松前家当主・松前道廣の弟で江戸家老を務める廣年。幼少のころから画(え)を学び、優れた才能を発揮した廣年を演じるひょうろくさんに、大河ドラマ初出演の感想、収録の裏側などについて伺いました。
☞【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」見逃し配信はNHKプラスで】※別タブで開きます
ドッキリを疑った“初大河”
マネージャーさんから「大河ドラマのオファーが来たよ!」という連絡がきたときは、え?大河?大河ってあの大河ですかー⁉って、びっくりしました。でも、すごい方ばかりが出演されているので、「一瞬だけでも出られたらうれしいです」と答えたら、「いや、セリフがちゃんとあるよ」と言われて、え?って、またまたびっくり。さらに「ものすごく良い役をいただけたよ」と言われて、えっえっえーっ⁉って、驚きがどんどん増えていく感じでした。
僕の田舎(鹿児島県出身)では大河ドラマを見ている人が本当に多くて、「あの『べらぼう』に出るのか」と大騒ぎ。親戚と友達のおばちゃんは、1か月ぐらい前から、「今週もいなかったね。いつ出るの?」と毎週聞いてくるほどで、昨日も、「廣年、頑張れ!」と連絡をくれました。大河ドラマに出演するって、やっぱりとんでもなくすごいことなんだなと改めて思いました。
先輩の“さらば青春の光”さんも「めちゃくちゃすごいね」「ほんまによかったな」と喜んでくださいました。昔から本当にお世話になってきたので、少し恩返しができたようでうれしかったです。
僕はふだん、ドッキリにかけられすぎていて現実かウソかよくわからなくなるので、正直、“大河ドラマ初出演”もまたドッキリなのかなと思っていました。でも、NHKに来てみると渡辺 謙さんがいらっしゃったので、渡辺 謙さんが僕のドッキリのためにいらっしゃるわけがないから、現実だと確信して安心しました。
位が高い人物を演じることへの戸惑い
江戸家老という役どころについては、どうやればいいのか悩みました。廣年さんは位が高い方ですが、僕は37年間ずっと普通に生きてきたので、上の立場の人のことがわからず、しぐさの1つ1つからものすごく考えました。ふだんの僕であれば、困ったらすぐに、すみません!と謝るけれど、意識したのは、たやすくひれ伏さない、とか、何かをしてもらったときもへりくだらない。歩くときも凛(りん)とするということでした。最初は、ひょうろくらしさやギャップを少しでも表現できたらいいなあと思ったのですが、そんな余裕はなかったです。
物語にも少し出てきますが、廣年さんは画がお好きだったそうです。僕もイラストを描くことや書道が好きなので、描くシーンがあるといいなぁ、なんて思っていましたが、廣年さんの画を見たらレベルが違いすぎたので、なくてよかったです(笑)。
あと、鹿児島のイントネーションが出てしまうことも心配でした。スタッフさんからは、「あまり気にしなくて大丈夫ですよ」と言っていただきましたが、「このせりふだけは気をつけてください」と言われていたところがいくつかあったので、伊藤淳史さんが練習に付き合ってくださいました。僕がせりふを言って、伊藤さんが「それはイントネーションが違います」「合ってます」「また違います」と何度も確認してくださって、ものすごく助けていただきました。
役者さんたちのすごさを実感
初めての収録は、廣年さんの初登場シーン(第22回)でした。ものすごく緊張していたからか、まばたきが止まらなくなってしまい、演出の方からも「ちょっとまばたきが多いですね」と言われました。僕もわかってはいたのですが、止めようと思っても止まらないんです。周りの役者さんたちを見てみると、全然まばたきをしていなくて、あ、これは僕が知らなかっただけで、当たり前に心掛けるべきことなんだなと気づきました。
誰袖に翻弄されてしまうとき(第22回)は特に緊張しました。このシーンでは、吉原に不慣れでドキドキする演技をしなくてはいけなかったのですが、演技ではなく本当にドキドキして、手を握っていただくところでは、衣装の中は冷や汗がすごかったです。正直、緊張しすぎてあまり記憶がないのですが、今、思うと、ひょうろくのドキドキが前に出すぎて、廣年さんが消えてしまっていたかもしれません。僕と廣年さんの共通点があるとしたらやっぱりこの点で、女性に慣れていないところだと思います。あんなに優しくされたら僕のことが好きかも…と思っちゃうし、たぶん、秘密の情報も話しちゃいます。
福原 遥さんのお芝居はとても色っぽかったです。“~ありんす”っていうのもすてきで、収録中も、すごいなーと思っていました。でも、「言葉遣いが独特で難しいんですよ」とおっしゃっていたので、こんなにすばらしい演技をされる福原さんでもそういう悩みがあるんだなと勉強になりました。
お兄さんである道廣さんから呼び出されるシーン(第24回)は本当に怖かったです。えなりかずきさんの笑顔がほんとうに狂気じみていて驚きました。実際のえなりさんはものすごく話しやすい方です。大ベテランの方なので、最初は、僕が話しかけていいものか迷いましたが、収録の合間には一緒に話す時間をよく作ってくださいました。小さいころにえなりさんが出演されていたドラマを毎週家族で見ていたということも伝えることができました。何を話しても許してくださるので、すごくありがたかったです。先日、ごはんにも誘っていただいて、本当に優しい方です。
たくさんの発見があった収録現場
当然のことですが、お芝居で感じる緊張は、バラエティー番組で感じるものとは全然違いますね。バラエティーは準備ができないので、どうなるのだろうという不安がありますが、お芝居は、やることがきっちり決まっているので、そのとおりにうまくできるかという不安と怖さがあります。失敗が逆におもしろくなることもあるバラエティーと違って、お芝居での失敗はただの失敗。皆さんに迷惑をかけてしまうので、ちゃんとしなきゃいけないなと思っています。
僕はまだまだ勉強不足で、特に台本の読解力がないようです。演出の方からは、そのつど、「このシーンでは、廣年はこういう感情を持っているから、こういう行動を起こします」と、裏にある状況などを丁寧に教えていただきました。例えば、台本に“怒る”と書いてあったら、僕は今まで文字のまま捉えることしかできなかったのですが、ちゃんとその奥まで考える必要があるんですね。怒る理由がわかると、相手を見るときはこうしたほうがいいとか、いろいろなことがわかってくるので、なるほど、お芝居をするときは台本を読む力も大事なんだなと知りました。
共演した役者さんたちに聞いたら、毎回、演出の方から細かな指示をいただけるのはありがたいことで、こんなに丁寧に演技指導をしてくださる収録現場はなかなかないそうです。「すごくありがたいことだよね」とおっしゃっていたので、これは普通のことではなくて、とても貴重なことだと知り、感謝しています。共演させていただいた役者さんたちは、重厚感があったり、ひょうひょうとしていたり、それぞれの味を持ってらっしゃって、本当にすばらしく、僕もいつかそういった味が持てるといいなと思います。
楽しい作品の一部になりたい
僕は一人きりでは何もできない人間なので、こうして大河ドラマに出ることができたのも、いろいろな人の助けがあったからだと思っています。僕が何かをしてきたから今があるのではなく、周りの方が僕をここまでにしてくださったのです。だから、有名な作品に出たいということより、楽しい作品の一部になりたい…。皆さんがおもしろいと思う作品の中の1つの要素として僕がいられれば、こんなにうれしいことはないですね。
大きな野望はありませんが、これからも、おもしろいお仕事は何でも挑戦してみたいですし、あまり先のことは考えず、いただいたお仕事を精いっぱい頑張っていきたいと思っています。
【あわせて読みたい】
大河べらぼうのインタビューをもっと読みたい・見たい方はこちらから☟