頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム   作:もちもち物質@布団

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2日目昼:山羊の処刑場*3

「そ、そっか。うーん……別に、壊さなくてもいいんじゃないかと思うけれどな……」

「どうしても壊したいなら、その、素手じゃなくて、道具を使ったらいいのではないでしょうか……?」

「ドアを開けると言ったら斧だよね」

「……まあ、或いは、ハンマーとか。とにかく、バカ君が振り回せるもので、かつ、強度の高いものがあったなら、もしかしたら壊せない扉も壊せるかもね」

 全員、気が抜けた顔で、それでも真面目にアドバイスをくれた。全員、いい人である。いい人だから、やっぱり誰も死なせたくない。あと、あの扉には勝ちたい。バカは決意を新たにした!

 

「そっか!分かった!滅茶苦茶強いもので、振り回せるもの……探してみる!」

「とりあえず、金庫……あれは樺島君でも壊せなかったみたいだから頑丈なんだろうね。あれを使ってみたらいいんじゃないかな」

「いいのか!?金庫投げていいのか!?」

「うん。やっちゃえ」

 ……バカは『たまって結構、こういうとこあるよな!』とにこにこした。そして、折角なので鐘が鳴ったら、投石ならぬ投金庫によるドアの破壊を試みよう!と意気込むのであった!

 

 

 

「……まだ、時間は残ってるよね。少し、聞きたいことがあるんだけれど」

 さて。バカが『金庫投げる!』と意気込む中、たまが続けてそう、話題を出してきた。

「『いできょうた』さんの話」

「誰だ!?」

「木星さんのこと」

「あっ、そっかあ!そうだった!思い出した!」

 バカはバカなので『いできょうた』さんのことをすっかり忘れていたが、たまのおかげで思い出した。そうだった。どうやら木星さんの名前は『いできょうた』さんらしいのだった!

「ええと、その木星さんについては誰も何も知らない、っていう話だったじゃない?」

「うん。だからこそ、情報が欲しい」

 どうやらたまは、何か考えがあるらしい。具体的なところはよく分からないが……バカより賢いたまのことだ。何かすごい考えを持っているのだろう、とバカは居住まいを正した!

 

「樺島君。樺島君は、他の人達の個室も開けて回ってたんだよね?」

「あ、うん。海斗の部屋と、ミナの部屋と、土屋のおっさんの部屋、開けたけど……」

 バカは記憶を辿り、『えーと、今回開けたのはその3部屋だけだったなあ』と思い出した。過去には、ヒバナの部屋を開けたこともあるし、木星さんの部屋を開けたこともある。あと、初回でビーナスの部屋を開けた気がする。……だが、今回はそれらは開けていない!ヨシ!

「その間、誰も廊下で見ていない?」

「え、うん」

「物音も無かった?」

「うん……と思う、けれどなあ。俺が気づいてなかったとしても、海斗とか、ミナとか、土屋のおっさんとかが気づいてくれるだろうしなあ……うーん」

 バカ自身はちょっぴり自信が無いが、バカは他の3人を信頼している。特に、海斗は長い付き合いだし(一方的な付き合いだが!)何より賢い。バカが気づかなかったことでも気づいてくれるだろうなあ、と思うので、その海斗が何も知らないと言っていた以上、バカから出せる情報は本当に何も無いのだ。

「そっか。変だね」

「へ?」

 が、たまが急に不審がり始めたので、バカは『俺、なんかやっちゃったか!?』と慌てた。まあ、その心配は不要だったが。

「だって、木星さんは死んでる。まさか、あの仕掛けを全く解けずに脱出できなかったとも思えない」

 そう。たまは、バカではなく、木星さんのことを不審がっていたのである!

 

「えっ、俺、仕掛け、全然わかんなかったけど……」

「……1つのゲームにあなたみたいなおバカが2人も居たらお腹いっぱいでしょ。悪魔だってそのくらいは考えると思うけど」

「そっかぁ」

 しょっぱなから話の腰を折りにかかってしまったバカだったが、ビーナスの導きによってそっと納得させてもらった。バカはビーナスにももう頭が上がらない。

「まあ、悪魔のアナウンスでは、『まだ仕掛けを解けていない参加者がいる』っていう風に言ってたから。それを聞いた時は、樺島君が仕掛けを全て無視して筋肉で出てきちゃったからだと思ったけど……木星さんも、そうだったのかも」

「少なくとも、悪魔のアナウンスは録音だ、っていうことも分かったよね。あまりにも状況を見ていなさすぎる。流石に、樺島君が全て筋肉で突破してきてしまったんだから、それにくらいは言及しても良かったと思うよ」

 たまに続いて陽も話し始めて、いよいよ、木星さんのことが怪しくなってきた。

 そう。木星さんは、怪しいのである!

「……そう。そう考えると結局、悪魔のあのアナウンスは予め用意されたもので……つまり、『予め』分かっていたことなんだよ。木星さんが脱出できないことが、悪魔には分かっていた、っていうことになる。そして実際、木星さんは死んでいた。……となったら、考えちゃうよね」

 

「木星さんを殺すよう、悪魔に命じられた犯人が居る。……私は、そう思うよ」

 

 

 

 たまの言葉の意味が、バカにはよく分からなかった。

 だが、木星さんが、『死んだ』のではなく『殺された』可能性があることは、分かった。

「えっ、えっ、木星さん……殺されちゃった、のか?」

「その可能性が高いと思うよ。まあ……最初から死んでた、という可能性もあるけど」

「悪魔のデスゲーム、だからね。それも考える余地はあるんじゃないかな」

 たまと陽の賢いカップルが頷き合うのを見て、バカは『ほえ……』とびっくりした。殺されただけじゃなくて、『元々死んでた』説まで出てきては、バカにはもうお手上げである。まあ、バカは元々、オールウェイズハンズアップ状態ではあるが……。

「……けれど、殺しだとすると、ドアの鍵を外側から開けられたか、完全な遠隔操作で殺せる異能があるのか、どちらかということになるよね」

「その2択だったら、私は異能だと思うけれど。少なくとも、猛スピードで部屋のドアを破って海斗の部屋に行ったバカ君に見つからなかったわけだし、隠れて何かできた、ってことよね?」

 確かに、バカが恐らく最速で部屋を出ている以上、その後から誰かが動くのは難しいかもしれない。だって、海斗の部屋のドアも破ってしまったので、ある種、廊下の様子は海斗には丸聞こえだったのだ!

 バカはともかく、海斗の耳と目を潜り抜けるには……バカが海斗の部屋のドアを破って『ぎゃああああ!』とやっている最中に何かやった、というくらいしか、バカには思いつかない。

 

 ……すると。

「……壁を破って何かした、ということは考えられないかな?」

「やだ、陽。そんな、バカ君じゃあないんだし」

「いや、まあ、そうなんだけどね……そうした異能が無いとも言えないからなあ」

 陽が、『壁を破った説』を出してきた!バカはこれにはびっくりである!何せ、壁を破るだけならバカにもやったことがあるのだ!

「……けれど、それだと隣室の人が怪しいということになる。それでいて、ええと、土屋さんの部屋には、樺島君が突入しているんだよね?」

「うん!」

 バカが元気に答えると、陽は苦笑して……それから、表情を曇らせた。

「となると、土星ではない方の反対隣……火星の部屋のヒバナが、木星の部屋に何かできたかもしれない、っていうことになる」

 

「いや、ヒバナは違うよぉ」

 バカはすぐさま、のんびりと反論した。

「どうして、そう言いきれるの?」

「ええー……」

 が、バカはたまに問われて、どう反論すればいいのか分からない!

 ……そう。バカは前回、ヒバナの部屋に突入している。だから、バカにはヒバナが犯人ではないことが分かる。

 しかし、今回のバカは、残念ながらヒバナの部屋に突入していない!よって、ヒバナが犯人ではないことを証言することができないのである!

 バカ、困った!

 

「ヒバナは……恩人の為に、願いを叶えたいって言ってたよね。ついでに、かつて人を殺したことがある、とも」

 更に、陽はヒバナを疑うようなことを言い始めた。だが、これにはバカも反論できる!

「殺しちゃったのって、昔のことだろ?今の話じゃないって……ん!?今の話じゃないよな!?」

「あ、うん。今の話じゃなかったよ」

「だよなあ!ありがと、陽!あーよかった!俺、また話を変に勘違いしてんのかと思った!」

 反論し始めてすぐ不安になる辺りがバカのバカたるところなのだが、まあ、バカは陽の助けもあり、一応、軌道修正できた。バカ、助かった!

「人を……。そっか。なら、ヒバナにとっては、もう1人殺すのも、抵抗が少ないかもしれない」

 だが、たまがそう言って考え込んでしまったので、バカは困る!バカ、助かってなかった!

「ええー……そういうのは本人が居るところで話そうぜー。よくないよぉ、こういうのぉ……」

 そうしてバカがおろおろ、としていると……。

「そう、ですね。その、木星さんの話については、憶測ばかりになりますから……隣のチームの皆さんのご意見も、伺いたいですし。ここでは、ここまでにしておきませんか?」

 ミナが、そう言って困ったような笑みを浮かべていた。それに、陽とたまは『それもそうだね』と頷いてくれた。やっぱり彼らは賢いし、優しいのだ!

 

 

 

「じゃ、何の話する!?好きなアイスの話するか!?俺、ミニストップのソフトクリーム!特に、前やってたチョコレートのやつ!滅茶苦茶美味かった!」

 ということで、バカは早速、別の話……アイスの話を始めた!

「バカ君。流石にもうちょっと他に話すことあるでしょ……」

「私、雪見大福」

 ビーナスは止めに入りかけたが、たまがちょっぴりにこにこしながらそう発言してしまった!

「あ、じゃあ、俺はパピコ」

「えっ、えっ、あっ、私はピノです!」

「そっかぁ!美味いよなあ!ビーナスは!?」

 ……そうして、バカによって生み出され、たまによって固定され、陽とミナが育ててしまったアイスの流れは、無邪気にビーナスへと襲い掛かり……。

「……メロンの容器に入ってるやつ!」

 ビーナスも、流されたのだった!どんぶらこ!どんぶらこ!

 

「ああーアレ美味いよなあ」

「焼酎にぶち込むのもいいのよ、あれ」

「ええええええ!?そういうことしていいのか!?」

「いいのよ。大人の特権って奴よ」

 バカは、開き直って胸を張るビーナスに『すげえ、すげえ、何かよく分かんねえけどかっこいい!』と尊敬の眼差しを注ぎながら、ぱちぱちと拍手を送る。

 ……そうしてバカ達の話は、どんどんと平和で意味があんまりない方へと流れていくのだった!どんぶらこ!どんぶらこ!

 

 

 

 そうして昼の終わりの鐘が鳴る。

 リンゴン、リンゴン、と聞こえる中、まずはバカが警戒してすすんすんすすん、とガスの探知を行い、安全が確認できたため、全員で外に出た。

「おお!そちらも無事か!」

「わあー!やったー!皆、無事だぁあー!」

 ……そう!今回も、全員無事!何故か分からないが、とりあえず2日目の夜まで、全員で生き延びたのである!まあ、木星さんは死んでいるが!

 




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