ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第36話:最後のオオワザ

「──ボクルグガァァアアアアアアアアーッッッ!!」

 

 

 

 先程とは比べ物にならない程の速度で空へ飛び出したマイミュは、先ずヨイノマガンに掴みかかる。

 砂漠ではないが故に、ヨイノマガンは本来の力を発揮する事が出来ず、水場に沈められ、その身体が崩れてしまう。

 

「ヨイノマガン、しっかり──”ふうとん・つむじ”ッ!!」

「ケェエエエエエエエエレェェエエエエエスゥゥゥウウーッッッ!!」

 

 至近距離から大竜巻を巻き上げてマイミュを退かそうとするが、それを物ともせず、マイミュは巨大な渦潮を口から吐きだして押し込んでしまう。

 ヨイノマガンが水の中へ崩れ落ちていくのを見て──ノオトの顔から血の気が引いていく。

 

「キリさんッッッ!!」

 

 だが駆け付けることなど出来はしない。二人の距離はあまりにも離れすぎていた。

 

「仕方ないわねえ──もう一度オオワザを浴びせるわよッ!! ブースターちゃんッ!! ”メルトリアクター”ッ!!」

「サンダースッ!! ”ホノイカヅチ”ッ!!」

「アケノヤイバッ!! ”あかつきのごけん”なのですよッ!!」

「ぷるるるるるーっ!」

 

 そうなれば、今度は先程まで通用していた。

 しかし、放たれたオオワザは全てマイミュが展開した障壁によって弾かれてしまう。

 そして──反撃と言わんばかりに裂け目から放たれた大量の水の柱によって、ヌシポケモンもキャプテン達も薙ぎ払われてしまうのだった。

 

「ミコっち!! サイコパワーであいつの動き止めてよッ!!」

「──試しておるわッ!! だ、だが、止まらん……!? 何故──」

 

 

 

【マイミュの ハイドロポンプ!!】

 

 

 

 そうこうしている間に、更に裂け目が現れ──ハイドロポンプが次々に撃ち放たれていく。

 バサギリを回収して飛び回るヘラクロスだったが、空から次々に飛んでくる水の柱を避け切れず被弾し、墜落してしまう。

 デジー達も最早攻撃するどころではない。逃げるのに手一杯だ。

 そして、後輩たちを逃がす中、振り返ったレモンは反撃に転じた。

 

「何やってんのレモン先輩ッ!?」

「貴女達は逃げてッ!! ……行くわよハタタカガチッ!」

 

 放たれた無数の稲光の弓矢も、マイミュが展開した時空の裂け目に吸い込まれ、全て消えてしまう。

 そしてレモンの真上に裂け目が現れ、そこから先程吸い込んだ稲光が降り注ぐ。

 ハタタカガチは避ける事が出来てもレモンはそれを避ける事が出来ない──

 

「ぎゅらるるるるるる!?」

 

 電光化してハタタカガチは咄嗟にレモンに覆い被さる。

 しかし、稲光の全てを受け止め切ることが出来ず、弾け飛んだ雷に当たったレモンの悲鳴が響いた。

 間もなく。

 ハタタカガチのギガオーライズも解除される。シンクロしているレモンが倒れたことで保てなくなったのだ。

 

「レモンさん──ッ!!」

 

 それを見たイクサも駆け寄ろうとするが、すぐに駆け付けられる位置ではない。

 彼の視線は、自然と下手人であるマイミュに向いた。

 

「お前──レモンさんをよくも……ッ!!」

「パモパモパモーッ!!」

 

 しかし──それでも大量の裂け目に囲まれてしまっては、イクサも身動きが取れなくなる。

 間を置かずに大量の水が放たれ、彼も弾き飛ばされるのだった。

 シンクロは保てなくなり、パーモットのギガオーライズも解除されてしまう。

 

「ぱもっ!? ぱも、ぱもぱもーっ!!」

「痛ッ……がぁあっ……ダメだ、立てない……!!」

「ぱもーっ……!!」

 

 肩、そして脚の激痛に耐えながら、辛うじて起き上がるイクサだが──咆哮を上げながら進軍する巨龍を前に打つ手がない。

 

(考えろ……あいつに、少しでも大きなダメージを与える方法──ッ!!)

 

 

 

「グボルグググガアアアアアアアアアアーッ!!」

 

 

 

 マイミュが吼える度に、空から”りゅうせいぐん”が降り注ぎ、町に火の手が上がっていく。

 ビルを尻尾で薙ぎ払い、裂け目から流れ出る水で周囲を満たしていく。

 自らがこの星の盟主であるかのように、傲慢に辺りのものを破壊し、進軍していく──

 

「ヘラクロスッ! しっかりして──ッ!」

 

 ヘラクロスが墜落した地点に、オトシドリに飛び乗って移動したアルカが駆け付ける。

 水の一撃を受けたからか、バサギリ共々戦闘不能だ。しかし、確かにバサギリを守ってくれたヘラクロスに──「やっぱ君は森の王様だよ……」とアルカは零すのだった。

 

「──サンキュー、バサギリ。ゆっくり休んでてくれ」

「グラッシュ……」

 

 バサギリをボールに戻し、メグルは──進軍し続けるマイミュを見やる。先程まではヨイノマガンと同等サイズだったのに、今は全長が40メートルほどに膨れ上がっており、最早特撮の怪獣と遜色ないサイズだ。

 それが天敵の居なくなったベニシティを我が物顔で破壊し続けている。

 

 

 

「──ざッッッけんじゃねえぞ!! 勝った気になってんじゃねえ!!」

 

 

 

 ──メグルの叫び声が響いた。

 

「……こんな所で終わりじゃねえ──終われるわけがねえだろ……!!」

「そうだよ──まだ何も終わってないッ!! 諦めないよッ!!」

 

 二人はオトシドリに飛び乗り──上昇した。

 メグルの背中には、気に食わないとばかりに歯を剥き出しにしたニンフィアがしがみついていた。

 

「そうだ──拙者たちは諦めはせん……!!」

 

 マイミュは後ろを振り向く。

 先程倒したはずのヨイノマガンが、その身体を再生させて再び起き上がっている。

 その頭頂部には、ワイヤーをヨイノマガンの身体に突き刺して固定したことで振り落とされずに済んだキリが立っていた。

 衝撃で仮面は壊れていたが、それを脱ぎ捨て──必死の形相で叫ぶ。

 

「──拙者はキャプテンだッ!! このサイゴクの命を守る使命を背負っているッ!! まだ死ねない、死ぬわけにはいかないッ!!」

 

 ヨイノマガンがマイミュに掴みかかった。

 必死に振り解こうとするマイミュだったが、そこに今度は炎、冷気、そして稲光の集中砲火が辺りから浴びせられる。

 

「あらあら? どうしたの? まだ終わってないわよ、勝負は!」

「ブチ切れたわ──久々にねッ!!」

「ぷるるるー!!」

 

 瓦礫の上に這い上がったキャプテン、そしてヌシ達が攻撃を仕掛けていた。

 

「これ以上、この町は──やらせはしないのですよッ!!」

 

 次々に影の剣がマイミュの身体に突き刺さる。

 ヨイノマガンの”あかつきのごけん”で動きを封じ込めたのだ。

 しかし、先程のようにはいかない、とばかりに力づくでマイミュは影の剣を引き千切り、ヨイノマガンも振り払おうとする。

 だが、それが致命的な隙となった。身体を駆け上がってくるルカリオ、そしてミミロップの侵入を許してしまう。

 彼らを撃ち落とそうと時空の裂け目を呼び出すが、いずれも華麗に避けられてしまうのだった。

 

 

 

「──聞こえるかクソドラゴンッ!! オレっち達ゃ、テメェに踏み潰されるようなヤワな生き方してねーんスよ!!」

「──どんな逆境でも、抗ってみせるもんねーッ!!」

 

 

 

 打撃が同時に加えられ、マイミュの身体がよろめく。

 だが、それでも倒れはしない。時空の裂け目から放った”ハイドロポンプ”でルカリオとミミロップを撃ち落としてみせるのだった。

 しかし、今度は死角から飛び出した電球蛇が喉に食らいつき、思いっきり放電を放つ。

 

 

 

「ボクルミュググガガガガァァァァァァーッッッ!?」

 

 

 

 最後の力を振り絞った超高圧電流。

 流石のマイミュも絶叫し、暴れ狂う。

 レモンは這いつくばりながら──しかし、それでも不敵に笑ってみせる。

 

「……悪いわね。蛇は……しつこい生き物なのよッ!!」

「レモンさん……良かった、無事だったんだ……ッ!!」

 

 イクサは──肩を押さえながら立ち上がる。もうギガオーライズは解除されたにも拘わらず、その眼には赤黒い稲光が迸っていた。

 

「──行くよパモ様。あいつはドラゴンタイプだ。これで──有効打が与えられるかもしれないッ!!」

「ぱもッ!!」

「勝利への道は……僕達がッ!! 切り開くんだッ!!」

 

 カードケースから取り出したオーカードを、イクサはオージュエルに翳す。

 そこに描かれていたのは、天に昇る翠色の龍。

 イクサが、最初に手にしたカードだった。

 

「レックウザ……もう一回僕達に力を貸して」

「ぱもーっ!!」

 

 龍気が迸り、パーモットの身体に纏われていく。

 一瞬、レックウザの姿が現れ──そして、その拳へと吸い込まれていく。

 

「……ロータス。オマエの相棒は確かに、あやつに受け継がれたぞ」

 

 ミコはその名を口走り──そして、叫ぶ。

 

「行けッ!! ()()()ッ!! ブチ抜いてやれ!!」

 

【オオヒメミコの てだすけ!!】

 

 オオヒメミコの目が輝くと共に、パーモットの身体に更に稲光が迸る。

 ”てだすけ”によって、技の威力は更に跳ね上がる──

 

 

 

「──パモ様ッ!! Oワザ──”げきりん”!!」

 

 

 

【パーモットの げきりん!!】

 

 

 

 龍の咆哮。

 それに、パーモットの叫びが重なる。

 マイミュの顔面目掛け、天に翔ける龍の如き鉄拳が撃ち込まれる──

 

「ボ、クルグガッ……!?」

 

 ぐらり、と巨龍の身体が揺れた。

 よろめき、それでも辺りに時空の裂け目を作り出して攻撃を続ける。

 だが──今の攻撃は余程響いたのか、もう狙いを定める事すら出来ていない。

 それでも暴れ狂おうと腕を振り上げようとしたが──

 

 

 

「──ごっめんねぇー? 悪いけど、真打ってのは最後の最後で出てくるもんだからさぁー」

「どぅーどぅる」

 

 

 

【ドーブルの ちみもうりょう・じごくえず!!】

 

 

 

 突如、何処からともなく現れた大量の魑魅魍魎の集団に足から胴、腕までびっちりと這いずり回られ、マイミュは動けなくなってしまった。

 そしてドーブルのオオワザだ。

 

「いやー……未来と古来のポケモン共に追っかけ回された時は死ぬかと思ったけど、遅れた分はこれでチャラになるよね」

「どぅーどぅる」

「さぁて、後は頼んだよ!! メグル君ッ!!」

 

 空に逃げようとしても、亡者共に食いつかれて飛び立つことすら出来ない。そうこうしている間に、メグル達の接近を許す結果となってしまう。

 

「──ニンフィアッ!! アブソルの分までデカいのぶつけるぞッ!!」

「ふぃるふぃーッ!!」

「オーライズ──”アブソル”!!」

 

 まばゆい光を放ち、ニンフィアの身体にオーラの翼、そして霊魂が纏わりつき、それが鎧となる。

 

 

 

【ニンフィア<AR:アブソル> タイプ:ゴースト/格闘】

 

 

 

「ボクルグガァァアアアアアアアアーッッッ!!」

 

 

 

【マイミュの アトラクトブレイク!!】

 

 

 

 咆哮し、巨大な大渦を呼び出すマイミュ。

 だが──ニンフィアも、それに負けない程の巨大な剣を呼び出す。

 

 

 

「オオワザ──”あかつきのごけん”ッ!!」

 

 

 

 大渦と、影で出来た巨大な剣がぶつかり合った。

 両者はせめぎ合い、ぶつかり合う。

 だがそこに──アルカが投げたボールから飛び出したデカヌチャンが、ハンマーを振り上げる。

 

「押し込んでデカヌチャン!! ”デカハンマー”ッ!!」

「かぬぬッ!!」

 

 力いっぱいに、デカヌチャンはハンマーを巨大な剣の柄に打ち付けた。

 釘を金槌で叩き、押し込むように。

 随分と大きな釘ではあったが、デカヌチャンからすれば容易いものだった。

 その勢いが加わり──剣は大渦を突き破って、マイミュの脳天に突き刺さり──そして貫いた。

 

 

 

【ニンフィアの あかつきのごけん!!】

 

 

 

 マイミュの巨大な龍の如き身体は崩壊していく。

 オシアス磁気が辺りに霧散して、消えていく。

 ギガオーライズの鎧は今、砕かれたのだ。

 そして、崩壊する龍の中からは、あの小さな水のトカゲのようなポケモンが飛び出したのを、ニンフィアは見逃さなかった。

 

「まみゅーっ!! まみゅみゅ──ッ!!」

「フィーッ!!」

「……まーみゅ♡」

 

 ──特別意訳:……見逃して♡

 

「フィッキュルルル♡」

 

 ──特別意訳:くたばれボケカス♡

 

「まみゅーっ!?」

 

 落下する両者。

 必死に逃げようとするマイミュに対して、悪魔の如き形相でニンフィアは大きく口を開ける。

 今日この日、マイミュは思い知ることになる。凶暴リボン──そのニンフィアに付けられた異名の意味を。

 

 

 

「フィッキュルルルルィイイイイイイイイーッッッ!!」

 

 

 

【ニンフィアの はかいこうせん!!】

 

 

 

 妖精の加護を帯びた必殺の光線が至近距離からマイミュを包み込む。

 龍気を浄化し、消し飛ばす力を前に、最早水トカゲの姿では無力であった。

 時空の裂け目を新たに生み出す余力など残っているはずもなく──全身でそれを浴びたマイミュは、水の中へと叩き込まれる。

 

 

 

「──ぼくるみゅがぁぁぁーっ!?」

 

 

 

【効果はバツグンだ!!】

 

 

 

「ふぃー……」

 

 

 

 そして、全力を出して力尽き、落下するニンフィアを──すんでのところでメグルが抱きとめる。

 

「……ったく、最後の最後まで世話ァ焼かせる姫様だな」

「……ふぃー……!」

「不服そうだねー、ニンフィア」

「いや、悪かったって。世話焼かせたのは俺も同じか」

 

 遅れて、爆発音が響く。

 そして腹を背にしたマイミュがぷかぷかと浮かび上がり、辺りに開かれていた時空の裂け目は次々に消えていく。

 空の色も元の通りに戻っていく。

 

「……全部、戻っていくね。空──!」

「ああ……!! 一件落着……だな」

「ふぃるきゅー……」

 

 快晴。雲一つない晴れ。

 そんな空の中、二人は──何時ぶりかのように笑い合うのだった。

 

「……全く……やっと終わったよ……」

「ぱもー……」

「あいだだだだ……やっば、これ全治何週間だろ……折れてるかな流石に」

「ぱもぉー……」

 

 幸せそうな二人を乗せるオトシドリを眺めながら──イクサは力無くその場に寝そべった。

 

「……ま、いっか……全部丸く収まったみたいだしね」

「ぱもぱも」

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