高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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新エリー都じゃ格闘技は打撃が基本だと思ってんだ
関節技なんてタイイチが保障されてるならともかくホロウじゃほぼ意味をなさないと思うんだよね
エーテリアスに関節が効くか不明だし、そもそもデカい連中、ホロウレイダー、反乱軍、機械みたいな奴らばっかりなんだ

寝技をしようにもホロウの環境にも目を配らなきゃいけないんだ
瓦礫だらけのところじゃ身体が当たって痛いし、ミアズマがあるところで身体の接地面積を増やしたくないスね忌憚のない意見ってやっス

逆に投げ技は有効的かもしれないね
極論、硬い地面があれば成立するしなっ
相手を投げられる筋力があるかは知らない知ってても言わない

こうして見ると格闘技ってやつはは環境や時代、ニーズに合わせて変化・洗練されて面白えなぁ


遥かなる深淵に臨めっ乗り遅れるなっ“始まりの主・ラッシュ”だ 3

 “陣法”というものがある。

 それはかつて、ミアズマを消し去る清浄なる陣であった。

 しかしそれは、今や邪悪なる企みによって歪められ、始まりの主が降臨するためのエネルギーを集める手段と化した。

 

 盤岳の弟子、寧謙は10年前の事件の復讐心からサラと共謀し、盤岳を陣法を起動するための鍵として誘い出してしまったのだ。

 リン、瞬光、ダイアリンは、様々な想いを胸に抱きながらホロウへ走る。

 

 『な…なんやまた変態かあっ』

 

 ――そんなことはつゆ知らず。マネモブは何か良く分からない渦の前にいた。

 ミアズマが渦巻いている……というよりは、渦に呑み込まれて渦の一部になっていくという感覚。

 しかも、中からは硬い物体同士がぶつかり合う音がする。そして、響く裂帛の気合は間違いなく戦友である盤岳のもの。

 

 『も…もしもし』『け…警察ですか…』

 『今トダーニ連絡サレテモ衛非地区ニイナイカラ助ケニ行ケナイヤンケ。任務デ忙シイカラ後ニシロヤンケ。ソモソモプライベートデカケタラ意味ナイヤンケシバクヤンケ』

 

 マネモブはこれは大変だと電話をかけたが、あえなくブツリと切れた。

 こうなったら公権力に頼ることはできないと、マネモブはミアズマに身を投じた……

 

 そこでは、陣の中心から絶え間なく現れるエーテリアスを相手に孤軍奮闘する盤岳。

 激情の渦巻く表情を浮かべた寧謙を守りながら、傷つくこともいとわず鉄拳を振るう。例え、弟子に罵られようとも揺らぐことなく敵を断つ姿は、まさにマネモブが目指す武術家の理想にも近いものだった。

 

 二人の間に何があったのかは分からない。

 しかし……この状況を見てマネモブが我慢できるはずがなかった。

 例え無粋と言われようとも、義を見てせざるは勇無きなり。

 

 『だからオレたちがいるんだろっ』

 「なにっ」

 『しゃあっ』『灘神影流“鷹鎌脚”』

 

 飛び込んだ勢いのまま繰り出された鷹鎌脚。それがずんばらり、と盤岳と寧謙を囲むエーテリアスが両断した。

 マネモブは空中で身体をひねりながら軌道を変え、エーテリアスに飛び乗る。それの頭をむんずと掴み、脚までクラッチすると……

 

 『鉄槌車輪(ハンマーホイール)!!』『ゴツゴツとコンクリートに骨がぶつかる異様な打突音とともに肉が割れる!! 血が舞う!!』

 

 そのまま前へと回転した。

 ハンマーホイールの名にふさわしく、まるで車輪のようなそれは他のエーテリアスさえも轢き潰してしまった。

 そのままダメになったエーテリアスにトドメを刺し、次のエーテリアスを捕まえる。

 

 『“不知火”!!』

 

 パァン! と凄まじい勢いでエーテリアスが破裂し、破片が弾丸のように周囲のエーテリアスを襲う。

 至近距離のマネモブはというと、弾丸すべりで無効化しているという非情な技だ。

 

 『ヒャハハハ』『こいつらの試合メチャクチャおもろいでエ』

 

 非ミアズマ系のオールドスタイルなエーテリアスであるマネモブはミアズマ・シールドなど使わないが、それでもエーテルの一種であるミアズマが濃い空間では調子が良くなる。

 マネモブは絶好調で技を繰り出し続ける。その勢いは、エーテリアスの出現が一旦止まるほどだった。

 

 「あ、あんたは……」

 「マネモブ殿……」

 『ばあーッ』『“超危険生物”鬼塚姫次でぇース』

 

 瞬く間にエーテリアスを殲滅してみせたマネモブ。

 盤岳達が、何故ここにと疑問を口にする間もなく、マネモブが定めた次のターゲットは盤岳だ。

 

 『しゃあっ』

 「ぐぅっ!? な、何を……」

 

 確かに盤岳の姿は理想的だった。

 命を捨てるのもいい。しかし、まだ盤岳とは決着がついていないのだ。

 

 ライカンは義足が主体とはいえ無手。ライトも徒手。彼らは強者だった。しかし、技術はあれど武術というものが主体ではない。

 久方ぶりの徒手空拳の強者。文字通り鋼の肉体を持った武人。今、死んでもらっては困る。

 

 『これが暴殺拳“剛勁”!!』

 「動かざること山の如し!!」

 

 マネモブの破壊的な殺気をまとった拳が盤岳にぶつかる。

 しかし、盤岳はその攻撃を完全に防いだ。武術家としての勘、そして戦いの経験がそれを可能としていた。

 

 「これは“気殺”……?」

 

 だが、そもそも剛勁は過剰な殺気で威力が半減されていた。

 それでもその事実を認識する前に身体が動き出し、反撃を開始する。

 

 『ぶっ倒したるっ』

 「なにっ」

 『三角締めっ』

 

 マネモブが盤岳の腕を取り、両足で首を絞める。

 盤岳とて関節技は知っているし、受けたこともある。しかし、その経験は少ない。

 ホロウでの格闘戦は立ち技、打撃が基本だ。エーテリアスに関節技が有効でない場合が多いことはもちろん、無数に敵が襲い来る状況で、一人を無力化したところで意味がない。そのまま波にのまれて死んでしまうのだ。

 

 盤岳がそれに対応できたのは、ひとえにあらゆる武術を極めんとする中で関節技への対応を知っていたからであろう。

 

 「ぬぅん!!」

 『あうっ』

 

 スポッと軽く抜けたマネモブの腕を盤岳が掴む。

 マウントポジションじみた体勢に移行すると、盤岳はその剛腕を振るう。

 

 「覚悟!!」

 『う あ あ あ あ』

 

 地面を破壊する剛打の嵐。

 しかし、マネモブは情けない悲鳴を上げながらもそれを最小限の動きで避けている。

 そして掴まれているのは腕であり、脚は自由だ。

 

 『“潜隠爆破脚”』

 「ぐはっ」

 

 当たった者を三年で殺すという恐ろしい技が盤岳を襲う。

 しかしマネモブにとってはそれすらも、状況を変えるための牽制にすぎない。

 ぬるりと蛭のような動きで背後に回るマネモブ。

 

 『“毒蛭観音開き”!!』

 「ぬぅぅぅぅ!!」

 

 機械人の肋骨など分からないが、引っかかるパーツはある。

 それを掴み、文字通り観音開きに広げようとするマネモブ。だが、盤岳は危機的状況ながらも焦ってはいない。

 冷静に……もう一対の腕を展開することで背中のマネモブを強引に引き剥がそうとした。

 

 『聞いてみたいなあ』『お前の“骨の音”をなあっ』

 「なにっ」

 

 だが、腕の展開に伴いマネモブは剥がれたものの、手は依然として盤岳を掴んでいる。

 そのまま強引に軌道を変え、脚が盤岳の首に絡みついた。

 

 『灘神影流“鰻締め”!!』

 「こ、これは……」

 

 まるでのたうつ鰻を捕まえるために編み出されたような締め技。

 全ての腕を巻き込んだ変形型。気道を圧し潰す勢いで締められるそれは、瞬く間にかけられた者の意識を奪い去ることだろう。

 

 「……」

 

 ただ……前提として、機械人に関節技は有効的な場合とそうでない場合がある。

 有効的なものは腕や脚を極め、そのままへし折ること。痛みの有無は不明だが、無力化はできている。

 そうでない場合とは――

 

 「ぬぅん!!」

 『えっ』

 

 首への絞め技である。

 機械人は呼吸というより吸気。吸気口が塞がれれば、それ相応にパフォーマンスを落とすだろう。

 だが、人間のように意識を失うのだろうか? 吸気口は首についているのか? そもそも機械人に呼吸とは必要なのか?

 その疑問はともかく、盤岳に締め技は効かなかった。

 

 『う あ あ あ あ』

 「はぁぁぁぁっ!!」

 

 マネモブを空中へ投げ飛ばした盤岳が変わる。

 怒髪天。まさにそう言い表すべき形態へと移行した。

 

 「ふんっ!!」

 

 盤岳の強烈な踏み込みが、地面を隆起させる。

 宙を舞うマネモブは、哀れにも巨岩同士に挟まれた。

 

 「傾山!!」

 『あ あ あ あ』

 

 マネモブは巨岩に呑み込まれ、消えて行った……

 

 「……」

 

 残心。

 それは、闘いが終わったことを示していた。

 すると、巨岩の跡から乾いた拍手が響く。

 

 『おめでとう! お前は立派な“殺人者”になった…“殺人”を目的とする灘神影流継承者にふさわしい男になった…』

 「マネモブ殿……」

 

 現れたのはほぼ無傷のマネモブだ。

 マネモブは巨岩に挟まれる寸前、迫りくる巨岩の側面を足場にして蹴ることで上へと登ったのだ。

 

 「マネモブ殿、礼を言う。しかし、我輩は償いをせねばならぬのだ」

 『…もう終わっとるわっ』

 「なに?」

 

 マネモブが指す方向には、寧謙の姿。

 直前に何があったのか、マネモブは知らない。しかし、彼の復讐心が薄れているとを見抜いたのだ。

 

 「マネモブ殿は……む?」

 

 盤岳がマネモブに顔を向けた時、すでにマネモブはいなかった。

 そして――止まっていた時が動き出すかのように、エーテリアスが湧く。

 

 「不思議なものだ……闘いで疲弊するどころか、むしろ活力が湧き出るッ」

 

 盤岳は奮起し、エーテリアス達を迎え撃つ。

 

 ――そこへちょうど、渦を何とかしたリンとダイアリン、そして瞬光がやってきたのである。

 鎧袖一触とばかりにエーテリアスを殲滅しすると、盤岳とダイアリンが向き合った。

 

 「満身創痍……というには元気みたいですね?」

 「そうでもない……」

 

 どかりと盤岳が座り込む。

 ダイアリンの目的は、パージユニット・ゼロである盤岳のコアである。少なくとも、盤岳はそう認識していた。

 

 「持って行け……我輩のコアだ」

 「それもいいですけど……ん???」

 

 実のところ、ダイアリンの目的はコアを手にすることから、盤岳をクランプスの黒枝に加入させることに変わったのだが……ここで、想定外の事態が起きた。

 

 「待ってください、それコアじゃなくないですか?」

 「む?」

 

 そう言われ、自身のコアに目を向ける。

 そこにあったのは、光り輝くコア……などではなく――

 

 「純金の玉じゃないですか? マネモブが持ってた」

 「な……なんだあっ」

 

 輝く金の玉。

 そう、いつのタイミングかは知らないが、コアとマネモブの持ち物が入れ替わっていたのだ。

 

 「マネモブは!? そこに残気があるってことはさっきまでいたんでしょう!?」

 「我輩と拳を交えた後、意味深に消えた……うむ、あれはまさに鍛え抜かれたその先にある技、幽玄の御業だ」

 「自分のコア抜かれてるのに平然としたらダメでしょうが、あーっ」

 

 コアは後に帰ってくるのだが、それはもう一つの戦いが終わった後の話である。

 

 

 

 

 

 瞬光に敗れた始まりの主は、四つにその身体? を分けた。

 一つは不明だが、それぞれが始まりの主が現れたこの鉱区、司教メヴォラクが光の司祭になった場所、そして――異ドリィ町だ。

 

 金玉がもたらす騒動は始まってすらいない。これから始まるのである。

 

 

 




これでも私は慎重派でね、ストーリーに金の玉をどう絡めるのか徹底的に研究させてもらったよ
その結果、無理があると分かった
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