ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第33話:VS・マイミュ

 ※※※

 

 

 

「──いよう、しばらくぶりだな」

「……」

 

 

 

 ベニシティの高層ビルの屋上。

 そこで、リンネと水トカゲは町を見下ろしていた。

 振り向くこともせずに彼は言い放つ。

 

「……疼くんだよ──お前のアブソルに斬られた右目が」

「何だ? そういうのは中学二年生までにしとくもんだぜ」

「……何を言ってるかさっぱり分からんが──やっぱりお前とは同じ空を頂けないらしい」

 

 漸く振り向いたリンネ。その右目の刀傷を見て──メグルは言葉を失う。

 奇しくも両者共に、右の目の光を失ったようだった。

 

「俺達ゃこんな所まで似てるのかよ」

「誰の所為だと思っている」

「全部テメェらの所為に決まってんだろが」

「……本当に何処までも虫唾が走るヤツだ──お前もそう思うだろう? マイミュ」

「まーみゅーず」

 

 ふよよよ、と水トカゲがリンネの前に進み出る。

 丸い水の球に乗っかったトカゲのようなポケモン。

 改めて見ても、メグルが知るどの種類にも該当しない完全なる新種だ。

 

()()()()。俺がそう名付けた──こいつが吼えれば時空が裂ける。何もせずとも他の世界から災禍を呼び寄せる。沈むぜ、この町は」

 

 

 

 ピキ、パキパキパキ──

 

 

 

 辺りから硝子が割れる音が鳴り響き、大量の水が町目掛けて注がれていく。

 とうとう水を逃がせる閾値を超えたのか、道路には水が張られていく。

 

「俺はクロウリーを失い、生きる意味を失った。今度は──お前達が全てを喪う番だッ!!」

「……何処まで傍迷惑なヤローだテメェは……!」

「その減らず口も直に利けなくなる」

 

 リンネは笑みを浮かべると──懐から翠色の石を取り出し、メグルに見せつけた。

 

「……何だソレは」

「お前の一番大事なモノだと言っても分からんか。アルカだったか。あの女、儀式のときに抵抗が激しくってだな」

「……テメェら。アルカに何をしたッ!!」

「もう分かっているだろう? ……守りたいもので心の強さが決まるなら──その守りたいものを奪えば良い」

「……やっぱりお前らだったんだな。アルカの記憶を奪ったのはッ!!」

「それで? ……取り戻したいんじゃないか? 愛しの女の記憶をなあッ!!」

 

 ぐっ、と石を握り締めるとマイミュが咆哮する。

 メグルもボールを握り締めて力強く放った。

 

「ニンフィアッ!! お前の出番だッ!! あいつから石を取り返せッ!!」

「ふぃるふぃーっ!!」

「……マイミュ。そいつを沈めてやれッ!!」

「まーみゅ!」

 

 マイミュが吼えれば時空が裂け、そこから水が一挙に射出される。

 その水圧は屋上の床を抉り、切り裂く程。

 高度に圧縮された水は、ダイヤモンドのようにありとあらゆるものを切断する刃と化す。

 

「……ッなんて威力だ!!」

「ほらほら、臆している場合か? 大事な記憶の石は……俺の掌の中にあるんだぞ?」

「テメェッ!!」

「フィッキュルルルィィィーッ!!」

 

 ニンフィアは宙返りして態勢を立て直すと、すぐさま地面を蹴り、マイミュの脳天目掛けて”でんこうせっか”を見舞う。

 更に、怯んだマイミュ目掛けて何度も何度もリボンを叩きつける。

 

「まみゅッ……!?」

「遅れをとるな、マイミュ!! ”ハイドロポンプ”ッ!!」

 

 ピキ、パキパキ。

 硝子が割れる音と共に、再び高圧縮された水が辺りを薙ぎ払う。

 それをすんでのところで飛び退いて躱したニンフィアは、思いっきり息を吸い込んだ──

 

「”ハイパーボイス”ッ!!」

「展開しろ──”まもる”」

 

 水の膜による障壁が展開され、ニンフィアの大音声も遮断する。

 必殺技が全く効かなかったことに戸惑いの表情を見せるニンフィア目掛けて、邪悪に微笑む水トカゲは──”ハイドロポンプ”を直撃させてみせるのだった。

 

「ニンフィアッ!?」

 

 ぐしゃっ、と音が鳴る。ボロ雑巾のように打ち捨てられたニンフィアが、か弱く鳴きながら──それでも足を震わせて立ち上がろうとする。

 

「無様だな。そんなに()()を取り戻したいか?」

「下種野郎が……!!」

「俺は──お前のその顔が見たかったんだッ!! マイミュ、”ハイドロポンプ”で押し流せッ!!」

「くそっ──」

 

 一際大きく空間が割れた。裂けるなんてものではない。空間が一気に崩落したのである。

 そこから放たれる水の量は尋常ではない。

 メグルはニンフィアを抱きかかえたまま、ビルを飛び降りる。

 

「ふぃっ!?」

「怖いかもだけど我慢しろよニンフィア!!」

「ふぃぃぃーっ!?」

 

 間もなく、その判断が間違っていなかったことが証明された。

 放たれた水の勢いで屋上の建築物は吹き飛ばされ、更に建物も抉り取んだからである。

 落ちながらだが、メグルは冷静だった。すぐさまアヤシシを呼び出すとその上に跨る。

 状況を理解したアヤシシは辺りを見回すと、手ごろな足場になりそうな場所目掛けて、空中で鬼火を爆発させ、跳ぶのだった。

 

「ッ……逃がすか!! 行くぞマイミュ!!」

「まみゅ」

 

 逃げたメグルを追うようにして、リンネは大きな泡の上に乗って市街地へと降りる。

 

(大方、開けた場所に戦場を移したかったんだろうが……後悔させてやる!!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「水が溢れ出した……!!」

「あちこちから裂け目が……!!」

 

 

 町中が冠水し始めたのを見て、イクサとアルカは、建物の中に逃げ込んでいた。

 だが、建物の中にも裂け目が現れており、そこから水が溢れ出してくる。屋内であっても安全とは限らない。

 二人は追われるように屋上へ逃げ出した。先程までは町の中央に居た水玉の姿が消えてなくなっていた。

 

(移動された……何処に……!)

 

「これじゃあ、リンネの所に行くどころじゃない……!」

 

 ロトロトロト……

 

 スマホロトムに着信が入る。

 急いでイクサは通話に出た。相手は──レモンだ。

 

『イクサ君、聞こえる?』

「レモンさん!? そっちはどうなってますか!?」

『ギャラドスに乗って移動してるわ。デジーとミコちゃんも回収済み。キャプテン達も空を飛べるポケモンを持ってるから大丈夫でしょうね』

『やっほー、転校生聞こえるーっ!?』

「良かった……皆無事だったんだ」

「レモンさん、僕らはこのままリンネの所に向かいます。既に誰かが戦闘に入ってる」

『恐らくだけど戦ってるのはメグルさんね。くれぐれも気を付けて。私達も機を見て加勢するけど、こんな事態を起こせるポケモン、フツーじゃないわ』

 

 通信はそこで切れる。 

 メガストーンとキーストーンは手に入ったものの、リンネ相手ではこれでも安心できない。

 

(とにかく追いかけなきゃ、リンネを……!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ふぃーっ! ふぃーっ!」

「痛い痛い! 良いだろ別に、結果的に助かったんだから……!」

 

 

 

 ぺしんぺしん、とリボンでメグルの頭をひっぱたき続けるニンフィア。

 アヤシシに騎乗する彼の背中に、そのままへばりついているのだった。

 辺りは裂け目が出来ており、大量の水を一気に注がれ続けたことで道路は既に水没していた。そして後ろからは、水の泡に乗っかったマイミュが迫りくる。

 

「あいつ、想像以上に速いな!!」

「ふぃー!」

「へっ、心配すんなよ! 此処からはヘイラッシャの出番だ!」

 

 アヤシシをボールに戻すと、ヘイラッシャをメグルは繰り出す。そして、ヘイラッシャの上に飛び乗り、水没した道路を進み始めるのだった。

 振り向くとマイミュとリンネが追ってくるのが分かる。

 移動はヘイラッシャに任せ、メグルはもう1つ追加でボールを放った。中からはシャリタツが飛び出す。

 

「シャリタツの姉御、頼んだぜーッ!! ”りゅうのはどう”ッ!!」

「スシーッ!!」

 

 ヘイラッシャの尾の付近に乗るシャリタツは竜気を纏った光線を迫るマイミュ目掛けて放つ。

 だが、それをものともせずにマイミュは避け、徐々に徐々に距離を詰めて来るのだった。

 

「そんなへなちょこドラゴンで、俺のマイミュと撃ち合えると思ってるのか!?」

 

 頭上の空間が割れる。

 そこから、偏差でメグル達を打ち下ろすようにして”ハイドロポンプ”が放たれた。

 ニンフィアが目を丸くしてメグルに抱き着いた。だが、彼は慌てなかった。

 

「試してみるか? へなちょこかどうかをよ──ミラーコートッ!!」

 

 シャリタツの周囲に鏡の障壁が展開される。 

 放たれた水の柱を受け止めた彼女は──そのまま、マイミュ目掛けてそれを弾き返した。

 当然、シャリタツにもダメージは返ってくる。だが、水タイプの技はシャリタツには通用しない。

 こうして跳ね返された水の柱はリンネ目掛けて飛んでいき──彼を水面に叩き落としたのだった。

 

「ごぶふっ!?」

「まみゅ!?」

 

 すぐさまマイミュが水の泡を作り出し、リンネを引き上げる。

 憎たらしい擬竜の姿が、ヘイラッシャの尾鰭に見える。

 

「くっ、くそ、まさか砲撃を俺の方に跳ね返してくるとは──ッ!!」

「オヌシ、シス」

「あ”?」

 

 ──擬竜は挑発するようにヒレを首元に持っていった。

 

 

 

「オシメェ~~~ッ!!」

「貴ッッッ様──ッ!!」

 

 

 

 そして特大の煽り顔をかましてみせるのだった。

 リンネの額に青筋が2本くらい浮かんだ。完全に人間をバカにしている顔である。

 

「シャリタツ、合体だ!! ヘイラッシャの中に入れ!!」

「スシスシ」

「もう許さん!! いや、元より許す気は粉微塵も無いがッ!! マイミュ、”りゅうのはどう”!!」

 

 ぴょんぴょん飛び跳ね、ヘイラッシャの口の中に入るシャリタツ。

 その瞬間、ヘイラッシャの全ての能力値は跳ねあがり、辺りに偽竜の怪の咆哮が轟いた。

 向かってくるマイミュに対して方向転換したヘイラッシャは、飛んできた”りゅうのはどう”に対し、思いっきり尾鰭を叩きつける。

 

 

 

「”いっちょうあがり”ッ!!」

 

 

 

 龍気を纏った尾鰭の一撃で”りゅうのはどう”は弾き返される。

 更にヘイラッシャの大口からシャリタツが”りゅうのはどう”を追撃で放った。

 二つの波動は絡まり合い、マイミュに叩きこまれる──

 

「まみゅ!?」

 

 爆音。

 想定外の反撃に、マイミュの水玉は割れて、水面に叩き落とされるのだった。

 

「マイミュ!? 何処だ!?」

 

 すぐさま水面を覗き込むリンネ。

 しかし──

 

 

 

「まーみゅまーみゅ!」

 

 

 

 ──ケタケタ笑いながら、水トカゲは先程よりも巨大な水の球に乗って水面から浮上するのだった。

 目からは赤黒い紫電が迸っており、更にそれを受けてか、リンネの左目からも同じ色の紫電が迸る。

 それは、ギガオーライズによっておこるポケモンとの同調に酷似していた。ただ違うのは、ギガオーライズは通常、人間側がオージュエルとオーパーツを用いてポケモン側にアプローチを掛けるのに対し──今のこの状況は、マイミュ側がリンネにアプローチを掛けているということであった。

 

「何だ、何だコレは……!? マイミュ……一体、どうした──!?」

 

 

 

「まーみゅーず」

 

 

 

 マイミュの乗る水球に幾何学状の模様が現れ、頭部には王冠の如きパーツが現れる。

 

 

 

【マイミュ<ギガオーライズ> タイプ:水/ドラゴン】

 

 

 

「分かる……分かるぞマイミュ……オ前の、感ジていることが……ッ!!」

「ギガオーライズ、したのか……!? オージュエル無しで──!?」

 

 長年マイミュはオーラギアスの中に取り込まれていたがために、大量のオシアス磁気を摂取している状態だった。

 故に、オージュエルが無くとも体内のオシアス磁気だけでギガオーライズを可能としたのである。

 此処からが本番だ、とばかりにマイミュはケタケタと笑う。効果バツグンの”りゅうのはどう”を受けたものの、全く響いた様子がない。

 

「この野郎、遊んでやがったのか……今の今まで……!!」

「まーみゅーずッ!!」

 

 時空が割れる。

 そこから次々にメグル達を追い立てるようにして、水の柱が噴き出す。

 先程とは数も威力も段違いだ。ビルに当たればそれを真っ二つに叩き折り、水面を走れば大波を起こす程の水圧だ。

 

(くそっ、アブソルが居りゃあまだ対抗できるけど……!! 流石に強さは禁伝クラスか……!!)

 

 水で浸かる町を見やりメグルは歯噛みする。

 避難は終わっているはずだが、マイミュが吼えて時空が裂ける度に町が壊されていく。

 

 

 

「まーみゅ──ボクルグガァァァアアアアアアアーッッッ!!」

 

 

 

【ヌシ咆哮:ヘイラッシャは混乱した!】

 

【ヌシ咆哮:ステータスの変化と特性をかき消した!】

 

 

 

 これまでにない程の咆哮がメグル達を襲う。

 耳を塞がなければ鼓膜が破られていたのではないかと思わせられるほどの大音声だった。

 潜在的な恐怖を植え付けられたからか、ヘイラッシャは恐慌状態に陥り、暴れ狂う。

 

「おいっ、しっかりしろ、ヘイラッシャ!!」

 

 舵をまともに取れなくなったヘイラッシャに対し生ける災禍と化した水トカゲは巨大な泡を作り出す。

 そして、それをメグル達目掛けて飛ばすのだった。

 

「──まーみゅーずッ!!」

 

【マイミュの コラプスバブル!!】

 

 メグルとヘイラッシャは赤い稲光──即ち龍気を表面に走らせた水泡に包み込まれ、空中へと吊り上げられる。

 そればかりか、泡の中は水で満たされておりメグルは呼吸が出来なくなるのだった。

 マイミュが嗤った瞬間、泡は内側から弾け飛ぶ。

 衝撃と共にヘイラッシャとメグルは吹き飛ばされ、水面へと落とされるのだった。

 

「げほっ、がほっ……!!」

 

 辛うじて、ヘイラッシャに掴まるメグル。

 ニンフィアもごほごほ咳き込んでいたが「ふぃっ!?」と怯えた声を上げた。

 水の泡に乗ったリンネが、すぐ傍でメグル達を見下ろしていた。

 

「リンネ……!!」

「……お前もお前もオマエも、オマエも気に食ワない……ッ!!」

「ふぃー……!」

「何故お前が生キている……お前が生きてイるのを見ると、虫唾が走る……!!」

「まみゅみゅみゅ」

「……これで力の差は理解出来タだろう?」

「フィッキュルルルルルィ──」

 

 バチバチ、と赤い稲光がリンネとマイミュの目から迸る。

 ペッ、と唾を吐くと──ニンフィアは低く唸り、大口を開けた。

 

「ニンフィア……”はかいこうせん”──ッ!!」

「ふぃいいいいいいいいいーっ!!」

「”まもる”」

 

 障壁が展開され、ニンフィア渾身の至近距離での”はかいこうせん”も防がれてしまう。

 ぜぇぜぇと息を切らせたニンフィアは、そのままへたり込むようにメグルの肩に突っ伏すのだった。

 

「……終わりか? 終わリだろうな? 切札は全部切ったんだろう」

「ッ……」

「マイミュ──”コラプスバブル”ッ!!」

 

 

 

「──リザードンちゃん、”りゅうのはどう”ッ!!」

 

 

 

「ッ!?」

 

 頭上から突如、龍気が迫るのを感知したマイミュは技を切り上げ、退避する。

 間もなく──メグルとリンネを別つようにして極大の龍気が放たれた。

 水しぶきが冠のように上がる。

 

「メグルちゃん、捕まって!!」

「ッ……ハズシさん!」

 

 空から飛来してきたのは──リザードンだ。

 そして跨るハズシがメグルの方に向けて手を伸ばす。

 すぐさまメグルはヘイラッシャをボールに戻すと、ハズシの手に掴まり、そのままリザードンの背に飛び乗るのだった。

 

「ばぎゅおおおおおおおんッ!!」

 

 咆哮したリザードンは、そのままメグルを空へと連れ去るのだった。

 その様を歯噛みしてマイミュは見つめる。

 

 

 

「ボクルグググ……ッ!!」




【DETA】

マイミュ みずトカゲポケモン タイプ:水/ドラゴン

H95 A95 B110 C95 D100 S105

【図鑑説明:海底に沈んだ古代都市にはマイミュを崇拝していたと思しき痕跡が残っている。】
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