続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第10話:”気持ち悪い”

 ※※※

 

 

 

「マーニャでの公的な調査の許可を貰った。これで向こうのトップのお墨付きでござる」

「……にしても気味が悪い連中ッスね。最後に出てきた四天王とやら、最後の最後まで一言もしゃべんなかったッスよ」

 

 

 

 何のために出てきたんスかね~、とノオトは腕を組みながら考える。

 黒い髪の眼鏡をかけた男に、30代ほどの金髪の巨漢。そして顔が瓜二つの双子の少女。

 だが全員、瞳の色が翠色だ。それらが此方を見据える度にノオトは生きた心地がしなかった。

 結局その日は一度も言葉を交わさなかったが、人間味を感じなかったのである。

 顔を出さないワームホール公団の理事長もそうだが、あの絵に描いたように不気味な四天王たちも気味が悪い。

 結局、ポケモン暴走の際には共同で調査を行い、鎮圧にあたるということで双方合致したのは良いが、何とも引っ掛かりを覚える要素が多すぎる。

 

「まさかあいつら、アンドロイドとかじゃねえッスよね?」

「ノオト殿。流石に生きている人間と機械の区別はつくでござろう。拙者とて同じでござる」

「いやでも、優れたアンドロイドって人間と見分けがつかないって言うじゃねえッスか」

「……あの四天王という人物たちの身元は早速此方で洗ってみる事にしよう」

「流石忍者ッス!」

「不安になる気持ちは重々承知だが……調べ事は拙者たちに任せておけばいい」

 

 ベッドに腰かけたキリは──「何事も無ければ良いのでござるが」と続けると、仮面を脱ぐ。そして──思いっきり隣に座っていたノオトに抱き着いた。

 

「ちょっと、キリさん!?」

「そんな事より、知らない人が多くて、すっごく怖かったでござる~~~!!」

「うわぁ……すっげー変わりよう」

「ノオト殿ノオト殿ォ、私、ちゃんと仕事出来てたでござるか!? ねえ!?」

「あー、はいはい、ちゃんと、出来てたッスよ、完璧ッス。流石、サイゴクの筆頭キャプテンは違うッスねー」

「~~~♪」

 

 仮面を脱いで素を曝け出すことが出来るノオトに対して、キリは年齢が退行したのかと思わされるほど甘える。

 スキンシップがとにかく多い。付き合ってからは日増しに増えていくほどだ。

 だが、哀しいかな──力ではノオトは決してキリに勝つ事が出来ないので、されるがままなのであった。

 

「好き……好き……ノオト殿……」

 

 そして好意の伝え方も直球ストレートだ。

 奥ゆかしさなんてものは今となっては全く見られない。 

 付き合いたての頃と比べても、愛情表現が日に日に強くなっていく、と感じる。

 

「ん……っ。ノオト殿。手、大きい……好き……身体も、ごつごつ……」

 

 だがそれでも、「そこから先」を直接言葉で求めるのは恥ずかしいのだろう。

 無言の上目遣いでノオトに欲しがるのだった。

 

(あー……何なんスかね、これ。堕としてはいけない人を堕としてしまったみたいな……背徳感)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──ワームホール公団の理事長は、此処最近顔を見せていない……か」

『そう言う事ッス。メグルさん達も常々気を付けるッスよ。だっておかしいっしょ? 何でマーニャの実質トップみたいな人が表に出て来ねえんだって話ッス』

 

 その日の晩、メグルはノオトから電話でワームホール公団の事について聞いていた。

 胡散臭い理事長、胡散臭い四天王。組織の運営自体は真っ当だが、肝心のトップが見ただけでもグレーラインだ。

 

「お疲れだったな。大変だっただろ? こんな夜遅くになっちまって」

『いやあもう、オレっちはまだ良いんスけど、キリさんなんて今、隣で爆睡してるッスよ』

「そうなのか? キリちゃんは忍者でお前より体力あるんじゃ……気疲れってヤツか」

ヤベいっけね──あー、それよりも、メグルさんもワームホール公団の動向には注目してた方が良いッス。あいつらが用意してた”四天王”ってトレーナーも、なんかヘンだったんスよ』

 

(やっべーな……ポケモン世界の”団”って付く組織にロクなもん無いからな……)

 

 怪しさ満点の理事長、不気味な四天王。

 これが敵対組織で無ければ何だというのだろうか。

 おまけに、名前には”ワームホール”。ポケモンの悪の組織というのは一部を除き、大抵名前に宇宙用語が入っているものなのである。

 所詮現時点ではメタ読みでしかない。でしかないのだが、あまりにも前例が前例すぎる。

 通話を切った後、レポート作業をしているアルカが振り返った。

 

「なんか……雲行き怪しくなってきたね……」

「セレクト団にワームホール公団、そしてイレギュライズ……あまりにも問題が山積みすぎる」

「でも今は、ヌシポケモンを探していくしかないんじゃない?」

「そうだけど」

 

 今この間に、マーニャではポケモンが暴走している。

 彼らは本来の生息域を離れ、他の縄張りを荒らしたり町に入り込んだりして被害を出している。

 

「ワームホール公団の評判は良いよ。自然保護区の運営、学校運営、大体そつなく滞りなくって感じ。ただ、トップが数年前から表舞台に出て来ていないことくらいかな」

「モニター越しで喋ってる理由は何だ。まさかロボットじゃねえよな」

「まさか。怖すぎるよ、AIにいち地方の運営が出来るわけないじゃん」

 

 イクサから聞いた「スカーレット・バイオレット」のネタバレを思い出す。

 AIで作られた博士の複製が、博士に代わって大穴の施設の管理をしていた──というSFホラー染みた展開だ。

 そのAIは、狂った博士の計画、そしてタイムマシンを止めるべく主人公たちに助けを求めていた、というのがオチではある。

 しかし、メグル達はもう1つ、本当にイカれたAIと相対したことがある。

 ミッシング・アイランドを管理していたコンピューターの”サーフェス”だ。

 

(テラスタルの技術が無いと、人間そのままの思考ができるようなAIをこの世界で作ることは出来ない)

 

 サーフェスは明らかに人としての倫理観が欠如していた上に、人間のように喋れても人間そのものの思考回路だったかと言われれば謎だ。

 逆に言えば、そのくらいのAIならこの世界の技術でも作れてしまうのである。

 おまけにサーフェスはミッシング・アイランドが稼働していた頃に作られたAIである。

 後から聞いた話によれば、当時は此処までの知能を有していたわけではなく、自己学習を繰り返すことで成長していった──というバケモノだったことまで判明した。

 今となってはベニシティのライドギア免許センターでルンバの中に閉じ込められているサーフェスだが、あの怪物AIが世に放たれたままだったら、と思うとメグルは末恐ろしい気分になるのだった。

 

「有り得ねえなんてことは有り得ねえんだよ、アルカ」

「……うーん。だとしたら怖すぎる」

「コチョウって名前の理事長の身元はサイゴクの忍者が洗ってくれるだろ。怪しすぎるぜ」

「でもさ──洗っても何も出て来ないんじゃないの?」

「え」

「……今まで表舞台に出て来てないって事はさ、誰かが絶対先に怪しんでるってことじゃない?」

「もう先に誰かが調べていて、それで収穫無しってことか」

 

(あるいは……考えたくないけど、探そうとした奴は消されてたりとか?)

 

 まさかな、とメグルは一番いやな可能性を否定する。

 

「それでいて、キリちゃんが仮にも忍者であることは知られてるだろうし……向こうも相当ガードを固めるんじゃないかな」

「……そうか。ワームホール公団視点だと、キリさんが腹を探りに来たって思われてるのか」

「そうなるよね。あれ? じゃああいつらが悪い奴らだった場合、キリちゃん……危ないんじゃないの……?」

「……ノオトもいるし大丈夫だろ」

 

 結局、これ以上は憶測でしかない。

 灯りを消し、また明日に備えるのだった。

 

 

 

「ミアの奴にも教えないとな……ワームホール公団が明らかに怪しいって話」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「気持ち悪い……」

 

 

 

 ぽつり、とミアは呟いた。

 ベッドの上で目を瞑る。

 ミッシング・アイランドの凄惨極まりない光景が蘇る。

 死んだポケモンの経過観察記録。そして、ずさん極まりない管理体制。

 命が命として扱われない環境。

 

「……消さなきゃ」

 

 メグルにも、アルカにも見せて来なかった怒りが彼女の中にはずっと燻っていた。

 もう二度と自分やタイプ:ゼノのような「作られた命」を、セレクト団に生み出させてはいけない。

 そんな意思が彼女をマーニャに突き進めてきた。

 

(メグルさんはきっと止める。止めると思う。でも、もしセレクト団の欠片を見つけたなら私は……)

 

 作られた自分の存在理由。

 そんなもの、未だに分かりはしない。

 だが、自分を作り出した悪魔の組織の残滓をこの世に残しておくことだけは許せなかった。

 ぐちゅぐちゅと音が鳴り、ミアの頬を粘着質の液体が張っていく。

 

「もう良いですよ、()()。出て来て下さい」

 

 それは徐々に彼女の身体から這い出し、ベッドの外へと零れ落ちていく。

 

「ごめんなさい、狭い思いをさせて」

「ピポポポポポ……ポポポポポポ」

「貴方の存在を誰にも知られるわけにはいかないから。もちろん、メグルさんにも」

 

 ホテルの一室。

 ベッドに横たわる少女の身体からスライム状の物質が這い出していくという異様極まりない光景。

 ずるずると床に滴り落ちた怪物は、徐々に生物の姿へと凝り固まっていく。

 妖精のポケモン・ピクシーに酷似していながら、異常発達した巨大な腕を持つ怪物だ。

 

 

 

 ──万能細胞で作りだされた人造ポケモン、タイプ:ゼノが彼女の傍に立っていた。

 

 

 

「ピポポポポポ……ピピピピピピピ」

 

 

 

【タイプ:ゼノ<モデルピクシー> ミッシングポケモン タイプ:ノーマル/格闘】

 

 

 

 タイプ:ゼノ──人間によって作りだされたその生物は、正式にポケモンの種類として登録されているわけではない。

 それ故に「正体不明の生体」としてマーニャへの入国は確実に断られる。 

 だからミアは誰の目にも触れられることなく、ゼノをマーニャに持ち込むことを計画した。

 元が万能細胞の塊であるタイプ:ゼノは、メタモンに近しい姿に変態することが可能だ。

 彼女は自身の体内に、ゲル状に変化したゼノを隠していたのである。

 当然体内にゲル状のポケモンを侵入させる行為はミア自身にとてつもない苦痛を齎すものであった。

 

(吹っ切れる訳ない。赦せる訳がない。父の告白で、私の今までの幸せな日々は崩れ去った。私の命は、無数の犠牲と悪意の上に成り立ってる。気持ち悪い……とても、気持ち悪い……!!)

 

 彼女の中に燻り続けている己の出生に対する嫌悪感は未だに消えてなどいない。

 

(気持ち悪い()()()()()は……消さなきゃいけない。彼らに作られた私が……終わらせなきゃいけない)

 

 全部、終わった事だと思っていた。

 だが父の研究室の地下にあった、あの資料を見た時から──「まだ終わっていない」と気付いた。

 そして彼女の中には、全てを終わらせなければならないという気持ちが強まっていた。

 

『クローンポケモン・クローン人間増産計画』

 

 メグル達には伏せた、セレクト団の計画が──彼女の脳裏に過る。

 まだ悪夢は終わって等居ない。

 

(優しいメグルさんは確実に私を止める……でも、ゼノは強い。メグルさんには止められない)

 

 これは、攻撃でも宣戦布告でもない。

 

 

 

(セレクト団は……ゼノの力を使ってでも……焼き尽くす──ッ!!)

 

 

 

 彼女達の──逆襲なのだ。

 

 

 

「ピポポポポポ……!!」

 

 

 

 その時だった。

 ゼノが窓に向かって臨戦態勢を取る。

 嫌な気配を感じ取ったミアは、ゼノに手で合図を取る。ポケモンはゲル状の異形に戻り、再びずるずると音を立ててミアの背中から体内に入り込んでいく。

 

「……うぐぅっ……!? ……一体何……?」

 

 堪え切れない程の吐き気を抑え込みながら、彼女はカーテンを一気に開ける。

 

 

 

 開けなければよかった、と後悔した。

 

 

 

「ブ、ブブブ……」

「ブブブブ……!!」

「ブブブブブブ……!!」

 

 

 

 窓にはビッシリと、羽根の生えた何かが敷き詰められていた。

 羽音が窓越しにも聞こえてくる。

 流石のミアも腰を抜かしてしまいそうになった。

 腹部の形状、樹液を啜るための刺す口吻、そして真っ赤な眼。

 セミ型の虫ポケモン──テッカニンだ。

 ただし、数が多すぎる。しかも、窓をカツンカツン、と窓を前足で叩いている。

 

「ッ……!? ……!? !?」

 

 思わずミアはスマホロトムを起動し、メグルに電話を掛けようとする。

 しかし──その前にピキ、ピキピキと窓ガラスに罅が入っていく。

 

 

 

 

「ブブブブブブブブブブブッ!!」

 

【テッカニン しのびポケモン タイプ:虫/飛行】

 

 

 

 

 窓ガラスが砕けるのは一瞬だった。

 大挙して、大量のセミが部屋の中へ入ってくる。

 腰を抜かして動けない彼女を守るべく、再びタイプ:ゼノが飛び出した。

 一瞬で火竜の姿へと変わったゼノは一瞬で口にためた龍気を解き放つ。

 ”りゅうのはどう”だ。

 迫りくるテッカニンたちは、その勢いに飲み込まれ、窓の外へと吹き飛ばされていく。

 だが──窓が割れたことでいよいよミアは事の異常さを思い知るのだった。

 無数に重なる羽音が外から聞こえてくる。

 

 

 

「虫ポケモンの……暴動……!?」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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