さらには、一般市民が銀行の融資を受けにくいという構造的問題もある。山東省の銀行員はVOAに、「(銀行に)お金を借りに来るのは富裕層です。一般の人は返せなくなることを恐れて、借りに来ようとすらしません」と語る。
ところがその警戒心は、クレジットカードとなると一気に緩んでしまう。クレジットカードであれば、身分証があり、信用記録に傷がない限り、容易に発行される。その手軽さが仇となる。
VOAによれば、中国本土では消費の伸びが給与の伸びを上回っており、借入のリスクやコストを十分に理解していない人が多い。資金繰りが苦しくなった時点で利息はすでに膨らみ、返済不能に陥るケースが後を絶たないという。
出前アプリが「お金を借りますか?」と尋ねる
中国における手軽すぎる融資の危険性を、米メディアも取りあげている。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のヴィクター・シー教授(経済学)は、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、中国ではネットで消費者金融から借り入れることが「おそらく他国よりも容易です」と語る。大手サイトであれば、ほぼ例外なく独自のローン申し込みページを用意しており、国有銀行と連携しているという。
住宅市場の崩壊で融資先が縮小した国有銀行にとって、今や消費者向け融資が新たな収益源となった。中国では元々、決済アプリが普及している。アプリでの支払いが広く受け入れられていたことから、各種の消費者金融サイトは瞬く間に、手軽な資金調達手段として広がった。人々は利息がクレジットカードよりも割高という認識すらなく、高金利の融資サービスに飛びついた。
融資の誘惑は、ネット上のあらゆる場所に潜んでいる。ニューヨーク・タイムズ紙は、出前アプリで食事を注文する際ですら、「食事代を借りますか?」と尋ねられることがあると伝えている。手続きは驚くほど簡素だ。身元情報と職業の情報を入力するだけで、資金はほぼ即座に振り込まれる。
借金額を競うインフルエンサーたち
こうした環境の中、借金苦に陥った市民の声が中国各地から相次いで報じられている。
湖南省長沙市で事業を営む30代男性は、2〜3年前からネットの金融会社で借り入れるようになった。当時は審査が緩く、簡単に融資を受けられた。だが今、10万元(約220万円)以上の債務を抱え、返済の目途は立たない。VOAの取材に「誰も助けてくれません。返済を遅らせることしか思いつかない」と苦境を吐露している。
上海に住むミレニアル世代(概ね30代〜40代前半)の女性も窮地に立たされている。エコノミスト誌によると、勤務先のソフトウェア会社が資金繰りに行き詰まり、給与が支払われなくなった。生活費のためネットで申し込める融資サービスに手を出し、気づけば3万元(約60万円)の借金を抱えていた。