頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム   作:もちもち物質@布団

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0日目昼:押しかけ先の個室(3つ目)

 そうして。諸々の説明の後。

「……まあ、このバカが色々と先走ったせいで色々とおかしなことになったが、一度僕らと手を組まないか?という誘いだ」

 海斗がそう言って、ヒバナはいよいよ、ぽかん、とするのであった。

 

 

 

 海斗が提案したことで、バカも慌てて喋ろうとする。

 確か、ヒバナを怖がらせなければならないのだった!脅して、それで、ビーナスとヒバナが死なないように協力を、と呼びかけるのだったか。

 ……だが、バカが『やべえ!なんて言えばいいのかわかんねえ!』と困っている間に、勝手に話が進んだ。

「……成程な。確かにそのバカはどう見てもやべえ力の持ち主だ。敵に回すのはめんどくせえな……」

 そうしてヒバナは諸々を理解してくれたらしい。ちら、とバカを見て、何とも難しい顔をしている。

「うん!俺、バカ!」

「バカの部分じゃなくて力の部分に反応しろ」

 一方のバカはヒバナに満面の笑みを向けている。どうやらヒバナは、脅さなくても協力してくれそうなのだ!

「それで、どうする?協力してくれるなら、こちらも協力できるだろう。早めに手を組んでおいた方がやりやすいことも多いはずだ」

 海斗がそう言うと、ヒバナはまた少し考え……。

「だが……そうだな、先に行ってろ」

 そう、言った。

 

「えー?皆で一緒に行くんじゃないのか?」

「ああ。俺はもうちょっと時間を置いてから大広間に行く。3人揃って行ったら怪しまれんだろ」

 ヒバナはそう言って、『出てけ』とばかり、壊れたドアの外を示した。

「……まあ、そういうことなら先に行っていよう。いい返事を期待している」

 そうして海斗はさっさとヒバナの部屋を出ていき、バカもすぐにその後を追いかけたのだった。

 

 

 

 バカと海斗が大広間に到着した時、そこには、たまと陽、そしてミナが居た。

 ヒバナはバカと海斗が足止めしてしまったようなものなのでまだ到着していなくて当然だが、ビーナスもまだ、となると……。

「……もしかすると、ヒバナとビーナスが今、打ち合わせ中かもしれないな」

 海斗はそう呟いて、ふむ、と唸る。バカは『そういうのもあるのか!』と感心しつつ……さて。

「あれぇ……居ないなあ」

 バカは、きょろ、きょろ、と大広間を見回して、首を傾げる。

 というのも、木星さんが居ないのである。

 

「居ない?……この中には居ないのか」

「うん。太陽の陽と、地球のたま。あと、水星のミナだから……木星さん、いねえよぉ……」

 バカは心配しつつ、きょろ、きょろ、とやはり大広間を見回す。だが、木星さんが隠れている気配も無い。ついでにバカはスンスンと匂いを嗅いでみたのだが、よく分からなかった。バカはしょんぼりした。

「ふむ……妙だな。ということは、まだあの通路に残っている、ということか?或いは、誰よりも先に来て、どこかのドアの先へ……?」

 海斗は考えているようなのだが、答えが出る気配は無い。

 木星さんは、どこへ消えてしまったのだろうか……。

 

 

 

 そんな折。

「ねえ、ちょっといい?」

 たまが、バカに話しかけてきた。

「そこのお兄さん、首輪が……ええと、ちょっと変わってるね」

 たまが示す先には、バカの首輪……つまり、千切られてから鎖でぐりぐり巻いて失くさないようになっているそれがある。

「ああ、うん!とりあえず外したんだけどさあ、なくすといけないから、とりあえず巻いてある!」

 バカは『すごいだろ!賢いだろ!』とばかりに胸を張るのだが、たまは『えええ……?』と怪訝な顔をするばかりである。

「え、ええと、外した、っていうのは……?」

「うん!千切った!」

「千切っ……!?」

 バカがジェスチャーして『こう千切る!』とやってみたのだが、陽もたまも絶句してしまうばかりだ。バカとしては、『ああ、今回の陽とたまはまだ俺のこと知らないもんなあ……』と、ちょっぴり悲しくなった。

 

「……ということは、もしかして君、ここのドアも破れたり、するのかな。一通り調べてみたんだけれど、開かなくて」

 だが、悲しんでばかりも居られない。陽が『これ、これ』と言いながら、ゲームのドアを示すので……バカは、ちら、と海斗を見てから、特に反対されなかったので……。

「よーし!俺の渾身のタックルいくぞー!」

 会社でも重宝されている樺島タックルを、ゲームの部屋のドアに向かって、繰り出したのだった!

 

 バカは助走をつけるため、大広間の端っこへ移動した。そして、真っ直ぐにドアを見つめる。

 ちゃんと、角度をなんとなく手で測って、ドアの高さ、横幅……そんなところもざっと測る。キューティーラブリーエンジェル建設でやっている通りのことを一通りやってから、いよいよ、バカは床を蹴る。

 最初の一歩の踏み込みで、一気に景色が後方へ流れていく。

 二歩目で、更に加速していく。

 空間を歪めんとするほどのスピードで、バカは一気にドアへと迫る。

 その姿はまるで、弾丸のようだ。一直線に、迷いなく、『必ず目標物を破壊する』という確固たる意思を持って突き進んだバカは……いよいよ、ドアに向かって、肩からぶつかっていき……。

 

 ごいん。

 

 ……とんでもない音と共に、バカは弾き飛ばされていたのである!

 

 

 

 ずべしゃ、と、バカは大広間の絨毯敷きの床の上に落ちる。

 そんなバカを恐々と見ていた陽とたまと海斗、そして、遠巻きに見ていて『えええ……!?』とびっくりしているミナ。彼らが見守る中、バカは、もそ、と起き上がった。

「え……?俺のタックルが、負けた……?」

 ……そう。

 これは、このゲーム始まって以来、2度目の敗北。

 個室の金庫に引き続き、また現れてしまった、『バカの素手では破壊不可能なオブジェクト』なのだった。

 

 

 

「えええー!?これ、壊れねえ!」

 なにこれ!なにこれ!とバカは騒ぐ。

 ついでにもう二度、三度、とタックルを繰り返してみるが、やはりドアはびくともしない。

 まさか自分のタックルが効かない相手がいるなんて。職場でも皆に褒められる自慢のタックルなのに。バカはショックを受けた。

「お、おい、落ち着けバカ」

「うん……落ち着く……」

 そうして、バカはしゅんとして部屋の隅っこに体育座りすることになってしまった。

 そんなバカを、海斗が一生懸命に慰めてくれる。

「ほ、ほら。お前が壊せるようなら、このゲームは根底から崩壊してしまうんだから、元々壊せるはずがなかったんだ。これでよかったんだぞ。むしろ僕は安心した」

「うん……」

 海斗が一生懸命に励ましてくれているのだが、それでもバカはしょんぼりしている。

 ……それだけ、ショックだったのだ。

 

 バカは、バカである。

 パワーこそあれども、ものすごくバカである。

 だが、パワーはある。……だから、解決できることも、それなりにある。そう、思っていた。

 バカはバカな分、パワーで皆の役に立とうと思ったのだ。バカにはそれしかできないのだから。

 だが、そんなバカのパワーが通用しないものが、金庫に、ゲームの部屋のドアに……と、こんなにもあるとは!

『井の中の蛙』ってやつなのかなあ、と、バカはまた、しょんぼりする。

 自分が自信を持っていたパワーだけに、それが通用しないものを見つけてしまって、ただただ、バカはショックであった。

 

 

 

 ……そうしてバカがしょんぼりしている間に、土屋がやってきた。

 土屋は、おろおろするミナと海斗、そしてしょんぼりするバカと、『首輪を引き千切れてもドアは壊せないらしい』と談義中のたまと陽とを見て、『これは一体どういう状況だ……?』と首を傾げていた。

 だが、その内土屋はミナから事情を聞き始めたようで、それから『そ、そうか……なんだかとんでもない人がいるらしいな……』とバカを見て呟いた。

 

 その間もずっとしょんぼりしていたバカであったが、しょんぼりしてばかりも居られない。

 ……と、いうのも。

「よお。結構人が居るんだなァ?」

 ヒバナが、やって来たからである!

 

 

 

 最初、バカはヒバナに気付かなかった。しょんぼりしていたからである。

 が、ヒバナの方から近づいてきて、『おい、バカ』と声を掛けてくれたのでようやく気付けた。

 バカは、ぱっ、と顔を上げて、それから、ぱあ、と表情を輝かせた。ヒバナから話しかけてくれるとは!

「……あー、その、何だ。お前らの案に乗ることにしたんだよ」

 そして、ヒバナはひそひそ、とバカと海斗に言う。

 ……なんと!ヒバナは、バカと海斗と手を組んでくれるらしい!バカは一気に、元気になった!

「本当か!?」

「お、おい!当然、他の連中には言うなよ?」

 バカは元気に表情を輝かせつつ、ヒバナの言葉に元気に頷いた。このバカは隠し事がものすごくヘタクソなバカである。否、一応、できないことはないのだが、特に喜びの感情を隠しておくのはいっとうヘタクソなのである。そういうバカなのである。

「だが……俺達が既に会ってる、ってことについては、隠さなくていい」

「ほう。それは何故だ?」

 続いてヒバナが出した条件に、海斗も首を傾げる。……すると。

「は?フツーに考えりゃ分かるだろーが」

 ヒバナは呆れたようにそう言って……そっ、とバカから目を逸らした。

「……ドア、ぶち破られてんだぞ?気づくだろ、おい」

「……うん」

「……そうだな」

 ……そういえば、そうなのである。

 バカはもちろん、海斗もちょっと忘れかけていたが……ドアがぶち破られていたら、結構目立つのであった!

 

「そ、そういえばそうだったな……。ということは……あー、そちらの男性。少しいいだろうか?」

「うん。何かな?」

 それから海斗は土屋へ近づいていって、気まずげに尋ねた。

「個室からこちらへ来るまでの間に、破られたドアを見たか?」

「ん?ああ……見たぞ。うん、一応確認してから来たからな……3枚ほど、ドアが破られていたか」

 土屋の答えを聞いて、『やっぱり!』と海斗は表情を引き攣らせた。

「……何か、あのドアの事情を知っているのかな?」

「ああ……何を隠そう、あのドアを破ったのは……」

 訝し気な土屋に、海斗は神妙な面持ちで向かうと……すい、と、バカを指差した。

「……あのバカだ」

 

「あ、あのドアを破ったのか!?そ、それはすごいな……」

 土屋は慄きつつ、バカを褒めてくれた。なのでバカは、ちょっぴり元気を取り戻す。

 いや、まだだ。まだ元気を取り戻してはいけない。バカはちょっと喜んだ自分を恥じつつ、またうじうじ、と背中を丸める。

「でも俺、こっちのドアは破れなかったし……」

「試したのか!?す、すごいな……!」

 また褒められたので、今度こそバカは元気を出してしまう。

 元気を出してしまってから、『俺、元気出していいのかなあ』と心配になるが……。

「ちなみにこのバカの異能は筋肉だ。超筋力が出る」

「き、筋肉!?そ、そんな異能があるのか……!」

「あのバカはそれで自分の首輪を引き千切って来たらしい」

「首輪を!?これのことか!?鉄の輪だろうに、よく引き千切れたものだなぁ……!」

 ……土屋は、やたらとバカを褒めてくれる。

 そうだ。バカは、ゲームの部屋のドアを破ることはできないようだし、金庫も壊せなかったが……それでも、何もできないわけでは、ないのだ!

「なあ!俺、樺島剛!パワー担当だ!パワーでもできないこと、あるみたいだけど……でも、俺、一生懸命働くから!よろしくな!」

「お、おお、そうか……よろしく頼むよ」

 元気を取り戻したバカは、笑顔で土屋と握手した。

 ……そうだ!バカは、頑張るのだ!

 そうして、よい未来を掴み取るのだ!

「うん!俺、筋肉はちょっぴり自信失くしかけたけど……でも、根性と粘り強さとバカさにも、自信あっから!」

 バカはそう宣言して、いよいよ元気になったのであった!バカ、復活!

 

 

 

 それから少しして、ビーナスがやってきた。更に、天城もやってきて……そわ、そわ、としながらバカは待っていたのだが、結局、木星さんが来ないまま、アナウンスが始まる。

『さて……集まれる者は全員集まったようだな』

 ……そうして、バカはまた、このオープニングを繰り返すのであった!

 

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