ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第21話:復活のオーラギアス

 ※※※

 

 

 

「ハハハハハハ!! 蘇れ、ヒャッキの三大妖怪よ!! この私が貴様の力、支配してくれよう!! ハハハハハハハハハ!!」

 

 

 

 儀式は完遂された。

 磔にされた巫女たちが首を垂れる中、大穴からは紫電がとめどなく迸り続ける。

 そして、鎖が砕け散る音と共に、それは奈落の穴から這い出して来る。

 クロウリーも想像だにしなかった、巨大な大蜘蛛の顔がぬるり、とせり出した。

 

 

 

「ヲ……ヲヲオオオオオオオオオオオオオオオオガギガガガガガガ!!」

 

【オーラギアス(ヒャッキのすがた) ゆうせいポケモン タイプ:電気/虫】

 

 

 

「……は……? はは……?」

 

 クロウリーも、思わず笑みを止める。

 そして杖を取り落としてしまった。

 話が違う。聞いていたものと全く違う。

 想像していたものと全く違う。

 

「……? ……? ……? ……見間違いではないようだが……?」

 

 大烏、九尾、鬼、みっつ合わせた三大妖怪が来ると聞いていたのに──這い出して来たのは、凡そ10メートル近くはあろうかという巨大な大蜘蛛。

 見間違いではない。

 

「……封印を解く場所を誤ったか……?」

 

 誤りではない。正解である。

 伝承が違っていたのか? などと考える間もなかった。

 ヒャッキに伝わる真の怪物──王羅蟻亜棲改め、オーラギアスは今此処に再び産声を上げたのである。

 結晶に包まれた肥大化した腹、そして牛の角の如く曲がりくねった二本の大角が生えている。

 しかし、そのうち右の一本は、痛々しく折れてしまっていた。

 鬼の如き怪物染みた図体に、形相。それを前にして、クロウリーは──

 

 

 

「まあ、いいだろうッ!! うんッ!!」

 

 

 

 ──気にしない事にした。考えることをやめた。

 

なんか思っていたのとはちょっと違うが──この際どうだって良い!!」

「ヲヲヲヲヲヲヲ?」

「……この私の手で支配してくれようぞッ!!」

 

 杖を再び振りかざすクロウリー。

 オーラギアスの頭部に、紋様が刻まれる。

 知性を持たぬ獣ならば問答無用でその支配権を握る事が出来るこの技こそクロウリーの固有魔法であった。

 人間であれば、数時間程度しか効果を持たせることはできないが、獣──即ちモンスターであれば、永続的に意識を掌握することが可能なのである。

 しかし。

 

「ッ……!?」

 

 オーラギアスは、一度不愉快そうに咆哮したかと思えば、その巨大な前脚をクロウリー目掛けて降り下ろす。

 紋様が浮かび上がった以上、魔法には掛かったはずだ、と確信していたクロウリーだったが──そんな事を考える間もなく、オーラギアスは転身してのたうち回り始めるのだった。

 このままでは逃げられる──

 

「ええい、大人しく我が手中に収まるが良い!! ブリガロン、行けッ!!」

 

 クロウリーの呼び声で、地中から凄まじい音と共にそれは飛び出した。

 地表は砕け散り、そこから回転しながら現れるのは全身が鋼の鎧に覆われたポケモンであった。

 

「ロォーシュィーッッッ!!」

 

【ブリガロン(???のすがた) とげよろいポケモン タイプ:草/鋼】

 

「──私を追放した王国を──否、私を不要としたこの世界を滅ぼすために、シモベとなって貰うぞ!!」

「ヲ? ヲーガギガガガガガガガガガガガガ!?」

 

 その時だった。

 オーラギアスの腹が青白く輝く。

 

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!? ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!」

 

 そして、オーラギアスは自らの重たい腹部を思いっきり何度も地面に打ち付けたかと思えば、ブリガロンやクロウリー等目もくれずに、明後日の方向へとのたうち回りながら進みだすのだった。

 

「追え、ブリガロンッ!!」

「ロォーシュ……!!」

 

 すぐさまドリルのように回転しながら地面に穿孔したブリガロン。そのまま、暴れ狂うオーラギアスの足元の地面を掘削し、自重で沈み込ませる。

 

「オーガギガガガガガガガガガガガガガ!?」

 

 絶叫すると共に、周囲には電気を纏った糸が飛ぶ。

 それが木々に触れれば一瞬で焼き焦がし、炎上させてしまう。

 しかし──クロウリーもまた、それに対し先んじて手を打ってみせる。

 マントを翻せば、その足元の影からは巨大な七つの首を持つ竜が姿を現すのだった。

 

「次は貴様だ、カミツオロチ!! あいつ諸共、周囲を凍らせてみせろッ!!」

「カミチュララララララ!!」

 

【カミツオロチ(???のすがた) ばけオロチポケモン タイプ:氷/ゴースト】

 

 巨大な氷の林檎から冷気、そして霊気が漏れ出す。

 竜の首は、実体のない霊気のみで構成されており、吐息は呪いの冷気。

 触れたものを永遠に氷の中に封じ込めてしまう。

 すぐさま地面は凍っていき、炎上する木々さえも炎諸共氷の中に閉じ込めてしまうのだった。

 そして、オーラギアスもまた、足元から凍っていくのが見える──

 

【カミツオロチの のろいのれいき!!】

 

 全身が凍り付いたオーラギアスに向けて、クロウリーはほくそ笑む。

 こうなってしまえば、もう動けはしない。タイプを変えた上で、ブリガロンによる必殺の一撃を叩き込むことが出来る。

 

「他愛もないッ!! ブリガロン、トドメを刺せッ!! ”アイアンヘッド”!!」

 

 硬化させた腕を盾に変えたブリガロンは、思いっきり地面を蹴って跳び上がる。

 そして、空中でくるくると回転したかと思えば、そのまま盾を構えてオーラギアスの頭に突っ込むのだった。

 渾身の重撃がオーラギアスの顔面に叩きこまれる。

 勝利を確信した魔術師は、杖を再び構え、オーラギアスを支配下に置く準備をしようとしていた。

 しかし。

 

「ヲ……ヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!?」

 

 オーラギアスの腹部がまたしても不気味に輝く。

 そして、苦しむような声を上げたオーラギアスは──咆哮。

 

 

 

「ヲヲヲヲヲヲヲガギガガガガガガガガガガッ!!」

 

【ヌシ咆哮:悪い効果を打ち消した!!】

 

【ヌシ咆哮:ポケモン達は怯んで動けない!!】

 

 

 地面が揺れ、木々が揺れ、山をも揺さぶるほどの叫び。

 同時に、オーラギアスを覆っていた氷は溶けていき、一方で真正面から咆哮を受けたブリガロンは動けなくなってしまう。

 そして獲物の姿を捕らえたオーラギアスは、全身から電気を帯びた糸を放ち──ブリガロンの身体に突き刺すのだった。

 

 

 

【オーラギアスの 10まんボルト!!】

 

 

 

 こうかいまひとつ──など、関係ありはしない。

 木々を焼き焦がす程の高圧電流がブリガロンに流し込まれ──その身体は真っ黒こげになり、倒れ込む。

 そして、障害の一つを排したオーラギアスは、自らを氷漬けにしたカミツオロチに今度は目を向けるのだった。

 

「オーガギガガガガガ……!!」

「バ、バカな、一度凍れば二度と出て来られはしない、カミツオロチの氷だぞ!? 一体、何故──!!」

「カミチュラララ……!?」

「ええい、怯むなカミツオロチ!! ”ふぶき”ッ!!」

 

 大吹雪がオーラギアスに吹きつけられる。

 しかし、そんなものは何処吹く風でオーラギアスは真正面からそれを受け止めながら前進していく。

 

「く、来るなッ!! く、クソッ、凍れ、凍れ、凍れ──ッ!?」

「──オーガギガガガガガガ……!!」

 

 オーラギアスの全身から大量の糸が放たれる。

 そして、それがカミツオロチを、そしてクロウリーの全身を、まるでワイヤーでも通したかのように刺し貫いた。

 

 

 

【オーラギアスの 10まんボルトッ!!】

 

 

 

 糸から、高圧電流が流し込まれる。 

 雷でも落ちたかのような音が何度も響き渡ったかと思えば──後に残るのは、全身が炭のように黒く焼け焦げた魔術師の姿だけだった。

 倒れ込むクロウリー。

 人肉の焼け焦げた嫌な匂いなど気にも留めず、オーラギアスは──自らを蝕む苦痛から逃れるようにして、再び進みだすのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「しっかり。しっかりして頂戴ッ!!」

「……」

 

 

 呼びかけられながら、身体を揺すられる。

 心なしか息が苦しくない。そればかりか、身体に掛かっていた重りのような負荷が消えていることにイクサは気付き、起き上がった。

 

「ッ……一体どうなって──!!」

「起きたようね。”なんでもなおし”が効いたみたい」

「!」

「全く、今回ばっかりは死んだかと思ったよ。あんまり心配させないでくれよ?」

 

 イクサは思わず振り返った。そこに立っていたのは──リーゼント姿の濃い化粧の大男。

 そして、傍らに立つのは──

 

「イデア博士ッ!? それに、その人は……」

「あら、初めましてね。私はベニシティ・キャプテンのハズシ。以後ヨロシク♡」

「……ま、色々あって合流したんだよ僕達。大変だったんだぞう、君達を探すのは」

「助かりました……!」

「ぱも……」

「パモ様もこの通り。命に別状は無いよ。でも、戦わせるのは止した方が良いかなあ」

 

 パーモットを抱きかかえたイデアを見て、イクサは──心の底から安心し、そのまま地面に倒れ込んだ。

 緊張が解けて、ギガオーライズの過重負荷が一気に襲い掛かってくるのだった。

 

「ごめんよ、パモ様……無理させちゃった」

「ぱもー」

「……良かったです……二人が来てくれて……」

「でも、どうやら事態は一刻を争うみたいだねえ」

「というのは?」

「……さっきも聞こえてきたんだけど──」

 

 

 

「──ヲヲヲヲヲヲヲガギガガガガガガガガガガガガッ!!」

 

 

 

 野太い咆哮。遠巻きに見える紫電の束。

 何が起こっているか詳細は不明だ。しかし、この鳴き声にイクサは覚えがあった。

 

「おい、嘘だろ……!?」

「まさかまさかだねえ」

「ねえ、ワタシだけかしら? 事態を飲みこめてないのは」

「オーラギアス!! ヒャッキに封印されてたヤバいポケモンで……前に、僕達の世界でも大暴れしたんです」

「あらあら……つまり、デンジャラスってことかしら?」

「最悪この地方、滅ぶかもね」

「じゃあ、止めなきゃじゃない?」

 

 ポキポキと指を鳴らすと、ハズシは不敵に笑ってみせる。全く臆した様子はないようだった。

 

「僕らでオーラギアスを……捕獲しましょうっ!!」

「あーあ、またアイツとやり合うの、正直かったるいどころじゃないんだけどなあ」

「イデアちゃん、怖気づいたの?」

「怖気づくでしょー。僕あいつに一回殺されかけてるし。でも、此処で逃げたら──嫁さんに怒られるから、やりますよ」

 

 

 

「──周囲の状況を確認したぞっ」

 

 

 

 何処からともなく──何かが飛び降りてくる。

 その姿を見たイクサは、更に目を丸くする。

 仮面を被った褐色少女と、鋼の羽根のクエスパトラ。イデアが居るならば当然彼女もいるだろう、と思っていたが──それでもイクサは驚きを隠せなかった。

 

「ミコさんまで!?」

「細かい事は後! 様子を見に行ってきたが間違いなく、オーラギアスだ! だが……あいつの姿、そして持っている力は、以前我々が観測したソレとは大きく異なる」

「……もしかして、タイプが違うとか?」

「そうなるな。姿も異なる。あいつら、どうやら個体差による能力の違いが激しいポケモンのようだ。その証拠にオーライズ無しで電気を放っておる」

「ふぅむ。リージョンフォームと呼んで良いのかどうかも分からないな。一応、ヒャッキのすがたとやらにしておこう」

 

(リージョンフォームの定義ってガッバガバだな……いや、博士だからか)

 

「電気、ねえ。それじゃあリザードンちゃんで空から攻撃するのも聊かリスクが大きいわね」

「あれ? ハズシさんのメガリザードンって、Xじゃなかったっけ」

「何言ってるのよイデアちゃん、私のリザードンちゃんは昔っからY一択じゃない」

「あー……そう言う事かあ」

 

 どうやら世界線で、ハズシのリザードンの戦い方は異なるようだった。

 リザードンのメガシンカはXとYの二種類が存在し、所持するメガストーンで異なる。

 タイプは変わらず、ひでりによる天候操作と圧倒的火力が持ち味のY。

 そして、ドラゴンタイプに変化する上に攻撃力が上昇するXだ。

 電気タイプ相手ならばドラゴンタイプのXが優位だが──Yでは、地上から電気で撃ち落とされる可能性が高くなる。

 

「もしかしてあっちのワタシのリザードンちゃんってXなの?」

「そうだねえ……ま、オーラギアスの虫タイプが残ってるなら……Yの火力で焼き尽くせると思うけど」

「メガリザYの晴れオバヒでオーラギアスが吹っ飛ばせるかどうかは未知数なんですよね……あいつ、弱点技平気で耐えるし」

「となると、私は極力安全な所から一撃必殺を狙った方が良いってわけね」

「逆に言えば、ハズシさんのリザードンが落とされると、短時間でオーラギアスを無力化する事は難しくなります」

「それと、もう一つ気掛かりな事がある」

 

 ミコが手を上げて進言した。

 

「あのオーラギアス……腹部に妙な光を溜め込んでおった。しかも、苦しむようにのたうち回っておる」

「……何だって?」

「妙だと思い、テレパシーで奴の言語を少し解読してみせたのだが──」

 

 

 

 ──ぐ、苦しい、ぐるじ、ハラ、が──ッ!?

 

 

 

「……まるで悪いモンでも食ったかのような苦しみがモロに伝わってきてな。腹の光も、オシアス磁気由来のそれにしては引っ掛かるモノがある」

「そりゃあダイナミック拾い食いしてりゃあ、悪いモンの一つや二つに当たることもあるでしょ」

「いやいやいや……ダイナミックが過ぎるでしょ、ダイナミックが」

 

 呆れたようにハズシが肩を竦めた。

 

「そもそもオーラギアスって、獲物をオシアス磁気に分解して吸収するんですよね。()()()事なんてあるんですか?」

「妾に分かるか! ……いずれにせよ、あのオーラギアスは前回戦った個体と比べてもイレギュラーな要素が多すぎる。くれぐれも注意した方が良いだろう」

「じゃ、そうと決まったら……レイドバトル、一狩りいっちゃいますか。あ、イクサ君はギガオーライズ使用禁止ね」

「え”ッ」

 

 彼は顔を顰めた。思いっきり次の戦いでもギガオーライズを使うつもりだったからである。

 しかし、ドクターストップもやむなしの状態であったことは言うまでもない。何故ならば、既にイクサの身体は過重負荷と毒の負荷でボロボロだったからである。

 

「当然だろう。オマエ、以前も無茶をしておるからな。今回の主力は、そこの二人に任せよ」

「ええ……でも、ギガオーライズ無しでオーラギアスに致命打を与えられるんでしょうか」

「良いか。オマエが倒れると、あの小娘共がうるさくて敵わん。……少しは自分の心配をせんか。バカッ」

 

 ミコは、ぷいっ、とそっぽを向いてしまうのだった。

 

「それに、何のために妾達が居ると思うておる。少しは妾達を頼れ! このひよっこめ」

「……ミコさん。心配してくれるんですね」

「愚か者っ! 言うておる場合か!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「雷が落ちたような音が聞こえた……!?」

 

 

 

 そして響くは地鳴り。

 のたうち回るようにして、巨体が暴れ狂うのがメグルの目にも見えた。此方へ向かってくる。

 

「……デカい、クモ!? あれがオーラギアスか!!」

「ふるるるる……!」

「……復活しちまったのか……!! あんなの、どうすりゃ……なんて、言ってる場合じゃないよな」

「ルッ!」

 

 まだフェーズ2は解けていない。

 メグルは、倒れ伏せたストライク、そしてリンネを一瞥すると──アブソルの背中に飛び乗り、オーラギアスに向かっていくのだった。

 

「あいつが暴れてたら、アルカを助けるどころじゃねえ……ッ!!」

「エリィィィスッ!!」

「止めねえと……ッ!!」

 

 過重負荷に襲われる身体に鞭打つ。紫電を放ちながら暴れ狂う巨大蜘蛛に、メグルは立ち向かうのだった。

 

 

 

 

【野生のオーラギアスが 現れた!!】




【DETA】
オーラギアス ゆうせいポケモン タイプ:電気/虫
H140 A60 B140 C130 D185 S35

特性:いぶんのゆうせい
電気タイプや地面タイプにも”でんじは”が当たり、麻痺させる事が出来る。他のポケモンが持つ特性を無視してわざを出せる。
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