頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム   作:もちもち物質@布団

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1日目夜:大広間*2

「成程。この金庫の正しい使い方が分かったね」

「これは確かに……いや、でも、想定はされていない気がするなあ。ははは……」

 たまと陽が神妙な顔で頷き合う横で、ミナはバカの金庫に人形を収め、バカはそれを見てにこにこしていた。

 金庫のロックナンバーは変更できそうだったので、ミナが独自に変更した。これでそうそう、危険なことは無いだろう。多分。

「ありがとうございます、樺島さん!」

「うん!役に立ててよかった!」

 バカは、自分が役に立ったことに大いに気分を良くして、にこにこ満面の笑みだ。ミナもにこにこしてくれているので、余計ににこにこしてしまう。

「えーと……それじゃあ、そろそろいいかな」

 だが、いつまでもにこにこはしていられない。大事な話があるからだ。

「次のチーム分けを、考えたいんだけれど……」

 ……そう。

 チームを分け直さなければならない。何故ならば、陽とたまが、一緒のチームの方がよさそうなので!

 

 

 

「……つまり、陽かたまさんか、どちらかがどちらかのチームに移動して、代わりに誰かをトレードする……という具合か」

「まあ、そうなるかな。……その、申し訳ないのだけれど……」

「いやいや、構わないよ。やはり、安心できる人同士で組んでいた方がいいだろうから」

 土屋が笑えば、陽は申し訳なさそうに、『ありがとう』と微笑んだ。バカはそれを見て『やっぱりそうだよな!陽とたまは一緒がいいよな!』とにこにこ頷いた。

 

 そうしてチーム分けの相談が始まった。

 のだが……。

「さて……まずは、陽がこちらのチームに来ることを想定してみるか。となると移動できるのは、私か、海斗か、ビーナスだが……」

「私は嫌よ?だって向こうにはヒバナがいるじゃない?」

「……と、なるんだったな。やれやれ……」

 早速、難航している。ビーナスとヒバナが未だに頑張って演技を続けているからだ!

 バカは、『もう仲良しなのバラしちまえばいいのにぃ……』と思うのだが、それを言う訳にもいかない。黙ってビーナスとヒバナの言い争いを見守ることにした。

「あー、こらこら、やめなさい。分かった。分かったから」

 皆が見守っていたところ、土屋がヒバナとビーナスを止めた。半分呆れながらもちゃんと丁寧に2人を止めているところを見ると、やはり土屋はいい奴である。

「……あー、まあ、となると、たまさんをそちらのチームにやって、代わりにそちらのチームから1人、こっちに来てもらう、ということになる、だろうか」

 そうして土屋が第二案を出してきたので、今度はそっちを検討することになる。バカは『ええと、あれがこれでこっちがこうで……』と一生懸命に考えた!

「その場合は……ええと、その、天城さん、に移動して頂けると、ありがたいのですが……」

 が、バカが考えるより先に、ミナが結論を出していた。

 指名された天城は、気難しげな顔でミナを見て、それからため息を吐く。

「……ミナさんはそのバカ島と組んでいるのだったか」

 そう。たまをこちらに貰うなら、人数調整でこちらから1人、出さなければならない。

 だが、ヒバナを出すとビーナスと向こうでかち合う。バカとミナは2人セットでいたい。となると……天城を送り出すしかないのである!

「ええ。なので、その……」

「分かった。それで構わん」

 そして天城はため息を吐きつつ、了承してくれた。バカは、『やっぱりこの爺さん、案外いい人なんじゃないかなあ』とそわそわした。

 いつかちゃんと、天城とも仲良しになりたいものである。

 

「さて。これで話はついたか。ええと……」

「ちょ、ちょっと!待ってよ!」

 そうして土屋が安堵の表情を浮かべたところで、ビーナスがまた、騒ぎ始めた。

「そうしたら私、女1人になっちゃわない!?」

「まあ、なるが……」

 土屋がちょっと困った顔になった。バカは『やっぱりヒバナとビーナス、もう仲良しなの言っちまえよぉ……』と思った!

「嫌よ!だったら私とヒバナも交換して!それならいいでしょ?」

「……なら、そういうことにするか?」

 土屋は苦笑交じりにそう言って、皆を見回す。ヒバナやビーナスは勿論、他の皆からも異論は出なかったので、そのまま決定である。

 

 

 

「じゃあ、俺とたまとビーナスとミナさんと樺島君のチームと、土屋さんと海斗とヒバナと天城さんのチーム、っていうことになるかな」

 さて。こうしてチーム編成が終わった。

 色々あったが、またちゃんと4人と5人に分かれたことになる。

「分かった!よろしくな、たま!ビーナス!」

「よろしく」

「よろしくね、バカ君」

 ……そして、今度はミナが、ヒバナではなくビーナスと一緒だ。

 ミナとしては、ヒバナの話はある程度聞けたところなので、ビーナスと入れ替わってくれるのは丁度良かった、というところだろう。

 後は、陽とたまが一緒のチームになれたので、バカはにこにこしている。仲良しさんは一緒のチームに居た方がいいのだ!……そうなると、バカは海斗とも一緒のチームがよかったなあ、と思うのだが。まあ、それは仕方がない。それはバカにも分かるので、文句は言わないのだ。

 

「さて、まだ少し時間があるな……」

 そうしてチームの仲間と挨拶していたところ、土屋が時計を見ながらそう言った。

 ……そして。

「一応、聞いておきたいのだが……ここに居る皆は、『いできょうた』さんについて、心当たりはないか?」

 そう。『いできょうた』さん。それは、たまが双子の乙女の部屋で聞いてきた、『木星さん』のお名前である。

 顔も知らない、喋ったこともない相手ではあるが、今回、名前だけは分かった。そして、このゲームは陽とたま、ヒバナとビーナスのように、元々の知り合いが一緒になってゲームに参加していることもあるようだ。

 だからもしかしたら……誰か、『いできょうた』さんのことを知っているかもしれない!

 

 が。

「……えーと、誰も知らない、のかな」

 誰も手を挙げない!声も上げない!ただ、お互いにお互いを見て、様子を窺っているばかりである!

「ふむ……なら、我々の誰にとっても他人、ということになるだろうか」

 少し当てが外れた、というように土屋が頭を掻いた。

 バカは一応、バカな頭脳をフル動員して『いできょうた、いできょうた……』と記憶を探してみるのだが、その名前に心当たりは一切無い。似ているところだと職場のご近所に『寺井キヨ子』さんというお婆ちゃんはお住まいだが、多分関係ない。あと、『出井将太』君という小学生も居るが、まあ関係ないだろう。

 尚、出井将太君はバカが鉄パイプで作るプードルを気に入ってくれて、そのお礼にセミの抜け殻をくれたことがある。貰った抜け殻は、バカの宝物だ!

 

「まあ、知っていても隠す可能性が高いだろうがな。何せ、その『いできょうた』さんは死んでいる」

 バカがセミの抜け殻に思いを馳せかけたところで、海斗の言葉がバカの思考を遮った。おかえり、バカの思考。

「もし『いできょうた』さんが誰かに殺されたのだとしたら……元々知り合いだった、などと言えば、殺人犯に狙われることになりかねない。そして『いできょうた』さんが単なる事故死や時間切れによる死を遂げたのだとしても……わざわざ明かすメリットは薄いな」

 海斗は難しい顔でそう言って、全員の顔を見回す。

「……殺された、か」

 そんな中、天城がじろり、と海斗を睨みつけた。

「もし、彼を殺した者が居るならば、間違いなくお前達だろうな」

 ……どうやら、今回もバカと海斗は天城に木星さん殺しを疑われるようである!

 

 

 

 ということで、バカと海斗、そしてミナが参戦してくれて、なんとか天城に弁明していった。

『本当に木星さんを殺すつもりなら、壁をぶち抜いて天城を殺した方が早い』『ドアをぶち破っている時点でバカの犯行が疑われるのだからドアをぶち破るのはバカすぎる。海斗がついていながらそうなるわけがない』『このバカ単品で証拠を残さず殺しができるほどこいつは頭が良くない』というような、半分ぐらいバカの悪口であったが、天城の説得には役立った。

 前回同様、天城は一応、矛を収めてくれたのでひとまずほっとして……それからバカは、改めて考える。

 木星さん……『いできょうた』さんは、どんな人なんだろうなあ、と。

 

 

 

 さて。

 そうして一通り『いできょうたさん、どんな人なんだろうなあ』と皆が首を傾げたところで、各々が雑談をするような状態になった。

 陽とたまが話しているし、土屋はヒバナと話している。……土屋もまた、ミナと同じように、ヒバナとビーナスについて知りたい立場であるはずだ。色々と話して、彼らの人となりを見定めたり、彼らを助ける手段を考えたりしているのだろう。

 ……そして、バカは。

「あの、樺島さん。次もまた、よろしくお願いします」

 ミナに話しかけられていた。バカはにこにこしながら、『こちらこそよろしく!』と元気に挨拶する。挨拶が元気なのは良いことだ。キューティーラブリーエンジェル建設でも、挨拶は大きければ大きいほど良いとされていた。が、皆で競い合っていたら窓ガラスがバンバン割れまくって大変だったので、今は『挨拶は程よい声で!』になった。

「それで、あの、樺島さん……」

 ミナは、もじもじ、としながら樺島に『内緒話をしたいです!』というように身振りしてみせた。なのでバカはひょい、と屈んで、バカの耳にミナが届くくらいにまで縮んでみた。

 ミナは少し背伸びがちになりながら、バカの耳元にそっと口を寄せて、ひそひそと囁く。

「樺島さんは、その、どの部屋にどんなゲームがあるか、ご存じ……なんですよね?」

「え?うん……うん。多分。ちょっとは分かる……と思う!」

 バカは答えてから、『どれがどこだっけ!』と思い出し始める。印象が強かった部屋の位置は、なんとなく覚えているので、それを元にすれば、なんとか色々割り出せる、だろうか。

「私、その、ビーナスさんとお話しする時間が欲しいのですが……そういうことに向いていそうな、安全にゲームが終わるような部屋はありませんか?」

 ……ミナからの注文を受けて、バカは必死に考える。

 考えて、考えて……ピン、ときた。

「ある!」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ!絶対に誰も怪我させずに、すぐにクリアしてやるからな!」

 バカは満面の笑みをミナに向けた。

 バカには自信がある。そしてそれ以上に……決意が、あるのだ。

 

 

 

 そうしている内に、リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴る。昼が来た。ゲームの時間だ。

「じゃ、そっちの皆も頑張れよ!」

「ああ。皆またここで、無事に落ち合おう」

 土屋達のチームがドアに入っていったのを見送って、バカ達もドアの中へ入っていく。

 ……そして。

 

「……ヤギの人形、と、銃……?」

「この部屋、何のゲームなんだろうね。嫌な予感がするけれど……」

 バカ達は、ヤギの人形と銃の部屋にやってきた。

 ここは、バカにとって怖い部屋だ。

 ここで土屋が死んでしまったし、この部屋が原因で、ビーナスとミナが死んでしまった。

 更には、バカが一度、大失敗をしてしまった部屋だし……その後、ビーナスが自殺してしまった部屋でもある。

 だが、それもこれまでだ。

 ……もう、この部屋は怖くない。

 この部屋はこれからバカにとって、『誰かが死んでしまう怖い部屋』ではなくて……『ミナとビーナスが話した思い出の部屋』になるのだ。

 

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