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【脱完璧主義日記】子どもを産む覚悟

子どもを産むか、産まないか

女として生まれ、女を自認する私にとって、この選択は物凄く大きな分岐点である。大学4年のおわりにシス男性のパートナーと事実婚して暮らしを共にするようになってから、もうすぐ2年が経とうとしている。ぼちぼち、子どもについても考えてもいいのかもしれない。が、私はなんだか気乗りしない。

子どもがすごい欲しいかというと、そうでもない。「子どもが好きか?」と聞かれたら「フツー」というと思う。でも、絶対に欲しくないか、と聞かれたらそんなこともない。子どもがいる人生も素敵なんだろうな、と思う。要は、どっちの人生もいいなぁ、という感じだ。それはパートナーもあまり変わらない感覚のようだった。

ちなみに、欲しいと思えない理由に、私のキャリアがどうこうとか、そういう話は特に絡まない。もし、子どもを産むことで私のキャリアが崩壊するとしたら、それは社会の問題だ。そうなったら、お馴染みのメガホンで声を上げるまでである。

責任

私が怖くなるのは、「自分が子どもを産んでもいい人間なのか?」ということだ。「産んでもいい人」「産んではダメな人」なんで基準はないことは百も承知である。どんな人にも産む権利も産まない権利もある。わかっている。

それでも、「自分は産むべきではないかもしれない」と思わされるのだ。たとえば、冒頭の「どっちでもいい」という感覚に対して、「そんな中途半端な気持ちで親になるなよ」と感じる人だっているだろう。「将来は子ども2人欲しいんだ〜」とまっすぐに言える人が羨ましいな、と思う。そして、そういう人が親になる「べき」な気がしてしまうのだ。私じゃなくて。

子どもの自殺がどんどん増えていくこの社会で生きる、私たちの身近には、常に希死念慮があった気がする。「生まれてこなければよかった」という言葉は割と耳なれている。中学に上がって、隣の席の子が授業中にリスカしてるのを見たとき、初めて死を近くに感じた。同年代の子が自分から死を選ぶことだってある。実際、私も友人を中学生の時に自死で亡くしている。誰もが「生まれてきてよかった」と思える世界ではないのだ。絶望の崖の淵でなんとか生きてきたのだ。

子どもが苦しみに出会うとき、いつだって引き合いに出されるのは親の話だ。同じように苦しむ子どもを生み出さないように親はどうしたら良いのか、を教えてくれようとする情報が世界に溢れている。けれど、同時に、子どもを産むか悩んでいる私にとっては、子どもの生をめぐる不確実さを、すべて親が背負わなくてはいけないかのように感じられる。学校のあり方、労働環境、ジェンダー規範、経済的不安、差別や孤立。そうしたものが子どもに与える影響は、まるで背景ノイズのように処理され、最後に残るのは「親はどうすべきか」という問いなのだ。

親の関わりが重要でないと言いたいわけではない。ただ、子どもが生きづらさを抱えたとき、親がすべてを引き受けなければならないとしたら、その前提自体がすでに過酷すぎやしないか。

からだ

私のからだは、私のもの

これは、第二波フェミニズムのキャッチフレーズといっても過言じゃない。大事な言葉だ。だが、この言葉がなぜか、とてつもなく重く私にのしかかる。

卵子凍結や不妊治療、ピルにIUD。医療や技術の発達、そして運動のおかげで、SRHRに関する女性たちの選択肢はたくさん増えた。けれど同時に、「選ぶ責任」も、以前よりずっと重たくなった気がしている。

「産むのは女性のあなたなんだから、産むかどうかはあなたが決めていいよ」

その言葉は、たしかに優しいし、正しそうだ。でも、その優しさは、ときどき刃物みたいに鋭い。決めていい、ということは、決めた結果のすべてを引き受ける、ということでもあるからだ。

キャリアを維持しながら、自分が妊娠できる年齢を正確に把握し、タイミングを逃さないように計画し、十分な覚悟と責任をもって親になる。それを、なぜ女だけが引き受ける前提になっているのだろう。「自己決定」というフェミニズムの言葉が、いつのまにか、重たい責任を個人に押しつけるための免罪符として使われているようで、むず痒くなる。

こころ

何よりひっかかるのは、私の心問題である。私には、高校生の終わりくらいから数年に一回のペースで、心療内科やカウンセリングにお世話になる時期が訪れる。悪くなっては一年くらい治療するのを何度か繰り返している。

それ自体、特段悪いことだとは思っていない。あー、また一歩生きやすくなるための試練だな、くらいに思っている。一応、かかりつけ医の方針で何かの病気として診断を与えられたことはない。ただ、工夫して自分の心と付き合っていく必要があるのは確かだ。このnoteも、そんな工夫の一つだったりする。

ところが、子どもの話となると、事情は変わってくる。毒親、親ガチャ…子どもの苦しみの責任が容赦なく親の内面に還元されていく。親の不安定さ、弱さ、迷いは、「ケアされるもの」ではなく、「矯正されるべき欠陥」や「子どもを傷つけるリスク」として描かれることも多い。

私が数年に一度、心療内科のドアを叩いてきたこと。調子を崩して、立ち止まり、また歩き出してきたこと。それらはこれまで、「生き延びるための工夫」として、私自身は受け止めてきた。けれど、もし私が親だったら?この揺らぎは、「この人は親になるべきではなかった」という証拠として、いつか裁かれてしまうのだろうか。

親になれない

親になりたい人は、強く「子どもが欲しい」と願っていなくてはいけない。親は、生まれた子どもが、傷つく前に手を差し伸べ、絶望も引き受けられる存在でなければならない。その責任を引き受けるかどうかは女性がリードして決めなくてはいけない。そして、安定していなければならない。常に穏やかで、ぶれず、折れず、自分の問題を子どもに決して漏らさない存在でなければならない。

そんな完璧な親像がむくむくと、私の中に立ち上がる。そして私には「そんなの無理だわ」と、考えるのをやめる。親にはなれないな、と諦める。

そんな、一連の私の戯言を、自分の親にぶつけたりした。

「でもさ、それって子どもを自分のものと思いすぎじゃないのか」

と親は言う。子どもは親の所有物じゃない。人生は、親の計画通りに進むものでもない。そう考えれば、すべてを背負い込もうとすること自体が、どこかで歪んでいるようにも思える。

それなのに、産むかどうか、いつ産むか、どう育てるか、うまくいかなかったときの理由まで、なぜか全部、親、とりわけ母の責任として回収されていく物語ばかり目にはいる。

所有できない生を、所有しているかのように振る舞うことを求められる違和感。そのズレの中で、産むか産まないかという問いは、私の中でますます重く、ほどきにくいものになっていく。

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