしながらお茶を淹れてくれたカリンさん、車に乗ってすぐ眠ってしまったエレンさん……いい意味でも悪い意味でも変わんないな。

 

「ハァ……エレン、勤務中ですよ」

 

「起こさなくていいですよ。彼女がいつもどうなのかは理解しているので。もしもがあれば、まあ問題なく起きるでしょう。先に言っておきますが学友を人質にはしません」

 

「そうならないように願っております。お優しいですね」

 

 そうかねえ、とお茶をぶちまけそうになっているカリンさんをフォースで支えて俺がお茶を淹れる。一人でに浮遊するカップとポットを見たカリンさんが目を白黒させているのは少し面白いしかわいいな。

 

 しかし、全員メイド服に執事服とは。なんか拘束具っぽくもあるんだけど変わった格好してるな……ヴィクトリア家政、つまりは家政婦か。だからこんな服着てるのか?明らかに全員手練れなのに。ホロウレイダー集団か?にしても丁寧すぎるな、わからん。

 

 明日も学校だからさっさと帰りたいんだが……そう思いながら丁寧な運転に揺られること少し、古めかしい装飾の建物に到着した。またもVIP待遇で降ろされ、後ろにはカリンさんがエレンさんをゆすって起こしている。

 

 部屋の中に入るとすでに準備が整っているらしくテーブルにクロスがかかり、椅子が引かれていた。指示されるがままにそこに座り地面に背嚢を置く。ライカンさんが俺の前に腰掛けそれ以外の人は立った状態できちんと姿勢よくなった。エレンさんは壁にもたれてるけど。

 

「それで、俺に何かご用事が?」

 

「はい、単刀直入に申し上げます……ザイン様、私共ヴィクトリア家政と外部契約をしていただきたいのです。エージェントとして」

 

「……なぜ俺なのですか?」

 

「私共の上役……ご主人様はここ数年ある噂を追っておりました。『プロキシと一切契約せずにホロウを出入りし、光の刃と不可視の力を振るって戦う、受ける依頼の達成率も高いホロウレイダー』の噂です。あなた様のことですね」

 

「まあ、そこまで特定されたらそれは俺ですね」

 

「ご主人様が注目なされたのは『プロキシと一切契約せず』……この部分です。事実ならば、あなた様は優秀なプロキシであられるか、プロキシに頼らずにホロウを歩く術を持っているかになるでしょう」

 

「なるほど」

 

 あー、そこからかあ。外部のやつら、つまりプロキシと協力すればするほど俺の情報は外部に漏れる、だったらそんなことせずに単独でやればいい……そこが裏目にでたのか。ご主人様……こういって情報を出さない以上この人は口を割らないな。どうしたもんか……。

 

「ホロウを歩く術が必要ということはあなた達はホロウに出入りを?」

 

「ええ、ご奉仕の際に必要によっては。確実にホロウに出入りできるなら是非ともその手段を知りたいのです。数年間自分で出入りしたあなた様ならば理由はご理解できるかと」

 

「ええ、失敗したレイダーを山ほど見てきました。介錯した回数もそれなりに。助けられるものは助けられましたが、ね」

 

 ホロウへの出入りは、確実ではない。優秀なプロキシであればある程度のマッピングを済ませてキャロットを作り、不測の事態にも対応できるだろう。それこそあのパエトーンのように。ただ、ホロウ内で迷ってエーテルの浸食を受けてエーテリアスになる確率の方が絶対的に高いのだ。

 

「ただ、それだけじゃ理由にするには弱い。そんなのは優秀なプロキシを見つければ済むことです。俺に接触した理由は?」

 

「まず一つに戦闘能力、あなた様に助けられたレイダーや一般人の方からの聞き取りにはなりますがかなりのお力を持っていらっしゃるようですね。そしてもう一つは、善性です」

 

「善性、ですか」

 

「あなた様は、一度たりともホロウ内での遭難者を見捨てたことはない。たとえそれがだれであっても」

 

「侵食者以外は、ですけどね。でもそんなのは当たり前では?」

 

 なんじゃそれは、みたいな理由だ。話は見えてきた、要はスカウトだ。名声はほぼなくホロウレイダーなので顔も売れていない俺を見つけ出したのはびっくりしたが、その理由が要は「良い人」だからとは。肩の力が抜けた。

 

 しかしまあ、何を当たり前のことをすごいことのように言ってるんだ?人命は何よりにも勝るぞ。しかもただ死ぬだけじゃなくて化け物になって人間をやめホロウ内を永遠に彷徨うか殺されるかしか選択肢がなくなるなら、助けたほうがいいに決まってる。助ける理由はいくらでも持ち合わせているが見捨てる理由は一つしかない。エーテル侵食者だけだ。

 

「当たり前……ですか。例えばそれが調査協会の方々ならばそうでしょう、仕事ですから。ですが、個人的にホロウに潜るホロウレイダーならばそうではありません。むしろ荷物になるならばおいていくしかない」

 

「ですが、あなた様は違いますわ。助けたものには何も要求せず命を救いホロウの外に届ける。これがどれだけ難しいか。ホロウに入るのも命がけ、他人を気にする余裕があるのは一握りなのです」

 

「あなた方のように、ですね」

 

 まあ、人助けは余裕があるから生まれる選択肢だ。俺は基本依頼を受けてホロウに潜るわけじゃないから人を助けたら自分の目的は後回しか最悪別の日にでもやればいい。だからこそ生まれる余裕を人に使えるのだろう。フォースの光明面に近いからかもしれないが。

 

「我々は、依頼を受け主人に奉仕するもの……ならず者であっていいわけがないのです。そういった観点からご主人様だけではなく私個人といたしましても是非ともあなた様と協力関係を……できれば入社してほしいくらいです」

 

「執事服を着ろと。それも面白いかもしれませんねえ、考えておきましょう。では外部協力をした場合の条件は?」

 

「こちらをどうぞ」

 

 ライカンさんが卓上の木の書類ケースより取り出し俺に手渡したのは契約書だった。ふむふむ、要はホロウ内に潜るときに同行してプロキシ役兼戦闘員になること。依頼一回ごとに……うわたっか!?こんなにもらえんの!?儲かってんだなヴィクトリア家政……あとは……なに?ヴィクトリア家政の指名権?無料で?へー……あれ?

 

「あんたらホロウレイダーじゃないの?」

 

「ああ、申し遅れました。普段は私共家事代行業者を営んでおります。そちらの指名権は私個人からの気持ちになります」

 

「表の事業ってことね……条件一つ追加、いいです?」

 

「なんなりと」

 

「俺の戦闘手段、およびホロウ内探索の方法への詮索一切禁止。これをつけられるなら契約成立。ああ、俺が自分から話した場合は例外で」

 

「承知いたしました。ではすぐに契約書を作り直します。少々お待ちを」

 

 思わず素が出たツッコミをしてしまったが本業は家事代行……しかも契約金をみるとかなり儲かっていると見える。ふーん、業務拡大か従業員の安全の確保か知らんがすごい話だな。ただ、金のためにホロウに潜ってる俺からしたら一回で持ち帰るエーテル結晶の額より多いこの金額は実に魅力的だ。契約しない手はないね。

 

 多分、ご主人様ってのが知りたいのは俺がホロウ内をどう探索するかってことなんだろうが、ライカンさんは先に俺を取り込むことを優先するようだ。まあ捕まえとけば俺が口を滑らす確率があるからね、それを見越してそれは例外だって言ったのだし。

 

 交渉は成立、ということで改めて淹れられた紅茶に口をつける。うわ、産毛が逆立つほどおいしい。緑茶ならよく飲むが紅茶をここまでおいしいと思ったことはないな。結局車の中じゃお茶に口をつけなかったけど後悔してきた。

 

「―――ねえ」

 

「なにさ」

 

「どうしてホロウに潜ってんの?」

 

「あー、生活費のためかな。親が居なくてね。これからよろしく」

 

「……そう。まあ、よろしく」

 

 さっきまで無言で半分寝ているような感じで壁にもたれかかって尻尾でバランスをとるようにしていたエレンさんが唐突に口を開いた。なんでホロウに、と聞かれたが俺はここに来た時点で両親というものはいなかった。だから、どうにかして金を稼がなきゃならなかったのさ。

 

 相も変わらずローテンションではあるが、よろしくと言えばきちんと返ってくるあたりできるだけエネルギーを消費したくないみたいな感じかな。そうしているとライカンさんが作り直した契約書を持ってきてくれたので、中身をよく読んで俺に不利なことが透かしやらなんやらで刻まれていないかついでにフォースで見て拇印とサインを入れた。秘密保持契約もよし、と。

 

「それじゃ、ライカンさん。いつでもご連絡を。ああでも、一応学生なんで日中は勘弁くださいね」

 

「ええ、承知しております。勤務はおそらくエレンと被るのでしょう、御指名もいつでもお待ちしています。お送りしましょう」

 

「いえ、行くところがあるので徒歩で」

 

「あたしも帰る。勤務終わりでしょ?話あるからちょっと待ってて」

 

 そういって俺は椅子から立ち上がると同時にエレンさんがそんなことを言う。どうやら帰るらしいので送っていけということだろうか。まあ俺も男だし女の子を一人夜道に返すのは忍びない、護衛程度は務め上げて見せようじゃないか。

 

 ライカンさんはエレンさんのそんな態度にほとほと困っているらしく頭を抱えているがきっと彼女は優秀だから離すに離せない、もしくはみんなお人よしだから気にしないのどっちかか。暫く待つとお待たせと初めて見る私服姿の彼女が出てくる。ライカンさんたちに見送られて、俺たちは帰路に就いた。

 

「ねえ」

 

「なにさ」

 

「学校で言わないでよ、言ったら殺すから」

 

「言ってどうすんの。君がメイド服着てたって?男子は盛り上がるだろうけどね。言わないよ、君もそうだろ」

 

「うん、言いふらすのめんどくさいから。わかってたけど、ありがと。それじゃね」

 

 どうやら釘を刺したかったエレンさんは大通りに出てすぐにそれだけ言って俺とは逆方向に歩いて行った。苦笑いした俺はエーテル結晶を売り飛ばすため、闇市場に歩いていくのだった。




 アレ意外とエレンさんの再現難しいぞ...?だがしかし推しなのでやり遂げねばならぬ。ライカンさんも好き。ヴィクトリア家政最高
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