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④『緑光実験』制作裏話


※この記事は制作者向けです。純粋なプレイヤーの方は閲覧を推奨しません。


はじめに

私たちは、京都を中心に活動するアマチュア制作団体『白鯨』です。
この記事は、白鯨が作った1つ目の作品『緑光実験』の制作裏話です。
制作の時に考えていたことを、ここにまとめています。


私たちをよく知らない方は、下のnote記事ポータルにアクセスして、①から順番にご覧ください。


また、この記事は「緑光実験」の制作裏話です。
作品の内容については、以下の記事をご覧ください。


セージ :主に文章/司会/デザインを担当。見せ方へのこだわりが強い。
たっつー:主に制作進行/物品を担当。コンセプトへのこだわりが強い。

記事の弊害について


セージ:本題に入る前に、どうしても話しておきたい。この記事の弊害の話

たっつー:何度も議論しましたねぇ。懸念点は2つ。
できる限り隠さず詳細に話すから、当然我々の良くない面も明らかになること
そして、プレイヤーが今後何らかのコンテンツに参加した時に、この記事で知った制作者視点が邪魔になってしまうのでは?ということ

セ:前者は、正直本筋じゃないよね。やりたいことと団体の評判を比べれば、やりたいことの方が大事なのは明らか。

た:そうですね。これまでもやりたいことを最優先にしてきました。でも、読者に制作者視点を生んでしまうことは別です。他の人に悪影響を及ぼしてしまうかも。

セ:でも、そこまで弊害はないんじゃないか、とも思うんだよね。だって、僕たちも謎解き公演を楽しめてる。意図とか考えることなく。しかも、僕たちは零細団体だから全世界に影響するわけじゃないし、別にめちゃくちゃ解像度が高いわけでもない。この記事に辿り着いてくれる人の元々持つ視点と、大きくは変わらないんじゃないかな……。

た:だから有料記事にしてゾーニングするとかせず、無料で公開すると。

セ:いや、正直にいうと、言い訳ではあると思う。弊害が0とは言い切れない。だからやめるべきだ、と言われたらそうなんだ。ちょっと怖い。
それでも、僕はできる限り色んな人が読んでくれる無料で出したい。
反面教師的な形でも何でも、僕らなりに後進の役に立てれば良い。

た:難しいところですが、俺もきっと謎解き界に少しだけ良い影響を及ぼすと信じてます。


この記事を含め、すべての裏話には面白いことは書いてありません。また、謎も一切隠されていません。赤裸々な制作過程が書かれているだけです。
改めて、純粋なプレイヤーは閲覧しないことを強く推奨します。


テーマ・コンセプト


テーマ・コンセプトとは

セ:テーマとコンセプトの話からしようか。

た:しましょう。我々はここに一番時間使ってますけど、厳密に考えてみるとよく分からないところも多い気がします。

セ:そもそもテーマとコンセプトとは?という話なんだけど。いくつかのネット記事を見た感じ、テーマっていうのは、取り組みの目的や意義を示す大きな方向性を指す言葉で、コンセプトっていうのはその実現方法を指す言葉、ということらしい。定義は色々あると思うけど、いったんこれに従いますか。

た:まあ考えるときにそんなに厳密には考えてないですけどね。

セ:そうね。

た:記事によると、テーマは一つ、コンセプトは複数ありうる、ということらしいです。この定義が重要ってことじゃないですけど、誤解がないようにこれから話すときはこれに沿って話しましょうか。

セ:OK。

テーマは主題、コンセプトはその実現方法。
テーマは1つ、コンセプトは複数あり得る。
※ググったら出てきただけなので重要ではない。


緑光実験のテーマ・コンセプト

セ:緑光実験のテーマって何だろうね。

た:「侵食」……ですかね。このワードは最初にありましたもんね。

セ:そうか。そうだね。僕らはある目的のために「侵食」をキーワードにした公演を作ることを決めて作り始めたから、テーマ設定についてはあんまり言えることがないかもね。

た:ほんで、あとはその抽象的なテーマをどう実現するかですよね。

セ:この辺は特にたっつーが得意にしてるね。
ハードナッツ時代の過去作でいうと、君は「黄昏と京の足跡」「茜色の残り香」のディレクターなわけだけど、ホール型とかルーム型とか、いわゆるよくある形式の作品は作ってこなかった。それは多分、君のビジョンの共有の上手さが、形式に依存してないからだ。

た:なるほど。

セ:君の企画はいつも、ネットで物語の中継を皆で見届ける時の盛り上がりとか、周遊謎が開催されている学祭の風景とか、その作品を遊び終えたプレイヤーが抱える感情とか、君の頭の中にある映像を、君がメンバーに言葉で説明するところから始まる。それがべらぼうにうまいと思う。頭の中にイメージビジュアルがあるんだろうな。

た:恐縮です。これ自分たちでリリースする記事ですよね?あまりに気取りすぎじゃないですか?
まあ、気取りついでに全部喋っちゃうか。イメージビジュアルを共有するのって、すごく大事だと思っているんですよね。根底には、"コンセプトをきちんと具現化できれば基本面白い"という考えがあって。

セ:ほう。

た:でも、"きちんと具現化"するのには2つの条件があります。
①全員が全力を注げるぐらい面白さを共有できていること、
②目指すべき完成形が揺らがないこと、です。
目指すべきポイントに向かって正しく努力すれば(頓挫することはあっても)、面白くない作品が出来上がることは無い。
最悪、②のための舵取りは自分がし続ければいいと思っているんで、最初の共有は①にすべてを注いでます。

セ:なるほどね~。ちなみに、②のための舵取り、というのは?

た:ある人のアイデアや努力が正しい方向かどうかを、ディレクターとしての自分が常に判断できさえすれば良い、ということです。自分が意思決定権者としてしっかり判断ができれば、少なくとも他の人や、ひいてはチームが迷うことはない。だから他の人には、ビジョンが最大値に達したときの面白さを共有できていることが一番大事。判断は自分がするから、それを信じて全力で走るためのモチベーションを得てほしい。

セ:理解した。

た:……と、ここまで理念的なことを話したんですけど、正直、具体的な手法は言語化しにくいですね。
強いていえば、相手の反応が芳しくない時に「面白くない」と思っているのか「イメージがつかみ切れていない」のか「実現可能性がない」と思っているのかを区別するようには気をつけてます。
「面白くない」と言われたら割と素直に引き下がります。でも、「イメージがつかみ切れていない」時にはひたすら質問します。「どこがつかめてないですか」って。実現可能性はこのフェーズで検討することではないので、「実現すれば面白い」と思ってくれていればオッケーです。

セ:そういえば、会議してるときに「今何に引っかかってますか?」ってめっちゃ聞かれるわ。平気で1時間に10回くらい聞かれるから、しつこいなと思ってた。

た:しつこいなと思ってたんですか?え、やめようかな。

セ:冗談です。思ってないです。プロ制作者も輩出してるハードナッツに6年在籍したけど、先輩後輩問わず、ビジョンの共有は間違いなくたっつーが一番上手かった。たぶん持ち上げすぎじゃない。そういう意識の積み重ねなんだろうな。ただ真似できるかというとちょっと……。ずっと横で見ていても僕もできないからな……。

た:ありがとうございます。それで、緑光実験の話もしますね。緑光実験のときは、「実験を終えて外に出た人が、何かを見て青ざめる。そしてそれ以降、世界の全てが変わって見えてしまう……」。そんな映像を共有した覚えがあります。

セ:僕の記憶でもそう。めちゃくちゃ難しいこと言ってんなぁと思ったけど、ここからヒントをいくつも貰った。まず、この作品は公演時間の外側に広がる。外でも見かけるもの、聞こえる音、そういう特定のものをトリガーに、ある感情や考えを誘発する、そういう作品になりそうだった。

た:逆に、想定したもの以外でトリガーになるものが存在すると困りますよね。誘発のコントロールができないから。そう考えると、トリガーはかなり絞られるんですよね。東京にしかないものをトリガーにしても仕方ないけど、「紙をみたこと」をトリガーにしたら収拾がつかない、みたいな。

セ:言語はダメだな、ってなったね。言葉は思考と地続きになりすぎてるから、言葉がトリガーになるとプレイヤーは誘導を受けたような感覚になる。

た:ちょっと難しいですけど、たとえば「カラスの鳴き声を聞く度に地面にしゃがみ込みたくなる」みたいな誘発と、「『シャンパン』という単語を見る度に笑いそうになる」みたいな誘発では、後者の方がわざとらしく感じる、っていうことですよね。

セ:そう。言葉って出てくる場面が割と予想できるし、「シャンパン」という単語が既に「シャンパンの絵を頭に思い浮かべる」という思考のトリガーになっているから、後者を実現しても、体を作り替えられてしまったような感覚にはならなそうだなと思った。

た:セージさんが「信号機」って案に辿り着くまでは結構かかりましたね。1週間くらいストップした気がします。

セ:かなり苦しんだ気がする。でも論理的に絞っていったら信号機しか辿り着かなかったんだよな、たしか。日本中に普遍的に存在していて、状況にかかわらず人の目を奪うもの。光る、っていうのも良かった。何もしなくても目に入るからね。そして逆に、それ以外ではあまり目にしないもの。緑色の光ってあんまり無いな、と。探してみたら、1日過ごしていても自販機と風呂場のボタンくらいしかなかった。

た:信号機って聞いた瞬間すんなり納得できたので、良かったと思います。
こういう相談を経て「青信号をみたら何かが思い浮かんでしまう(コンセプト)」という体験を通じて「侵食(テーマ)」を実現するという、緑光実験の核ができあがったんですよね。
一般化は難しいですが、コンセプトについてはよくよく話し合いましょうね、くらいですかね……。

コンセプトについてはよくよく話し合おう。
相手が何に引っかかっているのか、その区別をしっかりしよう。
白鯨の二人でよくある形を示すなら、
①ある核となる単語を設定する(=テーマ)
②片方が、その単語からボンヤリした情景≒イメージビジュアルを思い浮かべる。それは作品の中で最も面白い≒感情を揺さぶる瞬間であることが多い。
③もう片方がそれを自分の頭の中にも描写する問答の過程で、アイデアが具体化、共有されていく。
という過程を辿ることが多い。


白鯨の思うコンテンツの価値

セ:これは余談なんだけどさぁ。最近、すごくいいなと思う短歌を見つけたんだよね。

た:ほう、どんなやつですか。

セ:これなんだけど。最近バズってたから知ってる人も多いかも。

た:あ〜、見ました見ました。俺も、なんか分からないけど心地良いなって思いました。買い物のタイミングでは必要とされるのに、その後に捨てられるレジ袋の悲哀とか、でもその感情が「道端のネコでありたかった」っていう、重すぎなくて爽やかなところとか。
短歌は全然知らないんですけど、すごいセンスだな〜と思って。

セ:そうね、分類が難しいなんともいえない感情を引き起こしてくれて、とても良い。でも、僕の着目してる部分はそこじゃなくてね。

た:あ、そうなんですか。

セ:この短歌って、まさしくコンテンツ外への広がりのある短歌だな、と思ってて。僕らが緑光実験でやりたかったことをたった31文字でやられてしまったなって思ったんだよね。

た:ほう。

セ:僕、この短歌読んでから、道端に落ちてるものを二度見しちゃうようになったのよ。かつ、「二度見した瞬間に見たレジ袋から、ネコの姿を奪ってしまった」みたいな感覚に襲われるようになって。

た:は〜なるほど、面白いですね。

セ:僕らは常々「世界を変える面白いものを」って言ってきたんだけど、それは必ずしも正義感とか人生観をひっくり返すような大袈裟なものではなくて。こういうので良いんだよね。緑光実験もこれがやりたかった。

た:それって、無から強烈な名画を描きあげたわけではないですよね。むしろ、世界のある部分を切りとって、スポットライトをあてて、額縁をつけるにすぎない行為です。でも、見た人はそれによって、今まで無視していたものを認識せざるを得なくなる。それって、人生に不可逆的な変化を与える、とても強烈な侵食行為な気がしますね。

セ:そうなのよ。この短歌がここまで意図されてるのかは分からないんだけど、無意識的にせよ、読んだ側がこういう感情になることは想定の範囲な気がする。すごく強烈で良い作品だなと思った。

た:謎解きコンテンツを作る時、「部屋に入る前と出ていくときで、1個でも人生に変化を感じて出ていってもらいたい」という話をしますよね。正でも負でも構わない。新しい閃きと出会った興奮でも、ストーリーへの感動でも、世界の見方の変化でも、なんでも良いんですが。僕らに作れるコンテンツなんて限度がある。それなのに、体験した人の人生を1ミリでも変えることができたなら、それはとても素晴らしいことだと思います。

セ:テーマやコンセプトをうまく設定する方法は一般化できないんだけど、でも、少なくとも僕らはこういう視点を持って、コンテンツの核をグッと作ろうとしてます。何か伝われば嬉しいけど……。あと、赤の記事でも少し触れます。

「プレイヤーの人生を変える」。
我々の創作の核には、こんな想いがある。その実現方法は無限。カッコよさやスタイリッシュさは必須ではない。たった31音でも実現できる。
想いは人それぞれだが、その想いを見失わないこと。全てのアイデアは、想いを実現するためのものだということは忘れないでほしい。



全体構造


エクストラ要素

た:エクストラ要素を前提にした公演のバランス感についての話が、一番まとまらなかった気がしますね。

セ:そうね。たっつーは、エクストラは気づける人が気づく形でいいから、面白さの最大値を優先したい。僕は、エクストラをできる限り多くの人に体験してほしくて、誘導を強めた結果として最大値が多少削れても仕方がない、って感じでずっと噛み合わなかった。

た:そうでした。

セ:たっつーの考え方に沿うと、エクストラを経験しないプレイヤーが多くなるから、公演の中身そのもので1500円に納得感を持たせる必要がある。僕の考え方に沿うなら、エクストラを多くの人に経験させるために、公演の中身は面白くなくてもいい。エクストラへの導線が最優先になる。

た:この対立は、各ステップの順番とか、クリアツイートの有無とか、多くのところに影響するところでしたよね。結局セージさん寄りで行くことになったんですけど。

セ:エクストラを経験してもらってこそ、っていう感覚が拭えなくて、結局不安によるところが大きかった。本当にやりたかったことを貫くなら、たっつーのスタンスでいくべきだったんだろうけど。良かったのか悪かったのかは分からないね。

もっとも魅せたい部分の最大値を優先するか、もっとも魅せたい部分に到達してくれる人数を優先するか。択一的な問題になることも多い。たっつーはこだわりがち、セージは守りがち。


エクストラ要素と評判

セ:大分明かしたくない、やらしい話しますね。

た:どうぞ。

セ:エクストラ要素って感想コントロール簡単ですよね。

た:わかるなぁ。緑光実験もそうでしたね。まあ緑光は、コンセプト上エクストラを作るのが不可避なので、そのために作ったわけではないですが。

セ:それはそう。ただ、エクストラ要素があるコンテンツでは、「エクストラが刺さって絶賛する人」が早い段階で出現する。その時点で、それ以外の微妙という感想は「俺が気づけていないだけかも」「自分で気づけたら面白いんだろうな」「気づいてないのに偉そうなこと言えないかも」になっちゃう。

た:エクストラ要素の種類にもよりますね。単純にクリアした後のポイント加算コンテンツは、あまり感想に影響を与えない。感想をコントロールできるようなエクストラ要素は、結構核心に関わるもので、辿り着いた人がめちゃくちゃ絶賛する類いのものです。それこそ緑光実験のような。
そう考えると、感想コントロールのためにエクストラ要素を用意する、というのは妥当ではないかも。作りたいコンテンツがエクストラにはみ出るときは、クリアした人が良い評価をしてくれることを見越してクリアポストリンクを用意しておくと、評判のコントロールにいいかもね、という程度でしょうか。

セ:自分で言っておいてなんだけど、エクストラ段階って基本ヒント出せないから、考え続けるのが苦手な人には強いストレスになることもあるよね。そう考えると扱いが難しいわ。

評判の出方を調整することは出来る。
エクストラ要素もその一つ。ただ諸刃の剣の面も。


想起と希求

た:あと全体的な内容でいうと、「想起」と「希求」ですかね。

セ:だね。もともと緑光実験は「想起」だけを軸にした公演だった。
ただ、電気を消すSTEP3のアイデアが出てきて、それが謎解きとして面白い。これがないと、公演そのものの面白さがかなり小さくなってしまう。ぜひ採用したい。

た:STEP3と「想起」は考え方が根本的に違うから、コンセプト上のかみ合わせが悪くて、どちらを優先するかで悩みましたね。最終的に、STEP3に「希求」という意味合いを与えて、想起と希求の両者を採用した。公演内のラスト問題(モニター)とエクストラ要素でも、想起と希求の2ルートを用意して、何とか説明をつけました。

セ:コンセプトのブレなんで、考えてる間は結構嫌だったよね。

一般化できるノウハウは特に無い。
制作中は、こういうコンセプトのブレも常。


クリアツイート

セ:さっき言ってたけど、クリアツイートの有無は、まさにスタンスの違いが強く現れたところだったよね。

た:そうですね。元々このゲームは「緑の光をみたら謎解きだと思ってしまう」(=想起)という侵食的な体験を作りたくて、他の人のクリアツイートからエクストラの存在を嗅ぎつける、ということはしてほしくなかったです。クリアツイートを用意すれば、気づく人が10倍くらいに増えることは明らか。でも、それは本当に感覚の侵食なのか?っていう。

セ:結構揉めたね。

た:この辺の中核的なコンセプトはセージさんよりも俺の方がこだわりがちなんですよね。最初はずっと、クリアポストは用意しない!って言ってた覚えがあるんですけど、セージさんと話し合って、結局「5人にめちゃくちゃ刺さる」から「50人に結構刺さる」に方針転換した。クリアポストを「公演成功」と「実験成功」の2種類用意することにして。

セ:「クリアポストをみて緑の光を探すようになる」っていう導線は「希求」っていう概念を作ることで正当化したのよね。ここから生まれたもの。

た:こうして振り返ると、白鯨って「誰も考えたことがないめちゃくちゃ面白いひらめきを作る」、は全然してないですけど、決まったコンセプトをどれだけの研ぎ具合で誰に向けて刺すのか、そういうチューニングはめちゃくちゃ気を使ってる気がしますね。どこまでのネタバレを許すのか、公演内でどういうステップを踏ませるのか、司会者がどれだけの強さでエクストラ要素を匂わせる言葉を掛けるのか、全てはチューニング。

セ:分かる。強みだと思う。でもチューニングが大事っていうのはたぶん経験値によるところが大きくて、伝わるかはわかんないね。

謎のアイデアそのものも大事だが、チューニング(=決まったコンセプトをどれだけの研ぎ具合で誰に向けて刺すのか)もコンテンツの評価を大きく左右する。
どこまでのネタバレを許すのか、公演内でどういうステップを踏ませるのか、司会者がどれだけの言葉を掛けるのかなど、小さなチューニングが大きく影響する。


STEP3とSTEP4の順番

セ:STEP3とSTEP4の順番は、結構悩んだよね。STEP3は「希求」、STEP4は「想起」を担うパート。つまり、STEP3は答えるために緑の光を探し出す、STEP4は緑の光をみたら答える、ということを徹底するパートだ。

た:しばらくは逆の順番だったんですよね。謎解き的に面白いのはSTEP3の4問目(電球が消えたことから白い光の指示が消えたこと、スイッチが点灯しており緑の光が存在していることに気づく問題)なので、ラス謎っぽさがありました。

セ:ただ、エクストラでは公演の外で「光ったものそのものの名前を使って謎を解く」という処理を行わせる。公演外でヒントが出せないから、少なくとも気づいた人には難なく解けてほしいし、そもそも気づいてほしい。ちなみにモニターの電源ランプを見るラストでやっているアソビも同じ。

た:その導線として「日常の光も使える」という学習のためのSTEP3と、「光ったそのものの名前を使って謎を解く」という学習をさせるためのSTEP4、という位置づけでもありました。
その両者を比べると、信号やモニターが緑に光っていることは気づきやすいから、STEP3の導線としての必要性はそれほど強くない。一方で「光ったそのものの名前を使って謎を解く」というのは直感的ではないから、STEP4の導線としての必要性は高いです。
そう考えると、STEP4をより印象に残る後ろにおくべきでした。

セ:STEP4の後、光るモニターをみて「モニター」と答えるのはかなり難しい。すんなり正答してくれたチームは1割いるかどうかで、ここはチューニングが甘かったポイントだと思う。
今の順番ですらそうなんだから、逆だったら全然受け入れられなかったかも。今の順番にして良かった。順番は結局たっつーが整えてくれたね。納得したから僕も乗っかった。

問題の順番を入れ替える、のような簡単な一手間で、大きく印象が変わることもある。


テンポ作り

セ:緑光実験では、各ライトの意味を知るために、色を含む言葉をシャウトしてもらう、という形をとった。

た:取りましたね。これ、謎じゃないですよね笑笑

セ:どっちが考えたアイデアかも忘れてしまった笑笑 でも、結構考えた結果だったよね。

た:いくつか意味がありますね。緑光実験は、まず各色のライトの意味を知って、その指示に従いつつ問に答える、という大きく2段構えのゲームを繰り返します。
そうすると、2段目が思考負荷のかかるパートなので、1段目は可能な限り楽でテンポのいいものにしたい。しかも、2段目では結構一枚謎が出てくる。プレイヤーが「今何をしているのか?」を混同しないために、「この一枚謎を解いたら緑のライトの意味を教えてあげます!」にはしたくなかった。頭を使いつつ2秒でできること……連想かな、それなら色を含んだ言葉を早い者勝ちでシャウトさせたらゲームっぽさが作れるかな、みたいな感じで整いましたね。

セ:テンポ作りってめっちゃ大事だよね。

た:大事です。謎解きって高負荷の中謎ラッシュになりやすいので、爽快感を覚える時間の割合がめちゃくちゃ低いゲームなんですよね。ここを気遣える制作者の公演は面白い。典型的には、ファーストステップの小謎もテンポ作りのためのものです。

セ:遊んだことないけど、あまつパイセンさんの「FASTEP」とかはこのへんめちゃくちゃ考えてデザインされてそうだな~~と感想を見ながら思う。いつか絶対遊びたい。

た:個人的には、テンポを整えるなら、もはや謎じゃなくて良いと思うんですよね。探索する、物を並べかえる、シールを貼る、頭を使っているようでいてあんまり使ってなくて、でも楽しい作業ってたくさんある。そういう引き出しはあるに越したことはないです。特にルーム型は。

セ:わかる。僕がテンポを考えるときにイメージするのが、スーパーマリオなのよね。マリオって、強そうな敵や大きな崖が見えたタイミングは立ち止まるけど、それ以外の時間は基本右に走り続けてる。
といっても、ただ右に走っているだけではなくて、クリボーを踏みつぶしたり、三段ジャンプをしたり、コインを取ったりして、目や耳に小さな報酬を配って爽快感を出して、走っている実感を生んでいる。慣れた人がダッシュすると、ちょうど踏みやすい位置にザコ敵やボタンが配置されていて、音が連鎖的に続いていくことに気づくよね。
謎解き公演である以上、プレイヤーが中謎で詰まって苦しくなるタイミングは絶対出てくるから、それ以外のポイントで小さな報酬を配って"全体の流れ"みたいなものを生めているかは、常に考えてる。

た:公演中、色のつく言葉を上げてもらったときとか、小謎を解いたときとかに毎回マルバツのブザーを鳴らすことにしましたよね。あれも小さなテンポ感なんですかね。

セ:そのつもり。あるとないとでは全然違う。小さな爽快感とか達成感を産み出すことが出来る。

小さな報酬を作ってテンポを整え、辛い時間を中和する。



司会


司会練習のきほん

た:司会、いくつか好評の感想出てましたね。

セ:ありがとうございます。待ってましたよその言葉を。

た:ちょっと腹立ちますね。でも実際、アマチュアではかなり上手いほうじゃないですか?

セ:関西圏のアマチュア団体が30くらいか……。うぬぼれ抜きに考えると、関西で5本の指くらいか?とは思う。
ネタバレ記事で何も伝えられないから、読んでるだけの人はお前誰やねんって感じだろうな、というのが悔しいです。白鯨でお会いしたことのない人に少しでもアピールしようとするなら、ハードナッツ「REVERSAL」初演の司会(キャスト)とかもやっています。

た:別にちゃんと訓練したわけではないんですよね?

セ:ですね。学生時代から生徒会で演説やったりモノマネが得意だったりで、しゃべりに苦手な意識はなかったです。結局場数かもしれない。しゃべるのがとても苦手な人が克服するためのノウハウはないです。ごめんなさい。
ただ、謎解きの司会は大学で始めた頃はめちゃくちゃ下手でした。今のクオリティになったのは3~4年たってから。

まず、一般的なことについて。僕はYouTubeをみて人前で話すことの基本を練習したので、特に参考になったものはここで紹介しておきますね。

た:これはどういう内容なんですか?

セ:上のやつほど直接役立ちます。
一番上が「人を惹きつける話し方」。特に発声方法の基本を教えてくれる部分が参考になったのよね。「注目を集めるためには、むしろ声を小さくする方法もある」という話は、当然のようで、実践されると説得力が凄かった。
真ん中が「TEDxで賢そうにプレゼンする秘訣」。このプレゼンター、10分くらい喋るんだけど、終始内容がゼロなのよね。誇張なくホンマにゼロ。でも納得した気になる。人間は、話の内容じゃなくて、その人の立ち居振る舞いとか間の取り方とか、雰囲気をとても観察しているんだって事がよく分かった。司会に落としこむなら、言葉の情報を詰め込みすぎる必要は無い、というか。むしろ余白をとってアイコンタクトをしてあげた方が、説得力を生むことができる場面もある。そういうことを知った。
最後が「注意をそらすテクニック」。プレゼンターがプロのマジシャンかスリ師らしくて、大衆の面前でミスディレクションを実践してくれる。直接司会に活かせるところはないんだけど、プレゼン全体が謎解き公演みたいで、人はこういう快感が欲しいんだよなってとても参考になった。
ここまでは、一般的な喋る技術の話ね。

た:ほへ~。

セ:ここからは謎解きの司会の話なんだけど、上手い人の司会はめちゃくちゃ観察して、なんで上手いのかめちゃくちゃ考える。一番好きなのは、ハードナッツの先輩で現タンブルウィードのもりぺー(森雄平)さん。アマチュアだとナゾトキノコの公演でみたはこべるりさん、FFBASその他で活躍されてる橘沙穂さんとか。とにかく参考になる方を見つけて、間の取り方とか発声とか抑揚とかをなるべく近づけていく、みたいなことはした。キモいので言いたくないけど。

た:確かにちょっとキモいかも。

セ:めちゃくちゃむずい感覚なんだけど、通る声の出し方、立ち居振る舞い、間の取り方みたいに、技術の半分はプレゼンと共通してる。でももう半分は謎解き独自のもの。
例えば、誰もが解けている公演の前半の解説とか、二段オチのうち一段目の解説とかはかなり早口にする。誰も聞いてないし、違和感なく通り抜けてほしいから。ここを早口にすることで、そのあとゆっくりにしたときに注目が集まる。それが心地よさを生むことになる。
こういう特徴は、謎解き文化の文脈の中で作られてきたもので、意識して聴かないと学べない。上手い人のしゃべり方を実際にコピーしてみると気がつくと思う。プロの公演の解説を、言語ではなく音として耳に流し込む意識で聞いてみるのがおすすめ。

司会技術の半分は一般的なプレゼンと共通する(とセージは思っている)。
ここを上手くするための一番の方法は、一般的なプレゼンの動画やノウハウを調べて練習すること。要するに場数。
もう半分は謎解き独自のもの。上手い人を観察して、取り入れられそうなものを取り入れていくほかない。


司会でもテンポ作り

セ:さっき言ったテンポ作りは、司会の方でも意識してる。といっても司会でするのは、小さな報酬をあげるというよりは、大きな区切りをつけること。

た:ほう?大きな区切りですか。

セ:プレイヤーの「今、何をしているのか?という疑問に対する答え」というか。本来は、作問の方で大きな区切りが生まれないといけないと思うんだけど、緑光実験は、一見何をしているか本人達にもわからない。
そこで、「これでSTEP1クリアです!!!おめでとうございま~~す!!!」みたいに強く褒めるタイミングを作って、そのステップでやったことの意味を説明する。
段階を踏んでゴールに近づいているんだな、という感覚が謎解き自体から感じられない場合は、司会が口頭でフォローして、公演のフレームを感じさせてあげるしかない。紙情報がないルーム型特有の意識かもしれない。

ルーム型公演において、作問上の区切りが付けにくい場合は、司会で区切りをつけることもできる。1ステップごとの目標や目的を明確にすると、プレイヤーの思考にノイズが入りにくい。


司会で間を埋める

セ:あと司会についていうと、緑光実験は全編を通じてよく喋ったと思う。

た:そうでしたね。

セ:公演を通して変わったことしてるから、プレイヤーに進行を任せると飲み込みづらいし、あらぬ方向へ思考が進む。そこで、基本僕が黙るタイミングがない、くらいに喋ることにした。
一方で、皆で相談したいのに、司会だけがずっと喋りまくってても面白くないはず。「お兄さん今良いこと言ってくださいましたね、もいっかい言ってもらって良いですか」とか、「(ラミネートを指さしながら)せーので読み上げてくださいね」とかみたいに、プレイヤーが参加しているタイミングを少しでも増やすことで、司会のオンステージ感を減らす努力もしていた。外から見て上手くいっていたかは分からないけど。

司会のしゃべくりは、公演をコントロールできるというメリットと、プレイヤーの主体感を奪ってしまうデメリットを比べながら調整したい。




公演内容・各々の謎


作問で考えていたこと

セ:僕たちは、どちらかというとシステマチックに構成を考える方よね。多分。

た:そうですね。決して機械的に作れているわけじゃないですけど、面白い謎を作れないこともあって、コンセプトとか相場を見た制作が多い気がします。

セ:最後に〇〇させるにはこのステップで学習させないといけないとか、25分のルーム型コンテンツなら中謎級の面白さが3つくらいほしい、とか。

た:このような制作をするべき!と思っているわけではないですが、一例として細かく書くことにしましょう。
一番最初に決まっていたことは、前述のコンセプトのように「公演が終わった後に信号を見たら何らかを思ってしまう」ということです。この「思って"しまう"」というところから、"想起"という体験を被験者に埋め込む怪しい人体実験、というフレーバーが定まっていきます。

セ:フレーバーっていうのは、謎の中身等には直結しない、ストーリーとか設定みたいなニュアンスで使っている言葉だね。
ということは、現状決まっているのは
①情景:「公演が終わった後に信号を見たら何らかを思ってしまう」
②フレーバー:「想起を埋め込む人体実験」

の二つだけ。次に何を考えたっけ。

た:次に、共有した情景を再現するために、ルール的なものを考えたんですよね。信号を見て何かを思う以上、
③システム:「光で指示が出される」(緑赤は必ず使いそう)
が決まった。

セ:そうだったね。そこまで決まったら、ここからは中謎級のひらめきを考えていく。
これは経験からくる相場観、としか言いようがなんだけど、このコンテンツには3つくらい面白いひらめきが欲しいというのは早期から一致していた。

た:「光で指示が出される」というシステムからパッと考えて生まれたのが、
ひらめき1:先輩被験者もライトに従ってしまう
ひらめき2:天井のライトが実は「白色の光」だった
ひらめき3:電気のスイッチの作動ランプを使う
ひらめき4:テレビの作動ランプを使う
ひらめき5:鏡に映すと光が増える
の5つくらいですかね。
ひらめきを作るときは、システマチックにではなく、ひたすら「光るものは何だろう」とか考えながら案をたくさん出して、取捨選択する。ブレインストーミングですね。今回は5つが残った。

セ:この5つのひらめきを組み合わせて、
④中謎・大謎:先輩被験者を使う(鏡も使う)
⑤中謎・大謎:電気が消えたときの2つの変化に気付く
⑥中謎・大謎:テレビの緑のライトに気付く
の3つの謎が生まれた。
これくらいのタイミングで、どうして信号を見たら人が青ざめるのか、についての具体的な理由も決まったね。
それは、「しんごう」をみて「せいこう」という言葉を思い浮かべるから。
単語同士が似てて、緑色・黄色・赤色の光にそれぞれ変換法則があれば楽に実現できそうだ、と思った。
⑦エクストラ(信号):緑色・黄色・赤色の意味を含めたロジック
も埋まったことになる。

た:ここまで決まれば、公演はほぼ出来たも同然ですね。

セ:ほぼ出来た?

た:公演に要求されるひらめき、面白さの数は既に足りているという認識です。ということは、あとはそれっぽいステップに分割して適当な謎を配置するだけです。
しかも、「中謎が〇〇だから同じ系統の謎」とか「後で〇〇をさせるから先に学習をさせておかないといけない」とかを考えると意外に自由度ってないんですよ。

せ:「学習」というのは、後に使う考え方を先に経験させておくことね。

た:そうです。「ひらめき」の面白さを感じてもらうパートで、ひらめき以外の点で詰まってしまうと体験価値を阻害してしまうので。
例えば、スイッチの緑の光に気付いたときに「スイッチの光でもいいんだっけ」と悩みすぎるとストレスが溜まってしまうのではないか、みたいな。ひらめきのタイミングではひらめきの核以外で詰まってほしくないので、その部分の引っ掛かりだけ前倒しして解消しておくイメージです。

セ:あとは、解けなかった時に「読み落としていた。できると思っていなかった」といったストレスを抱えないように「脳内の引き出しに入れてもらう」という意味もあるのかな。

た:そうですね。そういわれると「学習」も結構多義的に使っていました。まぁざっくり、後で詰まらないように事前に体験してもらうフェーズ、くらいの整理ですかね。
さて、各ステップの意味合いを全て書いたのが下記の整理です。
ついでに、章立てするまでもない考慮点も併記しておきましょう。


前説&チュートリアル

・色をメインにしているため、色覚特性についての再度の案内をした
・シャウト形式等のルールは分かりにくいので、説明だけにせず、実際に行ってもらいながら理解してもらう必要がある
・ステップ3-3で、テープライトが緑色に光る、という知識を使いたいので、どこかで強制的に誤答させて学習するフェーズが必要
→わかりやすくシャウト形式の説明がしたいので、「緑色の光」の意味を聞くという問題にしよう
→強制的に誤答させる必要があるため、念のため「光で指示が来る」という情報も伝えない状態で1回答えてもらおう
(制限時間内で強制誤答の茶番があるとストレスに感じる人もいるため、念のため制限時間開始前のチュートリアルとして独立させた)


ステップ1

ステップ1

・面白いことをする前に、まずはシャウトや光は指示というシステムに慣れてもらう必要がある。
・一番最後に「ん」の2音後が「い」ということを使うが、「ん」から「あ」へのループは自明ではないため、どこかで学習するフェーズが必要
→ここで「4文字のうち、前半を2つ下げろ」という指示を初出させて、学習させておこう。


ステップ1

・ステップ立てにするなら1-1の延長のようなものと合わせて「ステップ1」とした方がおさまりが良いため必要
・のちのステップで物品の「眼鏡」と「鏡」を使いたい。事前かつ自然に目の前に物品を置く必要がある。
→「しりとり」という指示を使おう。


ステップ2

ステップ2

・先輩被験者を使うというひらめき①
→ひらめきのアイデアをそのまま使うステップだから特に考えずに作れそう。


ステップ2

・先輩被験者を使うというひらめき②
→ひらめきのアイデアをそのまま使うステップだから特に考えずに作れそう
(先輩被験者を使うというひらめきが小粒なため、「眼鏡をかける」「鏡を立てかける」という二つの小粒のひらめきと合わせてなんとか最低限の面白さを確保した)


ステップ3

ステップ3

・「希求」に納得感を持ってもらうために、どこかで「希求しちゃってましたよ」と伝えるフェーズが必要
→後ろに謎を出して、振り返らせるということにしよう
→ということは後ろの謎はどんな問題でも良いな。ただ、新しい色の光を使うとやることがぶれちゃって印象的じゃなくなるから「緑の光」だけを使う方がよさそうかな


ステップ3

・ステップ3-1で後ろを振り返らない人もいる。そのような人にも上記メッセージを伝えるために2段構えにしておく必要がある
→ここでも、後ろに謎を出して、振り返らせるということにしよう
→ということは後ろの謎はどんな問題でも良いな
→なら、信号のために絶対に必要な「赤色の光」の初出はここにしよう。


ステップ3

・ステップ3-4でスイッチ・天井の光を使う。
一番最初に「トワイライトの光じゃなくても良い」とは説明しているけど、人って忘れがち。次のステップでそこについて誘導すると、結構強いヒントになってしまう。
そこで、ひらめきの度合いが下がっても良いフェーズで「トワイライトの光じゃなくても良い」を実感させておこう。
→誤答時に緑に光るテープライトぐらいで良いか。


ステップ3

・電気が消えたときの2つの変化に気付くひらめき
→ひらめきのアイデアをそのまま使うステップだから特に考えずに作れそう
→ひらめきの本質は光に気づくところで、その先の作業(小謎を解くなど、ミクロにとらえれば俗にいうウィニングランの一種)させても満足度は上がらなさそうだから、指示に従ったら答えが直接書いてある形にしよう


ステップ4

ステップ4

・光った物の名前にフォーカスしてもらう必要がある
・とはいえ終盤だから複数ステップをかけて自然に思ってもらえるようにしたい
→しりとりをするという形なら「目の前に4つある」という導線があるから誘導無しでも解けそうかな


ステップ4

・ステップ4-1と同じ
→「トワイライト」という名称さえ使えれば何でも良いか


ステップ4

・「光った物の名前を使うこと」を念押ししておこう
→念押ししたいから他の指示は無しにして、純粋な形で伝えよう
(ここで詰まるチームが多いだろうという懸念は当初からあったが、ルールを飲み込んでもらうためには必要であるため司会のパワーでごり押すことにした)


解説(最終問題)

・モニターの緑のライトに気付くというひらめき
・画面上に謎を出しても良いけど、「光った物の名前を使うこと」の学習にも使いたいな
→モニター自体を答えさせよう
(最終問題が解説中になったのは、このひらめきはこの出し方が面白そうと思ったからだけ)


解説(退出時)

・「光った物の名前を使うこと」と「公演外でも光の指示に従ってもらうこと」と「答えをLINEに入力してもらうこと」を実感してもらう必要がある
→最後に「トワイライト」と答えさせよう
(説明だけでは忘れちゃう人もいるだろうから、別の答えを入力すると、LINEの応答が変わることも実演しておく)


公演内容について、最後に

セ:フレーバーに「希求」が追加されたことと、STEP4がこの位置に誕生したことについては、この記事の前の方で話しているから参照してもらえば十分かな。あとは最後に、強調しておかないといけないことがある。

た:と、いいますと?

セ:基本的に、面白い謎であるに越したことは無い。
「公演に要求されるひらめきというか面白さの数は既に足りているという認識です。ということは、あとはそれっぽいステップに分割して適当な謎を配置するだけ」なんて話したけど、面白いひらめきだけで上手く組める方が良い。

た:そうですね。我々に面白い謎を作る能力も時間も無かったから、ある程度の段階からはOKで通したところもありますけど、こだわるべきだという批判は耳が痛いです。

セ:とはいえ、「面白いひらめき」をきれいに届けようとすると、学習フェーズみたいに下準備すべき点は多いってことだね。
この章は、モデルにすべき制作の流れってことではなく、現実的な妥協の経過と、一般的な制作者が構造に対して有している解像度の参考として読んでもらえるのが嬉しいかも。

面白い体験やひらめきを上手く体感してもらうためには、段階を踏んで学習をさせる、という事前の下準備が大事。



告知・販売


制作者の名前

セ:告知でいうと、まず僕ら自身の名前と過去作品を出したことかな。

た:大事なところですね。

セ:そもそも有名じゃないし、ダサいんであんまやりたくなかったよね。

た:めちゃくちゃやりたくなかったです。突如現れた新星、くらいでありたかった。でもチケット売れ具合の見込みが立たなさすぎましたね……。過去作品を知ってくれている人が少しでもいると、やっぱり安心します。
反省、というより後悔、くらいのニュアンスで書いておきましょうか。
団体としてはむしろ無機質でありたいというか、過去作品や制作者の色が全面的に出るような格好にはしたくなかったですね。

セ:確かに。なんで、個人のアカウントで積極的に制作物に言及することはほとんど無かったよね。

告知の時は、団体のカラーも踏まえて、何を出すか、何をアピールするかを考える。



値付け

セ:値段は1500円だったね。そんな協議せずに決めてもらったけど、適当に決めたの?

た:最後は感覚ですけど、京都の零細新規団体ですからね。東京初演は割安でなければ売れないだろうという読みもあって、拘束時間40分の公演としては、相場より低くしようとは思ってました。高くするなら2000円~2500円はあり得た。

セ:確かに。あと、変なことしてる上に謎が重厚なわけでは全然ないしね。ミスマッチが起こりうる状況だった。1000円だと絶賛されるけど2000円だとマイナス感想が多くなる、みたいなことも実際ある。

た:まぁ赤字出したら持続可能性が無くなっちゃうし、安すぎると団体の今後の値付けとかブランディングにも関わります。値段を下げることで期待値コントロールするのは諸刃の剣でもありますけどね。

値付けは難しい。
拘束時間、かかった経費などからざっくり算出はできるが、それでも値付けはいつまでたっても怖いもの。
安く抑えることで悪評をおさえられるという側面は否めないが、今後を見据えるなら、むやみに安くすると後悔することもある。




デバッグ

た:デバッグって大事ですよね。

セ:超大事!!!!

た:プレイヤーの意見をもらえる貴重な機会ですからね。これ無しで本番に突っ込むのは絶対にやっちゃいけない。僕らも、デバッグをやって変更点がなかったことは99%ないです。

セ:あと現実的な問題として、修羅場の前倒しができる。

た:人って、結局締め切りがないと動けないものですからね。公演日を締め切りにするとバグ対応ができないから、絶対に避けるべき。といっても、自分で内々に決めたスケジュールはずらしがち。そこで、他人が絡むという理由で強制的にやる理由になる「デバッグ」をやりましょう、と。

セ:何なら初演までのロードマップを3~4分割して、各々にデバッグを強制的に置いたところからスタートするくらいで良い。
初回のデバッグは「概念デバッグ」といって、必要な情報を口頭で説明したり、いらすとやと簡素な紙で揃えて行うもので構わない。このアイデアは面白いのか?この方向で進めて良いか?に確信を持つためにやりたい。2回目以降のデバッグは完成に近づいているほど良い。事前に目標は定めておくこと。
デバッガーとしては、各回に上級者から初心者までいるのが理想だけど、最終デバッグには最低一人、信頼度の高い人物にお願いしよう。

た:デバッグをどう活かすの?ってところも触れておくべきかもしれないですね。

セ:確かに!

た:デバッガーにも慣れた人と慣れていない人がいて、デバッガーの意見をそのまま取り入れて良いかは怪しいところです。だから、デバッガーの意見から何を抽出するかはとても難しいですね。デバッガーによって、「ここはもっと簡単な方が良い」「難しい方が良い」なんて矛盾したことを言われるのもザラですし。
少なくとも、アイデアが面白くない、という指摘については、取り入れるかは諸説です。面白さを正確に言語化できる人って少ないので、「アイデアの面白さが上手く伝わってないこと」を主観的に「アイデアが面白くない」と表現している可能性が十分にあるんですよね。複数人に言われたのであれば、その指摘は当たっている可能性が高いですが、面白くないという指摘を真正面から受け止めるとダメージだけが残ることもあるので、頭の片隅に置いておくといいでしょう。どういう理由で面白くなくて、どうすればより良くなるのか、このあたりに納得できたら取り入れたいところです。
一方で、ストレスを感じる、みたいなニュアンスの指摘は、できる限り拾い上げたいですね。デバッガーがストレスを感じているという事実は揺るがないからです。謎そのものの面白さとは関わっていなくて、大きな組み替えの必要が無いことが多い割に、満足度に与える影響は大きい。キットの文字が小さくて読みにくいとか、情報をもう少し整理して欲しいとか、ルールが明確ではないとか。

セ:その通りだね。いずれにせよ、貴重な時間を使ってまだ公開に耐えない成果物を見てくれているデバッガーの皆さんには感謝しかないよ。否定的な意見をもらっても、絶対に投げやりな態度や感情にまかせての反論はしないこと。次の機会もなくなるからね。

デバッグはとても大事。デバッグの日程は早いうちから決めてしまい、信頼できる人物にデバッガーをお願いすること。
デバッグの内容は、内容を吟味して取り入れるかを決める。
デバッガーへの態度は気をつけよう。



物品・アイテム系


Switchbot

セ:『緑光実験』の物品系の核といえば、Switchbotだね。僕めちゃくちゃ疎くて何も知らないんで、助かりました。

た:使ったのは、いわゆるスマート電球ですね。Switchbotという製品で、アプリで事前に設定しておけば、ワンボタンであらゆる色の光を再現できます。事前に「ステップ1-2」とか「ステップ3-2」とかを設定しておいたってことですね。いろいろな色の電球が欲しいとアイデアが固まってきたタイミングで、事前に知っていたSwitchbotの電球を1つ購入して、問題なく実現できそうだなと思いました。

セ:僕はツールやデバイスへの感度が低くて、白鯨のアイデアの実現可能性は大体たっつーが担ってるよね。たっつー自身が凄いというよりは、ネットから実現できそうな方法を探し出すのが上手い。特別な技能が無くても実現できる方法を探せるところが、むしろ再現性高くて素晴らしいと思う。

た:特に謎も作れないにもかかわらずディレクターとかをしていた自分としては一番に近い賞賛かもしれません。詳しい話は、『ブルーバードバトル』の制作裏話に譲ることにしましょう。

便利なツールは多い。機器操作専用の人員や独自の管理ツールを用意する余裕が無いアマチュア団体だからこそ、既存の便利ツールを最大限活用しよう。


部屋のスイッチ

セ:そういえば、再演の時はこのスイッチを備えた手頃な会場が無くて困ったね。大阪最宴祭のお誘いを頂いた時も、それが理由で断ろうとしてた。

た:そうそう。結局、よー1さんに電気工事の立ち合いをお願いして、会場のスイッチを付け替えてもらったんですよね。パワーでの解決。これに関しては本当によー1さんに頭が上がらない。ただ、こういうパワー解決って割としますよね?

セ:これもそうだし、『黄昏と京の足跡』では曲を外注したり、タテカン3枚書いたり。

た:そう。なんというか、「パワーで突破できる障壁」で止まるのもったいないという感覚。

セ:協力してくれる人たちと金銭的な余裕に恵まれていることがかなり大きいけど、基本的な考え方は通じてる。僕たちは結構パワーでモノを作っている。いったんゴネてみる姿勢は大事かもしれない。

我々はパワーでモノを作っている。いったんゴネてみるのも大事かも。
ただし、人間関係は大切にしよう!!!


スーツ

た:衣装はスーツでしたね。俺スーツ嫌いなんですけど。

セ:私服ではダメ。緑光は楽しげな雰囲気の公演にはしたいんだけど、「真顔で変なことを言っているある種の狂気さと、変なことを飲み込ませるだけの雰囲気」が必要。ある種宗教かマルチっぽさがあるべきというか。なんで、スーツにした。私服だったらだらしなさが出ていたと思う。

衣装も考えよう。凝らなくて良いので、興ざめさせないような選択を。


予備モニター

た:予備のモニター(テレビ)をもっていったことも大事ですね。

セ:そうだったね。運営チームに会場の写真を送ってもらって、会場にモニターがあることは確認してたけど、電源ライトが赤・緑になっているかは、確証が持てなかった。万が一の際には、時間的に当日購入も難しいと判断して、予備としてモニターを持参した。一応近くの家電量販店の開店時間まで調べたんだよね。

た:実際、赤・青だったから予備モニターないとマズかったですもんね笑

セ:めちゃくちゃマズかった笑笑 最悪を見越していろいろな準備をしておかないといけないよね。

当日の準備は入念に!困ったら多めに持っていこう。



体験型コンテンツ制作の理想と現実

た:ここまで「想起」と「希求」を植え付けるためにすごく頑張ったという話をしてきましたけど、どうせならさらに言いたくない話もしましょう。

セ:さらに言いたくない話?

た:『緑光実験』では、「想起」と「希求」を本当の意味で植え付けることができてないですよね。

セ:あ~~その話ね。本当の意味で、っていうのは「正に人体実験として」って意味よね。

た:そうです。今の形だと「あの公演で◯◯と念押しされたから、きっと△△ということだろう」みたいな、プレイヤーの自律的な思考が介在してます。
「想起」と「希求」という感覚を本気で植え付けるなら、もう少しちゃんと人体実験をしないとダメです。例えば、1分のスコアアタックに10回挑戦してもらうとかして、脊髄反射的な域に達するまで刷り込まないといけない。

セ:でも、その方針は諦めた。そこまで徹底すると、仮にも謎解き系のフェスに出展するコンテンツとして異質すぎる。そして、仮にそこまで繰り返したとしても、現実には感覚を植え付けられない可能性が高い。

た:前者も大事な点ですけど、重要ではなかったですね。あくまで僕らは謎解きを作るのではなく、僕らが面白いと思ったコンテンツを作りたいから、"謎解き制作団体"ではなく"制作団体"と名乗っていたわけですし。
ただ、後者が決定的に大事だった。結局、どこまで力を尽くしても、本当の侵食体験にはどこか届かなかったと思います。

セ:そこで、「想起」と「希求」を植え付けられた、と"思い込ませる"ことにフォーカスしたのよね。

た:使ったのが「言葉の力」です。正しいことや詳しいことはおそらく心理学とかになると思うんですが、一旦ここでは我々の経験をベースに話しましょう。
人って「今〇〇と思っていましたよね?」と言われたら、その言葉を脳で反芻しているうちにそう思っていたように勘違いするんです。人の記憶って思ったより脆いし、自分の感情や理性を正しく言語化することは極めて困難です。そんなときに、我々が勝手に言語化する。そうすると、そうだったような気がしてくるんです。

セ:この公演は、この効果をすごく意識してる。一番わかりやすいのはステップ3-1かな?なんとなくで後ろを見た人に対して「緑の光を探すようになっていますね」とこっちが言う。冷静に考えたら、そんなわけはない。でも、次の問題でも繰り返させて「ちょっとそうなのか?」と思わせていく。

た:そうです。言っちゃえば、最後のキャプションボードもそうですよね。我々がコンテンツの成功といえる類型を用意して提示することで、無意識下にでもどれかにあてはめてもらう。

セ:ここまで意識的に行うことは少ないけど、こちらが感情を代弁することで、相手の思考を左右できることは覚えておいて損はないと思う。

た:いわゆる「エモ系」といわれるコンテンツで、地の文以外に主人公視点の小説パートが用意されている理由の一つでもあると思います。

セ:注意点は、無理しちゃいけないことだね。まったく違うことを言ってしまうと「あぁそういう設定ね」と思っちゃう。あり得る範囲内でしか使えない。

気持ちなど言語化が難しい部分を代弁してあげることで、ある種勘違いさせることができる。重要なテクニックの一つだ。


あとがき

『緑光実験』制作裏話の内容は以上です。
この記事は、私たちなりに、「侵食」というテーマに向き合った記録です。

私たちの悩みが、若手制作者にほんの少しでも役立つと嬉しいです。


私たちは、ノウハウを残す目的のため、作品内容を公開しています。多くの人の目に触れ、今後も存在が認知されると嬉しいです。下のボタンか、note公式の共有ボタンから、拡散をお願いします。


お読みいただき、ありがとうございました。

白鯨
セージ/たっつー

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