フォンテーヌ廷、その行政機関たるパレ・メルモニア。
…の中の最高裁判長の執務室にて、部屋の主である、頭にタンコブのできた水龍は会議中だった。
n「これが、その遺跡の石板か…」
実はちゃっかり撮っていたらしい写真を見せる、お馴染みの蛮族。
後ろの4人では、この空気感をどうすることもできない。
n「調査しようと思った矢先に、遺跡が崩れたと電報が入ったがそういう事か。」
付き合いの短いヌヴィレットにももう、リンクは入るだけで遺跡を壊す奴認定されたようだ。
n「うむ。」
r「…結局、これが何を表すのかだけど…」
rt「どうしようもないって事。」
『ヒント出して。』
n「…私に聞かれてもまだ結論は出ていない。」
『ヒント目当てで来たのに…』
露骨に文句を言うリンク。
n「しかし、先の会談の際に召使殿が言っていた「フリーナは神ではない」というのも、一理あるかもしれない。」
「オマエがそれを言うのか…?」
n「ああ。私はこの500年間フリーナと居たが、彼女によるフォンテーヌの統治は全てそのカリスマ性によるものだった。」
f「でも、実際500年生きてるんだよね…」
至極真っ当な質問である。
全員が頭を抱えた。
n「多少心当たりがある。フリーナは、夜になると泣きながら自室の鏡に話し掛けている事がある。」
「何だって!?」
r「その、話の内容は…?」
n「彼女の部屋に入るのは流石に駄目だろう。それに、見ているのが当人に知られれば…彼女は顔を真っ赤にして自室に閉じこもってしまうのだ。」
フリーナの知られざる生態に迫ったが、シャイな水龍には決定的な証拠を捉える事ができなかったらしい。
執務室には、しばし重たい沈黙が落ちた。
フリーナが神ではない可能性。
予言の石板。
原始胎海の水。
どれも決定打に欠け、話は堂々巡りになりつつあった。
r「結局のところ…。」
「うん?」
r「フリーナ本人がいないと、これ以上どうしようもなくないかい?」
全員の視線が、自然とヌヴィレットに向く。
n「……その通りだ。」
n「彼女は現在行方不明。捜索は続けているが、手掛かりは薄い。」
「じゃあ詰みじゃないか……?」
その時。
リンクが、珍しく自信ありげに頷いた。
『わかるかも。』
「え?」
f「ほんとに!?」
リンクは腕を組み、少し考える素振りを見せる。
n「……根拠はあるのか?」
『犯人は現場に戻る。』
「アイツ犯人じゃないだろ…」
執務室に、ため息がいくつか重なった。
r「仮に、だよ?」
r「フリーナを見つけたとして……その後どうするんだい?」
rt「力づくで連れ戻す訳にもいかない。」
f「神かもしれない相手だし……。」
全員が再び黙り込む。
その空気を、安定のリンクが叩き割った。
『裁判。』
「……は?」
『裁判にかける。』
一瞬で、全員が固まる…
「無茶苦茶だろ!!」
r「被告が水神なんて!?」
rt「前代未聞にも程がある。」
f「流石にフリーナ様に裁判は…」
n「…………」
そんな中、ヌヴィレットは落ち着いて答えた。
n「……なるほど。」
一同「「え?」」
n「確かに、彼女が神か否かを判断する場として…これ以上、公平な場は存在しない。」
「…いや待て待て!?」
しかし、誰も反論することができない…
『決まった。』
n「…正式な裁判として、歌劇場を用いる。被告はフリーナ。罪状は…」
ヌヴィレットは、一瞬だけ言葉を切った。
n「水神の名を騙った…という事にしておこう。」
その言葉が、部屋に重く響く。
「それ、勝っても負けても大事件だぞ……」
『面白そう。』
「そこじゃない!!」
こうして。
フリーナ裁判という、前代未聞の事態が決定してまったのだった。
リネ達、ナヴィア、それにヌヴィレットも計画の為の準備を始め…
それから数日経った。
まだ災害の跡が残るポワソン町。
夕日が隙間から街に差し込む頃、リンクはその崩れた噴水の縁に腰掛けていた。
「……本当に来るのか?」
『来る。』
2人は、実に1日以上ここでフリーナを待っていた。
蛮族の勘によると、ここへ確実に来るというのだが…
根拠は相変わらず不明だった。
そんな時。
fl「…ごめん、本当にすまない……」
遠くから、か細い声が聞こえた。
「あっ!居たぞ!?」
フリーナだった。
外套を深く羽織り、帽子を目深に被っているが、隠しきれない動揺が滲んでいる。
そんなフリーナに、リンクは普通に近づいて話しかけた。
fl「うわっ……これはこれは、異郷より訪れた金髪の旅人じゃないか。」
さっきまであんなに嘆いていたのに、話しかけられたフリーナはすぐに威勢を見せた。
『…本人確認完了。』
fl「え?この僕に何をする気で……」
次の瞬間。
フリーナの頭に、麻袋が被せられた。
fl「ちょっと待ってくれ…!?僕はこのフォンテーヌの神で……」
『話は後。』
史上最も雑に神(?)の誘拐に成功した!
近くにあった小さい小屋に入り、フリーナは椅子に座らされる。
麻袋はちゃんと外しておいた。
fl「…僕にこんな事して、何が聞きたいんだい!?」
フリーナは流石にお怒りの様だ。
『ヒント。』
リンクはフリーナにこの前の壁画の写真を見せ、そのまま部屋の隅にあった導火線を前に炎の実を出した。
fl「答えなかったら、纏めて爆破するつもりなのかい…?…でも、僕だってこんな予言見たことない…」
フリーナは言い淀んだ後、少しだけ答えた。
fl「でも、安心してくれ。僕は……僕はみんなのために、この予言に対抗できる希望を最後まで残してある。」
「…結局、その希望の内容をオマエはずっと隠してるんじゃないか?それについて話してくれれば…」
「そんなの無理だ!…最初から、僕は一人でこの責務を背負う運命にあるんだ……!」
急に大声を出したフリーナに、2人はびっくりしてしまう。
fl「でも…あるいは、この世界の理から外れた君達なら………」
フリーナが何かを言いかけた時、地面が揺れた。
『…衝撃に備えて。』
「何だ?」
リンクは、さっき驚いた時にもう導火線に火をつけてしまっていたらしい。
ものすごい衝撃が遅れて来る。
「フリーナ!?」
「…辞めてくれ〜!!」
3人は…体がふわっとするような感覚や、強い衝撃を何度も受け…
「終わった…」
『着いたね。』
fl「えっ、着いたって何処に……」
小屋の天井が、弾け飛ぶ。
壁は四方に倒れ、フリーナにスポットライトが差し込んだ。
エピクレシス歌劇場の、舞台上。
正面にはざわめく観客席を埋め尽くす、フォンテーヌの人々。
横を見れば、リネがこちらにウインクしてきた。
リネは帽子を取って、にこやかに観客へ一礼する。
r「ここからが本番、神への審判の時間だよ。」
すぐ目の前には、異様に広い検察席が目に入る。
リネットとフレミネ、ナヴィア、呼んでいないのにシャルロットまで居る。
空き席は…リネのもあるけど、後は勿論リンクとパイモン用だ。
fl「…こんなの、聞いてない……!」
驚きと恐怖で身をすくめ、目を丸くするフリーナ。
「…でも、僕は正義の神…則ち、正義の化身なんだよ。正義そのものを裁こうだなんて、荒唐無稽に過ぎるとは思わないのかい…?」
フリーナは、怯えながらもいつものように威勢を張った。
c「もし、審判を受けないのならば、君には決闘によって名誉を守るチャンスが、一度だけ与えられる。」
舞台袖から出てきたのは、クロリンデだ。
リンクでも押されるような相手を前に、フリーナは平然と両手を挙げた。
fl「何も、僕はただ降参するというわけじゃない…。ここは、正義の神らしく、審判で君達と審判を着けようという話さ。」
フリーナは、完全に劇場の空気を制圧し直した。
水神の力かは知らないが、彼女のカリスマ性が光る。
fl「よし、さっさと罪状を羅列するところまで進めてくれ。…僕は今日の主役でもあるというのに、未だにどんな名目で裁かれるのか分かっていないんだ。」
そして…ヌヴィレットの声が、歌劇場に響く。
n「被告人フリーナ、貴殿は水神の名を騙ったという罪で起訴されている。」
n「原告人は…リンク。」
フリーナは、リンクの方を向き不敵な笑みを浮かべた。
fl「そうか、君だったのか。…最初に君がこの国に来た時、民達は僕と彼の戦いを待ち望んでいたそうじゃないか。」
fl「今こそこの審判で、君と決着をつけよう!」
『望む所。』
こうして、リンクとパイモンは検察席に座った。
前代未聞の裁判が、幕を開ける…!
?「〜」
↑先日もリネリネをrからlに間違えたりと、作者も消したいけど手遅れなやつ。描写に関する文章力がなかった昔と違い、今はとっくに無くて問題無いのに…
と言うことで、この後のラストは消し飛ばしておきました。
次回:さぁ~てフリーナはどうしてやりましょうかねぇ…(ニチャア)。
(曇らせは好きじゃないのでどう調整しておこうか、の意)