続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
「あ、兄貴、やっぱあいつら見たことあるぜ……!!」
「マリゴルドの旦那の計画を潰したっていう、トレーナーか……!!」
「3人共滅茶苦茶強いし、関わらねえほうが身のためだぜ……!!」
──図らずも揃った三人組。
かつてサイゴクを旅をした者達は──いずれも、過酷な旅の中で鍛えられた実力者であると知られている。
しかし、そんな彼らも入国審査の壁には抗えなかった。
いずれも手持ちが一匹しか居ないというオワタ式ポケモンバトルを強いられる羽目になったのである。
「はぁーっ!? 何でニンフィアとサニーゴしか居ねえんスかぁ!?」
「そりゃこっちのセリフだ、ルカリオしか居ねえのに、よくもまあヌシに挑もうとか思ったな!!」
「だってサイドン、ッスよ!? ドサイドンじゃねーんスよ!? ちょっと様子を見るだけなら大丈夫かなーって……」
「案の定返り討ちにされてるじゃん……」
「泣くッスよ!? それにこっちにはまだ切札が残ってるんスよ!!」
切札を切る前にサイホーンの群れに轢かれそうになっていた主人の耳を引っ張ってやろうかと思ったルカリオだった。
「メガシンカか……!!」
「その通りッス──!! ちょっと時間を稼いでもらったら……!!」
「オーケー、分かった! 時間稼ぎならサニーゴにお任せ!」
「ぷきゅー」
ふよふよと浮かび上がるサニーゴが”おにび”を放つ。
サイドンの周囲には青白い炎が浮かび上がり、そのまま体を焼いていく。
「なんかマグマっぽい鎧を着てる割には”おにび”がフッツーに通ったな……!!」
「あいつ、タイプ変わってないよ!! オーライズっぽいことしてるのに!!」
「んじゃあ、何が変わってるんスかねえ……!? まさか、
”はどうだん”を受けてもびくともしなかったサイドンの姿を見て、ノオトが口走る。
ならば猶更メガシンカしたルカリオによる”てきおうりょく”込みの”はどうだん”が効くはずだ、と彼は考える。
「火傷状態にはしたよっ!! 後はお願い!!」
「ありがてぇッス、アルカさん!! ルカリオ、メガシンカ!!」
ノオトは腕に付けたメガリングに手を翳す。
すると、ルカリオの身体に波動が迸っていき、その姿がみるみるうちに変わっていく。
進化を超えた進化、それがメガシンカ。
種族としての限界を超越した姿だ。
すぐさま駆け出したルカリオは、掌に波動を集中させ、至近距離でサイドンにそれをぶつけようとする。
(メガシンカしたルカリオの一致”はどうだん”!! これを耐えられたら、もうサイドンじゃねーだろアイツ!!)
「グゴォォォアアアアアアアアアアアアアアアーッッッ!!」
しかし、ルカリオが距離を詰めたその時だった。
サイドンの身体に纏わりついた溶岩の鎧が赤黒く光り輝き、その場に悍ましい波動が解き放たれる。
ルカリオが思わず足を止めてしまうほどであったが、突っ込んでしまったのが運の尽き。
全身に波動を浴びたルカリオは、悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
そして──驚いた事に、その身体から光がふつふつと消えていったかと思えば、ルカリオの姿はメガシンカする前に戻ってしまうのだった。
「んなっ、メガシンカが……!!」
「強制的に解除された──!? ッ……ニンフィア、カバーしろ!! あいつを近付けさせるな!!」
そして隙が出来たメグル達目掛けてサイドンが思いっきり体当たりしてくる。
全身に水を纏って轢き潰す技──”ウェーブタックル”だ。
それを前にしたニンフィアもまた、最大火力を解き放つ。
真正面から相手が突っ込んで来るならば、避けられる心配など無い。
口に特大のエネルギーを溜め込み、更に妖精の加護を乗せる。
「”はかいこうせん”──!!」
【サイドンの ウェーブタックル!!】
【ニンフィアの はかいこうせん!!】
両者の技がぶつかり合う。
だが、サイドンも”はかいこうせん”を突っ切り、迫ってくる。
しばらくエネルギーを放出し続けていたニンフィアだったが、次第に力が尽きてしまい、”はかいこうせん”はそこで打ち止めとなってしまうのだった。
そしてその巨躯に任せて突っ込んできたサイドンはニンフィア目掛けて大腕を振り上げる──
「ダメ! サニーゴ、”ちからをすいとる”!!」
──インパクトの直前、サニーゴの目が妖しく光った。
サイドンの身体からはエネルギーが更に抜けていき、サニーゴへと吸収されていく。
”やけど”+攻撃一段階ダウン。サイドンの鉄拳をニンフィアは額で何とか受け止めることに成功したのだった。
「おいノオト!! ギガオーライズは使えねえのか!?」
「ちょうど今、オーパーツをシャクドウ大学に預けてて、使えねえんスよ……!!」
「だぁぁぁーっ!! 戦力不足じゃねーか!!」
かく言うメグルもオーパーツが御神体である以上、普段はおやしろに預けてあるため、オーライズが使えないのであるが。
「さっきの波動……後で調べる必要があるかも……!!」
「どっちにしても、抑え込まなきゃヤベーッスよコイツは……!!」
「ノオト、アルカ!! 3匹がかりで止めるぞ!!」
「応ッス!!」
「うんっ──サニーゴ”のろい”で体力削って!!」
「ルカリオ、”はどうだん”!!」
再び襲い掛かろうとするサイドン。
だが、その身体に釘が打ち込まれ、更に立て続けに弾幕が放たれる。
最後のトドメを担うのは、一気に接近したニンフィアだ。
「”ハイパーボイス”!!」
──これだけの攻撃を受けて、漸くサイドンは地面に倒れ伏したのだった。
溶岩の鎧は粒子となって消え失せて、後にはただただ巨大なだけの4メートル級のサイドンが残るのみ。
そこにメグルがボールを構え、投げ付ける。
巨体はすぐさま中へと吸い込まれていき──そのまま収まったのだった。
「た、たかがサイドンって思って油断したのが間違いだったぜ……!!」
「まさか3人がかりで挑んでやっとだなんて……サイゴクより魔境かも……!!」
「つーかメガシンカが無効化されたのは何だったんスかね……!!」
三人は──顔を見合わせる。
そして、思わず「ふふっ」と笑いが出るのだった。
こうして三人で強大な敵に挑むのは、一体いつぶりだろうか──と懐かしむ。
「つーかさ、ノオト。何でお前居るんだよ。ビックリしたぜ……!」
「ホントだよ!」
「それはオレっちのセリフッスよ。まさか、旅行中に出くわすなんて……」
「旅行?」
「そう。本当は──キリさんとの旅行のはずだったんスよ。リゾート地のヴァリカン島に」
キリは、サイゴクのおやしろのキャプテンの1人であり、忍者の軍団を率いる頭領でもある。
仮面を被っている時は、文字通り無敵の忍者と言っても過言ではない程の強さを誇り、頭脳も常人のそれを遥かに上回る回転を見せる。
忍者の時は態度も大人びているため、実は年上ではないかと錯覚してしまいがちだが、一度仮面を外せばそこにいるのは年相応のシャイガールなのだった。
そんなキリは、ノオトと色々あって恋仲だ。傍から見ればおやしろ同士の結びつきを強化するための政略結婚に見えない事も無いが、正真正銘の純愛である。
「あの子忙しいだろうしな。羽根は伸ばせるうちに伸ばした方が良い……ちょっと待て。じゃあ何でお前一人なんだよ」
「ケンカでもしたの? 珍しいなあ、普段は誰が見ても分かるバカップルなのに」
「ケンカしてねえし、あんたらにだきゃ言われたかねーッ!!」
叫ぶノオト。
そのまま咳払いすると、旅行を放り出してサイドン狩りに出向く羽目になった経緯を話すのだった。
「宿泊初日からエラい目に遭って……」
二人は顔を見合わせる。丁度、宮殿があると聞いて向かおうと思っていた場所だ。
「もしかして、野生ポケモンに襲われたとか?」
「その通りッス。ジャングルツアーの途中で暴走した野生ポケモンの群れに襲われて……いやー、キリさん凄かったッスよ。1人であの群れを全部鎮圧して。オレっち他の客の誘導で精一杯だったッスから」
「十二分に仕事してると思うけどなお前も……あれ? でも、どうしてキティーに?」
「キリさん真面目だから……あの野生ポケモンの暴走を見て、色々悟っちまったんスよねえ」
──成程。今このマーニャでは、野生ポケモンの暴走が起こってるらしいでござる。
──まさか調査するんスか、キリさん……!? 現地の事は現地の人に任せりゃ良いと思うんスけど……。
──うっ……しかし、見過ごせない。拙者はキャプテン、様子のおかしいポケモンは……放っておけない……。そ、その、埋め合わせはするから……拙者のワガママに付き合って貰えないでござるか……?
──あーもう……そういうところッスよ、キリさん……。オレっちもキャプテン……ッスからねえ。
結果、ノオト達は直近で野生ポケモンの暴走があったというキティーシティに手掛かりを探しに来たのだという。
折角の旅行は異変調査へと変わってしまうのだった。
「俺達と目的は似たようなモンか。それにしてもお前、やっぱりキリちゃんには甘いな」
「うるせーッス」
「ボク達はアカデミーの課題でマーニャに来たんだ。先生がマーニャ出身なんだよ」
「じゃあオレっち達、偶然目標が被ったんスねえ」
「あれ? それじゃあキリちゃんは何処行ったんだろ?」
「手分けしてヌシポケモンを倒しに行こうって話だったんスけど──そういや、帰って来ねえッスね」
「まさか、サイホーンの群れにやられたとか──」
「いや、キリちゃんに限ってそんな事は……」
「──ぐおおお、助けてくれぇぇぇ!!」
「──変な仮面付けた奴に捕まって……!!」
何処からともなく苦しそうな声が聞こえてくる。
見るとそこには、ロープで何重にも巻かれて呻くジャケット姿の男達の姿があった。
それを引きずってくるのは──仮面を付けた忍者であった。
「ノオト殿済まない、
「キリちゃん……!?」
【サイゴク地方”ひぐれのおやしろ”キャプテン:キリ】
忍者・キリはメグルとアルカの方を見ると驚いたようだった。
「メグル殿とアルカ殿!? 久しいでござるな……何故斯様な所に?」
「あの、キリさん? その男の人らは……?」
「こいつら国際指名手配の密猟犯たちでござるな。サイゴクで捕まったが、脱走して海外に逃げ出したのでござるよ。後で現地の警察に突き出すでござる」
(知らねえところで別の大物捕まえてた……)
(この数のトレーナーを1人で片付けたんだ……流石キリちゃんだ……)
──ひぐれのおやしろキャプテン・キリ。
彼女は現在のサイゴク地方でも最強のトレーナーであることはだれも疑いようがない。
手持ちが1匹しか居なくても関係ないのである。
「ところで近くにまだ仲間がいるはずでござる。ノオト殿、怪しい者は居なかったでござるか?」
「あ、そう言えば居たような──」
間もなく、密漁グループは完全に壊滅した。マーニャ地方に蔓延っていた悪は、たった1人の忍者によって排除されたのである。完。
※※※
──その後、4人は再度キティーシティに戻り、これまでの経緯を話していた。
場所は町中のごく普通なカフェ。しかし、流石猫の町というだけあって、店内ではニャースが丸くなっていた。
メグル達相手ならば仮面を外して喋れるようになったキリは、はにかみながらも「本当に世話になってばかりでござるな……」と彼らに話しかける。
「キリちゃん、元気そうで何よりだぜ」
「お二人も変わり無さそうで……しかし、ノオト殿には本当に悪い事をしたと思ってるでござる。旅行の途中に緊急の仕事を挟んだようなものでござるから……」
「はっは!! ヌシポケモンと指名手配犯の捕獲で賞金はガッポガッポッスね!! いやー旅費の足しになったッス。次はもっとすごいゴージャスなホテルに泊まれるッスよ、キリさん」
「だってよ。あんまり気にしなくて良いんじゃね? ポケモンの様子がおかしかったら気になっちまうのがキャプテンのサガってもんだろ」
「……お二人共」
「そうッスよ。それに、海外調査って名目で合法的にオレっち達の滞在期間伸ばせたわけだし? 良い事づくめっしょ」
これで旅行の期間が減ることはねえんスよ、とノオトは続ける。
「しかし肝心のヌシポケモンが想像以上の強さとは恐れ入ったでござるよ。アルカ殿、此処までで何か分かったことは?」
カタカタとパソコンに向かって今回のレポートを打つアルカは──首を横に振る。
「なんにも分かんないっ!!」
「だろうな……」
「だって、前例がないんだよ!? オーライズには似てた。だけど、オージュエルもオーパーツも、あの周辺からは見つからなかった。前にレモンちゃんが言ってたオシアス磁気? も関係無さそうだし」
「何よりメガシンカをキャンセルしたのがヤバすぎッス」
「まだマーニャの学会の方でも詳しくは確認されてない現象みたい。タイプは変わってなかったから、やっぱりオーライズとも違うっぽいけど」
「じゃあなんて呼ぶんだ?」
「ボクから言わせれば……オーライズとは似て非なる現象、イレギュラーなオーライズ……
「直球過ぎねえッスかソレ……」
げんなりとしたノオトが肩を竦める。とはいえ、オーライズの本家本元であるヒャッキ出身の彼女からすればそう呼びたくもなる現象なのだろう。
事実、オーラの鎧を身に纏うのはオーライズに酷似しているからだ。しかし、タイプの変更が無いという点やメガシンカをキャンセルした点など、明らかに異常な挙動も多い。
「ともあれ、此処にいる4人の目的は同じ。異変の調査でござる。拙者も協力しよう」
「お前達はこれからどうするんだ?」
「拙者はこれでも筆頭キャプテン。その立場を使うならば今でござろう」
「つまり──情報収集ってわけか」
「ああ。ノオト殿も一緒でござるからな。そして、その間に手持ちのポケモンも集めていくつもりでござる」
「戦力増強もしないといけねえのか……流石にニンフィアだけじゃ心許ないしな……」
「フィッキュ……」
ポケモンにはタイプ相性がある以上、幾ら歴戦のニンフィアと言えど苦手な相手には攻撃が通らずに苦戦する可能性が高い。
実際、今回のサイドンも、敵の能力が上がっていたからか、等倍技をぶつけるだけではロクな有効打を与える事が出来ていなかった。
「拙者たちはこれから、マーニャの公的な研究機関に今回の件を報告しに行くつもりでござる。ヌシポケモンの賞金も、そこから出ているでござるから」
「恩を売ればサポートを受けられるかもしれねぇし、将来的にサイゴクで似たような事例が起こった時にマーニャの力を借りられるかもしれねえッスからね」
打算ありきのようにノオトは語るが──実際、原因が分からない以上、他の地方でも今回の暴走が起こらないとは限らない。
故に、出来るだけマーニャとサイゴクの結びつきを強くしておきたい、とキャプテン達は考えているのだろう。
「はは、抜け目ねぇな……そんじゃあ、折角会えたけど一旦お別れか」
「調査なら別行動の方が効率は良さそうだもんね。キャプテンじゃないと出来ない事もあるだろうし」
「それに、ノオト殿に埋め合わせもしなければならないでござる」
「オレっちは別に、そんなに気にしてねえッスけど……」
「拙者が気にするのでござるよ。元は拙者のワガママでござるからな」
「わわ、キリさん……!?」
ぎゅう、とキリがノオトの腕を抱き寄せる。メグル達の前でならば、すっかりスキンシップを取ることにも抵抗がないようだった。
昔は人前で仮面を取る事が出来ない程のシャイガールだったのだが心を許した相手ならば、すっかり素で接することが出来るようになったのは彼女の成長と言えるだろう。
その彼女の素とは色ボケガールなのであるが。
(キリちゃん積極的……! ボクもアレくらいやった方が良いのかな……!)
「そうだ! 俺達次はヴァリカン島の調査に行こうと思ってんだよ」
「さっき言っていた、マーニャに伝わる伝説のポケモンに関する情報……でござるな」
ノオトの腕の感触が心地いいのか、彼女はそのまま離そうとしない。すっかり彼の傍を安らげる場所と認識しているようだった。まるで猫のようである。それで真面目な話をしようとするので、メグル達は頭が痛くなるのだった。
(仮面無しじゃあまともに人と話せなかった昔に比べれば良いんだろうけど……)
「その線は盲点だったと思っている。拙者たちは現地の伝承に対してあまりにも無知だった」
「可能性の一つとして調べるのは全然アリだと思うッスよ」
「宮殿に行けば何か分かる事があるかもしれねえ。確か二人はヴァリカン島に滞在してたんだよな、色々教えてくれねーか?」
メグルは身を乗り出し、キリに問う。彼女も「無論でござる! ヴァリカン島も……とても良い場所でござった」と笑顔で答えるのだった。一方、ノオトはアルカに向かって耳打ち。
「ところで、とっておきのデートスポットもあるみたいッスよ、アルカさん」
「……是非教えて!」
「フィッキュルルル……」
※※※
──ヴァリカン島、”とこなつのきゅうでん”。
その内部には、巨大なクワガタムシの如き石像の姿があった。
クワガタムシと言ってもヘラクロスやカイロスのような二足歩行ではなく、全ての足を地に付けた姿をしている。
「ランクルス見て……こんなポケモン、見たことが無いです。強いて言うならクワガノン……だけど、全然似てないし」
「ぐちょちょ」
「……ランクルス、どうしたのですか?」
白いカチューシャを付けた少女は、傍らに立つゼリー状のポケモン・ランクルスが何かを感じ取ったことに気付いたようだった。
そして自らの手をランクルスの頭に翳す。エスパータイプは、テレパシーによってある程度人間と意思の疎通を図る事が出来るのだ。
「……来るんですか? メグルさんが……此処に?」
「ぐりゅりゅりゅ」
ヴァリカン島に迫る彼のビジョンが少女の脳裏には過った。
「……懐かしい。ミッシングアイランドでの事……昨日のように思い出します。そうでしょう、ランクルス」
──序章「ポケモン廃人、知らん地方に行く」(完)
これまでのぼうけんを レポートにきろくしますか?
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ラブコメ、純愛
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戦闘シーン
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シリアス、曇らせ
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ギャグ、コメディ