第18回より、喜多川歌麿として登場した染谷将太さん。演じるうえで意識していることや歌麿への思い、印象に残っているシーンについてなどを伺いました。
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3つの役名を持つ珍しい役どころ
オファーをいただいてから、完成していく台本を毎回楽しく読んでいました。でも、歌麿の名はどこにも無く、なかなか出てこないなあと思っていたところ、唐丸がのちの歌麿だと知り、とてもドラマチックだなと思いました。歌麿役の僕は第18回からの出演になりますが、初めは捨吉と名乗っています。その後すぐ蔦重に歌麿と名付けてもらうので、結果、唐丸、捨吉、歌麿という3つの役名を持つ、ちょっと変わった役どころです(笑)。少し裏話をお話ししますと、撮影現場で用意していただく衣装や小道具には役名が書かれているのですが、クランクイン後の数日間は「捨吉」で、その後すぐ「歌麿」に変わっていました。ちなみに幼いころに使っていた矢立(携帯用筆記具)だけは「唐丸」のままです。
絵からイメージした歌麿の人物像
「べらぼう」は絵師たちのお話でもあるので、見てくださっている皆さんは、喜多川歌麿が登場するということをおそらく分かっていたと思います。でも実は唐丸だったことや、想像をかきたてられる空白の時間があるところは、とてもおもしろい演出ですよね。反面、楽しみにしてくださっていた方の期待を裏切りはしないか、僕で大丈夫なのかと、プレッシャーを感じることもありました。
歌麿の存在はもちろん知っていましたし、美術館で絵を見たこともありますが、僕は浮世絵に詳しいわけではありません。それでも何か感覚的に、歌麿の絵にはほかとは違う印象を持っていました。特に、美人画の女性は、はつらつとした美しさだけでなく、どこかミステリアス。そこに、自身が持つ色気もにじみ出ている気がして、こういった不思議な絵を描く歌麿っていったいどういう人なのだろうと興味がかきたてられます。記録が残っていないため、その人物像まではわからず、あれこれイメージするしかないのですが、史実を大切にしつつ、想像をふくらませながら演じていきたいと思っています。
絵師役は絵を描くシーンで実際に筆を扱うので、撮影前から練習を続けています。筆に慣れていないため、均一に線を引くだけでも一苦労ですが、難しいのが逆に楽しいんですよね。もともと日本画や浮世絵には少し興味があったこともあり、練習を重ねるにつれて、より好きになりました。家で模写していても、すごく気分がいいです。これは自分の中で新しい発見でした。
無邪気で純粋ゆえの不器用さ
幼少期の唐丸は無邪気さが印象的でしたよね。もちろん年齢的に幼かったからというのもありますが、蔦重とはまた違うベクトルの無邪気さは、大人になったときの不器用さにもつながると僕は感じました。この邪気の無い雰囲気はそのまま引き継ぐべきだと思い、常に意識しながら演じるようにしています。
また、もともと僕が持っていた絵師・喜多川歌麿に対するイメージもお芝居に影響していると思います。「べらぼう」の歌麿は比較的わかりやすい人物として描かれていますが、時々ふとした瞬間、何を考えているのかはっきりしない、謎めいたところがあるんですよね。そういった場面では、見る人によってさまざまな捉え方ができるよう、本音か、そうでないのか、どちらにもとれるようなお芝居を心掛けています。
唐丸が蔦重と再会したシーンがまさにそれで、彼は“自分は唐丸ではない”と言い、関わることを頑なに拒否しますが、そこには、現状を知られたくない、蔦重に迷惑をかけたくないという思いもあります。だからこそ、“自分なんて死んだほうがいい”という言葉にも、本当は救ってほしいという気持ちが見え隠れする。ここもあえて曖昧に見えるようにしましたが、本音を隠し切れず、無意識に出てしまっているあたりが、唐丸の人間らしさであり、魅力だと思います。
孤独な唐丸を救った蔦重の笑顔
唐丸は蔦重の元を離れてからも、一人孤独な時間を過ごしてきました。でもその間も絵は描き続けていて、絵こそが自分を救ってくれる存在であることに改めて気づかされていました。同時に、蔦重の存在の大きさにも気づいていました。蔦重と過ごした幼い日々は素直に楽しかったと思うんです。不器用さもあって、実際、唐丸がどう思っているのかつかみきれない部分もあるのですが、離れていても変わらない2人の関係性がわかるシーンには、演じながらも胸にグッとくるものがありました。特に印象に残っているのは、「俺がお前を助ける」と、蔦重が唐丸を連れ出すシーン(第18回)です。本当について行っていいのか、どうすべきなのか迷っている唐丸は、初め、不安な表情を浮かべています。でも隣には笑顔の蔦重がいて、唐丸を心情的にも実際にも引っ張ってくれるのです。かつて幼い唐丸を孤独から救い出した第1回を彷彿(ほうふつ)とさせる本当にすてきなシーンです。
活気ある現場と個性豊かな共演者
台本を読んでいていつも思うのは、登場人物が全員キラキラしていて、生きる力を感じることです。初めてスタジオで吉原の大通りのセットを見たとき、頭の中に町人たちの生活音が聞こえてきて、江戸の活気を思わせる明るい空気が流れているのを感じました。そんな撮影現場に入るだけで、毎回すごく元気が出ますし、蔦重として走り続けている(横浜)流星くんの姿を見ていても、引っ張られるような強い引力を感じて、力が湧いてきます。
絵師の皆さんとのシーンもとても楽しいです。とにかく、お一人お一人のキャラが濃い!(笑) 僕は、お茶やお酒を出しながら、一歩引いたところで見ていることが多いので、皆さんのお芝居を特等席で見ることができて幸せです。演じている方々の魅力が役にそのまま乗っかっているような感じがおもしろいし、あちこちでアドリブが始まるので、毎回笑いをこらえるのに必死なんですよ。それぞれのスピンオフを見てみたいくらい大好きです。絵師が集まるシーンはぜひ隅々までチェックしてみてください。
いち視聴者としても楽しみな今後の展開
「べらぼう」は江戸時代中期のお話ですが、時代劇ということをあまり意識せずに、すっと入っていける世界観だと思います。ここまで長い時間をかけて一人一人の人物を掘り下げ、背景にある時代の流れや文化を丁寧に追うことは大河ドラマにしかできないことですので、そこに自分も携わることができるのはうれしいですし、勉強にもなります。
これまでの物語を振り返っても、史実にある出来事が表面的でなくきちんと描かれてきているので、今後の展開も楽しみなところですが、個人的には、弾圧をどう取り上げるのかに注目しています。やはり、新しい表現、新しい文化が生まれるときには反対がつきもので、規制が多少なりともかかるのは、いつの時代にもあることです。活気づく出版業界に対して幕府がどのように統制、弾圧していくのか、そこで繰り広げられる数々のドラマも含めて楽しみにしていただければと思います。
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