ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第26話:記憶の欠片

 ※※※

 

 

 

【オーラギアス ゆうせいポケモン タイプ:毒/虫】

 

【オーラギアス(ヒャッキのすがた) ゆうせいポケモン タイプ:電気/虫】

 

【隕石の姿の時に近付くのは危険。放つ波動で周りのものを分解して取り込む。】

 

 

 

「……」

 

 改めてオーラギアスというポケモンの詳細を聞かされたキャプテン達は閉口した。

 此処まで恐ろしいポケモンが地上に現れたならば、それは歴史が大きく変わっても仕方がないことであった。

 

「無茶苦茶なのです……”僕の考えた一番強いポケモン”か何かなのですよ」

「辛うじてタイプが弱いので釣り合い取れてるッスね……え? タイプ関係なく毒盛れるんスかコイツ。馬鹿じゃねーの?」

「あったま痛くなるわ……戦わなくて良かったって思うレベルのバケモノなんだから。何? あのクソデカアリアドス? デンチュラ? もうどっちでもいいわ、あいつの所為でヒャッキは危うく滅ぶところだったっての?」

「そうなるな。少なくとも、かつてのオシアスは滅ぼされた」

「色々詰め込み過ぎて頭が痛いわね……」

「だろうな。現実味が湧かんだろう。妾の正体がポケモンである事も含めて、な」

 

 その他、オシアスの歴史、ひいては今までミコが歩んできた旅路を聞くと、余計にキャプテン達は頭を抱えるのだった。

 正直、テング団が可愛く見えてくるレベルであった。

 

「さて、オーラギアスの生態に話を戻そうか。あいつは、隕石の形態がある意味一番危険なんだよね」

「隕石?」

「うむ。言わば捕食形態だ。周囲の無機物・有機物を問わずに粒子に変えて吸収してしまう」

「それはさっき聞いた。……待って。でも、ヒャッキに現れたオーラギアスの亜種ってクモの姿だったわよね。何か違和感があるような」

「ああ──奴が捕食波動を放てば、伝承など残らぬレベルの被害が出ているはずだ。にも拘らず、絵巻にはクモの姿の奴が描かれていた。では疑問が浮かぶ。オーラギアスは一体、いつ……あの水トカゲを捕食したか、だ」

「それって何か重要な事なんスかぁ?」

「重要ね。あの水トカゲが──ヒャッキのポケモンではなく──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことでしょ?」

「僕の仮説はこうだ。あのオーラギアスは、元はヒャッキに落ちてきたんじゃなくて、裂け目を通って別の世界からやってきたんじゃないかって。そして──その時には既に、あのトカゲを捕食した後だった」

「しかし、オーラギアスは流石に裂け目を作り出す能力は持っておらん」

「じゃあ何? もしかして……オーラギアスがヒャッキ地方にやってきたのとか、ヒャッキでやたらと時空の裂け目が起きてるのって……」

「あのトカゲはオーラギアスに捕食されても尚、粒子の状態から復活しておったからな」

 

 こうなると──出てくるのは恐ろしい仮説であった。

 全ての諸悪の元凶が、オーラギアスではなくあの水トカゲにあるという点である。

 そして、あの水トカゲは、オーラギアスの腹の中に居る間も、あの封印地点を起点として時空の裂け目を作り出し続けていたのではないか、と。

 本人に時空を破壊してやろうという意思はないのかもしれない。

 しかし、動物が呼吸するように、そして植物が光合成をするような感覚で──あの水トカゲは時空の裂け目を作ることができるのではないか、とイデアは考える。

 あるいは、あの水トカゲが存在しているだけで、周辺の空間に影響を及ぼし続けるのではないか、とも。

 ただし、その”周辺”の規模は、想像をはるかに超える規模でもある、と。

 

「当のオーラギアスは死んだ。妾達が戦うべき相手は、間違いなくあの水トカゲだ。放っておけば裂け目を生み出し続けるだろう。そうなれば、他の世界にも災禍がバラまかれる」

「対策を練る必要があるけど、情報が少なすぎるわね」

「なぁに。妾はさして心配しておらんがな。此処に居るのはサイゴク最強のトレーナー達。そして、イクサ達はオシアス最強クラスのトレーナーだ。そこにイデアが居れば、何を恐れる必要がある」

「異世界同士の協定ってわけでござるか。良いだろう」

「良いんスか!?」

 

 ノオトがイデアを指差して言った。やはりそれでもイデアを信じられないようだった。しかし。

 

「──全ての責任は拙者が取る。イデア殿、ミコ殿。改めて、拙者たちに協力してもらいたい」

「……世界は違えどサイゴクのキャプテンに頼まれちゃあ仕方ないよね」

「ということで、”ひぐれのおやしろ”としては彼等と協定を組み、事態の解決に当たりたいと考えるが──他のおやしろは?」

 

 大合議の決議は、全てのおやしろに同意を取ることで決まる。

 キリは、他のキャプテン達を流し見た。

 

「”ようがんのおやしろ”としては賛成ね。一刻を争うもの」

「……はぁーあ。釈然としねーッスけど、”よあけのおやしろ”も賛成ッス。姉貴も良いっしょ?」

「はいー、此処で足を引っ張るつもりはないのです。並行世界の同一人物が善悪も同じとは限らないのは、リンネを見てよく分かったのですよ」

「”なるかみのおやしろ”も足並みを揃えるんだから。……完全に信じた訳じゃないから、そこは勘違いしないでよね」

 

(ははー、なんやかんやツンデレっぽいところはホント、ユイちゃんって感じだなあ)

 

 と言おうとしたイデア博士だったが、すんでのところで飲み込んだ。偉い。

 

「それに、協力するのはメグルちゃんとアルカちゃんの為でもあるわ」

「友達が困ってる時に、喧嘩してる場合じゃないんだから」

 

(あのメグルって子……やけに人徳があるんだなあ、意外も意外)

 

 と言おうとしたイデア博士だったが、すんでのところで飲み込んだ。偉い。

 

「では、決定だな。方向性は改めて、他のおやしろの重役、そして”すいしょうのおやしろ”の関係者も含めて決めていきたい。各自、疲れを取り、有事に備える事──以上ッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「懐かしいな……」

 

 思い起こせば、アルカと本格的に絡むようになったのはベニシティに着いた頃だった。

 自分にオージュエルを押し付けたアルカを探し、テング団の事を聞く為に探して回ったのが始まりだ。

 

「此処って?」

「カブラギ遺跡。お前と初めてバトルした場所」

 

 ──ほんっとにもうっ!! 人が水浴びしている所を覗くなんて、サイテーです!!

 

 ──以前、俺に渡した宝石とテング団の事について残さず喋って貰おうか。

 

 ──勝ったら、貴方の欲しい情報を何でも教えてあげます。

 

 ──俺が負けたら?

 

 ──何でも、ボクの言う事を聞いてもらいますからねッ!

 

「……石っぽくて何も無いじゃないですか。何でこんなところに居たんですかボク」

「……お前からそんな事言われるなんてな」

 

 自分の知る彼女からは考えられない反応だ。

 遺跡や化石が誰よりも好きだった彼女が、全く興味を示しもしない。 

 

「お前は、遺跡とか大好きでよく回ってたんだ」

「遺跡……」

「覚えて……ないのか?」

「……はい」

「……」

「……ごめんなさい。覚えてないです」

「……いーよ、次行こうか」

 

 記憶の琴線に触れなかったのを察したメグルは、そのまま踵を返す。

 その姿は──イクサ達の目にも、寂しく見えた。

 次に訪れたのは、所変わってベニステーション近くのショッピングモール。

 アルカとの勝負に負けたメグルは、彼女からデートの誘いを強制的に取り付けられた。

 アルカはメグルを荷物持ちにしたかっただけであり、ときめきもへったくれもないものであった。

 当時の彼女はデートがどういうものなのかも浅い知識だけで、大して理解していなかったのである。

 それでも、メグルにとっては最初に彼女と過ごした大事な時間だった。

 互いにぎくしゃくしていた時期だったとしても。

 

「俺達さ、デートしたんだよ。此処で」

「でーと……?」

「お前から誘って来たんだ。つってもお前、ロクにデートの事とか分かってなかったけどな」

 

 当時は互いに好き同士でも何でもなかったし、とメグルは続ける。

 しかし、それも昔の話。

 付き合った後は二人っきりで一緒に居るのが当たり前になったし、デートするのも当然の事になった。

 

「そう、なんですか。信じられないな。ボク、そんなことしてたんだ」

「……実感、湧かねえのか?」

「心の中から色んなものがポッカリと抜けちゃった気がして。……分かんないんです」

「……これから思い出せば、それで良いよ」

「思い出せれば、良いんですけど」

 

 ──あ、あのー? 何でボクがおにーさんの買い物に付き合わされてるんですか? 普通逆じゃないんですか?

 

 ──分かってねーな、それがデートってもんなんだよ、知らんけど。

 

 ──絶対違いますよね!?

 

 怒ってた彼女の姿をメグルは思い出す。

 今のアルカは──ずっと、落ち込んでいる。声にも起伏というものがない。

 

(……前のあいつは……もっと騒がしくて、喧しかったんだけどな……)

 

「……すっごーい! 美味しそうなお店、いっぱいあるーっ!」

「流石にオシアスとは比べ物にならないわね。ショッピングモールの充実っぷりは」

「日本に帰ってきた気分になるなあ。ついつい買いすぎちゃった」

「ボクもー……ああ、重いなあ。ねーねー、じゃんけんで負けた人が荷物持ちってどう?」

「何でもかんでも勝負に結びつけようとするなよ」

「あら面白いわね。私はやってあげても良いけど」

 

 イクサ達がわいわいと盛り上がってるのを見て──アルカは少しだけ微笑んだ。

 

「結局ボクが全部持つのーっ!?」

「自業自得じゃない。負けたら全部持つんでしょ」

「デジー、キツくなったら言ってよね。持ってあげるから」

「うう、転校生優しい……好き……」

「甘やかさないの、イクサ君」

「……あの人達、楽しそうですね。仲、良いんだなあ」

 

(あ、少しだけ笑った……)

 

 目は隠れている。だけど──ずっと一緒に居たから、彼女の表情の些細な変化もメグルは分かるようになっていた。

 

「ねえメグルさん。この辺り、他には何があるんですか?」

「映画館もあるし……トレーナー御用達ならバトルコートもあるな。デカい公園があるんだよ」

「あのっ、ポケモン達を遊ばせてあげませんか!?」

「そーだよっ! 今日は人少ないしねっ!」

「手持ち……そっか」

 

 メグルは頷いた。

 手持ちのポケモン達と対面すれば、何か思い出すかもしれない。

 

 

 

 ※※※

 

 

  

 ──あの頃。

 バサギリ──かつてのストライクに、メグルはとても手を焼いていた。

 ストライクの気性の荒さは勿論、メグルのトレーナーとしてのレベルが足りず、言う事を聞かなかったのだ。

 彼と何とか距離を縮めるべく、バトルコートでトレーナーと野良試合をしたり、アルカと互いのポケモンを入れ替えて勝負をしたのを思い出す。

 結局なかなか上手くはいかなかったのであるが。

 

「出て来い、お前らっ!!」

 

 平日の真昼間。人の少ない公園で、メグルは手持ちのボールを思いっきり投げる。

 

「ふぃるふぃーっ」

「グラッシュ」

「ブルトゥーム」

「ラッシャーセーッ!!」

「スシー」

 

 ニンフィア、バサギリ、アヤシシ、ヘイラッシャ、シャリタツの5匹が飛び出した。

 そうして──欠けた手持ちを見ると余計にメグルの心は沈みそうになった。この場にアブソルも居れば、どんなに良かったか、と。

 

「ふぃー? ふぃッ」

「えっ、ちょっ、お前──どわぁっ!?」

 

 尚、それを察したのか、ニンフィアは真っ先にメグルの顔に飛び掛かり、そのまま地面に押し倒す。

 私以外の女の事考えてたでしょ、と嫉妬たっぷりの顔でメグルを睨むのだった。

 

「ふぃー……!!」

「大丈夫ですかッ!? 頭打ってませんか!?」

「何とか……そうだ、アルカ。お前もポケモン出してみろよ」

「え? あ、そうだ。ボク……ポケモン持ってたんだ」

 

 アルカもボールを放る。

 中からカブトプス、デカヌチャン、ヘラクロス、モトトカゲ、オトシドリ、ジャローダが飛び出す。

 そして皆揃って、心配そうにアルカの方へ近寄ってくるのだった。

 

「わ、わわわ、どうしたの皆」

「カヌヌ? カヌカヌっ!」

「ぷぴーっ!」

「アギャァス……?」

「ストォーック!」

「……ごめんね。君達の事……覚えてないんだ」

「きゅるる……」

 

 一番付き合いが長い、カブトプスが──撫でてほしい、と言わんばかりに頭を下げる。

 しかし──今のアルカからすれば、見覚えの無い恐ろしい生物にしか見えない。

 恐る恐る手を差し出すので精一杯だった。

 

「……ごめん。本当に、ごめん」

「きゅい……?」

 

 カブトプスは、なかなかアルカの手が伸びないのを気にして彼女の顔を見つめた。

 

「……本当に、分かんないんだ。君達が誰なのか」

「カブトプスは、お前の相棒なんだよ、アルカ」

「……そうなんだね」

「かぬぬーっ!!」

 

 痺れを切らしたのか、怒った様子でデカヌチャンが地団太を踏む。

 ジャローダも、様子がおかしい主人を前にして甲高く鳴いてみせる。

 だが、手持ちの姿を見ても──アルカは何も掴めない、と言わんばかりに首を横に振った。

 

「……カヌッ!! カヌ、カヌッ……!!」

「ストーック……」

「……一緒に過ごしてたら何か思い出すかもしれねえだろ。可愛がってやってくれよ。そいつらは皆、お前の事大好きなんだからさ」

「良いトレーナーだったんですね。以前のボクは」

「……今だってそうだろ」

「ううん……正直、困惑してるんです」

「それならっ、バトルしてみたら良いんじゃない?」

 

 間から割って入るのは──デジーだ。

 突拍子もない提案に、メグルは顔を顰める。

 

「あのなウサギっ子。記憶を失ってるのに、バトルの指示が出来るってのかよ?」

「でも、技名とかは図鑑の説明見れば分かるし……それに、ポケモン達は最悪自分で考えて戦えるでしょ?」

「流石に無茶だろ……」

「良い考えかもしれないわ。バトルの刺激が記憶を取り戻すことに繋がるかもしれないし」

「じゃあ相手は僕が──」

 

 イクサが手を上げようとすると、彼を押しのけてデジーが前に出る。

 

「いーや、転校生は引っ込んでて。此処はボクがやるっ。言い出しっぺだしね!」

「えー、バトりたかったんだけど」

「貴方は戦いだけでしょーが」

「アルカさん、良いよねっ? ボクとバトル、してみよーよっ!」

「ボクに……出来るんでしょうか」

「きゅるるぃー」

 

 カブトプスが勇ましく鳴く。やらせてくれ、と言わんばかりにカチンカチン、と鎌を鳴らす。

 

「……カブトプス、だっけ」

「きゅるぅ!」

「……分かった。やってみるよ」

「審判は私が務めるわ。メグルさん、良いわよね?」

「しゃーねーな……頼むぜ」

 

 バトルコートにデジーとアルカは向かい合って立つ。

 そして、頭のリボンをキュッと締めたデジーはボールを出して、投げた。

 飛び出したのは、一本角が特徴的な怪獣のポケモン・ニドキング。デジー自慢の切り込み隊長である。

 

「転校生ーっ! 見ててよね、ボクの華麗なバトルっ! 頼むよ、ニドキング!」

「ねえデジー。ヒートアップしてギガオーライズとか使わないでよね、間違っても」

「……てへっ♪」

「使わないよね!? 大丈夫だよね!?」

「うちの子達って何でこうも血の気が多いのかしら」

「レモン先輩にだけは言われたくないんだけどっ!? ぶーっ!」

「……えーと、カブトプスの覚えてる技は……ってか、どんな技だっけコレって……」

 

 必死に図鑑の説明に目を通すアルカ。そんな彼女を見かねてか──メグルが立ちあがり、彼女の傍に立った。

 

「カブトプスの覚える技はストーンエッジ、アクアブレイク、シザークロス、あまごいだ」

「……どうやって戦うんですか?」

「カブトプスは雨が降ってる時にパワーアップする。あまごいで雨を降らせば良い」

「詳しいんですね?」

「当たり前だろ、何回コレでやられたと思ってやがる」

「あ、そっか……」

「躓いたら俺が教えてやる。先ずはやってみろ」

「……は、はいっ」

 

 二人のやり取りを見たデジーは笑みを浮かべる。何であれ、二人の距離が縮む切っ掛けになるならそれでいい、と考えたのだ。

 

「よーしっ! 手加減しないよーっ! ぴょんぴょーんっと、勝負ーっ!」

「……お願いしますっ!」

 

 

 

【ポケモントレーナーのデジーが勝負を仕掛けてきた!】

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